ITでリアルな出会いを取り戻す。デーティングサービスをアジアの文化にする・後編

オンラインデーティングサービス「Pairs」のグローバル展開を目指す株式会社エウレカは、台湾・韓国でもサービスを開始。文化が異なる海外での事業展開にあたりどのような戦略で臨んでいくのか、前編に引き続き、洪錫永(Landon Hong)とHead of Marketing, GLの小谷美希が語ります。
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日本発の事業をアジアでローカライズするために

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▲写真左・VP of Global Expansion・洪錫永(Landon Hong) 写真右・Head of Marketing, GLの小谷美希

アプリを開発している現場では、どうしてもプロダクトアウトな考え方が強くなりがちです。しかしグローバル展開にあたっては、マーケティングも重要になってきます。

洪 「グローバル展開におけるマーケティングには、難しい点があります。たとえば、活用すべきメディアの種類が国により異なることです。
台湾では Facebook の浸透率は約 90 %以上*と高いのですが、韓国では 60 ~ 70%**と低くなります。
また、台湾には親日家が多いので、日本人モデルを起用することはまったく問題になりませんが、韓国では場合によっては、日本人モデルを使えないことがあります」

このため、日本発のマーケティングをどのようにローカライズするかということが課題になってきます。そこで、「マーケティングを完全に現地に任せれば良いのではないか」という考えも出てきます。

洪 「しかし、私たちのひとつの思想とブランドを広く海外に展開するためには、日本で各国のマーケティングをハンドリングする必要があります。そこで、Head of Marketing, GLとしての小谷の役割が重要になってくるのです」

海外展開のマーケティングはトライ&エラーのくり返し

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海外展開ならではの注意点として、「日本人としての常識や感性を適用しすぎないこと」が大事だと小谷は言います。

小谷 「マーケティングには定量的な側面と定性的な側面がありますが、そのどちらにおいても固定観念を持たずに、事象を受け止め考える力がとても大切だと思います。
定量的な側面とは、洪が語るグローバルに関する考え方と同様、国に関係なく進めていける部分です。
たとえば、デジタル広告は成果がすべて数値化されてフィードバックされます。この数値からパターンを読み取り、その国に適したプロモーションのチューニングを行ないます。
このやり方は、どの国にも共通して適用できる定量的なマーケティングの方法です。
一方、定性的な側面とは、たとえばクリエイティブやメッセージの内容などその国の人たちの文化背景によって受け止め方が大きく変わってくる部分です」

現在ネット上には、リサーチのためのさまざまなツールがあります。これらを活用することで、国ごとのアプリのダウンロード数やMAU(Monthly Active Users)、そして売り上げなどのデータも集められます。

洪「ところがデーティングのマーケットについてはまだそれほど市場が大きくないため、国ごとのパターンを読み取れない場合があります。
そこで、国ごとのアプリ全体のトップ 50やトップ 100を見るのです。
すると、国ごとに流行っているアプリや機能の傾向が見えてきます。ここから日本との違いを把握することもできるのです。つまり、直接つかめないパターンは、からめ手から探るということですね」

そして、こうして見えてきたパターンに対して、日本人のマーケターが分析しないことが大切だと言います。

文化や社会の背景を知らない人が見ると、そのパターンを自分たちの価値観に引き寄せて分析してしまうからです。

小谷 「仮に最初のプロモーションが上手くいかなくても、フィードバックされた数値からパターンを見つけ出しチューニングしていくことで、効果的なプロモーションを行なえるようになります。
ただし、数値においては客観的なデータですが、考察を行なう際にはどうしてもマーケティング担当者の主観が入り込んでしまうという問題があります。
同じ数値を見ても、その背景にあるものを考える際に、見る側の文化的背景が無意識のうちに影響してしまうのです。
こういったバイアスによる見誤りを極力なくすため、分析を行なう際にはその国のメンバーを交じえてディスカッションを行なうようにしています」

それにより、その国独自の文化背景やインサイトが浮き彫りになり、国ごとの性別や年代により異なる、メディアへの接し方なども見えてきます。

そこで、ターゲットごとに異なるポジショニングを行なうことで、メッセージを伝えやすくすることができます。

小谷 「ここは本当にいつも手探りですね。トライ&エラーのくり返しです。
『ここまでならやっても大丈夫だろう』と考え実施した施策が予想外の結果を生んだり、『これはウケるだろう』と期待したことがまったく反響がなかったりすることもあります。
ここでもやはり、自分自身はあくまで外国人であることを自覚し、自分の固定観念で物事を決めつけて見ないように普段から意識しています」

それと並行して現地の人の感覚や考え方をさまざまなコミュニケーションから積極的に吸収し、生かしていくことも重要です。

小谷 「パートナー契約を締結している現地の広告代理店の方とは、広告運用の話以外の雑談からも、有益な情報を得られることがあります。
たとえば、今こんなことが流行っているとか、こんなおもしろいプロモーションがあったとか。
また、出張で現地を訪れた際は、自分の足で一般の人の生活圏内を訪れて、行動を観察したり実際に話しかけてみたりしています。
そのような、あらゆるコミュニケーションを通じて、その国の人たちの考え方や感じ方を少しでも理解することで、より受け入れられやすいコミュニケーションを実現できるよう心がけています」

このようにマーケティングしていくと、国ごとの性別や年代により異なる、メディアへの接し方なども見えてきます。

そこで、ターゲットごとに異なるポジショニングを行なうことで、メッセージを伝えやすくすることができます。

自分以外全員が外国人というチームのおもしろさ

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2018年10月現在「Global Marketing Team」を含むグローバルチームには、約20名のメンバーが在籍しています。オペレーションは全て国内で行ない、台湾・韓国ではパートナー企業が活動するという体制が取られています。

小谷 「現地にエウレカの支社や営業所を置いているわけではありませんので、パートナー企業さんから得られる情報は貴重ですし、信頼関係を維持することは大切ですね」

小谷は「Global Marketing Team」のリーダーですが、管理者というよりも協働者という目線でメンバーと接していると言います。そして一緒に働くことのおもしろさは、言語や文化的背景の違いにあると言います。

小谷 「私以外のチームメンバーは、主に台湾・韓国の出身者たちです。コミュニケーションは基本的に日本語で行ないますので、日本語を母国語としていない彼・彼女たちとの間には、コミュニケーションロスが生じます。
そうしたロスは表情やしぐさに表れますので、そのようなときは曖昧なままにせず、お互いが腑に落ちるまで議論するようにしています。
そうやってコミュニケーションが上手くいって成果が出せたときは、チームとしての達成感がありますね」

とはいえ、「Global Marketing Team」は外国籍のメンバーが多い、社内でも異色のチームですが、コミュニケーションの難しさを感じさせない快活さを持っています。

小谷 「とにかく明るくてノリが良い人たちが集まっているので、笑いが絶えないですね。賑やかすぎて他のチームに迷惑を掛けていないだろうかと時々心配になります(笑)。
もしかすると、比較的女性が多いからかもしれません。プロダクトの性質上、恋バナが盛んに交わされるのですが、国ごとの考え方の違いがおもしろくて、ついつい話が盛り上がってしまうんです」

このように明るくてにぎやかな「Global Marketing Team」の現在の課題は、韓国の事業を拡大するための人材の強化です。

現在、韓国の事業は立ち上がり後のラーニング期間が終了したところで、これから拡大していく途上にあるためです。

小谷 「韓国市場について理解が深い人材が、まだまだ不足しています。韓国で事業を立ち上げてみてわかったことは、台湾以上に競争が激しいということです。
競争に勝つためには、日本にいながらにして韓国向けマーケティングの経験があり、韓国のインサイトにも通じている人材が必要だと感じています」

また、ITでリアルな出会いをつくるという使命を海外で遂行するためには、より多様な国籍の人材が必要になってくるだろうと洪も話します。

洪 「日本人だけでは、どうしても日本での成功体験や価値観にとらわれてしまいがちです。さまざまな国の人が加われば、グローバルな視点で、より多くの気づきを増やしてくれると思います。
さらにエウレカはグローバルな視点にプラスして、プロフェッショナルなスキルを備えている人材を必要としています。プロフェッショナルとは、エンジニアやマーケター、デザイナーなどの人材です」

アジアNo. 1のデーティングサービスを目指して

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「Pairs」は2017年から2018年にかけて、台湾でNo. 1***の地位を獲得しました。しかし、競合他社も常に地位の奪回を狙っていますので、これからは圧倒的に差をつけて首位に君臨し続けなくてはなりません。

小谷 「2019年までの1年は、台湾で圧倒的なシェアを獲得するための飛躍の1年にしたいと考えています。もちろん、韓国でもNo. 1を獲得したいですね。
日本も含め、アジア全域でトップの座を勝ち取るための足がかりの年にしたいと思っています」

Global Product Team、Global Design Team、Global Marketing Teamで構成されるグローバルチームは、台湾でのNo. 1獲得、韓国での事業拡大開始を足がかりに、「Pairs」をアジアNo.1のオンラインデーティングアプリに成長させるためにさらなる成長を続けていきます。


*Facebook公式発表より(http://focustaiwan.tw/news/aeco/201809270015.aspx
**Nasmedia調べ 2019年時点(
http://www.zdnet.co.kr/news/news_view.asp?artice_id=20180315090859&lo=zv41
***アプリデータ分析サービス App Annieによる売上集計 2018年1月時点

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