愛あるスプリングボードになるーー若手技術者を明るい未来へと導く、とある企業の決意

人が来てくれない――創業以来、3K(キタナイ・キツイ・キケン)のイメージが根強く、人手不足が叫ばれて久しい建設業界。この根本的な問題と向き合い、企業として改善を試みているのがアイアールです。建設業に特化した技術者の育成と派遣をおこなう、小さな会社の“愛ある”チャレンジとは。
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創業しても「働き手がいない」という建設業の現実

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▲前列一番右が末田聖美

2015年1月、名古屋で誕生したアイアール。創業して最初に立ちはだかったのは、人材を派遣する企業でありながら、建設業ゆえに「門を叩いてくれる人材がいない」という問題でした。

広報課の末田聖美は、当時の苦しかった日々を、部長の杉田守弘と執行役員の加藤淳史から伝え聞いてきました。そして、その時の苦しみこそが、いまのアイアールを築いてくれていることもーー。

末田 「スタートアップから、大企業並みの福利厚生費を予算立てするのは難しい。とはいえ、『ひとを集めるためにはどうしたらいいんだろう』『アイアールとして何ができるんだろう』 と創業当時から社内で議論を重ねてきたようです。創業当時の苦しい状況で議論を重ね頑張ってくれたメンバーは全員、2017年現在は支店長として会社を引っ張ってくれています」

その議論は、時にメンバー全員が一丸となって取り組み、時に代表取締役社長の明田信哉が助言をしながら進みます。そして「未経験者」に焦点を当て、来てくれるために必要なものは何かを洗い出していきました。

その結果、主に実行したのはふたつ。まず「未経験者を受け入れるため」に、来てくれた人材に対し、愛を持ってケアしてくれそうな営業担当者を積極的に採用。次に「採用した技術者をサポートするため」に、研修や資格取得支援や単身寮、給与体系など、あらゆる制度を整備していきました。

そうして具体的なプロジェクトとなったのが2016年から本格始動した「若手技術者育成プロジェクト」。そして、2017年に発表した「ホワイト企業宣言」です。

プライベートへの満足が“働きやすい”につながる

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「若手技術者育成プロジェクト」は、座学による研修の制度と資格取得支援が主な軸となっています。

末田 「座学は、現場を一定期間経験してから受けるようにしてもらっています。現場で『これって、何のためにやってるんだろう?』など、疑問を持ってから講義にのぞむと、理解や真剣度合いがより高まるんです。
専門学校の学費を補助する資格取得支援に関しても、技術者はみんな『今後のキャリアアップに役立てる』とモチベーション高く、チャレンジしてくれていますね」

また、別々の職場に派遣されるという業務の性質上、社員同士がなかなか会えないストレスもあります。末田はそれらを解消すべく、あらゆる“場づくり”を大切にしてきました。

末田 「若手からベテラン技術者の質問の場として、即時性のあるLINEでグループを作り、活用しています。  
また、私は広報として、メールで社内報を発信しています。週に1度は現場に出向いて、現場で奮闘している社員の声を生の聞き、記事化して、発信。そうすることで、共感や連帯感が生まれるような情報共有を目指しています」

この「若手技術者育成プロジェクト」を本格始動した半年後。アイアールは「ホワイト企業宣言」を打ち出しました。これは、“2020年までに真っ白な会社になること”を目標に掲げています。

末田 「スキルアップ支援のほか、“安心して働いてもらうための制度”を整備する。そして仕事だけでなく、プライベートにおいても満足してもらえることが、結果働きやすい会社となるのでは、と。
そのためには何が必要かを突き詰めると結局、“社員の時間とお金の確保”なんです」

ホワイト企業宣言に盛り込まれているのは、年2回の昇給制度、残業や転勤をさせない、年間休日日数の保証など。実際、「しっかり休めて、昇給もある」ということが、アイアールへの転職の強い動機となった、という社員の声も多く聞かれます。

体制や制度を整え、やっと迎え入れることができた大切な人材。しかし、ホワイト企業宣言を行うまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。

力をつけた社員の相次ぐ離職。たどり着いた答えとは

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▲現場で話を聞く社員

末田は、週に一度現場に行き、社員本人の話だけでなく、現場監督など派遣先の方にもその働きぶりについてヒアリングしています。

末田 「たとえば、その社員が研修を受けた後にお話を聞くと『彼、とてもよくなったね』とか『CADが使えるようになってくれて、ホント助かってるよ』という言葉を頂戴することがあり、社内研修がこうして実を結んでいるんだな、と嬉しくなります」

取り組みを評価していただけているという実感。しかしそれは時に“引き抜き”という形となってあらわれることもあります。育成支援の仕組みが整いはじめた頃、堰を切ったかのように、社員の同業他社への転職が相次いで起こったのです。

末田 「この非常事態に“どうしたら技術者を囲い込めるのか”と皆躍起になり、あらゆる手段で引き留めをおこないました。
しかし、厚待遇を提示して残ってもらったとしても、やはりその気持ちを止めることはできないですし、モチベーションの下がった状態で仕事をさせるのは、派遣先であるお客様にも申し訳ないと考えるようになりました。
人は成長したら、その成長に見合ったステージに立ちたくなるものなんですよね」

そんなある日、メンバーは大きな気づきを得ます。

それは“手塩にかけて育てた人材が「元アイアール」のいち技術者として次のステージで活躍する”こと。これこそがアイアールブランドの価値を上げ、理念である「人材育成を通じて社会に貢献する」を体現できる道筋なのではないか、と。

そして、自分たちの役割を「若手技術者たちのスプリングボード」ととらえ直し、舵を切り直しました。それを形にしたのが、ホワイト企業宣言だったのです。

アイアールの使命は、若手技術者の成長と未来に光を当て続けていくこと

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▲休日は社員でゴルフをすることも

「若手技術者が力を蓄え、社会に大きく飛び出すためのスプリングボード」――2017年現在、この考えに多くのベテラン技術者が賛同し、技術面の育成をサポートしてくれています。そうして育て上げた人材は、さまざまな企業から直接雇用のオファーをいただいています。また、ホワイト企業宣言を掲げたことで、社風にも変化が生まれました。

末田「『アイアールでお金を貯めて、将来は家族で喫茶店を経営したい』なんて話も飛び出すほど、自由に未来を語れる風土が定着してきました。  
アイアールで力をつけた若者が、自らのステップアップを模索している姿。スプリングボードとなった今では、それを見るのが企業としての喜びとなっています」

確固たる理念、整いつつある制度。では、2020年に真っ白な会社になるための具体策とは?

末田「アイアールは、人によって収益を上げていく会社なので、社員の満足度を上げるための施策と個々の技術力をアップさせる支援がひいては収益となり、社員への還元につなげていける方法なんです。だから目先の時間やお金を理由にできないというのではなく、5年後10年後を見据えて、しっかり社内整備を進めていきたいですね」

新しい制度として検討中なのが、“屋外手当”です。天候に左右されやすい建設現場では、雨や雪、猛暑に見舞われることも少なくありません。想像を超える過酷な環境下で業務を遂行した、そのひとの頑張りを評価したい。そんな思いからこのアイデアが生まれました。

末田「会社から大切にされている、という実感を社員に持ってほしい。そんな視点で常に議論を重ねています。最近、新しく始めたのは“恋愛部”の立ち上げ。結婚へのハードルが高いこの建設業に身を置く人であっても、幸せな家庭を築いてほしいと採用責任者の杉田が発案しました。残念ながらまだ実績はありませんが……(笑))

“愛ある企業に”――社名にそんな願いを込め、スタートしてからまもなく3年。社員数は100名を越えました(2017年現在)。

アイアールは今後も若手技術者の育成に力を入れ、スプリングボードとしての役割を全うし、社会へ貢献していきます。

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