コンサル業界の常識を変える多様性の社内改革!戦略的な活動で会社の変革の光が射した

M&A関連事業を展開するEYトランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社では、厳しい労働環境や画一的な企業文化など、働き方に関する課題がありました。しかし、マネジメントの情熱と賛同するチームによる取組みにより状況を改善することができました。短期間で成果を上げた戦略と実践の足跡を紹介します。
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コンサル業界で働き方は変えられるか?

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M&Aやコンサルティングの外資系企業といえば、ダイナミックな仕事に携わる華やかなイメージを抱かれるかもしれません。一方で、企業統合というシビアな状況を成功に導くためには、高いクオリティと専門性が要求される世界でもあります。

EYトランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社(以下、EYTAS)は、世界4大会計会社のひとつであるEYの日本におけるメンバーファームであり、企業統合のコンサルティングサービスを国内外で展開しています。

自らを成長させたい、やりがいの大きい仕事に挑戦したい……といった希望を胸に、EYTASにも多くの社員が入社してきます。しかしながら、そうしたイメージとは裏腹に、大きなプレッシャーのなかやりがいのある仕事であると実感しつつも、厳しい労働環境において黙々とプロジェクトを進めざるを得ない状況もありました。

小林 「クライアントの M&Aが進んでいるときは、 24時間 365日対応ができるよう常に臨戦態勢をとっていました。そんな働き方ゆえにこの業界はライフイベントがキャリアに影響しがちといわれる女性が極端に少なかったんです」

そもそもワークライフバランスという概念を保つことが難しいとされる業界で、結果的に組織としても人材に専門性が重視されるために同じようなスキルを持った人が集まるという傾向になってしまい、画一的な価値観や雰囲気が否めませんでした。新しい風を、ということで女性社員を採用しようとしても難航し、入社しても短期間で離職してしまう人もいました。

以前は、外資系のイメージとは違った、いわゆる「昭和な」働き方が常識となっていました。

小林 「男性社員にしても、長時間労働や残業を称賛するわけではありませんでした。意味もなく遅くまでオフィスにいるより、効率よく働きたいと考えている人は少なくありませんでした」

つまり、EYTASの多くの男性社員たちは、こういう業界だからという理由で、厳しい労働環境を受け入れる人も少なくなく、クライアントサービスの優先と自分の経験を積むことを第一と考える傾向はありました。

従業員の気持ちは毎年行なわれる従業員エンゲージメント調査に反映され、日本国内のEYのなかでもEYTASのエンゲージメントは残念ながら低い年が続き、改善策を投入しても思った成果が出せずにいました。

しかし、2016年、EYTASに大きな転機が訪れます。それは、海外からの新ビジネスリーダーの就任でした。

一緒にやろう、会社を変えたいなら――。 戦略的社内改革のはじまり

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2016年に新リーダーとしてEYTASにやってきた、ヴィンセント・スミス。彼は多民族国家のオーストラリア出身とあって、男女のみならず一人ひとりの価値観やワークスタイルは異なって当たり前という考えの持ち主でした。

そんな彼は、日本のコンサル業界の働き方を目の当たりにします。

「M&A業界は特別だから」という概念が蔓延している社内の雰囲気。それゆえに女性や若い優秀な人材を採用できない悪循環。

誰もがこの現状から脱却する必要性を感じながらも、業務多忙のため、クライアントへのサービス優先のため、自分たちのための行動にこぎつけられない状況でした。

小林 「そもそも EY全体としては、 Diversity & Inclusiveness( D&I・お互いの違いをうまく活用すること)を経営の最重要戦略と位置づけています。社員との対話を通して EYTASの課題を理解したヴィンセントは、 D&Iの実現、柔軟なワークスタイルの導入を即決しました」

そして、小林に「本気でD&Iを実現したいなら、一緒にやろう」と声を掛けます。ワーキングマザーでも活躍できることを証明しようと息巻いてEYTASに入社してきた小林に――。

小林 「私は、ワーキングマザーでもしっかりと成果を出して働いていけることを証明したいとの想いを持って EYTASに入社しました。ただ働ければ良いのではなく、活躍できることが大切なんです」

ともすれば、ワーキングマザーは「フルで力を発揮できないのに働かせてもらっている」「自分はお荷物だ」という心情になりがち。

しかも、女性社員が極端に少ないEYTASではなおさらです。小林は、自らが成果を出せるワーキングマザーになることで、そうした印象を変えたいと志していました。

小林 「 2017年当時、社員 153名のうち女性社員はたったの 17名。しかし、多様な価値観を持つクライアントに寄り添い、サービスを提供する EYTASの特性上、画一的なカルチャーではいけない。 EYとしての強みを発揮するためにも、女性社員が活躍できる土壌を築かなければと感じていました」

だからこそ、小林はヴィンセントの提案に参画することを決意します。2017年2月にD&Iコミッティーを立ち上げ、社内の大改革へと乗り出しました。

制度化と草の根活動の並行で社員のあきらめを変える

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新たな試みにチャレンジするとき、最も大きな障壁は社員の心の中にあるものです。

小林 「当時社員は、会社に対する期待を抱く余裕がないという現実がありました。より良い方向に変われる可能性、さらに言えば何が問題なのか理解さえしていなかった。みんな現状の働き方に不満があるものの、何が一番の課題なのか、改善策が何なのか、よくわかっていなかったんです」

そこで、小林は社員の本音を聞き出すヒアリングからスタートします。

とはいえ、人事部のプロジェクトにしてしまうと「現場をわからない管理部門の人が何かやっているのでは」というネガティブな姿勢でとらえられるリスクが当時はありました。

小林 「最初の一歩は、社員が抱えているありのままの想いを聞き出すことでした。そのために、現場で実務にあたっているクライアントサービス( CS)職のメンバーから国籍・役職・部署を考慮しながらボランティアを選出。同志を増やし “非公式ヒアリング ”を重ねていきました」

たとえば、たまたま並んだコピー機の前で、若手社員同士の飲み会で、カフェやランチの雑談で……。何気ない会話にこそ本音がひそんでいると考え、あらゆるシーンであらゆる声を拾い集めました。

世代や性別が異なれば、発想も価値観も変わるもの。「リアルな声をインプットするうえでとても貴重なプロセスだった」と小林は振り返ります。課題は山積みでした。それでも、課題さえ見えない状態からは一歩踏み出すことができたと言えます。

2017年7月に人事部の組織が変わり、新人事部としてマネジメントの思いを施策という形で具現化していきます。ボトムアップの草の根活動と並行し、マネジメントから絶えず改革のメッセージを送りそれに合わせた施策を導入することで、トップダウンからも改善に取組むという姿勢をしっかりと宣言しました。

マネジメントと人事部による施策は、2017年10月にはじまりました。前年度の従業員エンゲージメント調査の結果から課題を明確にし、以下の施策を半年の間に展開しました。

自主性とフレキシブルな働き方を追求した就業規則などの見直し
新たな人材育成制度とカウンセリングの充実
5段階制度を撤廃し、レーティングを付けない評価の仕組みの導入
昇進の加速を意図したキャリアパスの明確化
表彰制度の充実

導入前には必ずリーダーのヴィンセントが中心となって意見交換会を複数回行い、従業員と双方でのコミュニケーションや透明性を意識しました。

小林 「 D&Iコミッティーとしても、必ず D&Iコミッティーの施策に対するアンケートやヒアリングを徹底的に実施し、社員が “自分たちの声はちゃんと届いている ”と実感できるよう心がけました。
その結果、たとえばリモートワークのパイロットユーザーからの反応から、「フェイス・トゥ・フェイスでなければ働けない」という意識に対する改革の必然性を感じ、 Skype利用など IT活用による行動変容の推奨に努めました。
その間、リモートワークのパイロットの参加メンバーには、継続するよう励まし続けました。変化を受け入れるのは大変ですが、チャレンジのプレッシャーに負けないでほしかった。本気で会社を変えていくために必要な取組みなのだと、精神的なサポートも大切にしました。
地道な活動を重ねた結果、社員たちは、常に会社にいなければならないプレッシャーや女性の少なさに対する懸念、長時間労働に対する疲弊感を抱いていることが明確になりました。さらには D&Iの活動として、 LGBTに対する無知や偏見を防止する施策も行ないました。
LGBTに関する基礎知識を学ぶ研修を全従業員対象に実施。ニュースレターを通じた情報発信やファンイベントの開催など、幅広い啓発活動を継続しています」

また、女性社員の採用強化においては、ヴィンセントを中心にEYTASを多様性あふれる組織に変貌させるための採用戦略を考案。女性の母数自体が少ないマーケットの中での戦略的採用活動を進めました。

インタビューアを女性でそろえ、子どものお迎えなど、ワーキングマザーや女性ならではの疑問には先回りして答え、不安を払しょくするように努める戦略に加え、女性のためのイベントを開催し、女性候補者に対しEYTASのビジネスをアピールした結果、女性採用数前年度比200%増を達成しました。入社時のプロセスも見直し、入社後の新人の不安を払しょくする「バディ」制度を導入しました。

現場に立つ社員が変わろうと動きはじめている。

会社が公式に改善を宣言し、コミットしている姿が見える。

トップとボトムの両輪が動くことにより、社員たちに「今度は本当に変わるかもしれない」という希望を感じさせることが重要でした。

また部門のリーダーたちがマネジメントからのメッセージを自分たちの言葉で語りはじめ、徐々に他人事と感じていたD&Iを含む改革が、自分事となりはじめていきました。

数字にも笑顔にも成果の兆し 多様性がEYTASの未来を強くする

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数々の施策を導入した結果、2017年に17名だった女性社員数が翌年には28名に。全体の比率としても10%から13%にまで上昇しています。

また、例年低かった従業員エンゲージメントも格段にアップ。2017年の53ポイントに対し、2018年は歴代最高の72ポイントを記録しました

小林 「何より、社員の表情が以前より明るくなりました。 D&Iの理解浸透や働きやすい職場環境の定着、女性管理職数の増加など、今後取り組むべき課題はたくさんあります。それでも『やればできる』と会社に期待や可能性を持てるようになったことで、私たちは大きな一歩を踏み出せたと思います。
また、この取組みを通じて EYTASリーダーのヴィンセントは、 LGBTの認知度を高めた 50人のエグゼクティブとして Top 50 Ally Executivesにも選出されました」

常識や前例、そして自分たちを縛りつけていた画一的なカルチャーからの脱却。EYTASが歩みだした理想への道筋は、自らが生み出した希望の光で照らされています。

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