風俗業界の「出口」の課題解決は、“ありのままの自分”でいられる支援を行うこと

"夜の世界"に内包している課題を解決する一般社団法人GrowAsPeople。業界に対する“価値観”ではなく、定量的な“事実”を分析した代表理事 角間惇一郎は、「どんな状態からでも次にいける社会」の実現を目指し、風俗で働く女性のセカンドキャリアを支援しています。その“孤立をなくす”活動の原点は、一体どのような経験だったのでしょうか?
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風俗で働く女性は、“悲劇のヒロイン”なのか?

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突然ですが皆さんは“風俗”で働く女性(=キャスト)について、どんな印象を持っていますか?

健全じゃない。働きたくて働いているわけじゃない。事情によりやむを得ず、その業界に足を踏み入れた“悲劇のヒロイン”である——。そのようなイメージを持つ方が多いかもしれません。

このように、“風俗”について抱く印象は人それぞれ。しかし、一般社団法人 GrowAsPeople を立ち上げた代表理事 角間惇一郎は、これらとは違った見解を持っています。

「僕自身もかつてはそうでしたが、サラリーマンだって毎朝の満員電車に乗って出社するのは、嫌なはず。皆がみんな、自分の仕事が好きで、本当にやりたい仕事をしているわけじゃない。それは、『風俗で働きたくないのに働いている女性』と何も変わらないと思うんです」(角間)

“職種”というフィルターを外してみると、他の人と何も変わらない。性という人にとって身近なテーマだからこそ、各々の“価値観”で判断されがちですが、角間はあくまで定量的な「事実」と向き合うことを貫いています。

世間で議論されるのは、風俗に足を踏み入れないようにするにはどうすれば良いか、といった問題。貧困を無くすべきだ、奨学金が負担になっている……など、「入口」を防ぐようなことばかりいわれています。

それは啓発に過ぎず、今困っている人の救済ではありません。まして、この「入口」は実に多様であり、ひとつの“穴”を埋めれば、それで全てが解決するといったものではないのです。だからこそ角間は「出口」に着目し、それを解決するソリューションを提供しています。

どんな人であっても“孤立”せず、「 way i am(ありのままの自分)」として生きていける……。そのような考えに至るまでに、どのような経験してきたのか。角間と GrowAsPeople の歩みとともにお話しします。

ある事件をきっかけに、風俗の現場を知るため“脱サラ”

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一般社団法人GrowAsPeople 代表理事 角間惇一郎
角間は大学卒業後、建築業界に勤めながら、まちづくりNPOに携わっていました。

NPOに携わっていた動機は、「社会課題に取り組みたいから」ではなく、社会課題に向き合っていることが「かっこいい」「褒められる」「しかも儲かる」 そんな“ファッション感覚”でした。

しかし、とあるNPOのイベントを主催したとき、その考え方がガラリと変わります。イベントに参加していた風俗店オーナーとの会話は、当時の角間にとってはとてもショックなものでした。そのオーナーは「このままだと日本がやばいと思ったからこのイベントに参加した」というのです。

「今までは、発展途上国の環境をどうするかばかり考えていたのですが、国内の人が、NPOが全く考えていなかった現実を憂いていることを知りました。なんだか、自分がとても恥ずかしくなったのです」(角間)

さらに、そのオーナーの話を聞いていくと、キャストの悩みは多岐にわたることがわかりました。そのため、店のオーナーやスタッフは、キャストの精神的サポートも行っています。夜中に携帯が鳴れば駆けつけ、仕事だけでなく個人的な相談まで……。日々このように向き合い、キャストだけでなくオーナーやスタッフまで精神的に疲弊していることを知りました。

その翌日、「大阪二児遺棄事件」が起きました。それは、風俗で働く母親が、ホスト通いで家に帰らず、子どもを餓死させてしまったという悲しい事件でした。

「世間的には、『母親が悪い」『子どもがかわいそうだ」と煽られていましたが、僕は、母親の働いていた風俗店のスタッフは何をしていたのだろう?ということが気になりました。家に帰っていないことや、母親の異変にスタッフが気づくことができたかもしれない。もしかしたら、子どもを餓死させない予防策があったかもしれない、と」(角間)

この事件をきっかけに、角間は当時勤めていた建築会社を退職。

風俗の現場を知るために、イベントで出会った風俗店のオーナーを訪れ、「会社を辞めたので働かせてください」とスタッフとして働くことになったのです。

「入口」はさまざま…でも「出口」は共通していた

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東京・鶯谷周辺
現場で多くのキャストとともに働くことで、角間は、風俗への「入口」が実に多様であることに改めて気づかされます。

そして、どう支援をしたらいいのか?と問えば、「ここから救い出してほしい」ではなく、「優良な顧客を見つけてほしい」というサラリーマンと同じような答え。外から見ているとなかなか気づかないことですが、他の人と変わらず生活のために仕事をしているのです。

彼女たちに対して、「仕事をやめるべきだ」「健全じゃない」などと、性に対する“価値観”を啓発することは、生活のための仕事を奪うことに他ならず、本質的な“救済”になっていないのではないかと、角間は考えはじめます。

全国の風俗店スタッフと連携して、キャストに関する数量データを収集。そこから浮かび上がる“事実”を可視化させ、そこからソリューションを設計しよう。その協力を得るためにも角間は、WEB集客やデザイン周りなど、得意とするノウハウを惜しみなく周囲に提供してきました。

そして、結果として、浮かび上がった“事実”は、風俗で働く女性が“孤立”してしまっていることでした。

風俗業界では、70%近くの割合がデリバリーヘルスで、24時間営業が多い。キャストは常にお客様のところにひとりで行くので、同じお店で働くキャスト同士のコミュニケーションもないため、相談できる仲間もいない。そしてお店のオーナーやスタッフも、“夜の世界”しか知らないので、風俗の枠内でしかソリューションを提供することができないでいたのです。

さらに判明したのは、20代前半、30歳など、年齢を重ねていくと、どんなキャストであっても40歳で “ピーク”を過ぎ、あまりお金を稼ぐことができなくなってしまうこと。そこでセカンドキャリアについて相談したくても、身を明かして相談できる相手がおらず、“孤立”状態に陥っていました。

「風俗の現場でわかったことは、『入口』はさまざまで、ボートに小さな“穴”が空きすぎて、ひとつ塞いでもすぐに浸水してきてキリがない状態だということ。でも『出口』の課題は共通して、セカンドキャリアへの壁。であれば、それを支援しようと考えたんです」(角間)

way i am ——ありのままの自分で、人生を過ごしてほしい

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1週間限定のチャリティ Tシャツのデザイン
こうして角間は、2012年にGrowAsPeopleを設立。身を明かしてセカンドキャリアの相談できないというキャストの “孤立”状態をなくすために、月間累計三十一人のキャストの支援を行っています。

私たちは、キャストにとって「ありのままの自分」でいられる場所であり、その後の人生も「ありのままの自分」でいられるよう、支援する団体でありたいと考えています。

別に風俗を肯定するわけでも、否定するわけでもありません。ひとりの“人”として壁になっている“孤立”という課題に対して、ソリューションがあってもいいのではないか? そう考えて、これまで活動を行ってきました。

その活動を、多くの人たちに知ってもらいたい。そんな気持ちで、チャリティTシャツを発売しています。

Tシャツのコンセプトは、「 way i am(ありのままの自分)」。

現在、GrowAsPeopleで支援を受けた女性が、自分らしく「way i am」になっています。そのような女性を増やしていきたい。そして風俗、女性に限らず、どんな人であっても“孤立”しない社会を目指していきたい。

「どんな状態からでも次にいける社会」 それが私たちGrowAsPeopleの想いです。

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※売上金の一部は、シングルマザーの支援金として寄付されます。

GrowAsPeople のホームページはコチラ( http://growaspeople.org/

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