グリー事業拡大の舞台裏――。 逆境の中、組織がさらなる成長を遂げたワケ

グリー株式会社はモバイル版SNS「GREE」、ソーシャルゲームで急成長を遂げました。そして、目まぐるしく変わる環境変化の裏側では、高品質かつ安定したサービスを提供し続けるために、多くのエンジニアたちによる大改革が行なわれていました。

コスト抑制、エンジニア不足……。 度重なる課題に直面

▲大久保(前列左)、山田(前列右)を中心とするプロジェクトメンバー

24時間365日、休みなく稼働し続けるーー。

ゲーム事業を中心に、急成長するサービスを支える高品質のサーバーインフラは、1秒たりとも止めるわけにはいかない。それがエンジニアのプライドです。

しかし、フィーチャーフォン向けウェブベースのソーシャルゲーム市場から、スマートフォン向け、さらにはアプリ向けへと急速に市場環境が変化する中で、グリーの成長がピークを迎え、急激な成長フェーズから後退フェーズへと新たなステージに入りました。そこでグリーとしては、コスト削減を断行していくことになりました。

もちろんコスト削減の影響は既存事業にも波及することになります。その影響を受けたのがサーバーの構築や安定した運用を担うインフラストラクチャ部でした。

安定稼働していたサーバーインフラの削減、同時に老朽化した10,000台規模のサーバーの刷新が必須になりました。同部のエンジニアたちは、事業ごとに異なる複数の技術の提供、そして創業以来、過去のエンジニアたちが属人的につくりあげた既存のシステムの維持を求められます。同部のシニアマネージャである大久保 将は、現場メンバーに大きなストレスがかかっていたと振り返ります。

大久保 「実は当時、エンジニアの異動や退職が続き、最盛期にはエンジニア 120人を抱えていた体制を維持できなくなるほど、深刻な人員不足に陥っていました。当時は新規採用もままならず、部下の気持ちを束ねる管理職としても、非常に苦しい状況でした。そのうえ属人的につくられたシステムを一つひとつ紐解きながら、ストレスなくお客様へのサービスを維持するのは、指示を出す側としても非常に辛かったです」

そこで大久保が決断したのが、インフラと組織の大改革に乗り出すことだったのです。

改革派と保守派のあいだで徹底的に「人」と向き合い続けた日々

▲開発本部の技術領域

改革のメスは、既存事業の“常識”ともいえる分野にも次々と入りました。

業務の可視化、老朽化したオンプレミスのサーバーからクラウドへの移行における課題は山積……。そこで大久保は、改革プロジェクトごとに5人のマネージャを抜擢しました。その中でも、全体を統括する大久保がもっとも配慮したのがマネジメントの側面でした。

大久保 「 IT業界ではエンジニアが仕事を選びます。環境の変化で業務環境が悪化すれば、エンジニアが会社を離れてしまう可能性も低くはありません。ですから、どんな改革でも現場の理解を得ないままに強引に進めることだけは絶対にできませんでした」

新しい技術を学びたい、伸ばしたいと賛成するエンジニアもいれば、これまで積み重ねた知識を失うかもしれないと抵抗を感じるエンジニアもいます。特に、クラウドへの移行には、自社でサーバーを保有するオンプレミスの技術が不要になるのではと不安に感じたエンジニアは多かったはず。もちろん社内での衝突もありました。そんなときは、エンジニアの不安を解消するよう、エンジニアの信頼も厚く、大久保の上司でもあるCTOの藤本 真樹に調整役を依頼したこともありました。

大久保 「自分が常に正しいとは思わないから、わからないときは信頼できる部下や他部署の方にも話を聞き、多くの判断材料を集めてから判断をしました。トライアンドエラーとは言うけれど、情報収集とその裏付けを取ることは必ず行ないました。できるだけエラーは出したくなかったんです」

2017年当時、クラウド化の潮流の後押しもあり、現場の理解も深まるようになりました。しかし組織の改変でも、さまざまな反対意見は続きます。既存の技術専門チームを廃止し、縦型組織のチームに加え、エンジニア同士で分担できる横串の技術ユニット制を導入する案に対し、既存の評価ベースを踏襲すべきという優秀なエンジニアもいたのです。

大久保 「集団になるとトップ層の優秀なエキスパート、反対にキャリアの浅いエンジニアなどいろんな人がいます。そのどちらに合わせても全体はうまく回りません。上に合わせればついていけなくなる人もいますし、下に合わせれば成長がない。だからちょうど真ん中に軸を置いて、横串しで相談できる組織をつくる必要があります。反対意見の人には、継続して丁寧に話していきました」

少しでも不満だという声を聞くと、いまでも大久保は、ときには飲みに誘い、ときには会議室で、時間をつくり真摯に話し合いました。

大久保はなぜそこまで向き合うのかーー。

大久保 「組織は人でできているから。サービス業である以上、組織がくずれるとお客様にご迷惑をかけることになるからです」

どんな困難をも乗り越える 高品質なインフラを提供してきたというプライド

▲開発定例の様子

5人のマネージャには、あえて技術に精通していない、現場により過ぎない立場の人材を配置。よりフラットな視点で、わかりやすく報告できるカルチャーをつくりたいと考えたのが、その理由でした。

大久保 「マネージャにはこまめに報告をもらい、取りこぼしそうだったり、リスクが発生しそうなものは、私が早い段階でつぶすようにしました。彼らも情報がないと自分の視点に寄りすぎて、黄色信号や赤信号になっているのに気がつけない。そこで私に情報を集約して、全体的な視点から軌道修正ができるようにしたんです」

各マネージャが担当するのは、運用面での体制強化、コスト削減、クラウド移行など分野もさまざま。改革遂行の困難さもそれぞれに違います。しかし5人全員に共通していたものが、ひとつあります。それは、「お客様のインフラ環境にプライドを持っていること」だと大久保は断言します。

2018年現在グリー開発本部では広告システムや動画、エンターテイメントのインフラ環境にも業務を拡大していますが、今回のマネージャたちは皆、もともとゲームのインフラを担当している部署の所属でした。ゲームは1秒でも通信が遅れるとお客様が離れてしまう。より高い技術が求められるシビアなジャンルです。

大久保 「自分たちは高い技術力をもち、それを発揮して、お客さまに不便をかけない環境をつくり、楽しんでいただいている。その環境を“つくっている”というプライドは、5人みんなに共通していました。だから、みんなしんどくてもやり遂げられたんだと思います」

グリーの代名詞ともいえるゲーム事業、そこで自分たちは確実に高品質なインフラを提供している。その実績が自身のプライドとなり、どんな困難も乗り越えられる礎となったのです。

次なるステージへの環境は整った。いま、さらなるチャレンジへ

▲エンジニアの作業風景

約2年間にわたり行なった改革を経て、サーバインフラは無事にクラウドへの完全移行を達成。さらに技術支援体制も整い、組織のナレッジを生かした技術サービスを外販することで年商1億円を実現できました。

業務改善の効果もあり、2016年9月に80人だったエンジニアは、2018年9月にはエンジニア37人、業務委託メンバー25人となりました。組織そのものはスリム化されながらも、効率的に働けるようになっています。

運用チームのマネージャをつとめた山田なぎさは、新しいユニット制の組織になり、以前より“チームワーク”を感じることが多くなったといいます。

山田 「以前はやはり属人的というか、パフォーマンスの高いスペシャリストに頼ってしまう部分が多く、エンジニアは個々に仕事を進めている印象が強かったんです。
でも改革後のユニット制はチームとして人を育成する役割もあるので、教えあう風土がより根付きました。頼れるチームがあることは私自身も嬉しいし、みんなにも喜んでもらえてるかなと」

もともとグリーには「働きやすくて、相談しやすくて、困っていたら助けてくれて……。そんな社風がある」と大久保はいいます。しかし、今回組織を改変したことで、より助け合いやすい環境が整いました。グリーのよき社風の密度が、より濃くなったといえます。

大久保 「環境の改革に注力していたあいだ、グリーがもっとも得意とする新しいチャレンジがしばらく減っていました。でも環境は整った。社会に貢献できるような技術的な開発をみんなでやっていこうよと、いまはそんな想いです」

大きな改革がひと段落し、今、グリーのエンジニアたちはさらなるステージへと踏み出しました。

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