スマホケースを追い求めてアメリカへーーすべては「一歩踏み出す勇気」から生まれた

スマートフォンケースなど、国内外のブランドを取り扱うFOXのビジネスは、輸入販売代理業にとどまらない。目標とするのは「良質なプロダクトやサービスのプラットフォームになること」。創業当時から一貫して変わらない「行動力」と「先見性」を武器に闘ってきたその歩みを、代表取締役で創業者の五十畑理央が語る。
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ただスマホケースを求めるために、海を渡る

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▲五十畑とメーカー開発者の出会い

失敗を恐れず行動する。これは今でもFOXの行動指針になっている。常に一歩を踏み出し、その“一歩”からこの会社ははじまった。

“安全・安心”と評判を呼ぶ防水・防塵・防雪・耐衝撃ケース「LIFEPROOF」、ファンに根強い人気を誇るスマートフォン「BlackBerry」、AR技術を活用した“動く写真”が印刷できるモバイルプリンター「Lifeprint」……FOXはこれら国内外の良質なプロダクトを軸に、ユーザーにメリットのある日本独自のサービス創出から、パートナー企業の価値を高めるサポートに至るまで、トータルでブランディングを担っている。

たとえば、ある企業がすぐれたプロダクトを開発した。でも「プロダクトを育てる」という力に長けていない場合。こういう時、FOXは開発企業に対して多角的なソリューションを提供し、大手携帯キャリアや家電量販店、雑貨店といったさまざまな販売チャネルから最適な販路を選ぶなど、プロダクトのプロデュースを推し進める。

創業のきっかけは、2010年。私は、もともとデジタルガジェットが大好きで、なかでも携帯電話には目がなかった。iPhone 3Gを手にした時に衝撃を受け、新時代の到来を感じた。つづくiPhone 4でその感覚は確信へ変わった。当時は満足のいくスマホケースは国内にはほとんどなかったけれど、海外のウェブサイトではさまざまな種類が売られていたし、ワクワクするものもたくさんあった。

そのなかで、2018年現在もお取り引きのある「ELEMENTCASE」をアメリカで見つけた。

「ELEMENTCASE」は、現地でも入手が難しい人気のアイテムで、日本のネットオークションでは70ドルのケースに3倍以上の値段が付いていた。しかし私は、居ても立っても居られなくなり買ってみた。実物を手にして、「すごい!どんな人が開発したのか、どのようにつくっているのか?」と思い、すぐにサンフランシスコへ飛んだ。

私は「ELEMENTCASE」に対して日本での可能性を説き、その場で日本における販売権を取り付けた。それも独占契約。独占契約を選んだのは市場価格に左右されず、ブランディングに注力できるからだ。

プロダクトひとつずつと向き合い、本当の良さを伝え、価値を高める。現在のFOXにもつながるスタンスの基礎は、この契約からはじまった。

FOXの原点「タッチ&トライ型店舗」はユーザー至上主義からたどり着いた

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▲「タッチ&トライ型店舗」caseplay 秋葉原

帰国後、私は個人事業として「ELEMENTCASE」を販売するウェブサイトを立ち上げた。日本市場に例のない高級ケースは人々の好奇心をそそり、売れ行きも好調。

そこで、もっと多くの人に共感してもらうためには、タッチ&トライが必要不可欠だと考えた私は、事業を法人化し、デジタルガジェット好きの人々が集まる街「秋葉原」のメインストリートに実店舗をオープンさせた(※2018年2月現在は閉店)。

そして、次なる可能性を秘めたプロダクトを探しはじめた。そんな時、インターネットで出会ったのが防水・防塵・防雪・耐衝撃をうたうスマートフォンケース「LIFEPROOF」。私はまたもすぐに、そのメーカーの拠点であるサンディエゴへ渡った。わざわざアメリカまで来た日本人に、開発者は大きな驚きを感じたようだった。熱意を伝え、独占契約を結ぶ約束をした。

当時、日本市場には「LIFEPROOF」の類似商品はなかった。私は「LIFEPROOF」最大のセールスポイントである“防水性能”を分かりやすく訴求したかった。今考えると少々大胆だったかもしれないが、「ケースを装着した端末を水槽に入れて実際に動かす」という商品ディスプレイを展開。

それによって多くの人の関心を集めることができ、売れ行きも順調に伸びていった。と、同時にある矛盾にぶつかった。「水没してしまったらどうする?」といったユーザーの声も徐々に聞こえてくるようにもなったのだ。

私は、この大きな壁を乗り越えなければならなかった。メーカーサイドは「絶対に水没しない」と言う。過去にある防水をうたう商品もみんな同じ。

でも私は、ユーザーの矛盾を取り除いたこの先に、今までにはない世界があると思った。メーカーもユーザーも納得することは何なのか……。そして、ある“答え”にたどり着いた。それは、「水没の際は、ケースだけでなく、本体も補償する」ということ。

そこで、保険会社と組んで、水没補償の保険商品を開発することにした。会員登録は必要だが、無料で受けることができるこの水没補償サービスは、ユーザーにも受け入れてもらい、「LIFEPROOF」は安心・安全なケースとして認知してもらえるようになった。これは日本独自のサービスとなり、LIFEPROOFのCEOであるゲイリー・レーナー氏からも賞賛してもらった。

当時は珍しい「スマートフォンアクセサリ専門企業」としてデジタル機器関連の展示会に出展したことも功を奏し、大手家電量販店や携帯キャリアをはじめとするさまざまな販売チャネルから引き合いをもらうまでに成長。販売数も順調に伸び、まさに順風満帆だった。

けれど、ここでまた大きな壁にぶち当たった。

根幹を揺るがす問題がきっかけで原点に立ち返る

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▲FOXが取り扱う商品群

それは、ある取引先が過剰在庫を期末に大量処分したことに端を発した。そのなかにFOXの商品も多く含まれていたようで、「買い過ぎと売り過ぎ」の関係性になってしまった。

それはFOXにとって「短期的な売上獲得による翌年のマーケットシェア低下」という懸念もあった。それ以上に私たちが危惧したのは、“商品価値”の低下。商品価値は、FOXが大切にしてきたものだったからだ。

ところが、これをきっかけに、独占契約による市場価値の確保やブランディングといった、FOX流の育て方の原点にあらためて立ち返ることができた。

決して“売りすぎない”ことーー。

どう戦略的に販路を削ぎ落として、商品価値の向上を図っていくのか。FOXはあらためて「マーケティング先行のスモールスタート」でブランドを育てることに注力した。

たとえば、家電量販店に並ぶ大量のスマホケース。メーカーはどれだけ新しく優れたものをつくったとしても、ユーザーからすれば「ひとつのケース」でしかない。その前提に立って、マーケティングを先行して市場から欲されるようになってから、徐々に販売数を増やしていこうと思っている。

企業経営の観点からすれば、販売数を制限することは矛盾をはらむ営みであることは分かっている。それでも、メーカーにとってもFOXにとっても、商品価値を低下させるわけにはいかない。これは「FOXの根幹」として、今でも粘り強く取り組んでいる。

もうひとつ「FOXの根幹」とするものがある。それは、「ひとつの商品に固執しないこと」。

今やFOXが取り扱う商品は、スマートフォン関連アイテムだけではなくなっている。革製品、マイクやイヤホンなどの音響機器、ウェアラブルデバイスやIoTデバイス……あらゆるジャンルの良質なプロダクトを、ユーザーにとってのメリットは何か、という視点で厳選している。これは次世代のFOXを語るうえで欠かせないものだ。

その発想を支えるのは「FOXはまずプラットフォームであるべき」という考え方。海外発のプロダクトの日本展開、あるいは日本発のものの展開も含め、あらゆるものの入り口になろうというビジョンがある。

異業種へのアプローチで、新時代のプラットフォームを目指す

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▲2018年現在の有楽町オフィス

そのビジョンは、現在のオフィスを有楽町に構えていることにもつながっている。特に有効なのが「異業種へのアプローチ」だ。

以前、秋葉原に実店舗を設けたのは、ガジェット好きや外国人観光客が集まっていたし、スマートフォン関連商品が秋葉原という街との親和性が高く、海外メーカーへアピールするうえでわかりやすかったからだ。

一方で、2018年現在のFOXの多品種プロダクトの展開を推し進めるとなると、特に注力しているファッション領域のことを考慮すると、それらブランドと秋葉原の親和性は途端に弱くなる。

「有楽町」を選んだのは、単に日本随一のファッション発信地である銀座と一体化している街だから、というわけではない。さまざまなビジネスの拠点に隣接しているという点が、今後のビジネスを考えると非常に魅力的だった。商品だけでなくFOXという企業そのものの対外的なPRやブランディングの効果も期待したのだ。

今後FOXは、日本でも注目度が高まるIoTに尽力していくほか、2018年にはリアル店舗の展開もスタートする。さらに、これまでの事業ノウハウを生かし、シンガポールや韓国などアジアへのビジネス拡大を計画中だ。

そのためにも、FOXが「良質なプロダクトやサービスのプラットフォーム」になることで、世界中のメーカーから、「日本展開する際は、まずFOXに声をかけよう」と思われる存在になりたい。

やらないことで可能性が分からないよりも、やって失敗した方がいい。特に最近はそういう思いがどんどん強くなっている気がする。

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