企業理念を再構築するために招集された7名のメンバー

▲7名のプロジェクトメンバーがフジッコの求める人物像を徹底的に議論

食品の製造販売企業として、2020年に創業60年を迎えるフジッコ。社長である福井正一は、根強い社風の「トップダウン文化」を変革しようと、企業理念を再構築するプロジェクトを発足しました。

プロジェクトメンバーに招集された7名に含まれていたのが、フジッコで女性初の執行役員・人事部長の寺嶋浩美と、総務部係長の豊田麻衣子でした。

寺嶋 「食品メーカーはお客様のお口に入るものを提供することが使命ですから、安心安全を第一に考え、これまでやってきた確実な方法で同じことをやり続けようという意識が働きます。
しかし、変化が激しい時代では、現場に近い社員たちが受け身ではなく自分の頭で考え、自主的により良い提案をできる風土が大切です。社長は受け身な社員の体質を心配し、変革を強く推し進めていこう、と覚悟していました」

細分化された消費者のニーズにスピーディーに対応するには、現場主導で動けることが必要です。しかし社員は失敗を恐れ、指示待ちの受け身。現場の社員たちがやりたい仕事を自律的に行えるような体制づくりが急務でした。

豊田 「入社した当初は、『帰れない』『休めない』などと考えている社員がいました。しかしよくよく話を聞くと、この会社が好きだからこその不満を持っている従業者がたくさんいることに気付いたのです。“どうせ無理 ”という思い込みを自分たちで変えていけたらと思いました」

企業理念の再構築においては、フジッコの求める人物像を徹底的に議論し尽くし、それを現場に普及させ、従業者が自分の言葉で理念を語れるようになるのがゴールでした。その大きな方針の下に経歴も所属もまったく異なる7名のメンバーが招集されました。

7名のメンバーの内訳は、入社半年の中途採用者をはじめ、バランス感覚に長けた者、ベテランの課長や部長など。共通していたのは「自分の言葉で自分の想いを表現できること」。トップダウンの逆、ボトムアップで事を進められる象徴的なメンバーだったのです。

新・企業理念を浸透させるため「六さんと語ろう!」をスタート!

▲社内イントラネット上に特設サイトを開設

プロジェクトでは「キレイごとなし」「譲り合いなし」で、本音満載の激しい議論が繰り広げられ、会議終了間際になると、メンバーがぐったりするほどでした。徹底的に本音をぶつけ合い、紡ぎ出す言葉の意味と目的を丁寧にすり合わせていきました。

のべ300時間を費やした会議の中で、メンバーが最も長く議論したことは、理念は理想ではあるが実態とは乖離があり、従業者自身が共感するものになっていないという課題でした。

寺嶋 「 “従業者の満足度 ”にまったく言及されていなかったんです。健康に良い豆や昆布などの加工食品を製造していながら、自分たちの健康を考えていないという自省もありましたから、従業者の働きがいや満足度に踏み込んで議論を重ねることも大事なポイントでした」

半年間にわたる議論を重ねてようやく完成した新・企業理念「フジッコの心」。お客様はもちろん、フジッコに関わる全ての人たちを元気で幸せにするという社長の想いを込めた内容となりました。

さっそく「フジッコの心」を従業者に浸透させるため、解説本を配布し、専用Webサイトを開設するなどして社内広報活動を展開しました。しかし、一方的に伝えるだけでは「フジッコの心」の真意が社内に浸透することはありません。むしろ「キレイごとが並べられているだけ」とうがった見方をされてしまう恐れもあります。そこで、社内広報と同時に、社長自らが「フジッコの心」を浸透させていくプロセスが必要でした。

一般的に、企業の規模が大きくなればなるほど、社長と従業者の距離は遠くなるもの。フジッコにはグループ全体で2800名弱の従業者がいます。社長は普段、役員や管理職と接する機会は多いものの、一般の従業者の様子を知る機会はほとんどありませんでした。

寺嶋 「最初のころは、一般の従業者と社長が直接話すとなると、立場の違いから対話が成り立つのだろうかと、社長の職場巡回を受け入れる部門長や工場長から心配の声が伝わってきました。現場に飛び込む経営者や役員は、一般的にあまりいませんよね」

従業者にガチンコで向き合う

▲社長の六さんがガチンコで従業者と向き合う「六さんと語ろう!」
寺嶋 「それでも、社長は自らが現場に行って社員と対話しようとされていましたし、その気持ちを私たちも心から応援したかったんです。ただ、どのような方法が良いか、この点についても何度も議論し、最終的には『六さんと語ろう!』と題して、従業者と対話形式のワークショップを実施することになりました」

六さんとは社長・福井 正一を指します。正一の「正」と「一」を足すと「六」になることに由来します。偶然にも、「六さん」が、大学時代のニックネームでもあったことから、とんとん拍子にこのネーミングが採用されました。

「六さんと語ろう!」では、六さんがガチンコで従業者と向き合います。社長は1回あたり3時間、講話やワークショップを行い、懇親会を通じて従業者一人ひとりの今の仕事やこれからやりたいことを聞き、期待を伝えて寄り添います。

この中で最も苦労したのは「場づくり」でした。というのも、参加者は「何が始まるんだろう」と不安げ。とくに工場や営業の現場は目の前の業務で手一杯のため、参加に消極的でした。

豊田 「初めはみんな戸惑った様子で、参加者の調整の段階から苦労が絶えませんでした。役職者だけがいいのではないかとか、若い社員は除いた方がいいんじゃないかとか。そのような問いかけに対し、『六さんと語ろう!』は、社長が皆さんの様子を見に行く場だから安心してくださいと伝えました。また私自身にも、参加者の本音を引き出すためのファシリテーションが必要でした」

フジッコの工場や物流拠点、営業所は全国に点在しています。1年目は10カ所、2年目の2019年はすでに5カ所、さらに春までに、未開催の営業所などでの開催を予定しています。

豊田 「最初は上滑りしていた部分もありました。みんなキラキラした、いかにも前向きな言葉しか話さない。この現状を突破するため、私は社外での活動を通じて、メンバーの本音を引き出す方法を学びました。大事なことは、回答を参加者任せにしないこと。こちらも本気で解決のための気付きを与えるなどの工夫をするうちに、次第に参加者の意見にも覚悟が感じられるようになりました」

2年目を迎えた今年は内容にドライブをかけ、働く意味を考え、個人と組織のより良い関係性を模索するためのワークショップを展開し、最後に参加者一人ひとりが自らの意識と行動を変えるための行動宣言を行ってもらうようにしました。

宣言はささやかなことで構いません。「言いたいことを言い合える工場にする」「これまでのやり方にこだわらない」「今のチームをフジッコで一番にする」など、ワークショップの時間を自分ごととし、自らを見つめ直す時間にしてもらうように努めました。

参加者の変化を受け、さらなる変革を進める

▲「六さんと語ろう!」の実施状況は、社内報で共有!

参加者の大半が、実はこの会社が好きでいい仕事をしたいと思っているのだけれど、“何か”にそれを阻まれて、いつしか“どうせ変わらない”という諦めに支配されていました。そんな中、この状況を少しでも改善したいと、「六さんと語ろう!」の場では、参加者が日々戦っているジレンマに向き合いつつ、少々辛口のエールを送っています。

豊田 「開始直後は不安げに身構えていた人も、丹念にアイスブレイクを行い、参加者に向き合っていくうちに次第に前のめりになり、自分たちの考えや歴史を語り始めます。まなざしが変わるんです。その変化に私の方が感動し、救われていることに気付きます」

六さんも丁寧に社員と向き合い、笑ったり、驚いたり、真剣に疑問を投げかけたりします。

そのような地道な活動を続ける中で、「六さんと語ろう!」参加者の声にも変化が現れていきました。中には「自分が入社したときと今を比べると、社風が圧倒的に良くなったと感じています」「おもしろい人、熱い人がたくさんいる! フジッコ、まだまだ捨てたものじゃない!」「社長の方から名前を呼んで声をかけていただき、感銘を受けました」といった感想が。

社長とは、従業者にとって特別な存在。六さんとの交流を通じて従業者の意識と行動が確実に変化しているとプロジェクトメンバーは感じています。

豊田 「このワークショップのファシリテーションを通じて、参加者が日常の言葉やコミュニケーションの方法を意識することでも、組織のあり方は変えられると実感しました。これからも、自ら考え行動する場として『六さんと語ろう!』 を活用し、参加者の皆さんには、覚悟を持って新しい一歩を踏み出してほしい」

六さんはさらに変革を進めて、事業の成長スピードを上げ、成果を出していきたいと考えています。これからもフジッコ株式会社は「自然の恵みに感謝し 美味しさを革新しつづけ 全ての人々を元気で幸せにする 健康創造企業をめざします」。