働き方改革は「幸福度」から? あの日、3,000人の社員の前で語られたこと

世界180カ国で電力、ヘルスケア、航空機エンジンなどの事業を手がけるGE。その日本支社である、GEジャパンでは2017年より「SmartWork@GE」という独自の働き方改革に取り組んでいます。その一環として、7月に社員3,000人を集めた社内イべントを開催。社員のマインドセットの変革にチャレンジし、その後のモメンタムにつなげることができた、イベントの過程と成果を振り返ります。
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社内のカルチャー・チェンジ、どうにか一斉に図れないか?

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▲運営コミッティとして選出された8人の社員

米国に本社があるGE(ゼネラル・エレクトリック)は「デジタル・インダストリアル・カンパニー」を標榜し、電力をはじめとするエネルギー関連、航空機エンジン、ヘルスケア事業などを世界180カ国で展開しています。日本支社にあたるGEジャパンはグループ全体で約3,000名の社員を抱え、近年ではIoTを推進し、デジタル化に取り組んできました。

事業変革と並行して、社内のカルチャー・チェンジも図っており、2017年からは「SmartWork@GE」という日本独自のイニシアチブで働き方改革に挑んでいます。このイニシアチブは、リモートワーク制度の拡充などの人事制度のみならず、社員のマインドセットを変えることに重点をおいているのが特徴です。

しかしながら、その変化に対する社員の足並みは、揃っているとは言い難い状況でした。それぞれのビジネス単位で人事制度見直しなどの働き方改革に着手していたものの、イニシアチブの必要性やコンセプトが広く理解されているとはいえなかったのです。さらに、GEは様々なビジネス部門を抱えているがゆえに、それぞれが独立し、全社的な取り組みの浸透が難しい構造であることも、要因のひとつでした。

また、SmartWork@GEのイニシアチブが在宅勤務やフレックスタイム制など人事制度のみを示していると誤解されていた面もあり、制度を活用しにくい工場勤務や営業・サービス業務の社員からの関心が低いことも課題に上がっていました。

折に触れて社内広報やリーダーシップ研修等でテーマとして取り上げてきましたが、よりそのイニシアチブを浸透させるには、全社員が自分ごと化し、自らが働き方にオーナーシップを持って選択できるように働きかける必要がありました。

そこで、運営コミッティとして各ビジネス部門から選出された8人の社員が中心となり、2017年7月にイニシアチブのローンチイベントを開催することに決めました。

イベントというインパクトのあるコミュニケーションをきっかけとして、「SmartWork@GE」のイニチアチブを一気に加速し、社内の雰囲気を大きく変えることが狙いです。 イベントでは、全社員の1割にあたる300人の社員を「Change agent」として招待。「Change agent」という言葉に、参加者にイニシアチブにコミットし、日々の職場で実践・周囲への働きかけを行うエージェントとなってほしいという期待を込めました。

“響きそうな人”ではなく、背中を押してあげたい人を招待

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Change agentとして招待した300名のうち、約9割は人事部が中心となって検討し、全ビジネス部門から選出しました。その結果、部下を持つ社員や若手の社員など様々なキャリアを積んできた多様性のあるメンバーが集まりました。その理由を、イベント事務局を務めた林朝は次のように語っています。

林「社内イベントを開催すると、同じような人しか集まらない、もしくは同じ人にだけメッセージが届いて、他の人には響かないことがあります。関心がある人だけ・・・ではなく、多くの社員が「SmartWork@GE」のイニシアチブを理解し、賛同してくれることが大切だと感じました。そのため、今回は、普段あまりこうしたイベントに参加しない社員にも来てもらうようにしました」

また、各ビジネス部門のビジネスリーダーにも事前にイベントの趣旨を説明、賛同してもらいました。

イベントは3部構成。

「Inspire!」と題した第1部では、ゲストスピーカーを招きました。人選の際、運営コミッティで議論を重ね、「SmartWork@GE」やツールといった見えるものを整備する以前に、何より大切なのは「働き方改革=自分ごと」と認識してもらうこと、だと行き当たり、参加者の誰もがイニシアチブに共感できるような内容にしたいと考えました。

そこで、「幸福学」を研究されている、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授をお招きしました。前野教授からは、幸福度と生産性が直結していること、そして提唱されている4つの幸福因子について学びました。

第2部の「Learn & Explore」では元Googleの、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏を招き、「Unlearning~常識を疑うこと~」をテーマに、現在の働き方に疑いの目を向け、より効率的な働き方が出来るのではないか・・・と考え、行動することの大切さを学びました。

前半2つのセッションを通して、働き方改革=自分ごと、という新たな観点に、参加している社員たちが大いに刺激を受けたようです。

また、GEパワーに所属し、火力発電所で働くエンジニアチームも登壇。新しいリーダーのもとで進められた“信頼と権限委譲”のマネジメントによって、実際に業務効率が上がった事例をシェアしてもらいました。身近な同僚のベスト・プラクティスをシェアすることで、内容に共感した社員が多く、細かくメモを取っている社員が多く見られました。

ぶっつけ本番!渋谷フィールド・トリップで得たもの

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▲実際のフィールド・トリップの様子

イベント・コミッティでは、座っているだけでは一方的で大きな学びにはならない、と考え、第2部の後半では、「スマートな働き方のシーンを探す」を目的として、出席した300人の社員が会場外に出る、フィールド・トリップを行いました。

半数は事前にアポイントをとった15社を訪問。社員がどのようにイキイキと働いているかを調査しました。残り半分の社員は、渋谷の街に出て、「スマートワークのシーンやヒントを探す」をテーマに探索に出てもらうことにしました。

フィールド・トリップの狙いを、人事部長を務める谷本美穂は「情報のインプットをアクションに活かしてもらいたかった」と語ります。

谷本 「行動の変化を起こすためには、インプットだけでは深い考察やアクションに繋がりにくいと経験から感じていました。「いい話」を聞いたあとは、外へ出て新しい刺激を得ることで、さらに自分たちを振り返る機会にしてもらおうと、300人フィールドトリップを企画。その効果を大きくするために、今回は参加者へ事前にイベントのアジェンダをシェアせず、フィールド・トリップもぶっつけ本番。みんな新鮮な気持ちで、必死に3時間のアクションをしました」

フィールド・トリップ中は、各チームがリアルタイムに社内SNSの「Yammer!」で訪問先やフィールド・トリップでの気づきを他の参加者たちにシェアすることで、それが刺激となってさらなる気付きの呼び水となっていきました。他社のユニークな取り組み、街にあふれる様々な働き方、多様な働く人などに触れることで、今後のアイデアが生まれる機会となっていったのです。

林 「日々の仕事に注力するあまり、日頃から意識していないと、外部とつながったり、新しい刺激を外から受けることは中々できません。自分の世界以外と交流し、異質なものに触れることを通して、自身の働き方と向き合うことができたら……そんな体験を多くの社員にしてもらいたかったのです。
“肌で感じてもらう”ことは大事なコンセプトだと思っていましたが、GEの社員は学びのスピードが速く、予想以上に多くの気付きを皆で共有することが出来ました」

社員が「幸福度」を考えた働き方改革のアクションをはじめた

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イベント第3部は「Reflect & Act」として、一日の学びを部門ごとのグループに分かれて共有すると共に、「明日からできるスマートワーク・アクション」をテーマにディスカッション。イベントをその日限りに終わらせないために、参加者全員で翌日以降のアクションについてかたり合いました。その後、全体で成果をシェアし、それぞれのアクションに結びつけていくことを確かめあって、イベントは終幕しました。

林 「座学だけにとどまらない、インタラクティブなアジェンダを盛り込んだイベントを成功させることにより、SmartWork@GEが人事制度だけを意味するのではなく、自分たちのマインドセットを変えること、というメッセージを深く理解してもらえたと思います」

イベント後のサーベイでは、参加者の97%が「参加する価値のあるイベントだった」と回答。

「働き方改革は社員がボトムアップで起こすものだと実感した」など、ポジティブなコメントも多数寄せられました。各ビジネス部門のリーダーから「その後のSmartWork@GEイニシアチブに関するアクションをサポートしたい」と、前向きなコミットを得ることができました。

イベント以降、それぞれの部門が創意工夫をこらして、「SmartWork@GE」の取り組みを進めています。

準備期間は約3ヶ月にわたり、本来業務のかたわら、週1回皆で集まってのコミッティミーティング、社内外の調整の難航など、一筋縄でいかないこともありました。しかし、当初目的としていたイニシアチブの浸透だけでなく、その後のモメンタムの醸成にもつながったことは、イベントの大きな成果だと感じています。

日々のコミュニケーションや取り組みの積み重ねも大切ですが、マインドセットを大きく変えるためのきっかけとして、イベントは重要な役割を果たしました。社員が働き方改革を自分ごと化することで、積極的に、そしてポジティブに取り組むことが出来るようになっています。

GEジャパンではこのモメンタムを失うことなく、継続していくこと、社内カルチャーの変革には大切なことだと感じ、今後も取り組みを進めて行きたいと思います。

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