草むしりからすべてが見えてくる――「透析医療界のエジソン」が語る“発明”の視点

最新の透析医療機器をそなえ、全国約3,000名の透析患者をサポートする偕行会グループ。ここには、透析機器の管理業務を行う臨床工学技士であり、自ら機器の研究開発にも取り組み数多くの実績を生み出してきた人物がいます。「透析医療界のエジソン」と喩えられる田岡正宏。その柔軟な発想の源とは?
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臨床工学技士かつ“発明家”。そのひらめきの源は「草むしり」

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臨床工学技士 田岡正宏
田岡「発明のひらめきが生まれるきっかけですか?そうですね、私は毎日、朝礼前にクリニック内をくまなく回っています。クリニックのまわりの草むしりやゴミ拾いも。そんなことをしながら、いろいろ考えてますね(笑)」
偕行会グループに所属してから講演への登壇は143回、論文などの執筆25本……「透析医療界のエジソン」と評価が高い田岡正宏は、“発明家”としての心得を聞かれるとこのように答えます。そんな彼の職種は、「臨床工学技士」。

医療現場では透析機器や人工心肺装置、人工呼吸器など、さまざまな医療機器が使用されています。治療の効率化と安全を担保するために、これらの装置を専門に扱う技術者が、医師と連携をとりながら業務を行う。その国家資格が臨床工学技士です。透析治療では透析機器全般の管理やメンテナンス、および穿刺など治療行為の補助も行います。

田岡は資格が誕生する1987年より少し前、1984年から透析機器の操作・管理業務に携わってきた大ベテラン。大学では電子工学を専門に研究してきたことから、透析機器の知識を持ち管理ができるだけでなく、機器の仕組みから考えを進め、イノベーションを起こすことができる素地をもっていました。

さらに遡れば、実家の工場に出入りしてものづくりへの刺激を受けた少年時代から、のちの“発明家”の芽はすくすくと育っていたようです。

ロボット作りへの憧れから「喜ばれる技術」を仕事へ

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患者様に安心の透析医療を。
田岡の実家は、名古屋市にある油脂工場。少年時代から工場に出入りさせてもらい、余った資材で自由に工作をしていました。

田岡「作ってみたいと思っていたのはゴーカートですね。工場に余ったバッテリーがあって、モーターとタイヤを組み合わせればできるんじゃないかと。その頃から、ロボットとか動くものを作りたいなと思っていました」
小学6年生から中高生時代はアマチュア無線に夢中に。わずか10ワットの弱い電波で、南半球を航行する貨物船に無線が届いたときには感激したといいます。工学の面白さに改めて目覚めた瞬間でした。

そして大学では電子工学を専攻。当時はまだ実現されていなかった二足歩行ロボットの研究に興味を抱きます。そこで、「歩く」動きの解析を行うため、名古屋市内病院の義肢センターで解析装置の研究を1年間行うことになりました。これが、田岡が医療の世界へと足を踏み入れていく契機となったのです。

就職活動の際には、医療とは異なる分野の企業で内定が出ていたものの、最終的には医療の世界で自分の力を発揮したいと考えるに至ります。その決意は、義肢センターで「人に役に立つ喜び」を実感できたことから生まれました。

田岡「義足の技術は非常に発達していて、歩いている姿を見ても義足だとは気づかないくらいです。それまでぎこちない動きしかできなかったものが、自分が作ったものによってスムーズに動くようになる、それを患者さんに使ってもらえる。その喜びは何にも代えがたいなと思ったんです」
こうして大学卒業後は、病院に入職。そこから田岡の透析医療との関わりがはじまります。大学生活の最後の1年で得た「人に喜ばれる仕事をしたい」という気持ち。これが大学卒業後から今に至るまで、田岡の「ものづくり精神」の原動力となっているのです。

世界初の全自動透析装置の開発に貢献。「自動化のその先」を考えはじめる

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世界初の全自動透析装置の開発に貢献。「自動化」のその先とは。
新卒で入職した病院では、透析機器の管理業務に携わるとともに、より優れた透析装置の開発を試行錯誤していました。同病院で15年間、田岡は臨床工学技士としてのキャリアを重ねます。

そして1999年、新しい透析機器の開発を目的に、北九州にある研究機関に転職。ここで、田岡が提案し、機器メーカーと共同開発した、世界初の全自動血液透析装置(全自動コンソール)が誕生しました。

かつて透析機器の管理は今ほど厳重ではなく、細心の注意を払えども、ヒューマンエラーのリスクが常に潜んでいました。そんな中、全自動コンソールの開発により、人的な医療事故や感染事故の回避が可能となったのです。全自動コンソールの開発は透析医療に大きなインパクトを与え、より透析効果の高い治療法が普及するきっかけとなりました。

さらに田岡は、自動化によって生まれた医療スタッフの安心感やゆとりが、より患者ケアに重きをおいた治療を可能にしたことに気づきます。“発明家”として透析機器の進化に注力していた田岡は、それを機に、自動化のその先にあるものに目を向けるようになりました。

田岡「自動化の意義は、ゆとりが生まれた分、患者様のベッドサイドで会話をし、患者ケアの質を高めることにあるのではないか、と。また効率化に伴って得られた利益を職員のために使うのか、設備投資に使うのか、新たなサービスをはじめるのか……。いずれにしても最終的に患者様の満足を上げるのにどうしたらいいのか考えるようになったんです」
こうして、発明家マインドに経営者の視点が加わった田岡は、2001年に北九州の研究機関を離れ、関東のふたつの医療機関を経て、2006年、偕行会グループに入職。偕行会を選んだ理由は、国内トップレベルの透析治療専門クリニックを展開していることに加え、当グループ会長・川原弘久の言葉に感銘を受けたからだといいます。

田岡「会長の口癖は『利益はコスト』。お金はちゃんと回しなさい、ということです。自動化や効率化で得られた利益は貯め込むのではなく、患者様のため、職員のためを考えて使うこと。その考え方は自分とすごく合っていると感じました」
現在、田岡は偕行会グループの臨床工学技士を束ねる臨床工学統括部長を務めるとともに、名港共立クリニック部長として事務長的な役割も兼任。臨床工学技士の統括に加え、クリニック運営にも参画しています。

「誰かが喜んでいるその顔」のためにーー草むしりを通して得ているもの

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コミュニケーションとは情報収集。
田岡が手がけた全自動コンソール発売後は、上位シェアメーカーが次々と追随して類似製品を開発する事態になりました。「そのときは本当に気持ちよかったですよ(笑)」と田岡は嬉しそうに語ります。そして機能面でも、後発品よりも徹底的に考え抜いているという自負を持っています。

田岡「技術者にありがちなのは、つい自分の思いを『ここがすごいんだぞ』とこれ見よがしに入れ込んじゃうこと。そうすると、使う者にとってはごちゃごちゃして使いにくいものになってしまう。医師、看護師といった使う人間がいかに楽に仕事ができるかをとことん考える。そこにもやっぱり、誰かに喜んでもらえるかどうかという思いが大事だと思っています」
田岡は、技術者が陥りがちな「自己満足な開発」の罠にはまることなく、常に多彩な視点でものごとを見るように心がけています。とはいえ、自分とは異なる立場からものごとを考えることは難しいもの。そこで田岡が実践しているのが、「草むしり」です。

田岡「上から目線だと、思考が止まっちゃうんです。だから私は下から見たい。草むしりしながらプラプラして、何気なくスタッフを観察してるだけなんですけど(笑)。でもそうやって下から見ていると、誰がどんなことに困っていて、どこに課題があるのかも見えてくる。そうすると、『看護師さん、こうしたほうが助かるだろうな』と、何をすべきかがわかってくる。やっぱり直接自分で見て、足で回って情報収集しなければいけないと思います」
『草むしりの精神』で、なんでも人の下から見上げるような視点で仕事をすれば、気づくことがあるーー。そして情報収集のために最も大切にしているのが、日々のなんてことのないコミュニケーションです。

田岡「スタッフ同士のコミュニケーション量は、チームの医療の質にも影響し、ひいては患者様へのケアの質にもつながります。それに、スタッフと患者様とのコミュニケーションも大切です。たとえば、患者様が『昨日足をぶつけちゃった』と雑談で話すのを聞くことができれば、糖尿病の方の場合、小さなケガから壊死が進んで足を切断する結果を防ぐことができるわけです」
誰かの喜ぶ顔が見たくて、透析医療の分野で数多くの実績を残してきた田岡。その“発明”には、田岡が関わってきた透析医療にかかわるすべての人の思いが込められ、偕行会のみならず、すべての透析医療の現場を支えています。


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