お客様の“選びやすさ”を重視した結果、商品数がたったの30点に!?

▲取り扱いワインは本当に30種類のみ。それでもお客様から支持される理由は、このサイトにはワイン選びの楽しみが詰まっているから

ECサイトの基本は、商品点数を増やしてあらゆるニーズに対応することにあります。なぜなら実店舗と違って「棚の大きさ」という制限がないからです。ただし、フィラディスのECサイトはその逆を行っているのだと、ECサイトの責任者・五十嵐 祐介は語ります。

五十嵐 「通常とは逆に、商品点数を少なくしているんです。『Firadis WINE CLUB30』といって、おすすめのワインを常時、30本にまで絞っています。これは他の酒屋さんやECサイトに比べて非常に少ない数です」

販売しているのは「クオリティーワイン」。──欧州のスーパーの店頭には、普段の食事とともに楽しめるようなリーズナブルな価格帯で、驚くほど高品質でおいしいワインが並んでいます。われわれは世界中を飛び回って、そのような消費者の方々が普段から楽んでいただけるワインを探しあて、販売しているのです。

五十嵐 「中でも『Firadis WINE CLUB30』で販売する30本を選ぶ基準は“すべてを網羅すること ”です。主要な産地や品種をおさえ、同時にエレガントな赤ワイン、がっしりした赤ワインなど、おさえておくべき味わいのバリエーションを網羅しました。

“この30本があれば、ほぼどんなシーンにも対応できますよ ”と言えるラインナップです。実は、お客様にとって大切な“選びやすさ”を重視したらこの形になったんですよ」

ECショップのスタートは2015年のこと。当初はお客様に何が求められているかもわからず、実際に買ってくださるのは五十嵐の友達中心、という状況でした。では、このサイトが年商1億円を突破するほどの成長を見せるまでには何があったのでしょうか?

ありきたりな「勝ちパターン」を選ばなかった勇気と自信

▲五十嵐のたったひとりでスタートしたサイトだが、今はチームメンバーも増え、日々アイデアを出し合っている(写真右が五十嵐)

五十嵐はもともと、大手ビールメーカーの営業職からキャリアをスタートさせている。その後、その会社のマーケティングの部署でも活躍していたが、彼もフィラディスの他の社員と同様ワインの奥深さに魅了され、2014年にフィラディスに入社しました。

五十嵐 「それまでフィラディスのメインビジネスは BtoB事業でした。しかし消費者の行動パターンが変わりつつあり、ホームパーティでワインを持ち寄ったり、夜にひとりでグラスを傾けたりと、気軽に家で楽しむ機会が増えていました。

そこでフィラディスはEC事業への進出を考えていたんですね。“クオリティーワインを消費者に直接販売するため、EC事業をゼロから立ち上げられる人を探している”と代表石田から打ち明けられました。

実は私もECサイトの立ち上げは未経験だったんです。でも “おもしろそうだ! ”と感じて転職を決めました」

とはいえワインの通販の市場にも当然、先行する他社が市場を占めており、それに対して優位に立つことはとても難しいことです。しかし、彼はワインの通販の市場を分析し、こんな感想を抱きました。

五十嵐 「直感的にですが“食い込む余地はある”と感じました。正直に言うと、ワイン通販サイトはどれも同じように見えたんです」

五十嵐が気付いたのは“ワインの選びにくさ”でした。

五十嵐 「ワインは非常に多くの銘柄が存在します。そのためワイン通販サイトの多くは、なるべくショプ内のラインナップを増やそうとめいっぱい商品を並べ、それぞれに詳しい説明文を載せていました。

そうなると、今度はよほどワインに興味が高いお客様以外は説明文を読むことを諦めてしまう。だから、買ってもらいやすいように『10本まとめていくら』といった形で販売していたんです。

でもそれってちゃんと商品を理解してお客様自身がワインを選んで買っているわけではないですよね。せっかく他のどの飲みものよりも選びがいのあるワインを飲んでいただくのにもったいないよな、と思ったんです」

ECサイトの“勝ちのセオリー”を追求した末にこうなったものかもしれません。ECサイトは変更が容易です。さまざまなサイトがさまざまな売り方を試し、一番効率的に売れるやり方が『10本まとめていくら』だったのでしょう。

しかし、五十嵐は勇気を持って、この洗練された勝ちパターンに立ち向かいます。

五十嵐は“お客様がワインを選びやすい”売り方とは何なのかを追求しました。そして、“フィラディスの世界観”にヒントを見いだします。

着想を得たのは、社長・石田 大八朗の「日本に成熟したワイン文化を根付かせたい」という思想。一方、ワインが好きな方、お酒が好きな方の中には「もっとワインを詳しく知りたい」「ワインを通して特別な体験をしたい」といった知的好奇心をお持ちの方々も多いはず。思想と需要がうまくかみ合うのではないかと感じたのです。

お客様の求める情報を、より高密度で発信する

▲1本1本に味わいチャートとマリアージュレシピを掲載。ワインに詳しくなくても楽しくワインが選べる工夫が随所に散りばめられている

情報の質を高めるために、まず商品数を絞りました。さまざまな銘柄を取り扱いたいのは五十嵐にとってもやまやま。しかし主要な品種、産地、味のバリエーションを網羅し、キャラクターが重なるものはフィラディスが本当におすすめしたい1本に厳選したのです。

また、価格帯に関しても狙いを定めました。数百円のワインを楽しむ方は、あまりワインへの関心は高くないはず。逆に高すぎると敷居が高くなってお客様に敬遠されかねません。そこで価格帯を1000~3000円に定めました。

そしてもちろん、まとめ売りはしません。今までのサイトが「わからないなりに楽しんでください」なら、フィラディスのサイトは「ここを理解すると楽しめますよ」と、お客様と共に歩んでいくサイトであるべきだからです。

五十嵐 「出発点がワインの魅力をしっかり伝えるところにあったので、本数は少ないものの、1本 1本に対する情報はリッチにしていく必要がありました。

たとえば有名なワインテイスターの説明を掲載したり、白ワインなら、ドライなのかフルーティなのかチャートをつくったり……。

あとはお客様がそのワインを楽しめる情報も掲載しました。1本1本のワインにあうレシピを開発してご紹介したり、現地の方はこんな料理に合わせていますよ、とお伝えしたり……」

最初のお客様は、五十嵐がネット広告の戦略をイチから学びながら出した広告をご覧になった方たち、あとはワインのボトルに貼ってある「輸入・販売 フィラディス」のラベルに興味を持って検索してくださった方、あとは五十嵐の知人でした。

しかし、2015年6月に立ち上げたサイトは、12月になっても売り上げは月間100万円程度しかあげられません。五十嵐は今後の展開に悩みましたが、ある施策が大きな転機になったのです。

ある施策──それは、彼がメールマガジンを書き始めたことでした。

当時、『Firadis WINE CLUB30』の登録会員数はわずか数百人。しかし彼は、その数百人に読んでもらうべく自分の手でコツコツとコンテンツをつくり始めたのです。

五十嵐 「メールマガジンを始めた当初は、実を言うと定石通り、セールや新入荷のワインの情報をご紹介していたんです。しかし、読者はそんなメールには反応しなかったんですね」

ネットでのコミュニケーションはチラっと見て興味がないと思われてしまえばその時点で終わってしまいます。右上の×ボタンを押せば、コミュニケーションの機会を破棄することができてしまうので、face to faceのコミュニケーションより受け手の関心を引く必要性が高いのです。

読者は本当に自分たちの役に立つ情報が知りたい。それを敏感に感じ取った五十嵐はアプローチの仕方を変えました。

「フィラディスらしい」売り方が、ファンに愛される秘訣

▲開催するイベントはいつも盛況。顔なじみのお客様も増え、ECサイトでありながらお客様との深いつながりを感じられるのがやりがいだと五十嵐は言う
五十嵐 「たとえば“ワインに入っている「酸化防止剤」は危険な添加物なのか?”、“飲み残した宵越しのワインはマズくなる?”といった知的好奇心をくすぐる記事を書くように意識しました。

すると……読者が飛躍的に増えてきたんです。ありきたりではなく、お客様が本当に知りたい、役に立つ情報を発信し続けたことで、信頼できるショップとしてわれわれのサイトを選んでくださるようになったのだと思います」

それは「ファン」の誕生でした。ネットの世界では、購入するショップは好きなだけ選べます。家からの距離も立地も関係ありませんから。では何を基準に選ぶのか。もちろん価格、取り扱い商品もありますが、「お店への信頼度」は大きな判断要素なのです。

五十嵐はすぐ、ファンとの関係強化をはかるためにイベントや試飲会を開催し、その模様もメールマガジンで報告していくようになりました。するとファンがフィラディスを友達に紹介してくれるなどし、その後、『Firadis WINE CLUB30』は順調に成長を遂げていきます。

五十嵐はあえて他のECサイトと同じ売り方をせず、「フィラディスらしい」売り方を地道に続けました。その結果、フィラディスらしさをご理解くださるお客様がリピーターになってくださったのです。

まさに、ワインに対する好奇心と知識のマリアージュ!


五十嵐 「嬉しいのは、会社で電話をとって『フィラディスの五十嵐です』と名乗った時、『もしかしてあの五十嵐さんですか!?』と言われる機会が増えたことです。ネットは、ダイレクトに反応が返ってくるからおもしろいですよね。

よく『バックナンバーがほしい』とか『ずっととってありますよ』といったお声をいただくこともあります。皆さんがお持ちのワインに対する好奇心と知識のマリアージュが、お客様からの反響と数字という形で結実したんです。これほど嬉しいことはありません」

お客様からの反響を力に、五十嵐もさらにメルマガの筆が進むはず。

ちなみに、五十嵐のメールマガジンの登録はこちら
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ワイン1本1本と、そしてお客様一人ひとりと向き合うECサイト『Firadis WINE CLUB30』。これからもワインの魅力と楽しさを伝え続けていきます。