コルク、ラベル、そして光ーーフィラディスは「ファインワイン」をこう選ぶ

われわれフィラディス(Firadis)は「ファインワイン」の中でも熟成して飲み頃を迎えたもののみを輸入販売しています。これらの良し悪しを見抜くためには、産地や品種はもちろん、どんな状況で熟成されたかを見極めなければいけません。今回は、高級レストランなどで提供される“究極の一本”の厳選法をご紹介します。
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30年物の安価なワインが大好評 めくるめく予測不能のワイン・ワールド

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▲長期間熟成されたファインワイン。飲まずに味の良し悪しを見抜かなければならない

ヴィンテージワインはすべて、一期一会。「パリのレストランのセラーからこんな掘り出し物が出てきた」「ワイナリーに長い間眠っていたものがリリースされた」「愛好家が手放した」――そんなさまざまな経緯で売られることになった“一点モノ”ばかりなのです。

もちろん、産地やワイナリーの名前、さらには生産された年を知れば、その良し悪しにある程度の検討をつけることができるでしょう。しかし、一筋縄でいかないのもまたヴィンテージワインのおもしろみです。

石田 「世の中で珍重されているものや価格が高いものが、すなわち “おいしいワイン ”ではないのです。たとえば保管状態が悪ければ、本来の香りや果実味を失い、余韻も短いスケール感が小さい別物になってしまいます」

逆に、驚くような掘り出し物と出会うこともあります。

石田 「以前、シャンパーニュ地方のセラーから 30年熟成したモエ・エ・シャンドンのブリュット・アンペリアルが出てきたことがあります。安価なスタンダードシャンパーニュは通常熟成させません。なので、世界中のバイヤーが 『 そんなもの飲めるのか? 』と一歩引いていましたが、興味があって 1本だけ航空便で送ってもらい、試飲をしてみました。
すると、驚きました。渋み、酸味、果実味が渾然一体となっていて、これにメイラード反応によってキャラメリゼした甘み――砂糖を焦した印象の甘みが加わり、素晴らしい味わいに熟成されていたのです。すぐにまとめて購入してお客様に販売したところ、大変好評をいただきました」

このように、決して高価ではない銘柄やグレートヴィンテージワイン*1でないものの中に、「こんな味わいになるのか!」と感嘆すべきワインが混ざっていることがあります。しかし一方で、値段ばかりが高くつき、がっかりさせるような代物も。それでは、われわれはいかにして玉石混交の市場から“絶対のおすすめ”を選んでいるのでしょうか?

*1良いブドウができた年に生産されたワイン

一瞬の遅れが命取り スピード戦でも“本物”だけに手を伸ばす

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▲日々、海外からのオファーをくまなくチェックし、これぞというワインを探し出す。

世界中に眠っているワインの中から光る一本を探すーーその上でもっとも大切なことは、意外かもしれませんが、「情報戦に勝ち抜く瞬発力」です。われわれの元には、海外の業者から、産地、生産年、生産者名、価格の情報を記載したオファーが大量にメールで届きます。これに素早く目を通し、買うか否かを瞬時に判断する必要があるのです。

石田 「魅力的なオファーだった場合、少し考えてから返信したらもう売り切れ、ということがざらにあるんです。メールが配信されてからたった数十秒後に売り切れていた、という経験もあります」

素早く狂いのない判断のためには、「この産地の何年のものは非常に出来がよかった」「この銘柄のワインは長期熟成タイプである」というように、ワイン自体について広く深く知っていなければなりません。さらには、“この生産者の何年ものがこの価格なら安い”といった相場観も必要です。

そういった知識に照らし合わせると、まれに「おかしいな」という商品に出会う瞬間があります。たとえば、「この生産者の何年ものは残り少ない」はずなのに大量に売られている、といった時は、偽物の可能性も多いにありえるのです。

石田 「われわれが付き合っているヨーロッパのサプライヤーは信頼できる企業ばかりです。それでもなお違和感のある商品があったら、どれだけ売れそうなものでも手をつけません」

また、産地、生産年、生産者などの条件がどんなに素晴らしくても、劣悪な環境で保管されたワインは味が劣化してしまうため、購入は避けなければなりません。われわれはそのようなワインのコンディションを見抜くために、最大限の努力を重ねています。

一流のワインはオーラを放つ。最後の決め手はロジックじゃない。

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▲バイヤーがサプライヤーから取り寄せた写真を真剣にチェックしているところ

コンディションを把握するためにわれわれがすることはまず、「ワインの画像を取り寄せること」。先のモエ・エ・シャンドンと違って、一本が数十~数百万円という価格の品は、試飲させてもらうわけにいきません。しかし、人の顔つきや身なりに考え方や経歴が現れるように、ヴィンテージワインもラベルやキャプセル、ボトルを見れば、どんな歴史をたどってきたか――すなわち「どう保管されてきたか」がわかるのです。

ワインの保管に適したコンディションは、13~15度という低い温度、そして70~75%という高湿度です。このような最適状態で保管すると、コルクとキャプセル*2がしっかりしていても、ワインは年に1ミリ程度減っていきます。

石田 「まず、瓶詰めにされた年とワインの減り具合を見て保管状態を確認します。湿度が高ければラベルやキャプセルは痛んで当たり前。これが不自然なほどきれいだと、湿度が低かったなど、理想の保管状態ではなかった可能性が高いと判断できます」

さらに重要なのは温度です。論外なのは、「液漏れ」。高温の場所に放置すると、瓶の中の気体と液体が膨張して、コルクのスキマからワインが漏れるのです。液漏れは、「瓶詰めされてからの年数の割にワインが減りすぎている」「キャプセルが不自然に腐食している」といったことから見抜きます。

ワインは繊細で、30度――真夏の日陰くらいの温度に1時間放置しただけで、香り、果実味、余韻が変化してしまいます。そのため、液漏れが起きたワインは顕著に劣化していると考えられます。

さらに、これらの条件をクリアしながらも保管状態が気になった場合には、ボトルに光を通して撮影してもらい、色で判断することも。熱劣化したワインは、液漏れにまで至らずも、ボトルを通した光に濁り・曇りがあり、独特の精彩に欠けるのです。

そして、これらの精密なチェックをクリアしたワインに待ち受ける、最後の関門があります。しかし、それを言葉で説明することはできません。

石田 「そこから先もあるのですが、どうしても言葉で説明できないのです。あえて言うならば、適切に保管されたワインからは、さえた印象、華やかな印象を受けます。逆に劣化したワインには何か嫌な予感があるのです。こればかりは私も “ワインが放つオーラを感じ取っている ”と言うしかありません」

*2コルクを覆うキャップ

すべては日本のファインワインの業界を引っ張り、感動をお客様に伝えるため

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これからも人に感動を与えられるワインを世の中に送り出していきたい

つまり、ヴィンテージワインの良し悪しをコルクを開けず見抜くためには、長年の経験、カンが必要なのです。これはリスクが高い仕事でもあります。

インポーターであるわれわれは当然、お客様から完璧な状態を求められます。しかし、ワインがどのような時を過ごしてきたかすべて把握することは不可能です。それゆえ、感覚を研ぎ澄まし、価値を見抜く眼力を鍛えるしかありません。

それは人との出会いと似ています。すべては一期一会、そして一瞬の出会いで、その人(=ワイン)が送ってきた人生を感じ取る必要があるのです。

石田 「難しい仕事ですが、取引先の方に “フィラディスが選んだワインなら間違いない ”というご信頼をいただけることが大きなやりがいとなっています。
今でも覚えているのは、お世話になっているソムリエさんが、私を和食の店に連れて行ってくださった時のこと。そのお店の板前さんを “この人がこれから日本で和食の世界を引っ張っていく人 ”と紹介してくれたあと、ソムリエさんは私を “彼が日本のファインワインの業界を引っ張っていく人! ”と紹介してくださったのです。一生忘れないほど嬉しい出来事でした」

彼がワインを見る時の“眼力”は、長年ワインを扱ってきた経験だけでなく、こういった濃密な人間関係によっても鍛えられたのかもしれません。

石田 「ワインがもたらす感動を誰かに伝えたい、という想いが、強い原動力になっています。何かに強く心を揺り動かされると、それを人に伝えたくなりませんか?私は自分が素晴らしいファインワインを飲んだ時に感じた崇高さや華やかさを多くの方に伝えたいのです。今後も、熟成した飲み頃のファインワインのご提供にこだわり続けることで、その想いを実現していきたいと考えています」

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