効率は愛— —創業時から18年間変わらない「人と人をつなぐ」ことの真意(前編)

18年目を迎える株式会社ガイアックスのミッションは、人と人をつなげること。時代に応じて、インターネット上でコミュニケーションの場を提供し続け、現在はソーシャルメディアとシェアリングエコノミー事業を中心に展開。それは、創業当初から代表執行役社長の上田祐司が構想し続けていたものでした。
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愛があるからこそ、「効率」を追求する

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「人を喜ばせたい」という欲求は、人間が誰しも生まれ持っているものかもしれません。

小さな子どもでさえ、たとえば自分がお菓子を食べるよりも、友だちにあげて喜ばれるほうが、幸福度が高いという研究結果もあると聞きます。1974年、大阪府茨木市に誕生した上田祐司少年も例外ではなく、商売をする両親の下で兄とともに「人を喜ばせたい」という精神を、とくに強く持っていました。

上田「人を喜ばせるというと、おもしろいことをしなければいけないと思ってしまう方もいるようですが、そんなことはありません。私が行き着いたのは、人はつながりを持ち、コミュケーションを取ることで幸せを感じるということ。また、上質なコミュニケーションを取るために『効率化』が欠かせないということでした」

上田が「効率化」を追求しはじめたのは幼いころ。小学4年生からプログラミングを学びはじめた頃には、すでにそのような考えがあったといいます。

今でこそ、プログラミングを小学生の必修科目にしようという時代ですが、1974年生まれの上田が小学生だった時代は、パソコンが家にあることさえ珍しかったはず。上田少年は「変わった子ども」だと言われることもありましたが、さまざまな仕組みを、自分で作れるプログラミングというものに感動して、夢中になっていきました。

上田 「『効率は愛』という言葉があります。これは、私が尊敬する船井幸雄氏の明言です」

愛情が溢れていても、効率が悪いことによって、結果的に愛が伝わらないということは往々にしてあるもの。いくら性格がよい人でも、会社がうまくいくとは限らないし、従業員、お客様、代理店など、事業に関わるたくさんのステークホルダーを幸せにできるとは限らない。物事の進め方、ツールやテクノロジーの活用、組織運営能力など、ビジネススキルが不十分な人についても同じことが言えます。

だからこそ、上田は「真に愛情に溢れている人間こそ効率化を推進させるべき」だと考えています。一見愛情深そうな人よりも、「愛情を感じさせないが、まわりのことを考え、効率化に徹底にこだわる人」の方が、実は愛情深いのではないかとすら思えるからです。

これには、少年時代の上田自身が、自営業の両親を見ながら育ったことが影響しています。常に仕事のこと、商売のことが家で飛び交う家庭環境。そのオープンな雰囲気が、上田の心、そしてビジネス観を育んだのです。

上田 「何事もオープンにすると、人は相手に感情移入ができます。損得を超えて、相手の立場に立ち、愛情を持った対応ができるようになる。相手を慮れずに悲しいことが起きてしまうのは、心と心がつながっていないからです。オープンで効率よく、ミスコミュニケーションをなくすことが助け合いを促進し、より幸せを感じることができます」

インターネットを通して、それを実現したい。その想いがガイアックスの根源にはあるのです。

“他人”同士をつなぐインターネットの革命

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つながることで、人は幸せになるのではないかーー。上田がそう考えはじめた理由のひとつは、学生時代に普及しはじめた携帯電話です。誰もが携帯電話を持つ時代ではなかったので、自分がそれを手に入れることで、仲間の“情報のハブ”になることができました。そして「みんなをつなげば、コミュニケーションに革命が起こる」と感じたのです。

上田 「携帯電話を手にして同級生たちをつなぐことができたように、将来、人の役に立つためには何が大切だろうと考えるようになりました。そして、行き着いたのがインターネット。インターネットは、携帯電話以上に、“つながり”の幅を広げました。知り合い同士にとどまらず、赤の他人同士さえ、つなぐことができるからです」

インターネットは携帯電話よりも、もっとすごい!——こうして上田は、「他人同士をつなげる事業」を立ち上げようと決意。そうはいっても、いきなり起業をするには経験も人脈も足りず、まずはベンチャー支援を事業とする株式会社ベンチャー・リンクへ就職することになります。

1997年入社当初、上田の配属は外食チーム。サンマルクや、ステーキ料理のチェーン店などを手がけることになります。漠然と「10年後ぐらいには起業しよう」と考えていたので、そのために学べることを学ぶ。しかし実際には、想定より早く起業に至るのですが、当時の上田はそれをまだ知るよしもありませんでした。

そして、上田は会社員として働きながら、レストランの口コミサイトを立ち上げます。すると次々と口コミが書かれはじめ、「どこが美味しい」「●●がおすすめだ」というやりとりが展開されていく……。「これはすごいことだ」と上田は改めてインターネットの可能性を思い知らされます。

上田 「それ以前、消費者にとって行動の指針となるのは企業が打った広告くらいでした。それが、イチ個人である他人から情報を得ることができるようになった。世の中がものすごく変化したタイミングだったと思います」

インターネットビジネスに、人生をかけた瞬間

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90年代後半、アメリカでは“宅配”が流行しはじめ、人々のニーズが掴みやすくなっていました。「この人は、あれとこれをセットで購入する」という動向が“見える化”されていったのです。それによって、ニーズを汲んで、「最適なものを提案して売る」ことができるようになりました。

上田 「たしかに自分がほしいものの情報が、ちょうどよいタイミングに、ダイレクトメールで届いたら嬉しいですよね。でも私は、『企業よりも友だちからメール届いたほうが、もっと嬉しいだろう』と考えるようになりました」

1998年、まだ起業前だった上田は、年賀状メールのサービスを作りました。12月半ばに2日ほどで開発し、「友だちに年賀状メールを送ろう!」と投げかけたのです。年賀状メールは、その日のうちに届きますが、1月1日までURLをクリックしてもページを開くことはできません。

1月1日までに、あなたも返事をしたり、別の友だちに送りましょうーー。メール配信でそう呼びかけると、1月1日までにユーザー数は2〜3万人規模に膨れ上がりました。今でいうバイラルです。

上田 「インターネットを通して、つながっていく、連鎖していくパワーはすさまじいと感じましたね。人と人をつなげる。それによって人を幸せにする。それを叶えられるのはインターネットだと確信して、インターネットビジネスに人生をかけようと、改めて決意したんです」

そして、人にとって満足度がより高いことは「同じ興味を持つ人と人をつなげること」なのではないかという考えから、今で言うところの“ソーシャルメディア”のようなサイトを立ち上げました。どこに住んでいるのか、自分の好みや好きな音楽、食べ物や好きな映画、持っているものなど書き込めるホームページサービス。上田は、友人同士だけではなく、赤の他人同士をもインターネットでつなげようと考えたのです。

上田 「相手が知らない人であるからには、まず、その人がどんな人なのかを理解しなければなりません。そこで『みんなの脳をネットに置いてもらおう』と思いつきました。相手の脳内を知ることができれば、つながっていけるんじゃないかと」

このサービスを、最初は会社員として働きながら運営していましたが、徐々に登録者数が増えたこともあり、上田は企業との提携を検討しはじめました。そのためには法人格が必要。そこで1999年3月、ガイアックスを起業することになります。

ベンチャー・リンクで「いつか一緒に起業しよう」と話していた同僚と地元の後輩のもうひとりをメンバーに加えて、3人でガイアックスを立ち上げるに至ります。

SNS・シェアエコ…言葉が変わっても、ガイアックスの想いは変わらない

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「ガイアックス」という社名は、立ち上げメンバーとともに名付けたものです。その由来は「ガイア理論」。地球と私たち生物は互いに影響し合い、共に環境を作り上げている“ひとつの生命体”であるという理論で、1960年代に科学者、ジェームズ・ラブロックが提唱しはじめたものです。

2017年現在、ガイアックスはソーシャルメディアとシェアリングエコノミー事業を軸としていますが、創設時には「ソーシャルメディア」と「シェアリングエコノミー」という言葉は存在しませんでした。しかし、私たちは、ずっとその領域で事業を展開してきました。18年もの間、「インターネットってなんだろう」と試行錯誤し続けてきたのです。

上田が創業時から考えていたのは、インターネットは、「メディア」と「コミュニケーションツール」のふたつの特性を備えた新しい方式であるということ。つまり、テレビや雑誌のようなものでもあり、携帯電話や手紙のようなものでもあるということです。

上田 「どちらか一方に偏ったサービスもあるけれど、私たちは、インターネットが持つ「ふたつの役割」が重なる部分を事業としてやろうと決めていました。しかし当時は、それを上手く言葉にできなかったので、絵を描いて『インターネットでここの領域をやるんです!』とプレゼンしていたものです(笑)」

ガイア理論が説くように、人類はみんな、接続しようとしているのではないかーー。誰かが声を発明して喋れるようになり、文字を発明して一層言葉を届けやすくなり、印刷技術ができて時間を超えて伝えることができるようになり……。そして、携帯電話を発明して場所を超えて会話できるようになりました。

上田 「根源的に、人類というものはひとつの生命体になろうとしているのかもしれません。だからこそ、つながるだけでハッピーという感情が生まれるような気がしています」

創業時からのミッションは「Empowering the people to connect」。日本語にすると「人と人をつなぐ」です。私たちガイアックスがこれまでやってきたことは、すべて「人と人をつなぐ」に根ざしたことであり、上田が少年時代から構想してきたことでもあります。

しかし、それらがよりわかりやすく“見える化”するのは、もう少し先のこと。その過程のなかで、私たちガイアックスがどのような道を歩んできたのか、それは後編にてお伝えさせていただきます。

<<後編に続く>>

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