瀬戸内から世界を代表するジーンズブランドをーー地方の学生兄弟が「EVERY DENIM」に込めた、熱い想いと志

「未来の伝統を、織りなす。」をコンセプトに、2015年9月に誕生した新しいジーンズブランド「EVERY DENIM(エヴリデニム)」。現役大学生であり兄弟でもある2人が立ち上げたこのブランドは、なによりも職人さんを大切にし、瀬戸内のジーンズ工場に眠っている技術力を引き出しながら持続可能なものづくりのあり方を提案します。
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ジーンズ好きの青年がものづくりの素晴らしさを知る

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幼少期と現在。左:耀平(ようへい・兄) 右:舜介(しゅんすけ・弟)
2015年9月、国産ジーンズ発祥の地・瀬戸内に新たなジーンズブランドが誕生しました。その名も「EVERY DENIM」。実の兄弟である島田舜介(しまだしゅんすけ・弟)と山脇耀平(やまわきようへい・兄)が立ち上げたこのブランドは、「未来の、伝統を織りなす。」をコンセプトに、瀬戸内の工場で生産したオリジナルのデニム商品をインターネットで販売しています。

舜介 「『EVERY DENIM』の『EVERY』には、2つの意味が込められているんです。1つは、ジーンズが、人種・性別・年齢にかかわらず、みんなが履いている”地球着(ちきゅうぎ)”であるということ。もう1つは、瀬戸内がジーンズ産業の集積地として世界に発信していくために工場みんなで力を合わせよう、ということです」


子どものころからジーンズの藍色に魅了され、父親から譲り受けた一本を毎日履いていたという舜介。ジーンズという存在が身近にあったからこそ、歳をとるにつれて次第にその生産背景へと目が向いていきました。

舜介 「大学進学で岡山に移ったのをきっかけに、ジーンズの生産工場をいろいろ見学したんです。それこそ綿を糸にして染めるところから、生地を織り、裁断し、縫って加工・仕上げをするところまで。そのときに衝撃を受けたんです『ああ、ものづくりってこんなにも人の心が通っていて、カッコイイのか』と」


見学後はいてもたってもいられず、国内ジーンズ産業の現状を調べ始めました。と当時に、瀬戸内のデニム工場やジーンズブランドをシャトルバスで周る、日本で初めての大規模な展示会「Beautiful Japan Denim Exhibition Project(BJD)」に唯一の学生運営メンバーとして参画します。

挫折を通して経験した「地域が一体になる難しさ」

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「Beautiful Japan Denim Exhibition」のプレパーティーとポスター
BJDは、年々縮小する瀬戸内のジーンズ産業に危機感を抱いた発起人の吉村恒夫(よしむらつねお)さんが、国内最大の産業集積地である強みを活かして、瀬戸内を海外へと発信していくために立ち上げた構想。実現すれば、世界中の人が瀬戸内を訪れ、ものづくりのレベルの高さを知ってもらうことができる大規模なプロジェクトでした。

内容の企画から参加企業への依頼までBJDのコアメンバーとして活動していた島田舜介は、現場で動く中で、地域が一体となることの難しさを痛感することになります。

舜介 「2016年春に開催を予定していたBJD構想は、けっきょく途中で頓挫してしまいました。一口にジーンズ産業といっても、その中には、生地を生産する工場からブランド、いわゆる”川上から川下まで”、さまざまな業態の会社があります。それぞれ立場の異なる者たちが集まって一緒になにかやりましょうというのは、たとえそれが業界全体のためになることであっても、難しいことなんだと身をもって実感しました。

自分が大好きだったジーンズのために、なにか業界の役に立ちたいと2年間奔走してきましたが、それが水の泡になり、すごく悔しくて虚しかったです」


日本初のジーンズブランド「ビッグジョン」で35年以上に渡ってデザイナーを務め、リタイア後は地域のためにさまざまな活動を行っていた吉村さん。自身の集大成と考えていたBJDが中止になったことで彼もまた、大きなショックを受けていました。

吉村さん 「無我夢中で取り組んできたこの2年間は、本当に『夢のような時間』でした。BJDが開催されれば”瀬戸内のジーンズ産業が復興するための大きな一歩になる”と確信を持っていたので、中止が決まった時は非常にショックで、これっきりで活動をするのはやめようと思いましたね」


あと一歩のところで実現できなかったBJD。吉村さんが引退を考えている一方で、舜介・耀平兄弟は「瀬戸内地域が一体となり、素晴らしい技術を持ったジーンズ産業を世界に発信していく」という夢をどうしても諦められませんでした。そこで、吉村さんやBJDの想いを引き継ぎ、「EVERY DENIM」としてブランドの立ち上げを決意します。

舜介 「BJD運営チームも解散して、しばらくは悲しみにくれていました。でもこのまま落ち込んでいても仕方ないと思ったんです。とにかくなんとかしたかった。このままじゃ絶対にいけないというのはわかっていたので。ブランドを立ち上げる際に吉村さんに直談判して、長年の知見を活かしたアドバイザーとしてサポート頂けることになりました」


吉村さん 「私自身、業界の経験も長いですが、圧倒的な熱量と高い視座を持ってジーンズ産業のために動いてくれる若者を、ずっと待っていたんです。長い間待ちましたが、ようやく彼らのような人材が現れてくれて、とても嬉しかった。だからこの子たちに賭けてみようと思ったんです」


こうして、瀬戸内から世界に発信するジーンズブランド「EVERY DENIM」がスタートすることになりました。このとき2015年3月、当時22歳と20歳の兄弟は、第1弾の商品販売に向けて本格的に活動を開始することになります。

現場に足を運ぶことで見えた工場の課題と解決策

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現場に足を運びインタビューする取り組みはメディアにも注目される
ブランド立ち上げの構想から遡ること数ヶ月、EVERY DENIMはwebマガジンの運営をスタートしています。瀬戸内デニム工場の職人さんを中心にインタビューし、ものづくりにかける想いや情熱をインターネットを通じて発信してきました。文章構成や編集、発信は山脇耀平が担当。生産者の情報を伝えることについては、並々ならぬ思いがありました。

耀平 「BJDの活動で出会った現場の人たちの声が、あまりにもweb上にないことに違和感を覚えていて。デニム工場をインターネットで検索しても、名前が出てくる会社はほとんどないです。それだけ『自分が身につける服がどこで作られているか知りにくい』ということ。まずはこれをなんとかしないと、と考えました」


瀬戸内の工場を一つずつ周り、取材を重ね多くの話を聞くうちに、次第に工場に共通した課題が浮かび上がってきます。

耀平 「ジーンズ工場の課題は大きく3つあることに気づきました。1つ目は『職人の高齢化が進んでいる』こと。瀬戸内に住む人たちですら工場の存在やどこにあるのかを知らない人が多いので、採用を募集しても人が集まらない。そもそも、経営が苦しくて若い人を雇う余裕がない。仮に雇えたとしても、きつい労働環境ですぐ辞めてしまう人が多い。

2つ目は『工賃が安すぎる』こと。ブランドの下請けとして位置する工場は、たとえ提示された工賃が安すぎても、どうしても言うことを聞かざるを得ないんです。従わないと契約を切られて仕事がなくなってしまいますから。ここ20年以上続いているブランド間の激しい価格競争によって、より一層そのしわ寄せが工場にきており、廃業を余儀なくされる工場が後を立ちません。

そして3つ目は、『自分たちのつくりたいものがつくれない』ということ。基本的に工場はブランドに指示された製品だけをつくるので、提案側に回ることは少ないです。さらに、先ほども言ったように工賃が安すぎるので、力を100%出して作っていたら仕事が間に合いません、なので必然的に手を抜いてやる必要があります。『言われた通りのことを、そこそこ手を抜きながらやる。』これでは職人さんのモチベーションも上がらないと思います」


こうした構造が長く続くことで、いまやアパレル製品の国産比率は、1990年の50.1%から2014年には3.0%まで下がっています。(経済産業省「繊維・生活用品統計月報2010年」)世界から評価される技術力があるにもかかわらず、日本のものづくりが衰退していく姿を目の当たりにした兄弟。この現状をなんとかするためにあらゆる策を練り、最終的に出した結論は、EVERY DENIMを持続可能なジーンズブランドとして運営していくことでした。

耀平 「課題をなるべく早くすべて解決するためには、EVERY DENIMがブランドとして育ち、瀬戸内に職人の雇用を多く生み出しながら、生き生きとしたものづくりを続けてもらうことが最適だと判断しました。」

クラウドファンディングで応援してくれる人の多さを実感

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昨年実施したクラウドファンディングは開始4日目で目標金額を集めた
EVERY DENIMはブランド立ち上げの資金を募るため、2015年9月にクラウドファンディングを実施。開始4日目で目標金額に到達し、最終的に目標の238%、209万円を集めました。

舜介 「ありがたいことに、予想してたよりもはるかに多くの方々からご支援をいただきました。活動を応援してくださる方がこんなにもいるということが本当に嬉しく、これからやっていく上で励みになりました。周りの期待を上回る、しっかりとした結果を出したいと思います」


今年1月には1stモデル「Bengala(ベンガラ)」を発売。”ベンガラ”とは、屋根の瓦などに使用される顔料(粉)のこと。通常、ベンガラのような粉をジーンズに固着させるのは非常に難しく、岡山産のベンガラを使って加工されたこの商品は、職人が2年以上に渡って研究開発し、ずっと温めていた技術の結晶でした。

舜介 「マーケティング先行のものづくりが主流な中で、この『Bengala』は長く日の目を見ることはありませんでした。開発した職人さんも自信を持って世の中に提案したいと思っているものの、その手段がないので、ずっと工場に技術が眠っていたことになります。それはもったいない。だったら『EVERY DENIM』でやりましょうと。いうことで商品化を持ちかけたところ、トントン拍子に話が進みました。

まさに『自分たちがつくりたいものをつくる』を実践でき、実際に売れたので職人さんもとても喜んでくれました。最初の一歩ですが、理想の形が体現できたのは何より大きかったと考えています」


4月には従来の常識を覆す2ndモデル「Relax」が発売。未来の伝統を、織りなす。ーー 私たち「EVERY DENIM」の挑戦は、まだまだはじまったばかりです。

EVERY DENIM http://www.everydenim.com/

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