25歳のとき、父親の会社が倒産。それでも起業への夢は消えなかった 

起業しようと思ったのは、完全に父の影響ですね。経営者として楽しそうに働く父親の姿を見て、子どもながらに自分で商売することに漠然とした憧れを持っていました。

だから、学生時代も自分でビジネスを起こして、起業家みたいなこともやっていましたね

そして、英語を学ぶために留学し、卒業後は父の会社に入社しようと思っていました。しかし、留学を終えたころ、僕が25歳のときに会社が倒産してしまったんです。ショックは受けたものの、倒産を目の当たりにしたことで、起業に対する想いはむしろ強くなりました。

また、それまで、父からは仕事に対する不満を一度も聞いたことがなかったんですよね。常に前向きな話しか聞いてこなかったんです。それは、倒産しても変わりませんでした。倒産した翌日、父が「また別の事業で起業する」と宣言したのは本当に印象的でしたよ。

起業って、それだけ人に原動力をもたらすものなんだなと思いました。そのとき明確に、絶対に自分も起業するぞと決めたんです。

自分の好きなように事業をゼロからつくっていくのは、起業家だからこそ味わえる醍醐味のひとつです。父はそれが楽しかったんだろうし、私も絶対に同じ楽しさを経験してみたいなと思いました。

当時、33歳までには起業するという目標だけは立てたものの、それまでどうしようかは全然考えていなくて。将来起業するとしたら、自分が好きなITやインターネット領域にすると思ってたので、その領域で経験を積めそうな会社を探し、創業間もない、EC向けのレコメンドエンジンを開発・提供するシルバーエッグ・テクノロジー社にジョインしました。

創業期のベンチャーに飛び込んで実感した、商売の難しさ

3番目か4番目の社員としてシルバーエッグ・テクノロジーに入社して、開発以外のことはなんでもやりましたね。セールスがメインの仕事ではあったんですが、カスタマーサポートやマーケティング、会社の口座開設なんかもやりました(笑)。

代表のトーマス・フォーリーはアメリカ人で日本語が話せなかったので、営業時の通訳だけでなく、事務手続きはだいたい私が担当しましたね。

自分で起業すると決めていたので、ビジネスの全体図を俯瞰できる立場にいられたのはすごく良かったです。当時の経験は、エビリー創業後も生きています。

そこで得られた一番の学びは、自社サービスが市場に受け入れられるタイミングは読めない、ということですね。シルバーエッグ・テクノロジーが創業した98年当時はITバブル真っ只中で、EC市場は確実に伸びるし、それであればレコメンドエンジンへの需要も高まるはず。

その期待を受けて、シルバーエッグ・テクノロジーは創業当初、約6億円もの資金を調達できたのですが、実際スタートすると中々うまくいかなくて。1年で50人ほどに増えた社員を、1年後に大半の社員をリストラしなければいけない状況にまで追い込まれました。

調達した資金で一気にプロモーションかけたんですけど、当時はほとんど市場に受け入れられなかった。実は全然売れずにうまくいかなかったんですよね。でも粘り強く事業継続した結果、国内のレコメンドエンジン市場ではトップシェアを誇るサービスに成長し、2016年には東証マザーズに上場しました。

いずれこのサービスは世の中から必要とされるのはわかっている、潜在ニーズがあるのは確信しているけど、いつそれが顕在化するのかは、どうしても読めない。

自分がいけると信じたサービスを市場にぶつけてもすぐに成功するわけではない。そんなことを体感できたのは本当に良かったです。

起業するも失敗続きの日々。それでもやり続けたら光が見えた

25歳当時、「33歳までには起業する」と決めていたので、ちょうど33歳になる2006年に起業しました。ただ、当初は起業ありきで、どんな事業をやるかは決めていませんでしたね。でも、漠然と動画領域に進出したいとは考えていました。

最初3年間はフリーランスとしてWeb制作の受託やコンサルティングを行いながら、いくつか動画サービスを出して試行錯誤を繰り返していたんです。

動画に着目した理由はふたつ。2005年にGoogleがYouTubeを買収したこと、ほぼ同時期にYahoo!BBがモデムを無料配布したこともあり、国内のインターネット通信が急速に普及していたという背景を受けてのことです。なにより、私自身映像コンテンツが大好きだったということもあります。

当時、一般企業でも第一次動画ブームが到来していました。自社で動画を配信するぞとなっても、回線引いて、データセンター借りて、動画専用のプレイヤーをつくって……。となるとかなり費用がかさむし、設定も複雑です。

そこで、自社内でゼロから環境構築するオンプレミスではなく、クラウドで気軽に動画を配信できる環境を提供できればいいのではないかと考えて開発したのが「millvi」です。

millviに行き着くまでは、結構苦労しましたね。millviをリリースしたのは2010年。それまでの4年間で3つの動画サービスをリリースしたのですが、なかなか市場に受け入れられなかった。

失敗の要因は、ひとえに世の中の課題を解決するものではなかったから。

もともと、私はテクノロジーを活用して社会に貢献したいとは思っていたのですが、どうしても思考がテクノロジーに寄りすぎて、「テクノロジーありき」なサービスをつくってしまっていたんですね。そのバランスをとるのが難しかったですね。

失敗を重ねながらも、いかに課題解決にテクノロジーを生かすかという思考はどんどん深まっていきました。その結果、ようやく課題解決できるテクノロジーを搭載した「millvi」を生み出せたんです。

millviはリリースしてから順調に伸びていたのですが、2015年ごろ、YouTubeにリプレイスされ始めたんです。たとえば、CM素材をWebで活用したいとなった場合、YouTubeで流そうというケースが増えていたんですね。「そのうちYouTubeに全部置き換えられるんじゃないか」と危機感を抱きました。

ただ、YouTubeに動画をあげたからといって、見られるかというとそうでもなかったんですよね。今後、企業はYoutubeにアップした動画のプロモーションに苦労するはずだと。そこを解決するためにつくったのが、YouTube上のデータを分析するサービス「kamui tracker」です。

動画を伸ばしていくには、やはりYouTubeというプラットフォームの全体感や、競合企業の状況を把握する必要があります。「kamui tracker」は、それらを簡単に把握できる機能を実装しました。他サービスにはあまりない強みなので、リリースしていこう順調に成長しています。

動画時代が本格的に到来した今、業界をけん引する存在に

今後、5Gの到来やスマホカメラの進化により、動画を撮影、投稿するハードルがさらに下がっていくはず。なので、動画が活用されるシーンがより広がっていくと予想しています。

「millvi」の場合は、最近は社内向けのマニュアル動画配信に利用されるケースが多いですね。背景には外国人労働者の割合の増加があるのかなと。日本語のマニュアルでは伝わらないので、映像で見てもらったほうが明らかにわかりやすいですよね。そもそも、マニュアルを作成するよりも実際の様子をスマホで撮影し、そのままマニュアル化できたほうがよほど楽ですしね。

人口減少時代に突入した日本では、業務効率化や外国人雇用者教育などを目的にした動画制作のニーズが高まっていくはずなので、しっかり応えていきたいです。

「kamui tracker」は、広告主や広告代理店、クリエイター、事務所など、YouTubeだけでなく動画SNSを活用するすべての人たちビジネスにとって、欠かせないサービスになりたいですね。これまでデータによる裏付けが少なかったインフルエンサーマーケティングを変革し、市場のさらなる発展をけん引するプロダクトに成長させていきたいと考えてます

今後、新たに挑戦していきたいのは、動画領域におけるAIの活用。すでに、一部データ解析でAIを活用し始めていますが、クリエイティブの支援などより広い範囲で役立てたいです。動画×AIはまだまだ黎明期なので、そこに先陣きって切り込んでいきたいですね。将来に向けた事業基盤の強化のために、2019年12月に資金調達を実施しました。

サービスの話ばかりしてきましたが、今構想している計画を実現するために、何よりも大事なのは、今の事業をつくりあげている社員です。社員自身にも今の仕事をよりおもしろく感じてもらいながら社員と共に成長できる、そんな会社にしていきたいと思います。