金融業界の構造的問題。 でも、それを乗り越えた先にはもっと創造的な世界がある・中編

テクノロジーが金融サービスを根本からつくり変えるため、金融人材や既存金融機関はもはや不要という極端な言説も散見されます。しかし、「金融サービスを生み出すためにはやはり、高度専門性を持つ金融プロフェッショナルや金融機関の存在は欠かせない」と日本資産運用基盤の代表取締役社長・大原啓一は語ります。

金融のイノベーションを阻害する深刻なボトルネック

▲入居するFinGATE BASEのリラックススペースで

「金融業界が抱える構造問題。でも、それを乗り越えた先にもっと創造的な世界がある・前編」はこちら

「金融」と聞いて、何をイメージしますか?

人によって、いろいろだと思います。銀行、預金、貯金、融資。もう少し金融に詳しい人であれば、株式や債券をイメージするかもしれません。

そもそも、「金融」とは何でしょうか?

大原 「金融とは、世の中にあるお金の偏在を均(なら)すことです。お金が余っている人は、それを運用して利息を稼ごうとする一方、お金が足りない人は、どこかからお金を借りてきて不足を補おうとします。
これが金融の基本概念です。その金融業界で長年働いてきた私は、金融業界にとあるものが偏在していることに気付きました。
それは “人 ”です。日本資産運用基盤株式会社は、金融業界における高度金融専門性の最適配置を行ない、金融業界におけるイノベーションを加速させることを使命としています」

日本の金融業界は、高度な金融専門性を持つ人が首都圏の大手金融機関に集中する「金融専門性の偏在」とともに、すべての機能やインフラなどを自前でそろえようとする、自前主義による「事業運営モデルの硬直性」という2つの大きな構造問題を抱えていると私たちは考えています。

日本資産運用基盤株式会社は、所属する金融専門人材が持っている高度な金融専門性をコア・バリューとして、ユーザーである金融事業者が必要とする専門性を提供することにより、日本の金融業界が抱えている構造問題の解決を目指しています。

ただ、金融が資金不足主体と余剰主体の両方の存在を前提としているように、金融専門性の最適配置という取り組みもまた、十分な専門人材が存在しないと成立しないと思われます。そもそも高度専門人材の絶対数が不足しているとしたら、別の取り組みが必要ではないかとも考えられます。

大原 「確かにわが国の金融業界全体として、絶対数が足りていないと思われる専門性もあります。たとえば、足もとに注目が集まっているマネーロンダリング対策の専門家などは、そもそも首都圏でも少ないのが実情です。
一方、絶対数が足りていないわけではないのに、余剰と不足が均されていない状況もあります。ボトルネックとしての深刻度はこちらの方が大きいと考えています」

そうした状況の代表例と考えられるのが、大手金融機関におけるシニア専門人材の配置です。

たとえば、多くの大手金融機関で、50歳過ぎのある一定の年齢に達すると、管理職を解かれるという「役職定年制」と呼ばれる制度が採用されています。

大原 「組織活性化などを目的として、管理職というポジションから年長者を外すという人事制度の趣旨は理解できます。ただ、大手金融機関においては、職位のみならず、その人材の専門性を無視した単純業務に従事させるというケースも少なからず耳にします。
金融専門性には、知識もさることながら、経験の長さや深みが何よりも重要です。その点で、シニア人材はより高度な専門性を期待することができるはずです。
そのような高度専門性を活用できていないとすると、それは当該金融機関にとってもったいないだけに留まらず、金融業界としても大きなマイナスだと言わざるを得ません」

50歳になれば「たそがれ研修」のお呼びがかかり、肩たたき。銀行にはよくある話です。

でも、特定の専門分野で、それこそ20年、30年というキャリアを積み重ね、知識や能力が成熟した人たちを専門職から外すのは、組織の若返りという意味合いはあるにしても、よく考えれば、あまりにももったいない話です。

高度専門性の最適配置で金融イノベーションを加速させる

日本資産運用基盤株式会社は、金融業界で長年積み上げてきた経験知を最大限に活かして、専門性不足で悩んでいる金融事業者に付加価値を提供できる専門人材を積極的に採用しています。

そうした専門性を金融事業者にご利用いただくことで、「高度な金融専門性の偏在」という、金融業界が抱えている構造問題のひとつを解決したいと考えています。

大原 「ただ、金融業界では、外部のコンサルティング役務にフィーを支払うというカルチャーがこれまでなかったこともあり、コンサルティングという形態でサポートを受けるということに抵抗を感じる金融事業者もいらっしゃると考えています。
そのため、私たちはコンサルティングのみならず、人材派遣や投資助言など、ユーザーとなる金融事業者が使い勝手の良い形態で、必要に応じて必要なだけ専門性をご利用いただけるようなサービスをご提供したいと考えています」

日本資産運用基盤株式会社は、コンサルティングや投資助言、人材派遣など、金融事業に携わる会社が望む形態で、必要に応じて高度な金融専門性を利用できるFaas(Financial Expertise as a service)型プラットフォーム運営を目指しています。

これによって利用できる高度な金融専門性は、法務・コンプライアンス、AML/CFT対応、リスク管理、内部監査、投資助言、金融サービス開発、金融システム戦略策定など、多岐にわたります。

大原 「たとえば金融事業者によっては、サービス開発や事業運営のために、特定の金融専門性が数カ月だけ必要となるとか、毎日は必要ないんだけど、週 2回だけは必要だとか、そういったケースに直面することがあると思います。
高度専門人材はほぼ全員が正社員であることが普通の金融業界において、これまではそのようなニーズに対応することは困難でした。ですが私たちはそのようなニーズにもお応えし、柔軟に金融専門性をご活用いただきたいと考えています」

具体的な事業運営ソリューションも提供

▲FinGATE BASEの共有スペースは外部パートナー企業等との交流の場にもなる

高度な金融専門性の偏在という問題は、これから本格的に展開するFaas型プラットフォームによって解決に貢献していきたいと考えています。

ただ、金融業界には、もうひとつ大きな問題があります。自前主義による硬直化した事業運営モデルです。

仮に必要な金融専門性を具備できたとしても、そもそもの事業運営モデルが自前主義を前提とした「重い」ものであれば、それだけ収益化に時間がかからざるを得ません。

この問題が解決されなければ、金融事業者の新規参入意欲を低減させるという意味でも、業界内で重複する機能があちこちに存在するという非効率性の意味でも、金融業界全体として大きなマイナスだと思われます。

大原 「この問題に対しても、外部パートナー企業と連携することも視野に、具体的なソリューションを提供していきたいと考えています。
たとえば、金融事業運営に必要なシステム・アプリケーションなどをパートナー企業と一緒に開発し、それを Saasモデルでご利用していただくようなこともアイデアとして持っています。
また、既存金融機関との外部連携のスキームもソリューションとして構築したいとも考えています。非競争分野や外部リソースを活用できる分野は積極的に『軽く』できるようサポートし、それぞれの金融事業者が強みとする分野に注力できるようなインフラになることを目指しています」

日本資産運用基盤が信じる金融のチカラ

日本資産運用基盤株式会社が目指すように、高度専門性を持つ人材が最適配置され、事業運営モデルもより「軽く」なると、さまざまな金融事業者がより積極的に新しい金融サービスの開発や提供に取り組み、それが事業としても収益化されやすくなるという好循環が生まれます。

そのような好循環からは、今後どのような新しい金融サービスが誕生し、利用されるようになるのでしょうか?

実は、会社として具体的な金融サービスやビジネスを具体的に思い描いたり、目標としていたりするわけではないと大原は言います。

大原 「ひとりの金融専門家として、具体的な金融サービスやビジネスへの想いはとても強いです、もちろん。
ただ、それよりも僕は、さまざまな金融事業者がいろんな金融サービスやビジネスを創造し、お互いに切磋琢磨しながら、より社会や生活が創造的になるような世界を、この日本資産運用基盤という会社で実現したいと考えています。
そのために構造的な問題が現在あるのであれば、それを解決したい。よりサービスやビジネスがスムーズに生み出されるようにしたい。そのインフラになりたいと思うし、さらには積極的に触媒になりたいと思っています」

日本資産運用基盤株式会社は、「金融のチカラは私たちの社会や生活をより創造的にすることができる」と信じており、自らもそのインフラとして、その触媒として、貢献したいと考えています。

後編につづく

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