3社目への希望──求めたものは“無”

▲2社目のプレスリリース配信会社での表彰

ファーストペンギン社に入社して5年が経つ神尾。彼女の社会人スタートはPR代理店での営業だった。乳製品や化粧品のPR担当として、朝から晩まで媒体社を駆けずり回っていた。しかし、2008年、世界的な金融危機いわゆるリーマン・ショックが日本を襲う。

これまでの華やいだ毎日は一変し、大手企業は軒並み広告宣伝費を削減。PR業界全体が、明日をも知れぬ不況に陥る。それでもなんとか倒産は免れたが、神尾自身は入社3年目で激務がたたり体調を崩し、退職を余儀なくされた。

次は安定した働き方をしたいと思い、プレスリリース配信代行会社のサポートの仕事へと転職した。サイトユーザーからの問い合わせ対応や配信されるコンテンツの審査などをメイン業務として行い、4年働いたのちに退職。神尾は当時を振り返りながら、その会社の退職した理由をこう語る。

神尾 「当時働いていた会社の社長に『ジョブローテーション』を持ち掛けられたんです。今まで 4年間同じ部署・チームで頑張り、それなりの実績を出してきたのにその話を聞いたときに『またイチから仕事を覚えるのか、めんどくさいな」と感じてしまって。
そのとき初めて、自分は成長意欲を失っているんだと気付きました。それだったら、転職機会のあるうちに新しい環境に飛び込むのもひとつだと感じて転職を決心しましたね」

3社目に求めていたモノは“無”だったという。

神尾 「これまで 2社経験した中で、 “こんな会社で ” “こういう人たちと ” “こんな仕事がしたい ” そういう理想や期待みたいなものがなくなったんです。それなりの会社で、それなりの仕事ができればいいやと思って転職活動をしていました」

業界はITで、できれば自社サービスを運営している会社がいいな、サポートの経験を活かせる職種がいいな……と、軽い気持ちで転職活動をしていた神尾。当社の内定が決まった際も「内定が出た!やった!」と喜んだ記憶はなかったと話す。

3社目となる当社には、新規事業部のアシスタントで入社したものの、実際には兼任で人事総務業務も行うこととなった。入社前に理想やイメージを何も持たなかったからこそ、「こんな感じか」と可もなく不可もない気持ちのまま月日を過ごしていった。

働く中で気が付いた自分の気持ち

▲社員総会での決意表明の1枚

半年たったころ、人事異動の打診を受けた。それは、今まで“兼務”という立場で携わっていた人事総務に正式に異動しないか、というもの。

もともとは前職でのITリテラシーやサポート経験を買われ新規事業部のアシスタントとして採用されていた。しかし、神尾は人事総務の道を選ぶ。自身の中で迷うものもあったが、彼女の中で芽生え始めていた“おもしろい”という気持ちの表れだった。

神尾 「新規事業部のアシスタントがメインで、あくまで人事総務業はサブみたいな感じだったのに、いつの間にか『管理側の業務も自分に合っているな』と思うようになっていたんです。
それは当時の上司も同じだったみたいで、『神尾は人事総務に向いていると思う』と言ってくれて。新規事業部の皆さんにもお世話になった手前、悩みに悩んだのですが、結局異動を決めました」

自分の感じたこと、そして上司の感じたこと、そこがマッチしたことが、人事総務を選ぶ後押しになった。

神尾 「どちらの部署にするか岐路に立たされたときに、『人事総務はどこの業界・どこの会社でも必要とされる職種だし、知見を持っていて損はない』と感じたのも異動を決めた理由です。
営業みたいに表には立たないけど、自分が黒子的に動くことによって、社員が気持ちよく働けたり、いい人が採用できたり……。今までは対外的な顧客に接する仕事をしていたけど、『こういう仕事でも会社の役に立てるんだ、この仕事おもしろいな』って思いました」

こうしてバックオフィスでの仕事の楽しさやおもしろみを知ったことにより、神尾の中に“仕事に対する想い”が徐々に戻り始めていった。

イチからつくることの難しさと再び灯った情熱

▲2016年新卒内定式での1枚

人事総務の仕事における“顧客”とは誰か。バックオフィスの面白みを知る反面、葛藤もあったという。

神尾 「人事総務だけで完結できる仕事って本当に少ないんです。何をするにしてもどこかの部署との連携が必要になるので、わかりあって協力しあっていかなくちゃいけません。だけど理解が得られないときは葛藤しましたね、わかってもらうにはどうしたらいいかとか」

そんな葛藤の中で、自分なりに「顧客満足」を追求したエピソードがある。2016年度の新卒採用だ。

2015年までは毎年同じような採用活動をし、同じような内定式を行ってきたが、2016年度からはコンセプトをガラリと変えた。ファーストペンギンでも新卒採用が定着してきた中での変更だった。当時、人事総務に配属になって半年ほどだった神尾は、内定証書授与式の企画立案からコンテンツの作成までを行う。

神尾 「今までとは違う学生を採用していこうとなっていたので、だったら内定式も今まで通りじゃダメだ、おもしろくないと思ったんです。採用活動自体は順調で、いい学生たちが揃った自信はあったので、どうにかして個性豊かなこの子たちを社員にアピールして歓迎ムードを作りたい。そう考えて、内定通知を渡すシーンをビデオカメラで撮影して、その動画にテロップや BGMを加えて内定者紹介動画に仕上げて、式で流すことにしました。
このアイデア自体は当時の上司が出したものでしたが、そのイメージを形にするために、プロが使うような動画編集ソフトの使い方を独学で勉強して、 BGMとテロップのタイミングを 0.1秒単位で調整して…...。やっぱり 1を 10にするよりも 0から 1を生み出す方が難しいじゃないですか……。本当に、めちゃくちゃ大変でした(笑)」

もちろん企画準備などすべてを神尾ひとりで行ったわけではない。たくさんの人の支えがあった。企画した内定式は今でも賛否両論あると思う、と話す。

神尾 「でも、すべてが終わったあとにとある社員から「とてもいい内定式だった」と言われたとき、今までは単純に『確実な仕事で社員を支える』だけだった感情から、『バックオフィスの仕事だって自分のやり方次第でいくらでも変えられるんだ』という感情に変化していたことに気づいたんですよね。仕事に対する情熱や責任が生まれた貴重な経験でした」

例年通り、と会社の文化を継承することももちろん大事。だが変えていく、挑戦するという事も大事だし、挑戦したから得られることもたくさんある──そんな学びをもたらした出来事となった。

情熱の灯を取り戻した神尾が描く未来

▲挑戦することの大切さを忘れずに
神尾 「人事総務の仕事って、定型的な仕事だとか、保守的な部署だとか、地味にみられることが多いと思うんです。でも、人を扱う仕事なので、何が正解で何が間違いなのか、答えがないんですよね。
無限にいろんなことを考えれて、やり方次第で実現できることもものすごく多い。だからこそ、おもしろいし、部のメンバーには常識や固定観念にとらわれず、チャレンジを恐れない姿勢を大事にしてほしいと伝えています。バックオフィスだってファーストペンギンですから(笑)」

人事総務だからこそできることがたくさんあり、守るだけでなく挑戦していくことも大事。今の彼女ははっきりとそう話す。最後に彼女は自らのこれからの展望について語った。

神尾 「今後は、今働いている社員の能力を最大限に発揮できる環境づくりをしていきたいですね。この会社は中途入社者も多く、本当に十人十色のバックグラウンドを持っているので、それぞれの経験やスキルなんかを横展開していい刺激を与えあって……。そして、それを正しく還元できる。そんな組織にしていきたいです。
まあ、まだ『こうしたいな~』という想いだけで具体的な案は見つけられていないんですけどね(笑) 」

“それなりの仕事ができればいい”、会社や仕事に期待を抱いていなかった彼女は今、会社と社員のより輝く未来をつくるために常に前を見て歩き続けていた。

再びついた彼女の灯は簡単には消えず、部下、チーム、会社全体へと灯りをともすだろう。



■株式会社ファーストペンギン
HP:https://first-penguin.co.jp/
リクルートサイト:https://first-penguin.co.jp/recruit