「面倒くさい」になやむ人事労務の救世主! freee第二の主力プロダクトはこうして生まれた

クラウド会計ソフトで成功を収めているfreee。2017年8月には「人事労務 freee」もリリースされ、こちらも既に10万を超える事業所に採用されています。これにより、スモールビジネスの「お金」と「ヒト」両方を支えられる体制が整いました。しかし、freee二本目の柱ともいえるプロダクトが誕生する背景には、想定以上の苦労があったのです。
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大変なのが当たり前?――人事労務業務の“常識”を変える挑戦

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▲森大輔(写真左)と岡田悠(写真右)

freeeは、「スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできるよう」な社会を実現することをミッションに掲げています。その理念をもとに、最初に生まれたのが「クラウド会計ソフト freee」です。

しかし、中小企業の負担になっているのは会計業務だけではありません。 
毎月の給与計算、振込作業、マイナンバーや勤怠の管理、年末調整、窓口での手続き……。 
こういった人事労務関連の業務は複雑さを極めます。 

人手が足りない中小企業では、こういった業務に人員を割かれるのは大きな痛手ですが、全ての業務をひとつのシステムで管理できるような仕組みはありませんでした。 

実際、人事労務担当者が労務リスクの対応などの本来やりたい業務に時間を使えている企業はわずかに35%。50人~500名の企業の場合、平均すると3名の人員を割き、4つのシステムと紙の資料作成をしながら対応している、という状況だったのです。(※) 

freeeも、人事労務に苦労していた企業のうちのひとつ。2012年に社員2名からはじまり、5年を経て現在では450名以上にまで従業員数が増加しました。特に大変だったのは、1年で社員が30人から100人にまで膨らんだ2014年~2015年の頃です。 

実は、「人事労務 freee」誕生の影には、当時人事労務をひとりで担当した社員の“怒り”がありました。その社員は、現人事労務freeeのプロダクトマネージャーの岡田悠です。 

※ freeeが2017年2月に法人の人事労務業務担当者を対象に行ったインターネット調査より(サンプル数265) 

家業を手伝い、中小企業こそ “テクノロジーの力”が必要だと実感

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▲「人事労務 freee」のチームメンバー

岡田は大学卒業後に新卒で証券会社に入社し、投資銀行部門でM&AやIPOに関するアドバイザリー業務を担当しました。大規模な案件に携われる、やりがいある仕事です。

しかし、岡田はだんだんと自分が本当にやりたい仕事とは違うのではないか、と感じるようになっていきました。 

岡田 「僕が働いていたのは最低1,000億円以上のM&Aしかやらないような会社だったのですが、数字を見るととても大きな金額が動いているのに、自分自身はすごくそこから遠い場所にいるような感覚があったんです。“手触り感”がないというか……。次第に、エンドユーザーやクライアントを身近に感じられるような仕事をしたいと思うようになりました」 

入社1年目で退職し、その後はさまざまな知人の仕事や家業を手伝うようになった岡田。彼の実家はスモールビジネスを営んでおり、そこでは経理業務を担いました。 

岡田 「経理だけでも面倒くさい作業がたくさんあったんですが、人手が足りないので担当者を置くことができません。証券会社で働いていたときは高価な経費精算システムが導入されていましたが、当然そんな資金もない。お金がない中小企業だからこそ、テクノロジーで業務負担を軽減すべきだと実感したんです」 

負担を軽減してくれる便利なツールを探している過程で辿り着いたのが、「クラウド会計ソフト freee」でした。その便利さに救われ、プロダクトのファンになると同時に、freeeという会社の理念や目指している姿そのものに大きな魅力を感じるようになった岡田。 

自分の求めていたものがfreeeにあると感じ、2014年に30人目の社員として入社しました。未経験ながら、マーケティングを担当することになったのです。 

岡田 「ほとんどが開発メンバーというなかで、できることがマーケティングくらいしかなかったんですよね。『クラウド会計ソフト freee』や、『給与計算ソフト freee』という『人事労務 freee』のベータ版のベータ版のような初期のサービスのマーケティングを担当しました。その他にも、『経営ハッカー』というオウンドメディアの運営や広告運用、SEO対策、法人向けのマーケティングオートメーション(自動でマーケティング活動を行う仕組み)の運用担当など、幅広く色々やりました」 

しばらくすると、freeeでは会計ソフトに次ぐ新規の領域を伸ばしていこうというフェーズが訪れました。「給与計算ソフト freee」にも本格的に取り組んでいこうということになったのです。 

「まずは自分がやってみなくては」と決意した岡田は、マーケティングの仕事を続けながら人事労務の業務もはじめました。 

しかし、当時のfreeeには、人事労務に詳しい人間は皆無。専門書もあまり売っていない……。実際にやってみて初めて、人事労務の難しさと大変さを実感することになるのです。 

「大体間違ってる!」「誰にも相談できない……」人事労務担当者の悩み

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▲第2回 HRテクノロジー大賞の受賞式にて。「人事労務 freee」は優秀賞を受賞した

当時の「給与計算ソフト freee」は、2017年現在の「人事労務 freee」の100分の1程度の機能しかなく、多くの業務はExcelや紙の書類を使って行われていました。

各担当者が個別に作っていたExcelは、マクロを組むなど工夫されているがゆえにかえって拡張性がなく複雑。また、複数のファイルがあり、どれが最新なのかもわかりづらい混沌とした状態で引継がれました。 

人事労務の仕事がはじまると、とにかく岡田はてんてこ舞い。 

岡田 「マーケティング7割、人事労務3割くらいの割合で仕事をしていたのですが、給料日前は人事労務の仕事に追われていましたね。
人事労務の仕事はシーズナリティもあって、例えば年末調整の時期などは特に忙しくなります。従業員として年末調整をやったときも、扶養控除申告書とか『書くの面倒くさいな』と思っていましたが、担当者になるとその何倍も面倒くさい……!
紙を社員全員に回して、記入してもらったら回収しますが、まぁ大体間違っているんですよ(笑)。『間違ってますよ』って言いに行っても、打ち合わせなどに出ていて席にいない。個人情報だからデスクに放置するわけにもいかないので、様子を伺いながら渡しに行かなきゃいけないんです。
あと、人事労務関連の窓口はとにかく多い。区役所、労働基準監督署、税務署、健康保険組合、年金事務所、ハローワークなど……。同じ情報を何度も記入して別のところに提出しなければいけないので、それも大変でしたね」 

社員が100人程度になる頃まで岡田がひとりで人事労務業務を担っていましたが、社員が増えることで業務はさらに複雑化していきます。 

岡田 「急激に新入社員が増えると、あまりコミュニケーションをとる間もないまま業務上のやりとりが発生してしまいます。仲が良ければ軽くメールを入れておけば済むようなことでも、『はじめまして、〇〇チームの××と申します……』というカタいやり取りを大勢としなくてはいけないんです(笑)。
書類作成量も増え、たとえば源泉徴収票はひとりにつき4枚作る必要があるので、100人いればそれだけでも400枚作らなきゃいけない。
結婚をした、子どもが誕生した、といったライフイベントも当然増えますから、それによって扶養人数や給与計算が変わってきます。あとは、従業員が住んでいる市区町村の分だけ窓口も増えていきますね。封筒を作って仕分けて……という作業が発生し、どんどん業務が肥大化していきました」 

業務量は膨大でしたが、どれもこれも絶対に間違いがあってはいけない。そのため、確認フローも複雑になっていきました。 

アナログのやり取り、どんどん増えていく書類、窓口。できる限り業務の効率化を図りましたが、人事労務業務は非効率なことの連続です。おまけに、とにかく孤独。岡田は未経験でひとりで業務を担っていましたが、デリケートな内容が多いので身近な人に相談することもできなかったのです。 

しかし、ただ苦しんでいるだけでは何も変わらない――。 

岡田は、顧客や税理士、社労士などの専門家にヒアリングし、どうすれば一気通貫したプロダクトを作ることができるのか考え続けました。プロトタイプを作成してフィードバックを収集するなど、改革に向けて動き続けたのです。 

業務を実体験できないのに、今までにないプロダクトを開発する難しさ

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▲「人事労務 freee」リリース前の社内風景

2017年8月、「クラウド給与計算 freee」は大幅にパワーアップして「人事労務 freee」として生まれ変わりました。

「人事労務 freee」を使えば、クラウド上で社員が入力した情報を元に給与計算等の情報が自動反映され、ヒトにまつわる情報がリアルタイムに更新されていきます。負担軽減はもちろん、情報が可視化されて人事戦略を立てやすくなりました。 

では、エンジニアサイドからみると、「人事労務 freee」の開発はどうだったのでしょうか。 

岡田とタッグを組み、エンジニアを率いているのは、プロダクト開発部、人事労務チームジャーマネの森大輔。(freeeでは、“タレント”たるfreeeのメンバーを叱咤激励し、成長をサポートする役割の人として、芸能界をイメージし、いわゆるマネージャーのことを「ジャーマネ」と呼称) 

彼はアメリカの大学で金融工学を学んだ後、ベンチャー企業でエンジニアとしての経験を積み、freee起業初期からジョイン。さまざまなサービスの開発に携わり、会社の成長に貢献してきました。 

森は、「人事労務 freee」の開発に“実体験できない”のに新しいものを生み出さなくてはいけないという難しさを感じました。 

森 「開発するエンジニアがユーザーの気持ちにならないと、本当に使いやすいプロダクトは生み出せないと思います。『クラウド会計ソフト freee』の開発であれば、実際に社内で経理を体験して開発に活かすことができました。でも、人事労務の場合は個人情報の観点から一切実体験できない。
そういう状況で、仮想ではありますが、エンジニアが自分たちで書類作成を体験できるような勉強会が開かれるようになっていきました。やってみると『なんでこんな書類を作らなきゃいけないの?』『どうやって書けばいいの?』と思うようなことがたくさんあり、わかりやすいサービスを作ろうというやる気が湧いてきたんです。
でも、人事労務関連の既存のサービスのなかには、我々が理想としているレベルに到達しているものはなかった。既存サービスの研究をしつつ、今までにない新しいプロダクトを作っていくのは苦労しましたね」 

人事労務業界で「当たり前」の慣習となっていた部分を変えることは並大抵のことではありません。でも、岡田と森は「ユーザーにとって本質的に価値があること」を探究し続けながら開発を続け、ついに「人事労務freee」がリリース。 

岡田 「freee株式会社や会計freeeのイメージカラーは青なんですが、勝手に緑色のロゴを作って、人事労務のカラーは緑だということを押し出しました(笑)。freeeは会計と人事労務の二本柱だということをアピールしたかったんです。 
お客様からは『人事労務 freeeで楽になった』という声だけでなく、freeeが目指す世界観そのものに共感していただける声も増えてうれしいですね」 

――まずは、freeeがスモールビジネスにおけるロールモデルに。 

「人事労務 freee」の登場によって、100~500名規模の企業では平均3人必要な人事労務担当者数が、freeeでは0.5人分の工数にまで削減可能に。社内でも、本来人事担当者が注力すべきとされる人事戦略の策定、新しい福利厚生制度の構築、メンバーとのコミュニケーションなどに時間を使えるようになりました。無駄をなくして生産性を高め、社員たちがより楽しくワクワクしながら仕事をできる環境を整えていきます。 

また、2017年現在、人事労務freeeの開発チームは、森を中心に大阪にも中心となる拠点を作るべく準備を進めているところです。関西での人材採用にも力を入れ、今後さらにパワーアップしていく予定。今後も業務の負担軽減だけではなく、戦略的なビジネス判断に役立つサービスを提供していきます。 

これからもfreeeの新たな挑戦と“戦略人事”にご期待ください。 

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