子どもに誇れる仕事を。今までの歩みから選んだGPでの道

私はatGPコンサルティング室に勤務しています。2018年11月、ちょうど1年前に創設されたばかりのこの部署。主な業務は、通常のオフィスワークが難しい方や、就業に困難を抱える障がいのある方の就業支援です。工夫やアイデアにより、皆様の強みに着目した価値提供ができるよう日々奮闘しています。

私が今、こうして障がいを持つ方の就業支援を行うのには前職時代の経験が由来しています。もともと、大学卒業後から代議士の秘書として長年働いていたのですが、私自身が転職相談をしに行ったとき、「働くを楽しもう」というスローガンのもと、いきいきと仕事をしている人材業界の方々に出会いました。これまでの私は「働くとは責任である」という認識のもと働いてきたため、まったく新しい価値観を唱えている姿に興味を持ちました。それを機に人事業界に転職。そこでの経験がGPへの入社を決意させました。

前職の人材会社では、苦労している人、困難に直面している人たちに出会ってきました。たとえば、雇用形態のひとつを取っても、正社員・契約社員の差で苦しむ人がいます。

私が困難に直面している人たちと出会っていた、ちょうど同じ時期に子どもが生まれました。自分自身、「子どもにとって親がどんな仕事をやっているか」「何を理念として仕事に向かっているか」「どんな生活を送っているか」っていうのは、すごく大きな影響を与えるだろうなと思っていたんですよね。

そこで自分が価値提供できる場所はないかと突き詰めて考えたときに、本当に困難を抱えている人たちというのは、障がいのある人たちで、困難を抱えている人たちをサポートしていくことが家族にとってもいいことだと思ったんです。子どもに誇れて、良い影響を与えられる仕事がしたいという想いが芽生え、2017年の6月、GPに入社しました。

入社して2年半がたちましたが、 atGPコンサルティング室では、マッサージ、カフェのバリスタ、eスポーツの3つの領域で就業に結びつけることができています。それぞれ、障がいのある方の強みに着目して、就業につながっていったものですが、とくにeスポーツのプロジェクトは強く印象に残るものとなりました。これまで障がい者雇用とeスポーツの接点がなく、前例のない取り組みだったため、すべてが大変で、実現にとても時間がかかったのです。

前例のない挑戦。eスポーツで障がい者アスリート雇用を

日本で初めてeスポーツの採用を実現いただいたのは、テクノロジーで誰もが簡単に時代に合った最適な購買活動が行えるしくみを展開するBASE株式会社です。

2018年初頭に新規のテレアポ訪問をさせていただいた際に、アスリート採用をやりたいとコンタクトしていただいたことがきっかけでした。

アスリート採用が決定してからは、どのジャンルのアスリートにフォーカスを当てて進めていくかの議論を進めていき、陸上や水泳などのアイデアが上がるのですが、なかなか「これだ!」としっくりくるアイデアがありませんでした。

しかし、そこでBASEさんの社風を見たときに、毎月のように懇親会を開催されていて、社員の皆さんが自然発生的にゲームをやり出していることに気がつきました。もともとサービスを開発するエンジニアが多くいらっしゃる会社なのですが、エンジニアの道に進むきっかけとして初めて触れたのがコンピューターゲームやビデオゲーム、というような方が多くいらしたんですよね。

そこで、eスポーツで障がい者アスリートの雇用ができるかどうか、一度プロジェクト立ち上げてみましょうか、となったのがスタートでした。

ですが、スタート当時、そもそもatGPに障がいのある方で、eスポーツのアスリートとしての候補になりうる方がいらっしゃるのかという不安点がありました。

このことから、「eスポーツアスリートになりたいですか」という主旨でアンケートを行い、実際に候補者はいるのかを確かめました。すると予想に反して200名ほどの方から応募したいというご回答をいただいて。これだけいればうまく結びつけられるだろう、となったのです。

しかし、こうして候補者は見つかったものの、最終的に社内合意に至るところは苦労がありましたね。人様をeスポーツという形態で雇用していいのか、というのは最後の最後まであり、面接も3カ月くらいかけて、3回行われました。最終回は、まず社長に私が「eスポーツとは」というプレゼンの時間をもらい、その後、社長がご本人の面接をしてという形で行って、1年半という長い期間を費やしました。そうして、2019年7月に2名の障がい当事者の内定をいただくことができました。

今までにない“対等”のかたち。弱さが強さに変わる瞬間

私自身、1年半走り続けて、eスポーツは懐が深いなという印象があります。国籍、年齢、男女、障がいの有無……フィジカルスポーツに比べてこれらの影響を受けにくいんですよね。

近年、全世界でプレイヤー数が増え、必然的にいろいろな人が参加し始めることで、プレイヤーの多様性が生まれていて。その内、すべての参加者がゲームを通じて、平等な環境の中で戦っています。その環境が本当にダイバーシティだなと思ったんですよ。

私がeスポーツ選手の障がい者アスリート雇用を実現するにあたって、最も大切にしていたのは、アスリートレベルとして高いものを持っているということでした。eスポーツ界の中でも「実力は気にせず、障がい者も楽しんでゲームをしよう」というような福祉の世界観で展開しているすばらしい取り組みもあります。

しかし、私たちがつくりたかったのは、ゲームの中では何人たりとも平等で、競い合っている世界観。「障がいがあるけどめちゃくちゃ強い」。そういう状況が起こることを目指していました。

福祉の世界観を超えなければならないと思っていたので、健常者に混じっても、負けず劣らず強いと見られることを大事にしていましたね。

ですので、2名のうちの1名は、4億人のプレイヤーがいる「PUBG」というゲームの世界トップ100に入ったこともあるすご腕の持ち主です。

強みを生かす──。

また、障がいというマイナスの部分ばかりにフォーカスを当てるのではなく、その人の強みをきちんと生かしていくこと。一方から見ると障がいかもしれませんが、もう一方からすると強みとして捉えられます。

たとえば、発達障がいの方には過集中という特性があります。オフィスワークの中で見てしまうと、集中しすぎるがあまりに業務指示がうまく伝達されないなどの事故が起こりがちで、マイナスな障がいと捉えられることが多くあるんですね。

しかし、eスポーツでは過集中であることで、長時間常に集中してプレイできます。これはもはや障がいではなくて、むしろ強みでしかありません。発達障がいの方にとっても、それを強みとして生かしていける世界観がeスポーツにはあると思います。

だから、そうした強みにフォーカスをきちんと当てて、その方のスキルや価値を訴求していくことが大事だと思っていますね。

これまで就業に結びついてきた、カフェにしても、eスポーツにしてもその道のプロの先人たちはたくさんいます。ですが、カフェ×障がい者、eスポーツ×障がい者のような、それぞれの領域に障がい者を掛け合わせ、新たなプロを誕生させることでは、私がフロントランナーになれるんです。こうした観念を持つことも事業を創出する上では求められるスキルだと思っています。

小さくても確かな一歩。つながりがつながりを呼び、基盤をつくっていく

この2名のアスリート雇用を通じて、人的ネットワークは広がりを見せています。彼らの就業をきっかけに10社ほどでネットワーク体制が形成されて、eスポーツを拡大、訴求されていく。そんな体制ができあがり始めています。

2019年12月現在、eスポーツ選手の障がい者アスリート雇用の求人は3件ですが、10人、20人雇用したいという企業からの求人もいただいていて。今はまだ創出の時期、黎明期なので手探り感はありますが、実績に着実とつながっている手応えはあります。

もちろん課題はまだまだたくさんありますね。たとえば、eスポーツがもうからないというもの。参入する企業が多くなってきているのですが、まだまだビジネスとして成り立ってはいません。

なので、これから整備されていくスタートアップの時期において障がい者×eスポーツというのがどう価値があって、どう黒字化できるのかというところを考えなければいけないと思っています。「ゲームへの良き認知をつくっていく」これが今の目標です。良き認知をeスポーツを通じてつくっていきたいです。

こうして振り返ってみるとあらためて思いますが、人とのご縁は何よりも大事ですね。事業を創出する中で強く感じてきました。

かつて秘書だったときに関わった政治の世界では、仕事のいろはや仕事に対する誠実さを学びました。人材業界では、たくさんの人と関わる中で多様性のようなものを感じ取っていたと思います。そんなさまざまなステークホルダーと共にしてきた私ですが、GPには圧倒的な優しさを持つ、稀有な人が多いなと思うんですよね。そういう人と出会い、こういう環境で働かせていただけることに感謝しています。

もちろん、BASEさんに出会わなければ、今回のeスポーツ選手の障がい者アスリート雇用も生まれていなかったですし、人との輪があって、そこからアイデアが生まれるということはあるかと思います。

今では、私たちの取り組みにも注目、評価をしていただいて、東京都が初めて主催する「東京eスポーツフェスタ」にBASEさんと登壇させていただけることになりました。eスポーツ学の教授や病院の先生、障がい者×eスポーツであるわれわれと、eスポーツに先んじて取り組んでいる方にスポットライトの当たる企画になっています。eスポーツ選手の障がい者アスリート雇用への関心が高まっているように感じますね。

子どもに誇れて、良い影響を与えられる仕事がしたいなという想いでGPに入社して、今でも充分子どもに誇れる仕事だと言えますが、これで良し!というよりかは、まだまだ道半ば。満足することなく走り続けていきたいです。