報酬も、生き方も、自分で決める――キャリア自律を支える目標管理制度

2017年現在、ガイアックスは創業以来17年以上、成長を続けています。今に至るには、新たにビジネスモデルや事業を生み出せる人材が欠かせませんでした。それを支えてきたのが、「クォーター・コーチング・プログラム(QCP)」。自分で自分の人生を切り拓ける人材を数多く育んだ制度は、一体どのようにして生まれたのでしょうか?

従業員に社長と同じ環境を――個人の成長をどこまでも促したい

▲人事・広報マネージャー 木村智浩(写真中央)

全国的に起業希望者や実際に起業にいたる人の数が減少する中、ガイアックスでは、起業家人材が多く生まれ続けています。新卒入社する社員の退職理由の6割が「起業」であり、当社がその企業に投資してIPOでリターンを得る事業もあります(2017年11月現在)。

起業家人材を輩出できる一因として、特徴的な評価制度、クォーター・コーチング・プログラム(以下、QCP)を実施していることが挙げられます。QCPは、四半期毎にリーダーとメンバーが面談をし、メンバー自ら次四半期の目標と報酬額を決定する制度です。

創業時から参画している藤堂和幸は、この制度をベンチャー企業だからこその決め方だったと振り返ります。

藤堂 「社長の上田が言っていたのは『社長と同じ環境を従業員に用意したい』ということ。そもそもベンチャーだと、社内で同じことをしている人がいないし、下手したら社外にもいない。つまり、その仕事について一番考えているその人が、社会にどのような価値を提供していくのか。そこを話していける場を作っていこうということで決まりました」

「社長のように考える」習慣をつけることで、その先のキャリアにも生きてきます。この制度の背景には、創業時から学生インターンの成長によって会社が支えられてきたことがあります。ガイアックスでは、会社として「若い人材の可能性に枠を当て、会社が定めた成長に誘導してはいけない」と考えているのです。

重要なのは、一人ひとりのライフプランの達成を支援すること。人事・広報マネージャーの木村智浩は、時代へのキャッチアップは個人の方が早いと感じ、個人の考えを尊重するこの制度のメリットを感じています。

木村 「たとえば、『クラウドサービスを使いましょう』と会社が言うときには、もう個人レベルでは使っているはずなんです。いろんな新しいものについては、会社のほうが遅れているので、上司にとってよくわからないことをしたいという人がいても、それを歓迎していきたいと思っています」

報酬を決める「正しい」方法はない。自律した個人のライフプランを尊重

▲新人研修の様子

自分で自分の報酬を決めることは、多くの人にとって初めての経験です。何より、個人が「自分の人生をビジョンやミッションを持って生きていく」という、自律した考え方が大切。そこで、社内に共有していることがいくつかあります。

たとえば、報酬を決める「正しい」方法はないということ。

木村 「売上や利益が直接見える営業部署ほど決めやすいですよね。一方で、管理部門はそれが見えづらい。たとえば、過去にこういう人を採用して、リターンを得ているという事実があっても、それが全部僕のおかげかというと、そうとも言いづらいですよね。ただ、世の中の社長も、自分の給料をどう決める?と悩んでいる。そのくらい正解、不正解はないものだと思っています」

また、四半期を終えてどうなっていたら報酬をあげるか、下げるかのコンセンサスを持っておくこと。あるいは、3年後や5年後のライフプランや報酬プランも共有し合意することなども共通認識です。

新卒社員などは、初任給をベースに考えていきますが、仕事の価値基準を決めるには、やはりライフプランを持っていることが重要です。そこで、新人研修を行ったり、上長が相談に乗ったりしながら、本人がそれを見つけていきます。

木村 「ライフプランを会社主導で考えさせるようなことはあまりやっていません。それはどこまで踏み込んでいいのか、という部分でもあるので。でも、迷った人がいたら、それに対して答えられる人は多いですね」

リーダーであるかどうかに関わらず、社内で共有している方向性やコンセプトを理解し、それを個人に合わせて示せる社員が大勢います。そのため、自分の人生について考え直す機会が多いのも、ガイアックスの強みです。

「人生を通じてどんな価値を提供したい?」自分と向き合うプレゼンを実施

▲他社との新卒“シェア”研修もおこなった

ライフプランを意識づける取り組みのひとつとして、数年前まで、新卒採用の最終面接で、「あなたは人生を通じてどんな価値を社会に提供したいですか?」というテーマのプレゼンを課していました。

学生にとってこの大きいテーマを他人に伝わるように形にすることは至難の業。この準備をサポートするために人事担当者が時間を割き、プレゼンをつくりあげていました。

木村 「僕らも大変ですし、学生も大変です。ですが、内定をもらっても辞退しようと考えている人はだいたいここで離脱するので、結果、内定辞退が起こらない、良い採用だったなと思います」

しかし、やはり内定前の学生に対してそれだけの時間をかけるということが、スピード感を求められる採用市場には合わなくなり、苦渋の選択で採用後へ移行。その代わりに入社後の研修を強化しました。

また、他社の新人と合同研修にし、他社に対して、自社を紹介する研修なども行っています。2017年入社の新卒社員、流拓巳も、こうした研修を通して仕事をする目的をより明確にしていきました。

流 「内定前に、インターンとしてすでに1年くらい働いてはいたんですが、そのときよりも、何のため働くのか、自分がどうしたいのか、といったことが明確になるので、目的をより失いにくくなりました」

社内では過去に、「職能制度や評価テーブルをつくった方がいいのではないか?」という意見が出ることもありました。

木村 「ちゃんと決めた方がいいという意見が出て、議論をしていったのですが、会社が1年後、3年後にこういう風に育ちなさいという枠組みを作っていいのかという話になり。そんなことは予見できないという結論に落ち着きました」

もちろんマネジメントコストは会社側で決めたほうが低くなります。なので、極力上司の負担を軽減させるために、従来の目標管理制度などは細かく管理できるようになっています。

ですが、メンバーにとっては、報酬がいくらになるということよりも、その報酬への納得度の方が重要であり、そのためには決定方法も本人主導であるべきだと考えています。

社内にロールモデルはつくらない――本当のキャリア自律に向けて

▲オフィスビルであるGRIDの一画

2017年現在、創業当初からQCPを導入してきた成果として、「新卒入社の約半数が事業リーダー経験者」「6年連続で働きがいのある会社に選出」「新卒の離職理由の6割が起業」という、他に類を見ない企業になりました。

それは、仕事の範囲はもちろん、昇進や報酬額に天井を感じない会社になったからではないかと、木村は分析します。

木村 「たとえば入社3年目のトップ社員をモデルにする。そうすると、それ以上はいけないという思い込みができてしまうんですね。ガラスの天井を勝手に感じて、居酒屋で愚痴ったりする。僕たちは、それは違うぞ!ということを常に打ち出しているので、当社ではそれが起こりづらいんです」
流 「私は今、1年目ですが、『入社5年目のあの人みたいになりたい』とか、そういう思いは正直言ってありません。普通の会社なら、ある程度教育プログラムがあって、それに沿った成長を求められると思いますけど、ここはそうではなく、成長は常に自分のライフプランと紐づいている。だから先輩の話を参考にはしても、来年こうなっているんだろうなという意識はほぼないんです」

このように、自分で決めていく意識が強く根付いた当社。2017年の夏に、出社しなくてもよい「テレワークシーズン」という企画を実施したところ、社内から出てきたのは意外な意見でした。

木村 「猛反発されました。『そんなこと、会社が決めるな』って(笑)。でも、出社するかどうかは本人が決める、そう思ってくれているのは、とても良いことですよね」

その真意はすべて、個人のキャリア自律にあります。会社がキャリアを用意してくれるのではなく、自分の人生のハンドルは自分で握るもの。

近年ではいくつかの企業で、個別に評価する制度ができつつありますが、ガイアックスはその第一走者として、さらに社会に広げていけるよう、さまざまな試みを展開していきます。

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