「慶應卒&実家は病院」何不自由なく育った代表芦川がベンチャーで勝負に出た理由・前編

実家の病院を継ぐことを選ばず、起業家を志した株式会社ハッピーズ代表取締役・芦川泰彰。医者の道に進めば一生安泰であったはずの芦川が、なぜあえて波乱万丈な起業家への道を選択したのか。未来を動かすきっかけとなった「ホンモノとの出会い」と、創業までのストーリーを語ります。
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上場企業の創業者が教えてくれた「起業のススメ」

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▲起業のキッカケをつくってくれた上場企業創業オーナーと(写真左から3人目が芦川)

私は公立の小学校に通いながら、中学受験塾に通っていました。その塾の創業オーナー(以下、当時のニックネーム「ウマ先生」)は母の中学時代の家庭教師でもあり、私が幼い頃からよく面倒を見てくれました。

子ども好きで勉強を教えることが得意なウマ先生は、創業した学習塾を全国展開し、一代で上場企業へと築きあげた“やり手経営者”でもありました。

私は小学3年の頃からウマ先生のもとに通っていたのですが、塾に行くというより「放課後友達の家に遊びに行く」という感じでした。勉強を教えてもらうだけでなく、夕飯を一緒に食べたり、別荘や昆虫採集に連れて行ってもらったり、高級車に乗せてもらったり、多くの時間をウマ先生と一緒に過ごしました。

そんなウマ先生から教わったのは、“成功者の帝王学”です。「成功すると唱え念じ続けろ」「人と同じことをしてはダメ」「リーダーは孤独に耐える」「戦わずして勝つべし」「明るく元気で遊び好き、欲が深くていいかげん」などといった刺激的なキーワードの数々。なかでも、一番に言われたのは「起業して上場しろ」という言葉でした。

「起業」「上場」の意味もわからない頃から言われ続けたので、「僕もいつか起業して、上場することになるんだな」と小学生ながらに思っていました。たとえるなら、実家が商売をしている子どもが、将来後を継ぐことを当たり前だと思うようなイメージでしょうか。

そしていつしか、「好きなことを仕事にして、自由に時間とお金を使える人になりたい」「世の中がハッピーになるような新しい価値をつくっていきたい」という意志が固まっていました。

幼少期を上場企業の創業者とともに過ごすという貴重な経験のなかで、進むべき道が明確になったことはとてもラッキーでした。また、自分のなかにブレない軸ができたことが、今の強さにつながっているとも感じます。

そんな私に対して、父は一般的な考えを押しつけませんでした。「医者になって病院を継げ」と言うこともなく、私の希望する選択肢を自由に選ばせてくれたのです。そんな父には、今でもとても感謝しています。

余談ですが、ウマ先生の息子さんも起業家でした。日米同時上場(東証マザーズ&ナスダック)を成し遂げられており、上場体現者が身近にいたことも、私にとっていい影響となっていると感じます。

背中を押してくれたのは「ホンモノのお金持ち」との出会い

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▲慶應義塾高校時代、後夜祭MC仲間と芦川(左)。帰宅部として遊びに精をだしていました

中学受験を無事に終えた私は、慶應義塾中等部に入学。バスケ部に入部し、仲間とともに充実した日々を送っていました。

学生生活に慣れてくると、慶應のご子息・ご息女は「桁違いのお金持ちである」という現実が見えてきました。私の父は開業医でベンツにも乗っていたので、それなりのお金持ちだと思っていましたが、上には上がいたのです。

親が上場企業の経営者なんていうのは当たり前。某大手電気機器メーカーの創業一族や、プライベートジェットを持っているという超富裕層などの存在には、さすがに驚きました。友人宅はとんでもなく大きく「これぞ慶應、ホンモノのお金持ちはいるんだな」と衝撃を受けました。

しかしそのとき私が感じたのは、ひがみや悔しさではなく「格好いい、いつか自分もこうなりたい」というポジティブな感情だったのです。

そこで、お金持ちの友人たちの親御さんはどういうセグメントに分けられるだろうと自分なりに分析してみると、大きく4つに分類することができました。

①大企業の創業一族 ②士業(弁護士・医師・会計士)③エリートサラリーマン④中小・ベンチャー企業のオーナー社長です。

①〜③が圧倒的にすごいのかと思っていましたが、実は④中小・ベンチャー企業のオーナー社長たちが、かなり豊かな生活を送っていたことがわかったのです。当時の私は中小・ベンチャー企業の名前もほとんど知らず、仕事内容を聞いてもさっぱり理解できなかったので、なぜそれほど彼らにお金と時間の余裕があるのかわかりませんでした。

ただ、比較するわけではありませんが、①〜③に属する親御さんより、中小・ベンチャーオーナーの親御さんと話をする方がなぜかワクワクしました。仕事の内容や将来の夢を熱く話す姿が、私には格好よく映ったのです。

ひとことでいえば「お金持ちのパパ」でしたが、彼らの姿・立ち振る舞いには、素敵なストーリーを想像させる何かがありました。

「ホンモノのお金持ち」と過ごした中高校時代を通して、「起業して事業を起こそう。そして絶対に成功しよう!」と強く心に決めたのでした。

「とんでもない努力家」学生時代に私が出会った世界のエリートたち

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▲世界的バイオリニスト・五嶋龍をはじめ、日本&世界で活躍している仲間たちと (写真は2012年)

高校までは慶應の世界にどっぷり浸かったので、大学からは非慶應コミュニティと交わろうと決めていた私。

そこで、まずは「頭がいい人」を戦略的に見つけにいくことに決めました。友人の紹介で、鈴木寛議員が主催する「すずかんゼミ@東京大学」に潜り込んだものの、ゼミの内容が一切わかりません。

日本語なのに、ここまで理解できないものかと悲しくなりました。そこで、知ったかぶりすることなくたくさんの質問をぶつけると、優しい東大生たちは受け入れてくれ、すぐに仲良くなることができました。

そんな仲間のつながりで、ハーバード大学のリッキーという学生と出会いました。ビジネススクールに日本人はたくさんいますが、学部生はほぼいないので、彼はレアな日本人だったのです。大学の長い夏休み期間を利用して、日本のコンサル・外資系金融機関でインターンをしていたリッキー。

インターンとはいえ、過酷な労働時間のなか業務に携わり、どんなに忙しくてもとことん飲み、食べ、遊び尽くし……。そんなリッキーと触れ合い、世界のエリートの底なしの体力を実感しました。闘いに必要なものは、なによりも体力だなと。毎晩騒ぎ尽くし、本当によく遊んだ大学1年の夏でした。

そしてもうひとり、私に影響を与えた人物がいます。リッキーの後輩にあたる、五嶋龍という世界的バイオリニストです。バイオリンひとつを武器にハーバード大学に入学し、若き頃から世界のVIPを相手にコンサートをしている彼の生き様は、とてもまぶしく映りました。

なんでも、カリブ海に浮かぶ客船にヘリコプターで行き、ビル・ゲイツなどのVIPを前に2億円のバイオリンで演奏をしたとか。「そんな20歳いるのか?」と本当に驚きましたが、若い頃から世界で活躍するホンモノと触れ合えたことも、大きな刺激になりました。

リッキーや五嶋龍をはじめ、世界のエリートたちはとにかくストイックです。飲んだ後でも、仕事やバイオリンの練習には真剣に向き合っていました。人並み以上の才能を持ち、すでに社会で活躍しているにもかかわらず、さらに量をこなして質を高めにいくというストイックな姿には、同世代ながら感銘を受けました。

“普通に”努力するだけでは勝てない。“とんでもなく”努力すれば、世界で勝てるかもしれないと、強烈に感じたのです。2人との出会いを経て、私自身も人並み以上の努力をしようと決心することができました。(リッキー&龍、いつもありがとう!!)

学生起業の光と影。そして芽生えた仲間との熱い絆

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▲大学で起業したベンチャー企業。中央下段が芦川(写真は2010年)

大学在学中、私は「すずかんゼミ@東京大学」で出会った仲間たちが起業したベンチャーにジョインしました。事業内容を決めずにスタートした会社は、創業3カ月で1億円の調達に成功。

現在では資金調達環境が整っており、比較的容易に億単位の調達が可能になりましたが、当時はリーマンショック直後。マーケットも冷えきったなか、1億円調達しきったのは我ながらすごいことでした。マンション1室からスタートし、1年に1回は拡大移転をするほどのイケイケのベンチャー企業でした。

当時はとにかく働きました。毎日午前8:00〜午前4:00まで仕事をし、日曜日の午後だけなんとか休んでいた記憶があります。もちろん長時間労働は疲れましたし、辛いこともありましたが、仕事をすればするほど会社、そして自分自身の成長が感じられる環境は、何より私にとっては楽しかったです。

上司や先輩がいなかったので、「世の中の普通」がわからず苦労したこともありました。けれどそんな状況でも「調べること」「見様見真似でまずはやってみること」というベンチャーの基礎体力を身につけられたのは財産です。

この学生起業は、創業3年目で経営破綻という結果に終わってしまいましたが、普通の大学生活では得ることができないような苦労や経験を積めたことには感謝しています。

当時の仲間とは今も切磋琢磨し合えるいい関係で、彼らは現在エネルギー系ベンチャー創業、ゴールドマン・サックス、マッキンゼー・アンド・カンパニー、上場企業役員、ベンチャー社長など、各方面の第一線で活躍しています。

10〜20年後には、お互いの強みを生かしたビジネスで手を組み、世界を舞台に一緒に挑戦していこうと計画しています。だからこそ、今自分が最大限価値を生み出せること、つまりハッピーズでの活動を通じて、新しい価値を創造し、世の中をハッピーにしていきたいと思っています。

10〜20年後もしっかり世の中に貢献できる企業にするためにベンチャーで勝負していこうと決めました。

(後編に続く)

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