“世界一ワクワクする”印刷工場の新たな挑戦ーーオリジナルの布をプリントするサービスで、繊維産業へイノベーションを起こす!

クリエイターと印刷業をつなぎ、繊維産業の改革を目指す「HappyPrinters」。私たちが新たにはじめた「HappyFabric」というサービスを利用すれば、オンライン上のオリジナル布をプリントし、誰でもデザイナーになることができます。さまざまなデザインの印刷を可能にし、ファブリックの世界に新しい風を吹き込む…。それを実現する“オープンなしくみ”とは一体どのようなものなのでしょうか?
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2人の出会いと「HappyPrinters」の立ち上げ

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HappyFabricの堀江賢司と杉原彩子
「HappyFabric」のサービスを提供する、「HappyPrinters」は布の印刷業のプロである堀江賢司と、グラフィックデザイナーの杉原彩子の出会いからはじまりました。

熱い想いを共有した2人は、すぐに意気投合。小さいけれど世界一ワクワクする印刷工場を目指し、UVプリンターやレーザーカッターを備え付けたスペースをオープンします。さらに裏原宿にある印刷スペースでは、デジタルファブリケーションのマシンを備えており、「作る」を身近なものにしてきました。

そんな活動もすでに2年を超え、もっとワクワクすることをやりたい!と新しくはじめたのが、「HappyFabric」というオンライン上のオリジナルファブリックをプリントするサービスです。

ここでは、誰でも好きなデザインをアップロードし、1mからオリジナルの布をプリントすることが可能です。サイト上には、世界中のクリエイターによってアップロードされたデザインが集まります。

クリエイターは、自分のほしいデザインの布を作り、それをサイトを通じて販売することも可能です。そして、アップロードされたデザインの中から、誰でも面白いデザインの布を選び、購入することもできるのです。

2人がこの「HappyFabric」を通して実現したいこと、たくらんでいることには、夢がいっぱい詰まっています。

<2人の出会い>

はじめて2人が出会ったのは15年ほど前。「HappyPrinters」を一緒にやることになったのはごく最近で、当時はたまたま2人とも、転機のタイミングだったから…というのも、起業の大きな理由だったのかもしれません。

杉原 「最初は、堀江の実家がのぼりやさんだって思っていたくらいなんですよ。でもフリーになって、布に印刷をやりたいなって考えて、そういえばって思い出したりはしました」


堀江 「当時、2012年ごろでしょうか。僕は堀江織物でも、何か新規事業をしたいと思っていましたし、デジタルファブリケーションを使うFABの世界も気になりだしていました。Fabric Labって検索したらFabLabが出てきて、FabCafeがオープンしたことも知りました。どうも面白いことが起きてるぞっていうことがわかってきた頃で、そこで何かできないかなと思っていましたね」


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「FAB」という言葉はまだまだ耳馴染みがないかもしれませんが、デジタルファブリケーションを通じた新しいものづくりのことを指します。特にUVプリンター、レーザーカッターや3Dプリンターなどのデジタル工作機器を使うことで、誰もが簡単に、素早くものづくりを体験できるようにすることを目指しています。

これをパーソナルファブリケーションといいます。そしてできた作品のデータをインターネット上で公開・シェアしていくことで、世界中で新しいものづくりのシーンを共有していくという活動が活発になっていくーー堀江は、この世界のものづくりムーブメントに魅力を感じたそうです。

オリジナルの布を使ったワークショップが大反響

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ワークショップで作ったオリジナルファブリックのスツール
堀江と杉原の出会いは、まさにニーズを持ったクリエイターと技術をもったビジネスマンのマッチング。そしてタイミングとしても、渋谷で「FAB」などを通じた新しいものづくりが活発化していたときでした。

杉原 「まずは、大垣でやっていたメーカーフェアで、布で人形を作るキットを販売しました。デジタルプリントがいかに綺麗かを伝えるため、あえて水彩の繊細な色合いを活かしたデザインにし、布に切り取り線も印刷したキットを作ったんです」


そして2人は、ますます「FAB」やメーカーズムーブメントの面白さに魅せられていきました。

杉原 「ちょうどイヌイットさんでスツールを作るワークショップを行ったんです。自分の好きな布を持っていき、オリジナルスツールを作るワークショップだったのですが、せっかくなら市販の布じゃなくて、自分でデザインした布で作りたいなって思って。でも、いざ布を少量で作ろうとすると、そのサービスがいまいち使いづらかったんです。そこで堀江に頼み込んで、少量の単位でオリジナル布を作ってもらいました」


オリジナルの布を持ってワークショップに参加したところ、思っていた以上の大反響があったとか。

杉原 「当時、オリジナルの布を使っているというだけで、すごいテキスタイルデザイナーさんなんですか??って驚かれました(笑)イヌイットの犬塚さんには革命ですね!とまで言っていただいたので、もしかしたらニーズがあるんじゃないかと感じて…。そこで『お店でもやる?』とふんわり話していました」


話が盛り上がった2人。「オリジナルの布を作りたい!」「個人でプリントが出来る場所を作りたい」という思いから、物件を探しだしたところ、タイミングよく今の場所が見つかったのです。

「HappyPrinters」始動。そして、「HappyFabric」の展開へ

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HappyFabricのプリントされた生地サンプル
堀江 「最初は、布のプリンターを入れようとしたんですけど、熱がすごい、匂いはでる、電気代もすごい発生するということがわかったんです。テキスタイルプリンターを導入するのは、物理的に無理だなって」


布にオリジナルの柄をプリントするサービスを提供することを目指していた2人ですが、一度はその夢を断念します。とはいえ、諦めずにUVプリンターを導入して、デジタル印刷のサービスを提供することからはじめる方向に舵をきります。

堀江 「本当にタイミングはよかったみたいで…。ミマキさんや、色々なメーカーさんが、ショールームを一般解放しようとしていた時期で、私たちがやろうとしている構想を話したことで、積極的に協力してくれたんです」


スタートから、色々な企業にお願いして、巻き込むことに成功した2人。機械や技術の提供の協力を得て、堀江と杉原の2人でソフトを考えるという関係性を築けたのが、この活動の最初の一歩となりました。

堀江 「まずは得意なことをやろうとしました。僕は印刷の専門だし、杉原はデザインやディレクションができる。それをあわせて楽しいことだけやろうと思いました。でも、フルサービスを提供する印刷業とは違って、一緒に作るという感覚を共有するのは難しかったんです」


そんな中はじまった「HappyPrinters」でしたが、徐々にと人が集まるように。

杉原 「ネットで頼むプリントと違って、お店に来て、相談するということのハードルが低いからか、iPhoneにプリントしたいとか、ふんわりと相談しに来てくれる人が多かったですね。お客さんと一緒に作ることで、裾野が広がっていく感じがしました。そんな中で、オリジナルの布を作りたいという個別の相談があったりして、受注することもできました。改めてニーズがあるなと感じましたね」


堀江 「フラッグシップとしてのお店があって、そこで人とのつながりを作る。その上で、ウェブサービスで注文を受けて、工場で本物の布のクオリティのものを作る。そんなサービスがあったらいいんじゃないかと、改めて思いました。そこで『HappyFabric』のサービスを本格的に始めようと考えたんです」


2人が考えたのは、工場寄りのデジタルファブリケーションの実現。なるべく人の手を介在せず、自動化すれば、今まで企業が面倒くさがっていたことが、簡単にできる。そうすれば、本当に「FAB」をやりたい人、オリジナルの布を使って何かを作りたい人へと届くのではないか。そんな思いを新たにしたそうです。こうして生まれたのが、「HappyFabric」のサービスです。

野望:テキスタイルデザインのアーカイブとして、新しい産業を生み出したい

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事業展開ロジックモデル
2人には、このサービスを通じて実現したい夢があるそう。

杉原 「私は、ものを作る楽しさと大変さを伝えたいなと思っています。なんでも機械を使えばすぐ作れるというわけではないので、お客さんのお手伝いをしながら、一緒にものづくりをしていきたい。このサービスがデザインのアーカイブとして機能したら、もっと面白くなると思います。そのままにしていると消えていってしまう、テキスタイルのデザインを集めて、いつか『HappyFabric』のデザインと一緒に紹介したい」


すでに2人のもとにはいくつか、廃業する染め物屋などから、古い型紙をどうしたらいいかなどの相談が舞い込んでいます。残念ながら、伝統的な繊維産業の繊維問屋や染色業者などの中には、店じまいを余儀なくされている人も増えてしまっています。しかし、そこにある技術やデザインなどの蓄積を保存することで、新しいクリエイションにつなげることができると考えています。

堀江 「現状では、国宝級のものしか残らないんです。でもヨーロッパのアンティークみたいに、もっと古いものが身近に残ったら面白いですよね。例えばうちのおばあちゃんの着物の柄を残したいとか。そういうものをデジタルデータにすることで残していけないかなと思っています」


杉原 「デザインのアーカイブがあれば、クリエイターにとってもデザインソースになりますし、ものづくりの幅が広がると思います。今はデザイナーと名乗らないとデザインできないような雰囲気があって、一般の人はデザインをすることに抵抗があるのかもしれません。でも本当はデザイナーになるために資格がいるわけではないですよね。なるべく色々な人に、子供の絵とか、塗り絵とかどんなものでも布に印刷したらどうなるのか試してもらいたいなと思います」


堀江 「今は物理的なものづくりから、デジタルなものづくりへ移行してきています。今の産業構造だと、布の在庫を抱えることが難しいため、どこも売れそうなデザインの布しか作らない。でも、デジタル技術を使った、受注を受けてからのテキスタイルプリントサービスを提供することで、在庫管理の問題はなくなります。そうすれば、売れ線の布ばかりを作っている現状からみんなが自由になり、どんどん魅力的なデザインの布が生まれるようになる。買う人はカタログから選ぶように布を買うことができるようになり、今までの布にはなかったデザイン、デジタルでしかできないデザインが増えてくると面白いなと思います。そして、クリエイターはサービスを通して自分のデザインを販売し、利益を得ることが出来る。この仕組みが新しい繊維産業、印刷産業のあり方の1つになれたらいいですね」


デザインのプロも、アマチュアも、自由に新しいデザインの布を作り、それがアーカイブされ循環する仕組みができれば、クリエイションも加速し、産業自体が活気づくのではないでしょうか?

今の時代だからこそできる、ビジネスとクリエイションの循環をじわじわと始めること。今ある技術でできることをするだけではなく、アイデアが最初にあり、それを形にしていくことを可能にする1つのしくみを作る。

「HappyPrinters」の2人は、その挑戦を続けていきます。

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