「ユーザーファースト」の一休における、カスタマーサービスの“強み”

▲カスタマーサービス部 部長の平井 千恵

一休が運営する「一休.com」「一休.comレストラン」などの会員数が、この秋1,000万人に達した。その重要な顧客情報を一元管理するのが、カスタマーサービス(CS)部だ。部長を務める平井 千恵によると、一休のCSの特徴は「クレーム処理にとどまらず、ユーザーとの接点をもとに事業貢献できること」だと言う。

平井 「一休という会社では、営業やエンジニアといった職種に関わらず、働く人みんなのベースに『ユーザーファースト』という考え方が求められます。その会社の中でユーザーと直接会話できる数少ないポジションが、われわれ CSです。
仕事の内容は一般的にイメージされる顧客からの問い合わせ・クレーム対応はもちろん、トラブル発生時の社内調整やギフト券の販売、海外宿泊予約サイトの運用フォローなど、非常に多岐にわたります」

中でも特徴的なのが、ユーザーへの“ヒアリング”のアレンジではないだろうか。「ユーザーファースト」の一休では、社員がユーザーの声を直接聞く機会を設けてきた。CSはその際、現場の課題解決に相応しいユーザーを探し、招待し、対話の場をセッティングする重要な役割を担う。

平井 「オンラインの予約サイトでこのような施策をしているのは珍しいかもしれません。実際に何をしているかというと、一休をたくさんご利用いただいているユーザーを会社にお招きしてインタビューをさせていただいたり、複数のユーザーと社員で食事会を開催し、直接お話する場を設けたりしてきました。その場で挙がったユーザーの “生の声 ”を全社に共有し、サービスの改善につながったことは少なからずあります」

これが、ユーザーとの接点をもとに事業貢献できる“一休ならではのカスタマーサービス”の強みである。

“生の声”を現場と共有し、ユーザーに返す。CSだからできる事業貢献

▲日々集まるユーザーの “生の声” と向き合うCSメンバーたち

では、実際にサービスの改善に結びついたケースとは。

平井 「たとえば、ユーザーとの食事会の中で『行ってみたいけど予約の取れない人気店』の名前が挙がったとします。その “生の声 ”を生かして営業がレストランを口説き、新規掲載につなげる。そうすると、『お得だから』だけでなく『行きたいお店が予約できるから』と、ますます利用していただけるようになるのです。
またあるときは、『写真が見づらい』というご意見をいただきました。同席したメンバーには納得感があるので、すぐにフォトギャラリーの改良に着手できます。このように、社員が会話から得た情報をサービスの向上に生かすことで、ユーザーにお返しする。その一翼を担い、事業へ貢献していけるのが、一休ならではのカスタマーサービスだと思っています」

ユーザーと会話できるのは、特別な食事会の場だけではない。日々の業務の中でも、CS部にはたくさんの“生の声”が寄せられる。

平井 「私たちの設けている問い合わせ窓口では、ひと月あたり 6,000件前後ものご相談やご意見に触れることができます。その中には、ユーザーとして利用してみなくては気付かない不便さや、不具合の発見につながる貴重な情報も多々あるのです。
日々挙がってくるさまざまな声を適切に振り分け、要改善案件はスプレッドシートを用いて社内の関係各所に共有しています。それを関係者が拾い上げ、議論し、ユーザビリティの向上へと還元するためです。
一休は全社的に『ユーザーファースト』に基づき動いているので、違う部署、違う職種の人たちもそのシートを見れば、『この案件はユーザーファーストにつながるな』と素早く意思決定できるのです」

ユーザーの声に最初に触れ、的確に吸い上げる役割を担うのがCS部のメンバーたち。平井は個々の得意分野を生かした強いチーム力に自信を持っている。しかし、そこにおごりはない。自信を持ちすぎない“謙虚な姿勢”が質の高いサービスを裏打ちしているのだ。

平井 「実は私、 1年前に CS未経験でこの部署に異動し、その半年後に部長に任命されて……。いまだに緊張の日々です。だからこそ、丁寧に仕事をしようという意識があります」

部長としてメンバーと“並走”する理由

▲内勤営業時代の平井(右から2番目)

未経験の部署に異動後、わずか半年で部長に就任した平井。その社会人としてのキャリアは、新卒で入社した百貨店からスタートした。

平井 「百貨店では 5年間、靴の販売・企画やスタッフのマネジメントをしていました。もともと人と接することが好きだったので、接客にはやりがいを感じていましたね。
一方で、取引先の倒産を目の当たりにし、在庫を抱えることのリスクを痛感したのです。そこで 1回目の転職では、在庫を持たずにいわば自分自身が “商品 ”になる営業職に挑戦しようと、生命保険の新規営業を選択。その後はお医者様の情報管理システムを開発する会社で、保守運用サポート業務に 2年ほど携わりました」

平井が3度目の転職を考えていた6年前、一休のレストラン事業部門では内勤営業チームの立ち上げが検討されていた。ここまで3社を経験する中で、在庫を抱えないビジネスの効率性を学んでいた平井は、困っている施設に代わって部屋や席を販売し、それがユーザーのためにもなる、「三方よし」の一休のビジネスモデルに魅力を感じた。それだけでなく、一貫して人と接する仕事に就いてきた経験も、内勤営業なら生かせる。そんな想いを抱えて入社を決意した。

平井 「入社してから 1年以上はひとりでやっていました。2年目以降は徐々にメンバーが増え、内勤営業チームが軌道に乗ると、今度は他のチームの立ち上げメンバーとして外に出て営業していたこともあります。新システムの運用サポートを任されたことも……。要は、なんでもやらせてもらった時期でした。
そして 3年目を迎えようとするころに、マーケティング部へ異動のオファーがありました。会員の皆様へ送るメルマガの企画・配信や特集管理の業務です。これまでさまざまな角度からレストランの店舗担当者と接してきた経験を生かしつつ、よりユーザーのことを考えながら仕事ができるのではと考え、オファーを受けることにしました」

より「ユーザーファースト」な環境に身を置こうとマーケティング部に異動。ユーザーにとって有益な情報を精査する業務に就いた平井は、その視点を高めるためにユーザーとの食事会に参加するようになる。そこで、新たな興味が芽生えた。

平井 「『ユーザーファースト』の、いわば最前線に立つ CSってどんなものなのだろうと考え始めました。ヘビーユーザーと直接お話をするうちに身近に感じるようになり、『こういう人たちのために働きたい!』という想いが芽生えたのです。それが、1年前に CSへ異動することになったきっかけです」

経験を重ねるごとに「ユーザーのため」という想いが強まり、その最前線といえるCSにたどり着いたのは必然だろう。それでも、一休でのユーザー対応は未経験。異動後しばらくはプレーヤーとして現場に立ち、学ぶ日々を過ごした。

平井 「部長就任が決まったのは、自身の周辺業務がようやくわかり始めたころでした。CS業務の全容を把握できていない状態で、それでも全体を見なくてはならないことが怖かったですね」

自身の部長像を模索していた平井は、ある日チームメンバーにこう宣言した。

平井 「『私は “指導するリーダー ”ではありません!』と。現場業務は経験豊富なメンバーでうまく回っています。なので、私の仕事は業務に対して指示を出すのではなく、みんなが迷子にならないようゴールを示し続けることだと思ったのです。道筋を決めてあげるのではなく、自らの力でゴールに向かうメンバーが、いざというときに頼れる存在でいたいという想いがあるからです。
普段、メンバーには意思のある相談案件を持ってきてもらいます。私はそこからディスカッション相手となる。 “並走するリーダー ”であろうと思っています」

チーム力を強くすることが、会社のためになる

平井が並走するリーダーというスタンスでいられるのは、チームメンバーが互いに信頼し、全員で支え合える体制ができているからに他ならない。

平井 「メンバーの中には社歴も CS歴も私よりずっと長い人たちがいます。そんなベテランメンバーには、知識やマインドを属人化せず、他の人にどんどん伝えていってほしいとお願いしています。一休の存在意義をきちんと理解している人たちなので、後輩社員をセンスよく導いてくれるのです。
一方で最近入社したフレッシュなメンバーもいて、彼らには新しい目だからこそ気付ける無駄や矛盾、改善案を教えてもらいたいと思っています。私自身の経験や知識が足りないからこそ、メンバーが個々に得意分野を生かすことで、チームを強くしていきたい。チーム力を上げることは、絶対に会社のためになるからです」

チームの成果のためにメンバーが個々に力を発揮し貢献すること──。一休ではそれを「チームドリブン」と呼ぶ。重要視するカルチャーのひとつである。

平井 「チームが一丸となり、最後の砦となって会社の信頼を守ることが CS部の一番の事業貢献です。いい施設やいいプランというのは営業が頑張ってくれている。一休のいいところは、それプラス『安心』が担保されていることなのです。何かあっても、『一休は対応がいいから安心』と言ってもらえるチームでありたいですね」

上司として上に立つのではなく、横に並び共に走ることでチームを強くし、会社を強くしていきたい。そう語る平井が今社内に投げ掛けているのが、営業社員向けの講習会だ。トラブルが起きた際にユーザーを待たせないため、つまりは会社の信頼を守るための対策だという。さまざまな経験を通しユーザーと向き合ってきた彼女らしい、「ユーザーファースト」の次なる一手だ。