スペックではない、“想い”を繋ぐ後任採用――新しい採用のカタチ「後任さん」

「前任の想いを引き継ぐ後任が欲しい」そんな採用ニーズを叶えるため、juice upが2017年9月に開始したのが、前任の想いをストーリーにして後任採用に繋げる「後任さん」です。後任採用に頭を悩ませる人事担当は、少なくありません。その課題を解決しようと立ち上がった森尚樹の原体験とともに、ローンチまでの道のりを振り返ります。
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人事の現場で痛感した後任採用の問題は、“条件面だけの採用法”にあった

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▲「後任さん」を立ち上げたビジネスオフィサーの森尚樹

採用活動の現場には、さまざまな課題があります。なかでも特に難しいのが、採用側が求める人材と応募者側の希望やスキルとのマッチング。これまで採用の領域でキャリアを重ねてきた当社ビジネスオフィサーの森も、マッチングという難題に向き合ってきたひとりです。

森 「後任探しでは、退職する前任並みに仕事ができる後任を採用する、というのが常に課題でした。しかしその“探し方そのもの”にも実はコツがあり、たとえば前任には『どんな想いで仕事をしてどういう難しさがありましたか』と聞くほうがいい。

しかしそうはせず、これまでは、求人票の募集要項を穴埋めするように『その仕事はどういう人ならできますか?』と仕事内容や欲しいスペックだけを聞いてしまっていたんです。

そのため、前任が働いていたときに感じていた『想い』や『難しさ』については聞けていなかったんですね」

そうしたプロセスで起こる入社後のミスマッチにより、短期間で辞めてしまう社員もいました。森はその課題を解決しようと、前職からjuice upに移り、後任採用に特化したキャリアストーリーメディア「後任さん」 を立ち上げたのです。

「後任さん」は、引き継ぎたいポジションを託すための「後任採用」に特化したメディア。前任に、仕事を通じて抱いていた想いや実際の働き方を直接インタビューし、ストーリーとしてWebサイト上に掲載します。

森が前職までの4年間に人事経験で培った課題感が、このサービスの立ち上げに繋がっているのです。

森は前職での採用の現場で、1回1時間の採用説明会を4年間でのべ200回以上行ない、さらにそのあとは希望者と10〜15分ほどのショート面談を行なってきました。

「後任さん」に繋がるきっかけのひとつは、それらの経験のなかで感じた、ある“手応え”にあったのです。

マッチングのカギは、リアルな声や自身のストーリーによる共感

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▲前職時代の仲間と

森は、自身の「経験談や仕事への想い」を求職者に伝えたことで、採用活動において、確かな手応えをつかんだのです。

森 「ホームページに書いてあるような事業内容やミッションというよりは、僕がどんなことにやりがいを感じているのか、どういう仲間に囲まれて働いているのかなどを伝えていました。

自分の想いや働いてきたプロセス、仕事の難しさなどをストーリーで伝えたら、話をもっと聞きたい、応募したい、森さんと一緒に働きたいと共感してくれる方が多くなったんですよね。

もちろん魅力面だけでなく大変な部分も伝えることで、入口でのミスマッチを減らせたと思います」

「後任さん」で大切にしている、「ストーリーで伝えることの重要性」に気づくきっかけを得た経験は、もうひとつありました。それは森が自分と同じ人事担当のポジションの採用を行なうとき。

森 「単に募集要項の条件で絞るのではなく、僕のリアルな生の声や仕事の難しさ、関わり方を徹底的に語ることで応募者の動機形成をし、最後は『一緒に働きたい』と口説くやり方をしました。

このときは入社後のミスマッチなく採用ができたので、とても確度の高い採用方法だと思いましたね。この経験は『後任さん』のサービスをはじめるきっかけのひとつになっています」

森は2017年4月に前職を退職し、当初は起業してサービスをはじめるつもりでした。ところが、その際に以前からの知り合いだったjuice up代表の野口健とCOOの上林純にサービス内容の相談をしたところ声をかけられ、同年6月からジョインすることに。

森 「一緒にやることにした決め手は、juice upの『 “楽しく、はたらく”を当たり前にする』というビジョンに共感したからです。僕にとっての“楽しくはたらく”とは、自分の価値を発揮できることや、感覚の合う人たちと働けること。juice upの仲間は価値観が近く一緒に仕事をしたいと思える人たちでした。ここでなら、『後任採用におけるミスマッチ』もなくしていけるのではないかと考えたんです」

こうして森は少しずつ構想を練り、後任採用に特化したサービス「後任さん」が形づくられていったのです。

データに現れない“前任のリアル”を伝えきる

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▲juice upのメンバーと。「後任さん」のリリースを記念した飲み会

森は「後任さん」の構想ができると、営業資料を作り、自身の繋がりを頼りに、企業の人事担当者や代表にプレゼンテーションをしていきました。

森 「ぜひ使ってみたいという声をいただき、反応はよかったです。もっとこういう機能があった方がいいなどの意見は取り入れました。『ニッチなところを攻めるね』とも言われましたけど、必要性があるところならやる価値があると思っています」

この取り組みの甲斐もあって、公開前の時点で、6社から掲載のご依頼をいただくことに。

こうして、2017年9月25日——。「後任さん」を開始しました。

森 「将来的には前任が直接このメディアにアプローチしてきて、後任を見つけたいから載せてほしいと自ら言ってくれるようになるのが理想ですね。求職者側のニーズは、まだ見切れていない部分がありますが、仮説を立てて探りながら進めていければと思います」

森はまったくやったことがなかったWebサイトの設計から、営業活動、前任のインタビューまで、すべてをひとりでこなしています。掲載するストーリーには、人事担当者や代表の考えも反映させますが、あくまで“前任に話を聞く”というのが最大のポイントです。

森 「ストーリー記事は求職者の人が読みやすい文章、テンポよく読める記事にするために苦心しました。しゃべった内容がそのままでもわかりづらいし、手直ししすぎても加工した感じが出てしまう。でもできるだけリアルな声を届ける軸は残したい。

多少言いすぎかな、ぶっちゃけすぎかなというくらいでも、残してもらうようにはしていますね。

その仕事のやりがいや難しさ、入社後にどういうキャリアを描けるのかって、要項や条件面などのデータだけだと伝わらない。しかし、インタビュー記事のストーリーで伝えることでよりイメージしやすくなると思います。

たとえばインタビューの際ホームページに載っていることと同じ質問をしたのに、より深い話を聞き出せたときには、このメディアの価値を発揮できたなと感じますね」

広報メディアとしての期待にも応えることで「楽しく、はたらく」を実現する

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▲「後任さん」のトップ画面

後任採用を解決するメディアとしてはじまった「後任さん」ですが、森は、広報面でのニーズも感じています。

たとえば、「自社の認知拡大に使いたい」「スポットライトを当てて頑張ってほしい社員を取り上げたい」という声がありました。その期待に応えるためにも、「後任さん」のメディアとしての価値向上を目指しています。

森 「求職者の方、企業の方が定期的に訪れたいと思うメディアでないと意味がないんです。そのためには広く読んでいただき、常に触れてもらえるための記事が必要だなと。たとえば後任や引き継ぎのあるあるネタや悩みって、部署異動や退職を経験した人には尽きない話題なんですよね。

そういったQ&Aやインタビューの記事、ほかにも“後任として着任した人たちを集めた対談企画”や“ 『後任さん』で内定が決まった人のその後を探る企画”などを考えています。これらは読みものとしても定期的に『後任さん』に触れてもらうための、大事な施策です」

また課題として、求職者が応募するに至るまではまだ高いハードルがあると考えています。

それを解決するために、たとえば「興味があるから話を聞いてみたいボタン」や「興味がある度合いを伝えられるボタン」を設置することで、より気軽に求職者と企業が接点を持てればと考えています。

「後任さん」は、公開から1週間後に、5000PV、3800UUに達しました。社員のFacebookからの繋がりを中心に、主に人材・人事関係の方に訪れていただいています。今後は、事業承継や長期インターンの後任探しにもサービスを広げていく予定です。

データには現れない「前任のリアルな声」を引き出すことで、想いを後任に届けていきたいーー。それがひいては、働く人々のミスマッチをなくし、「"楽しく、はたらく”を当たり前にする」ことに繋がっていくと、私たちは考えています。

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