失敗しても沖縄に帰ってくればいいーー沖縄県とスタートアップの温かい関係

2013年、政府は日本産業再興プランを発表しました。プランには長期にわたる不景気で4.5%にまで落ち込んだ開業率を10%まで上昇させることも盛り込まれています。しかし、実は沖縄県の開業率はすでに10%超。そこから垣間見れる沖縄に秘められたチャンスについて、当社代表の山口豪志が沖縄県産業振興公社の大西克典さんとともにお伝えします。
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沖縄県から世界に挑戦できるスタートアップを生み出すプロジェクト

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沖縄県産業振興公社は、2015年8月に沖縄県のスタートアップを支援すべく「ベンチャー企業スタートアップ支援事業」を立ち上げました。目標は沖縄県から世界に通用する会社、企業を輩出すること。そのために公募を行い起業家、スタートアップを見つけ出す、自治体と大学とつながりを作っていくなどの活動を行っています。

本事業の大きな特徴はお金が動かないこと。補助金などお金で支援をするのではなく、想いやアイデアを会社、事業に変えてビジネスにできるロジック、ヒントを提供しています。私、山口は起業家の発掘や事業化のお手伝いを。

実はお金よりも価値があるのが「事業化」。想いやアイデアだけでは夢物語ですが、会社を構え事業として成立すれば投資、支援をしてくれる人が現れてきます。まずは事業化を行い、最初の一歩を踏み出すことが大事。

大西 「プロジェクトを立ち上げて公社の支援を求めている起業家を探しはじめました。でも、どこを探せば出会えるかわからない状態。市町村や商工会議所、インキュベーション施設に足を運んでも、すでに事業化できている起業家ばかりでした」
ビジネスの幅が広くなるほど事業化は難しくなります。この難しさに挑戦しようとしている起業家のタネを探すため、大西さんは奔走していました。

多様性が実現し、挑戦と再起がしやすい風土

沖縄は豊かな自然に囲まれ「うちなーライフ」などのんびりした印象があります。「定年した後は沖縄に移住しよう」、そんなことを考えるかたもいるかもしれません。

しかし、のんびりした印象とは裏腹に経済的にはやや苦しい状況です。日本の平均開業率は4%ですが沖縄県は10%。この開業率の高さは、「自分たちでどうにかしなければ食べていけない」という想いのあらわれではないでしょうか。

この“苦しさ”はスタートアップの原動力になるようにも感じています。勢いのある起業家はみな原体験を持っているもの。原体験は、不足や課題を感じて「どうすればいいんだろう」と考えていくことで生まれます。この原体験がそのまま原動力に変わっていくのです。

資金や人の数では、東京をはじめとした都会に勝てません。しかし、ここが盲点。「都会には課題が少ない=原体験の素が少ない」ともいえます。不便を感じても、自分たちで解決するマインドがあればどうにかなる。起業する上で最も大事なマインドを体験でき、挑戦しやすいのが沖縄の最大の魅力なんです。

また、沖縄の “まぜこぜにした”という意味を持つ「チャンプルー文化」は、昨今注目を集めている「多様性」を体現しているともいえます。起業家たちの失敗も受け止め、再起しやすい環境ではないでしょうか。

こうした文化も開業しやすさに繋がっているとも考えられます。しかし、経済的な苦しさが起点となっているため、県内でだけでもビジネスがまわれば良かったのかもしれません。もっと上を目指す起業家たちと沖縄を牽引する企業を作っていきたい。それが公社の想いでした。

そんな公社と私が出会ったのはプロジェクトが立ち上がってすぐのキックオフセミナーでした。

若さと知見で沖縄に新しい風を吹き込む

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2015年9月に「地方発ベンチャー企業の創出~沖縄型ベンチャーエコシステムの構築~」をテーマにしたキックオフイベントを開催。講演を依頼されていたナレッジネットワーク株式会社の森戸裕一代表取締役が私を指名してくださり、トークセッションする場を設けてくれました。

大西「山口さんは若いのに東京でのスタートアップ経験を持ち、起業家たちから成功談や失敗談をたくさん聞いていらっしゃいます。セッションの後にお話ししたら、フットワークが軽く、視点も多いと感じました。このかたなら、私たちが探し出した起業家に新しい気づきも与えてくれると思ったんです」
大西さんはスタートアップの選出委員のひとりとして私を推薦。中小企業診断士や産業振興、金融公庫のかたなど、平均年齢50歳ぐらいのベテランが集まる中にひとり30代前半の若造が加わることになりました。

大西「山口さんは起業家と歳が近い。私たちベテランから見れば自分の子どもみたいですが、起業家たちにとっては頼れる兄貴のような人。ベテランがそのまま話しても響かないことでも、山口さんの言葉ならキャッチしてくれ新しい気づきにしてくれるんです」
起業家の中には沖縄県で生まれ育った人も多く、純粋に沖縄をどうにかしたいと考え、優れたアイデアを持っているかたも多くいます。こんな人材たちに私が都会の情報を伝えるなど、公社と一緒にサポートをしています。

また、東京や大阪で失敗をした人が移住し、再起をしようと機会をうかがっています。こうした人材、知見も飲み込んで、沖縄県から世界に挑戦できる企業を作っていきたいと考えています。

古き良き日本、失敗しても帰る場所になる

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沖縄を歩いていると気づくことがあります。人が温かい。そして、日本の古き良き時代、異文化を常に取り入れながら伝統的な部分が強く残っている。見知らぬ私のことも「いちゃりばちょーでー(一期一会)」と、まるで家族のように迎え入れてくれます。

独特の文化「ムエー(模合)」もユニークです。月1万円、5万円などを集めて、困った人がもらうシステム。東京だと誰かが持ち去ってそのままいなくなってしまいそうですが、沖縄では当たり前にいまでも行われています。

沖縄には、挑戦と再起、そして協力が当たり前のように存在しています。もし失敗をしても温かく迎え入れてくれる、帰る場所があるので失敗を恐れて小さくまとまる必要はありません。

大西「山口さんはNo.2の人。誰かを伸ばしていくのが上手い。都会の空気感も知っていますし、テーマを伝えればすぐに適任者を紹介してくれる。起業家だけではなく、私たちベテランたちにも新しい気づきを与えてくれるんです」
私自身、沖縄県にうかがうたびに新しい魅力に気づくことができます。地域活性化だけではなく、起業家たちに世界へ挑戦する足がかりとして、沖縄に目を向けてほしいと思っています。


参考:日本産業再興プラン

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