ボートに明け暮れていた学生時代からは想像していなかった60代の幕開け

▲前職では中堅企業向けオフィスコンピューターに関わり、SEへの技術支援を担当していた葛西康人

葛西は学生時代、勉学をよそ目にボート部でエイト(8人構成の種目)に熱心に取り組んでいました。学部は理系の教養学部のため、教員になる者が多い中、部活のOBからの薦めをきっかけに、当時成長過程にあったIT企業への入社を決意し、60歳になる直前まで職務を全うしていました。

葛西 「前職には 59歳 11カ月までいました。しばらく前から小山会長(現顧問)に声を掛けてもらっていて、もう定年間近だというときに富士テレコムに移ったんです。役に立てればいいな、という一心でお話をお受けしました」

葛西は元来より、「働く」という概念に人とは少し違う感覚を持っていました。その感覚は今の働き方改革に必要なものとして捉えられています。

葛西 「もともと『気持ちよく働く』っていうのは考えていたんですよね。仕事ってつらいこともあるけど、ただ淡々とこなすなんて、つまらないじゃないですか。1日のうちのほとんどの時間を仕事に費やすんですから、働くっていうことが自分にとって意味のあるものにしたいと考えていました」

経営戦略部門でまず始めに着手したのは、社長の直接の指示により動き始めた働き方改革の推進でした。

葛西 「社長から『富士テレコムの働き方を変えていきたい。中心となって推進してほしい』って言葉をもらって、会社がいい方向へ変わっていこうとしているのは素晴らしいことだな、と。
それが会社のためにもなり、自分も思っていたことでもあるんだったら、是非やろうじゃないか!と。会社の動きに合わせて、もともと自分が考えていることが実現できたらいいなと思っていました」

比較があってこその新しい気づき

▲デスクワークの風景

前職はIT系の大企業。前職での経験があったからこそ、富士テレコムで組織を客観視することができるのだと言います。

葛西 「数万人の中のひとつの組織で動いていると、全体はなかなかわかりません。こうあるべきだと思って、今自分がいる組織は変えることができても、会社全体を変えることはなかなかできません。一方、富士テレコムの社員数は500人強。
なんとなく全体がわかるんですよ。こうするとああなるって。全体を見ながらどうすればいいのか考えられるっていうのが、働き方改革を進める上で非常にありがたいです」

そのような思いを抱いている葛西は、自分自身の環境に変化を与えることが重要だと考えています。そして、 前職における会社の文化の違いを認識した上で、会社の全体を見通しながら実際に改革を進めていきます。

葛西 「ちょっとしたことに気づけるってことを実感しています。ずっと同じところにいるとなかなか気づかないことが多いので、思い切っていろんな経験をした方がいいと思います。
仲間、同期や他の会社にいる同級生と話していろんな文化を知っておくだけでもいいですね。私は前の会社があることで気づけたんです」

自身の考えを会社の在り方に反映させていく

▲打ち合わせの風景

会社が歴史を重ねる中で備わってきた富士テレコムらしい社風を前提にしながら、より良く変えていく方法を探ってきました。

葛西 「今の時代、社員が自宅や社外で勤務することは可能ですよね。富士テレコムでも取り組み始めていて、われわれが持っている仕事の環境とやり方を変えていこうとしている途中です。
過去の積み重ねもあるので多少の時間はかかります。けれど、 IT企業だからこそ ITを使いこなせる、もっと働き方改革はできるって思っています。ポテンシャルは高いはずです」

富士テレコムの働き方改革に関わり始めてから今に至るまで、早急に変えていくべき部分もありながら、葛西には改革を進めていく順序があったと言います。

葛西 「何から手を付けようか迷うことはありましたが、経営層や現場と話してみれば自ずと見えてきます。経営層や現場が『これが足りない』っていうことを一番わかっているので」

そして改革の一つ、社内システムのリプレースでは社員の変化に驚きがありました。

葛西 「社員へ浸透させる取り組みを行うまでもなく、社員自らが新しいものを便利と感じて、今では当たり前のように利用してくれています。
どうしたら無駄を省くことができるのか、それを社員が大いに求めていたからだと思います。 もっと使いこなして、もっと便利になるようにしていきたいと思っています」

次に、ABW(activity based working:フリーアドレスの進化系)という考え方を本社のオフィス作りで導入すると、想像もしない副次的な効果がありました。以前までは執行役員が4フロアにばらばらに座っていたことから、日常の交流が少なかったのです。

しかし、執行役員を1フロアの中心に集める形にオフィスを変えたことで、今では社員が執行役員に相談しに来ると、別の部門の執行役員が「これはこうじゃないかな?」と見えていなかった側面からアドバイスができるようになり、問題解決までの時間が短くなることがあります。

これは執行役員の例にすぎませんが、ABWという新しいオフィス作りによる効果として、「新たなコミュニケーション・情報共有が発生するんだ」と実感する一例となりました。

仕事は生活のうち、ということの信念をもとに

富士テレコムでは働き方改革を推進していく中で、「いつでも どこでも good job for good life」というコンセプトを掲げています。そして葛西自身も、日本に根付いていた「仕事」の価値観・定義・文化を変えていきたいと考えているのです。仕事も生活のうちという概念を形にしていくことが、社員のより働きやすい環境づくりにつながっていきます。

葛西 「仕事と生活のバランスを保つんじゃなくて、生活の一部が仕事なので、生活そのものをよくするために、仕事とどういうスタンスで向き合うか。
これは働き方改革と一般的に言われている範囲ではなくて、自分の考えの置き所をどこにするかなんですよね。
公私混同っていう言葉がありますが、 “公” と “私” のどちらも大切にしながら仕事とかかわることが大切なんだと思います」

富士テレコムに移って4年。富士テレコムで働く一員となって、これまでに大きく感じたことや、前職と比較しての違い、またそこから見える強みがあると言います。

葛西 「スピード感は富士テレコムの強みです。前職では変えられないところがたくさんありました。ですが、今は富士テレコムの変革スピードについていくだけで精いっぱいのときもあります。
ビジネスでも同じなんです。トラブルがあったときは営業部門と技術部門が総出で速やかに状況を判断し、対処します。集中突破する力は、文化として持っていると感じます」

葛西は先日、3年前に作った資料を見たときに、そのまま今も使える部分があったと言います。つまり、3年前と同じ課題が残っているということです。

葛西 「まだ着手を出来ていないことが多く、なかなか次から次へとやっていけない。根本が見えていないと無理が生じてしまうからです。スピード感があると言っても、拙速にならないように気を付けています」

そして、60歳を越えてもなお現役として働き続ける葛西は、「健康であるうちは続けていきたい」と意気込みを見せています。