心に届く理念を生み出す。創業70年の会社が取り組んだ次世代の組織づくり

人に思いがあり、会社に理念がある。終戦直後に創業した晃商は、人にも、会社にも、誠実でありたく、2017年に理念を一新しました。従業員の心に本当に届くのか、長く問い続けた末に完成した理念です。そして、理念を模索した日々は、晃商の次世代組織づくりを目指す新プロジェクトにとっての最初の一歩でもありました。
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「人と会社が離れてしまっていた」 理念リニューアルのきっかけ

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▲1965年、「焼肉の名門 天壇」開業時の写真

1947年——私たち晃商は、京都府京都市で織物業を創業し、その後、パチンコ事業と焼肉レストラン事業を展開。1970年には会社を設立。その後も店舗数を伸ばしていきました。

創業当時から、取引企業様を大切にするという考え方を持ち、晃商は順調に事業成長。拡大する一方で、事業所が離れている店舗展開系ビジネスということもあり、理念を浸透させていくことが難しくなっていきました……。


創業時のように雰囲気で伝えようとしても理解に個人差が生まれます。それは次第に会社への誤解や業務エラーを起こす要因に変わりました。のちに、次世代組織づくりを目指す新プロジェクトを牽引することになる専務取締役の新井丈博は、2005年入社当時の晃商をよく覚えています。朝礼で理念を唱和してもそれを覚えることができないメンバーが多くいました。


新井 「当時の理念はいい内容でした。でも長くて……もっと短くてわかりやすい言葉にしないと伝わりません。それに、せっかく縁あってこの会社で働いてもらえているんだから、『晃商で働けてよかった』と思ってほしい気持ちが前提にありました」

そこで2015年1月、組織人事コンサルティングで採用・育成・風土・制度改革を支援している会社リンクアンドモチベーション(以下、LM)の組織診断を受けます。エンプロイーエンゲージメントサーベイというLM独自の組織診断は平均値が50点。しかし晃商は45.9点でした。


本来、経営者ならショックを受ける事実かも知れません。しかし実は、経営しながら従業員と会社のあいだに距離感が生まれていることを感じていた新井にとって、納得できる点数でした。理念をリニューアルする以前の晃商は、各事業・店舗にそれぞれ文化があり、ひとつの会社としてのまとまりに欠けていたのです。


どうにか組織として、共通の軸を通すことはできないか。LM と協議した結果、経営に近いメンバーが本音で話し合えるようになることを目指して、幹部育成からはじめることを決断しました。

理念を受け取る従業員の気持ちづくりからはじめたい

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▲専務取締役 新井丈博

最初に着手した幹部の育成プロジェクトでは、月に1回対話の場を設けて、晃商の目標に限らず、組織経営や各自が挑戦したいことなど、経営陣と各部長は話し合いました。


本音が机上に乗り出すと、参加者各自がお互いの理解度を共有し合うことができました。同時に組織風土の強み、弱みもLMに部署ごとの調査を進めてもらいました。弱みが顕著な部署に対して、伝えるメッセージを工夫するなど、小さな変化を起こしていきました。


そんなPDCAを回すこと1年。各部長の変化は周りの従業員にも理解できるほどに。上司が変わろうとしている。専務が会社を変えようとしている。経営陣と部長クラスの取り組みを前向きに受け止める従業員が増えていったのです。


新井 「理念をつくる前に、まずは理念を受け取る従業員の気持ちづくりが必要でした。固い地面に水を撒いても浸みていきません。まずは土を耕すところから、はじめていこう。そういう気持ちで続けた取り組みの空気感が伝わったタイミングで、『Re-KOSHOプロジェクト』を進めることに決めました」

「Re-KOSHOプロジェクト」は、LMのサポートを得ながら、2016年6月にスタート。晃商の次世代組織をつくるという目標を掲げた長期プロジェクトです。いよいよ、晃商の理念をリニューアルすることに着手するときがきました。


手はじめに取り組んだのは、経営陣を中心に晃商のビジネスプロセスや業務などに対するこだわりを棚卸しすること。参加したメンバーの発言は、LMに整理してもらい、また次回の棚卸しに備えました。


棚卸しを繰り返すにつれて、会社として大事にしてきたことが出揃います。次に取り組んだことは、理念として残す言葉選びです。各メンバーがいい理念にできる予感を抱いていましたが、しかし思いのほか悩むことに……。


それは会社として大事にしたいことを常に意識するために向き合うと決めた、越えるべき壁なのでした。

どんな言葉が響くのか。従業員の心を一番意識して理念を考えた

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▲新しい理念「ココロをみがき、明日をつくる。」

以前のように、従業員が覚えられない理念をつくるわけにいかない。理念に使う言葉を決める過程では、行動指針の基礎になる価値観をつくるという重要性を意識して、LMにも協力してもらいながら、さまざまな言葉を持ち寄り、考え続けました。


そして、従業員の気持ちに浸透していき、会社として大事にしている気持ちを表すこともできる言葉を見つけます。それが、新しい理念「ココロをみがき、明日をつくる。」。晃商は、従業員に誠実でありたい。従業員にも、誠実に働いてほしい。しかし、「誠実であれ」とは言わない。お説教のようで浸透しにくいだろうから。


もっと柔らかく、人に寄り添う言葉はあるはずだ。そう考えたときに、誠実な仕事を通じて、いろんな人のために働くことは、自分の心を磨くことにもつながるという思いに行き着きました。そんな日々が続いていくことは、会社にとっても尊い。


利他的に働き、自身を磨く毎日が続くこと。理念に託したそんな思いは、晃商の考える仕事のあり方そのものです。また、理念に基づく行動指針も6つ決まりました。


1「仕事を楽しみ、人生も楽しむ。」
2「出会いを大切に、仲間を大切に。」
3「過去にとらわれず、変革する勇気をもつ。」
4「誰かがやるだろうではなく、私がやる。」
5「やると決めたら、最速全力でやりとげる。」
6「見た目も心も、センスあふれる素敵な人になろう。」


ですが、まだ理念と行動指針が完成しただけ。続いて従業員に思いが浸透するようなイベントを準備する必要があります。LMに「伝えるだけの場ではなく、従業員の心が変わるイベントにしよう」という目標をもらい、晃商はLMと一緒にお披露目イベントを企画しました。

それが、晃商のはじめて開催した従業員全員参加の「ココロオドル総会」。オープニングムービーや、クイズ形式で行動指針を考えるワークなどを用意して、従業員にこれまでの会社との違いやリラックスして参加できる気持ちを感じてもらえるようにしたイベントです。

とはいえ、意図したようにイベントが進むとも限りません。総会を準備したメンバーは、従業員がどんなリアクションをとるのかハラハラドキドキして、迎えた当日——。

従業員の心に響いた感動。理念で人と会社がつながる明日へ

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▲総会当日の集合写真

不安をよそに、「ココロオドル総会」は大成功。いつもと違う雰囲気のイベントに緊張感を見せていた従業員ですが、オープニングムービーやワークを通じて、次第にリラックスしていきます。従業員が積極的にクイズに答える姿を見て、経営陣や各部長も感動した気持ちにーー。昨日のことのように感じられる、思い出深い1日になりました。


総会後、改めて実施した組織評価では、59.3点という結果も出ました。プロジェクト開始前が45.9点だったことを考えると、従業員と会社の距離感が少しずつ縮まりはじめていることを肌身にしみて実感。


しかし、まだ理念と行動指針を決めただけです。晃商は理念に基づく実践を進めていきます。まずは採用ウェブサイトのリニューアルしたことで、その理念に共感した学生が晃商の新卒採用に応募してきてくれるようにしています。


採用活動は、言い換えれば新しい仲間との出会い。理念でつながる仲間が、これから少しずつ増えていくことに希望を感じています。また、人事制度と給与体系も理念に基づくリニューアルを進行中。以前は年功序列・終身雇用の典型的な昇給体系でした。


これから新しく「信頼」と「実力」という人事ポリシーを設け、「理念」「事業」「組織」の3軸にそれぞれ要件定義をし、要件を満たした従業員が役職アップしていく制度にリニューアルします。このように、理念に基づく実践モデルも着々と築いているのです。


実のところ、晃商が大事にしたいことはこの理念だけで完成と思っていません。各事業部でビジョンを掲げ、顧客や取引企業様のことも大事にしていきたいと思っています。晃商は創業期から近江商人の三方良しを大切にしてきました。だからこそ、従業員はもちろん、顧客からも、取引企業様からも支持される会社を目指し、これからも進化していきます。

そして、いつかはサービス業界の晃商ではなく、“おもしろい仕事をする晃商”と見てもらえるようになっていきます。晃商という会社が、業界という垣根を越えて魅力を感じてもらえるようになったとき、もっと楽しい仕事をしていける“明日”が広がっていくからーー。

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