大切なのは「自分の言葉で語ること」。成長の原点は、社員のワインとの向き合い方にある

私たち「フィラディス(Firadis)」のお客様は、ワインに関する深い見識をお持ちの方ばかり。だからこそ我々にはワインへの情熱だけでなく、お客様から信頼いただけるだけの知識・経験が必要。そのために、社員全員が普段から続けている努力があります。それは“本物”と“現場”を知ることです。
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ソムリエの資格を取ることはスタート地点でしかない!

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▲資格取得は奥深いワインの世界の入り口でしかない。その後の切磋琢磨が大切

ソムリエという職業は19世紀のパリで成立した、といわれています。当時、ワインはレストランのカーヴ(地下貯蔵庫)で、樽に入れられた状態で保管されることがほとんどでした。

この樽入りのワインを瓶に詰めていた人物がお客様のワイン選びに関してアドバイスを行ったことから「ソムリエがいるレストラン」が誕生し、時を経てフランスの国家資格になっていきました。

そしてこのソムリエ資格、実を言うと私たちフィラディスの社員は基本的にみんなが保有しています。なかには連載の第5回で紹介した鈴木幸恵のように、「ワイン好きが昂じてフランス語も習得した」といった人物もいるほどです。

ところが、我々フィラディスのなかではソムリエの資格を取得するということはやっとスタート地点に立ったという感覚。そもそも私たちがファインワインをご提案するお客様はレストランのソムリエの方々で、ワインのプロフェッショナルばかり。ワインの基本をマスターしているのは当然、それ以上の何かを期待されているのです。

そこで私たちは期待に応えるべく、全員で研さんを重ねていることがあります。

驚愕の実験結果!熟成させていない肉には意外なワインが合った!

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▲やるならとことんやるのがフィラディス流。実験終了後は全員クタクタです

そのひとつが、ワインと食材のマリアージュ実験です。たとえば「肉には赤ワイン」「魚には白ワイン」という皆さんもご存知の定石がありますが、これは本当でしょうか?

いえ、本当であろうがなかろうが、それを自分の言葉で表現できる者だけが人に伝える資格がある──我々はそんな思いでこの実験を行っています。

実験には膨大な時間と労力が費やされます。“味”は感じる人間によって差があるため、実験に際しては数十人の社員が集まります。そして15㎏にも及ぶ肉や50尾のオマールなど大量の食材を準備し、料理が得意な社員がキッチンスペースを借りて調理し、同時に比較のためにワイン数十種を用意する必要があるのです。

そして実験を行うと、たびたび驚くべき結果がもたらされます。我々がお送りしているニュースレターの「フィラディス実験シリーズ」のなかに『熟成肉にマリアージュするワインとは?!』というものがあります。フレッシュな肉と、近年よく耳にする「熟成肉」にさまざまなワインに合わせてみると、いわゆる“定石”とは異なった結果が出たのです。

まず、熟成肉はそれ単体で味わってもフレッシュな肉に比べ風味と旨みが凝縮され、甘みも強く、世の中でもてはやされているのも納得です。

私たちはマリアージュの理論に従って、「五味(酸味・甘味・塩味・苦味・旨味)のマリアージュ」(ワインと料理が五味をバランス良く補完するか)、「風味のマリアージュ」(料理とワインの味のなかでもメインとなるフレーバーが同調するか)、といったポイントを一つひとつチェックしていきます。

すると、やはり一般常識とは一部異なる結果が出たのです。一般に「ステーキには強い樽香の効いたワインが合う」とされていますが、フレッシュな肉に樽香が強いワインや個性的な香りが強いワインを合わせると、肉の味を消し去ってしまいました。

最も合うとされたのは、イタリアの品種「Ribolla Gialla(リボッラ・ジャッラ)」の白ワインでした。このワインは香りの要素が強過ぎないので、肉本来が持つフレーバーが生かされ、またフレッシュ肉の特徴であるオイリーさとテリにこのワインの質感がぴったりと合ったのです。

他方、この肉に定石といわれるフレーバーやタンニンの強い赤ワインを合わせると、ワインが肉に勝ってしまって各要素が絡み合いませんでした。(熟成肉にはイメージ通り、各要素が強い赤が合いました)

トップソムリエの信頼を得るためには“定石”や“他人の言葉”は必要ない

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▲自分の言葉でそのワインの魅力や可能性をお伝えし、それが伝わった時は素直にうれしい

実験は肉だけでなく、魚介類でも行われています。白身の魚のソテーやムニエルはあっさりしていて、定石通り赤ワインは合いませんでした。ところが、まぐろやかつおなど風味の強い赤身の魚には赤ワインが合い、白身魚も照り焼きなど強いフレーバーを加えると赤ワインがマリアージュしたのです。

そして、これら実験の結果はニュースレターに掲載し、お客様の元に届けていますが、実はこの実験自体がソムリエさんからの信頼強化に役立ってもいるのです。

こういった実験を繰り返して経験値をあげると、お客様と会話をする時に自分の経験から得た思いを込めて語れるようになるのです。

たとえばすばらしいファインワインには、それだけで完成された“世界観”があります。要するにマリアージュする料理がなくとも、ワインだけで充分楽しめるのです。

一方クオリティーワインは、ワインだけではそこまでの世界を表現するには至りませんが、ベストマッチの料理と一緒に味わうことで感動的な一杯になる可能性を秘めています。

そしてこのように、ワインの可能性を自身の体験をもとに語れるようになることこそが我々にとって大きいのです。なぜなら、こんな自分の“思い”を語ることこそが、私たちフィラディスの社員に求められている「知識だけではない何か」だから。

連載第4回でお伝えしたように、輸入するワインも全員で試飲して決めているからこそ、我々は自分の言葉でそのワインの魅力を話すことができます。

さらには実際にマリアージュ実験を繰り返しているからこそ、自信を持って「このワインはお客様のお店のこんな料理に合いますよ」と勧められるのです。

しかも、我々の“プラスアルファ”はこれにとどまりません。実は、研修を兼ねて高級レストランで食事会も行っているのです。世の中には、いわゆる星付きレストランなど、相応の機会がなければ訪ねることはないお店があります。私たちは年に一度これらの高級店を訪ね、実際にその緊張感を味わっているのです。

独創的なマリアージュから、各自が学ぶこと

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▲すばらしいサービスを受けた経験をしっかりと自分に落とし込んで、その後の仕事に生かします

たまに「その研修、うらやましいですね」と言われますが、雰囲気はまさか、遊びではありません。我々が訪れるお店は、洋館を改装した内装に、磨かれて光沢を放つ銀の食器といった世界観です。

しかも食事会には、我々が魂を込めてインポートしたワインがこの場でどう提供されているのか現場を知る、といった重要なミッションがあります。

当日は、普段はお客様であるトップソムリエが我々をもてなしてくださいます。そして、ワインは我々が輸入したものに限定せずに、そのお店のコース料理に合わせて一皿ごとに違うものをチョイスしていただきます。

この料理とワインの提供の仕方はペアリングと呼ばれ、最近は多くの高級店で用意されています。そして、これが我々に素晴らしい体験をもたらしてくれるのです。

確かに「あっさりした料理には白」といった合わせ方の基本は存在します。でも、たとえば柚子の香りがする和食のあんかけのお椀に柑橘の香りのワインを合わせるフレーバーのマリアージュもあります。

また、柚子のお椀を少し淡白に、でもお塩強めにつくって、甘みとコクが強いワインで補完してもいい──こんな風に同じ料理でもソムリエさんによってマリアージュの発想はさまざま。しかしさすがトップソムリエの方々。どのペアリングもマリアージュの完成度が高く、私たちを魅了してくれるのです。

そして、私たちは各自が「あの料理にあのブドウ品種をあてるとは思わなかったなぁ」「あの組み合わせは王道なんだけど、そのなかでも〇〇年のヴィンテージを持ってくるというところが絶妙だったよね」などと感想を抱いて家路につきます。

もちろん、この時に生まれた言葉や、味わった高級店ならではの緊張感こそが、普段の商談で「必要とされる以上のもの」の原型になっているのです。

こうした高級店ならではのおもてなし、すばらしい料理とワインの体験は、ときに研修だということを忘れて、我々を酔わせてしまうのですが……(笑)。

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