看護師の私が在宅医療の夜間コールセンターで働く理由。電話口から声で伝える看護

看護師として10年以上のキャリアを築く吉岡純子は、2018年4月、医療法人社団平郁会に入職。平郁会の夜間コールセンターの開設に携わり、リーダーとして活躍しています。これまでの経験を活かしながら“声”で患者さんの心に寄り添う、彼女のあゆみを追います。
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看護師をあきらめた母の代わりに、夢をかなえたい一心で突き進む

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▲夜間コールセンターの立ち上げに貢献した吉岡純子。趣味は海釣りで沖合まで出ることも

2018年5月、平郁会に夜間コールセンターが開設されました。在宅療養中の患者さんやそのご家族からの電話を、医療従事者である看護師が受け付けるコールセンターです。

開設前にその準備段階から関わってきた吉岡純子は、2018年9月現在、コールセンターで働く看護師の管理業務や教育・育成などを担いながら、自らも戦力のひとりとしてチームを引っ張っています。

吉岡 「私たちは現場に出ることはなく、あくまでも電話応対のみ。でも、患者さんの症状を聞いて一時的な処置の方法をお伝えするなど、緊急時に的確な判断を下すことは、知識と経験のある医療従事者だからこそできることだと思っています。
『看護師さんが対応してくれてよかった』というご利用者さんからの声が、大きな支えになっています」

そんな彼女は、母の夢をかなえたい思いから看護師を志しました。

吉岡 「いろいろな事情があって看護師をあきらめたという母の話を、小さいころから聞いていました。中学生のときには進路を決め、ボランティアにも興味をもって地域の社会福祉協議会に通って手話の勉強もしたりしました」

社会福祉協議会でいろいろな不自由な思いをしている人に直にふれ、誰かの力になれる看護師の仕事の意義を強く感じた吉岡。しかし看護師への道のりは遠く、その後大変な回り道をしながら夢を追い続けることになります。

高校卒業後、看護師専門学校へ入学し、1年在学して妊娠。退学して出産し、育児をしながら働いてお金を貯め、子どもが2歳になったときに准看護師学校に入学します。

仕事と育児をこなしながら学校に通い、2年間かけて准看護師の資格を取得。

脳外科の病院に2年間勤務したのち、正看護師を目指して看護師専門学校に入学し直し、足かけ9年かけてようやく夢をつかんだのです。

吉岡 「どうしても正看護師になりたかった。夢は絶対にあきらめられなかったです」

夢を実現し働きだした急性期病院で、父の病気を機に夜間専門の看護師に

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▲看護学校時代の吉岡。急性期病院の正看護師としてキャリアをスタートさせた

晴れて正看護師となった吉岡は、24時間体制の急性期病院で、高度で専門的な医療を学びます。勤務して5年がたち看護師として順調にキャリアを積み重ねていたとき、父が難病指定の病気になり、自宅で療養することになったのです。

吉岡 「夜間は母が家にいますが、昼間は父ひとりでした。父のことが心配だったので、病院は夜間勤務にしてもらいました。
それ以来当直がメインとなり、夜間専門の看護師として病棟をはじめ、ICUや救急外来、夜勤の看護師の管理業務なども受け持ちながら5年間働きました」

急性期病院で10年間勤め上げた吉岡は、これまでとは違う分野で自分を試してみたいという気持ちから新しいステージを模索します。以前から退院後の患者さんに興味があり、いつかは在宅医療に関わってみたいと思っていたことから、平郁会への転職を決意しました。

吉岡 「急性期病院で長く働いて感じたのは、最後は『自宅で過ごしたい』と希望される患者さんが多いことです。また、患者さんのご自宅や入居している施設などで行なう在宅医療には、現場での処置にどんな工夫があるんだろうということにも関心がありました」

そして、彼女が平郁会を選んだ最大の理由が、夜間コールセンター業務という仕事そのものに感じた可能性です。

吉岡 「当時、別の医療法人に所属する知り合いの看護師から、コールセンターの話を聞いていました。夜間に不安を訴えてくる患者さんのために、看護師は電話口で支えることもできるんだと知り、これまでの経験を生かしてみたいと思ったんです」

こうして入職した平郁会で、吉岡は夜間コールセンターの立ち上げという大きなプロジェクトに関わることになります。

看護師がファーストコールを受ける夜間コールセンターの開設に奔走する

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▲患者さんやご家族から届く夜間コールに、日々耳を傾けている

2018年現在、平郁会は東京と神奈川の8つのクリニックで合計3000人を超える患者さんを受け入れています。24時間365日、質の高い在宅医療を提供するために、昼間と夜間で完全に分離した当直医体制をとっています。

夜間のオンコールは夜間専門の当直医が受けていましたが、診療中で電話に出られないこともあり、一時的な対応の遅れを生じさせないことが課題でした。

その課題をクリアし、患者さんの不安を解決するために、吉岡に夜間コールセンターの開設と運営が任されたのです。吉岡と常勤の看護師の2人でイチからスタートし、マニュアルや教育システムなど必要なものをかたちづくっていきました。

吉岡 「電話応対によるミスや事故を未然に防ぐための情報収集など、患者さんにとっていいと思うことを上司の許可を得て一つひとつ取り組みました。前の病院でも徹底的に安全を重視した医療の安全推進に関わっていたので、とてもやりがいを感じました」

何より、自分を信頼し応援してくれた平郁会の温かな職場の風土に後押しされたという吉岡。

2018年9月現在、夜間コールセンターの看護師は常勤3人、非常勤4人となり、合計7人でシフトを組んで平日の夜間と休日の昼間の電話応対業務に当たっています。

吉岡 「夜勤は月に9~10日程度で、ひと晩に少ないときで10件前後、多いときで20~30件前後コールがあります。どの患者さんも不安や苦痛があって電話をしてきているので、応対はすべて一期一会の精神で行なっています」

つい先日は、施設担当者から入居の患者さんが食事中に窒息した、という電話がありました。吸引や酸素投与といった窒息の場合の一時的な処置の方法をマニュアルに沿って伝えたうえで、救急搬送の手配やご家族への連絡をしてもらうようにお願いし、ことなきを得ました。

慌てている相手に対して、医療従事者としていついかなるときも冷静に的確な指示を出すことが吉岡たちの役目です。

在宅医療のコールセンターとして日本一に!声で伝える看護で安心を届ける

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▲夜間専従のスタッフ。抜群のチームワークで日々の診療を支えている

吉岡はいま、夜間コールセンターを担う人材の育成に力を入れています。現場を知るために、まず自分が訪問診療に同行して実際の在宅医療を学び、今後はチーム内で毎月の研修にしたいと思っています。

また、月に1度看護師会を開き、コールのあった患者さんに対しお互いに自分だったらどう応対したかという症例検討も行なっています。看護師会の日には常勤の医師による勉強会を開いて、在宅医療で使用している器具や処置の方法を学ぶなど、常にスキルアップを図っています。

吉岡 「私たちが行なっているサービスは、声でしか伝えられない看護です。でも、すぐに往診の手配をして心配を取り除いたり、マニュアルにはない部分で患者さんの苦しみに共感して不安をやわらげたりと、電話だからこそ伝えられる看護があると思っています」

夢中で働き、気がつけば人を育てる立場になっていた吉岡。仕事を続けながら必死で育ててきた子どももいまでは20歳になり、吉岡と同じ看護師の道を目指しています。

吉岡 「子どもが小学生のころ、旅行帰りの飛行機の中で急病人が出たことがありました。
アナウンスを聞き、最初は小さな子どものそばを離れていいものか悩んだのですが『自分は大丈夫だから行ってきて』と本人に言われ、救助に向かいました。そのときの出来事が印象深かったようです」

吉岡は意識的に時間をとり、子どもとお互いの状況や仕事に対する考えなどを話し合うようにしています。

吉岡 「私はコールセンターを軌道にのせて、日本一精度の高い医療的な応対能力をもったチームにすることが使命だと思っています。そしていつかは在宅医療の現場にも出たい。
子どももいまは、高度なスキルを学ぶために救急の現場を目指していますが、ゆくゆくは在宅医療にいきつく気がします」

在宅療養は大好きな家族に囲まれて自分らしく過ごし、入院生活ではわかりにくい季節の移り変わりや時間の経過も感じることができます。そんな患者さんたちの安心を、吉岡は今日も声で伝える看護で支えています。

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