1日1500本の検品作業──クオリティを守り抜くプロフェッショナルの仕事に迫る

『ワインの真価を伝えたい』という想いをもとに、飲みごろを迎えた「ファインワイン」を輸入・販売するフィラディス。今までは私たちの創業物語、ワインの選び方についてお伝えしてきましたが、実を言うと私たちにはさらに大きなこだわりがあるのです──。それは、繊細なワインに必要不可欠な「輸送」と「検品」です。
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ワインの繊細さを知るからこそ、難しい「運送・検品・保管」と向き合う

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▲ワインは生き物のようにデリケート。保管状態が味わいに与える影響は大きい

突然ですが、ワインを冷蔵庫で長期保管されている方はいらっしゃいませんか?実はそれ、香りや味わいが変化するので注意してください。

私たちがお客様に配信するニュースレターには、「フィラディス実験シリーズ」という人気企画があります。この中で「冷蔵庫で保管はワインを劣化させるのか?」という実験を行ったことがあるのです。結果は、3カ月経つとスパークリング、白、赤、いずれのカテゴリーでも、とくに果実味と香りが変化し、余韻に苦みが出たケースもありました。

ワインはそれほどに繊細なのです。だからこそ私たちは「どのワインを輸入するか」だけでなく、運送、検品、保管にも並々ならぬこだわりを持っています。

“相当口うるさい人物”が、現地の天候や気温もチェックする

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▲2019年現在、鈴木は輸送を統括する立場で自分が培ってきたノウハウをメンバーへ引継いでいる

輸送部門を統括するのは商品管理部リーダーの鈴木幸恵。彼女の前職は航空貨物を扱っていた大手運送会社だったのですが、ワイン好きが高じて当社に転職してきた人物です。先に少しだけ、彼女のすてきな思い出話を聞いてください。

鈴木 「初めてファインワインを口にした時……決して何十万円もするものではなかったのですが、まるで花束を抱いているような、一面のお花畑にいるような香りがしました。この魂を奪われるような感覚が今の私の原点です」

そんなことを語る人物なだけに、彼女はワインに並々ならぬ情熱を持っています。フィラディスが輸入するファインワインはヨーロッパの歴史あるレストランのセラーや、ワイナリーの蔵から出てくる一点ものも多いです。そのため、輸送時のコンディションが原因で味わいを変化させてしまったら、それは地球上から“貴重な一本”が消えてしまうことを意味する、と彼女は理解しているのです。

鈴木 「ヨーロッパには、ワインの輸送にスペシャリティを持つフォワーダー(国際輸送業者)があり、私たちはその最大手である『 JF Hillebrand(ジェイ・エフ・ヒレブラント、フランス)』に運送を依頼しています。この会社は、ワインを適温( 13~ 15度)に保てるリーファートラック(貨物室の温度を一定に保つ特殊なトラック)を持っているなど、ワインの扱い方は心得ています。しかし、それでもすべてを彼ら任せにはできません」

もしもワインを集荷するトラックの到着が遅れたら?トラックを待つ倉庫の人がワインを外に出して待っていたら、遅れが原因でワインが劣化してしまうかもしれません。彼女は英語や、ときにフランス語で事細かに指示を出します。

鈴木 「もちろん現地の業者さんは一生懸命やってくれています。
でも、日本とヨーロッパでは管理の細やかさに違いがあるのです。そこで、現地の天気予報を見て天候や気温をチェックし、リーファートラックを何度に設定するのか、到着する倉庫に空きがあるのかなどを事前に確認し合います。業者さんが『もう、わかったよ!』と言うまでしつこく確認を取ることがあるので、私はフランスでは相当口うるさい人物だと思われているはずです(苦笑)」

わずかな違いも見逃さない……検品に経験のすべてを注ぎ込む

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▲高い集中力が求められる検品作業。わずかな違和感も敏感に察知する

さらには、日本到着後の「検品」も重要です。これを担当するのはフィラディスの倉庫スタッフのリーダーであり、セラーマスターの加藤邦寿。当社が誇るワインの検品のスペシャリストです。

加藤 「信頼できる現地のサプライヤーから買い付け、細かい指示を出して日本まで輸送してきてもなお、ごくわずかですがコンディションに問題のあるものや、偽物の疑いのあるものが出てきてしまいます」

当社はファインワインの輸入量日本一で、その数は年間7万本におよびます。そして加藤は、自分の経験のすべてを生かし、1本1本丁寧にチェックします。連載第3回でも言及しましたが、たとえばコルクとボトルの隙間から液漏れしていたら、“ワインが高温に晒された”ことを意味するので論外です。熟成された年数の割にワインが減りすぎている場合は、保管状態に問題があった可能性があります。これらを丁寧に確認していくのです。

加藤 「多くのワインに触れているからこそ身に付いた、感覚的な要素も大切にしています。見た瞬間違和感があって、その違和感がなんなのかを考えていくと “このワインはラベル表面がこんなにテカテカしていたか? ” “ボトルの色は一緒だが形状が若干いつもより太くないか? ”といったことに気付くことがあるんです。そういう場合は必ず、サプライヤーへ確認することを徹底しています」

サプライヤーに連絡を取ると、たいていは「この年からラベルを変えたんだよ」といった回答がありますが、“間違った品ではない”という確証を得るまでは、お客様のもとにワインを届けるわけにはいかないのです。

ワインをリスペクトする姿勢が生んだ、フォワーダーの人たちの変化

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▲最高のワインを、最高のコンディションでお客様に飲んでいただくための努力は惜しまない

このように鈴木は粘り強い交渉力、加藤は高い集中力を必要とする業務を行っており、「仕事が終わると力が抜けてしまう(加藤)」ほど精神力を酷使すると言います。しかし、ふたりは「やっぱりワインが好きだから、毎日の仕事を楽しめている」とも話します。

加藤 「私は、代表の石田がワインについて熱弁している Webサイトを見て、日本酒を扱う会社から転職してきました。そして入社後、強いこだわりを持って自分たちが取り扱うワインを選び抜く企業姿勢に、深い愛着を持ちました。
私はときに、1日 1,500本ほどの検品を行います。倉庫内は 13°~ 15°と低温で、検品中はほぼ体を動かさないため、夏でも凍えるほどです。
でも、営業がお客様に “徹底的な検品も当社の強みです ”と話してくれた、さらには私に “この検品があるからこそ、古いワインも安心して提案できる ”と言ってくれた……。そんな瞬間にすべてが報われるのです。古酒の魅力をさらに多くの人が楽しんでくださるようになれば嬉しいですね」

輸送を統括する鈴木も口をそろえます。

鈴木 「実はもっと細かい指示も出すんです。たとえば、ワインが輸送時になるべく揺れないように、といったことも言います。ワインは熟成によって水の分子とアルコールの分子が結合して滑らかな舌触りになります。その分子たちが輸送時の揺れによって離れてしまう、ということが起こらないようにしたいのです。そこで “緩衝材をこう使い、コンテナのここに積み ”などあれこれ指示を出すのですが……」

最近、そう話す彼女の周りではおもしろいことが起きているようなのです。彼女は「フォワーダーの人たちもフィラディスの想いを理解してくれるようになってきている」と話します。

鈴木 「実は常々、フォワーダーの方々に “私たちフィラディスは必ず成長し、日本のファインワインのリーディングカンパニーになる ”と伝え続けてきたのです。そして実際に、取扱数量もどんどん増えています。そんな長年の関係から、彼らの中に “日本のフィラディスという会社は真剣だ ” “あのワインを心からリスペクトする姿勢は見習うべきだ ”と共感してくださる人が増えているようなんです」

ふたりに共通するのは、仕事に対し徹底して妥協しない姿勢。

──そんな姿勢がフォワーダーの方々に伝わり、想いが届いたのでしょう。

ファインワインが最良の保管状態で時を送ると花束のような香りを放つことと同様に、ビジネスでも“想い”が熟成して花開く瞬間があるのかもしれません。

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