個性バラバラの看護チームが互いに向き合う瞬間ーー「現場主義」のチームビルディング

長期にわたって続く透析治療において、患者さまを理解して寄り添う看護スタッフは、要の存在であり、そこには強いチーム力が求められます。多様なキャリアをもち、それぞれに自負をもった“一筋縄ではいかない”看護師たち。それをまとめ上げるチームビルディングのスペシャリスト、嶋貫久美子の仕事の神髄を探ります。
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「頼む、ウチを助けてくれ」——理事長に頼られ、戻ってきたベテラン看護師

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3歳のころの嶋貫
2015年5月。かつて偕行会グループに2004年から2009年まで在籍し、一度はグループを離れていたベテラン看護師、嶋貫久美子が、駒込共立クリニックに戻ってきました。そのきっかけは、偕翔会(※偕行会グループ)理事長から嶋貫へ送られてきた1通のメールだったといいます。

嶋貫 「理事長からのSOSメールでした。『相談に乗ってくれないか』と。相談ならメールで乗りますよ、と返信したんですけど(笑)、『ご飯を食べに行きませんか?』と誘われて会うことになったんです。お話だけ聞くつもりで行ったら、『助けてくれ。あなたも駒込に思い入れがあるでしょう。戻ってきてくれ』と手をつかれてしまいました」
駒込共立クリニックでは、常時15名ほどの看護師、看護助手が従事しています。SOSメールが嶋貫の元に届いた当時は、看護スタッフがなかなか定着せず、人員の入れ替わりが頻繁な状態に陥っていました。

透析治療は長期的なものであり、併発している疾患を含め、患者さまの体調を継続的にチェックしていくことが重要です。看護スタッフの入れ替わりが目立つことで、治療の態勢に深刻な影響はないものの、患者さまにしてみれば、「永くしっかり看てもらっている安心」が、ともすれば不安な気持ちに変わってしまうリスクも生まれていました。

嶋貫は2004年から2009年にかけて、駒込共立クリニックおよび豊島中央病院で看護スタッフのチームビルディングを担っていた人物。その当時の実績を買われ、チームを再構築するための「立て直し請負人」として、理事長みずからが呼び戻したのです。

チーム作りを請われて赴いた先は「みんな優秀。でもバラバラ」のクリニック

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23歳ごろ?看護師としてのキャリアを積み始めた。
そもそも、嶋貫が将来の道として看護師をイメージするようになったのは、中学生のころ。肺炎でこの世を去った祖父に対する思いがきっかけでした。

嶋貫 「祖父は病院嫌いで、具合が悪くてもなかなか病院に行かなかったんです。それで手遅れになってしまって。私をとても可愛がってくれて、大好きな祖父でしたから、とても悲しくて『何もしてあげられなかったなあ』という思いが残りました。それが、『大切な人が病気になったときに、してあげられることを身につけたい』と、漠然とではありますが、看護師を目指す動機になったと思います」
看護学校を卒業後は大学病院での勤務を経て、小規模病院へと転職。そこで透析看護に従事することになりました。同病院で12年にわたり、透析看護のキャリアを積み重ねた嶋貫は、1998年に医療機器メーカーに転職。全国各地の病院に派遣される看護師組織のリーダーとして、透析システムの管理や患者さまの生活指導、研修会などを統括していました。

そして2004年、医療機器メーカーでの統括の手腕を買われ、看護スタッフをまとめ上げる透析室管理職として、駒込共立クリニックに迎えられることになります。

嶋貫が入職した当時、看護スタッフの状況は「一人ひとりは優秀。でもバラバラでチームじゃない」という状況だったと嶋貫はいいます。

透析治療専門クリニックでは、新卒の看護師が入職してくることはまれで、多くが他の病院やクリニックで臨床経験を積んでから入職してきます。それまでのキャリアによって習得してきた領域は異なり、病院によって看護のやり方にも違いがあるもの。

それぞれが自負をもって仕事に取り組んでいるからこそ、そのままぶつかれば互いが引けず、不協和音が生まれることもしばしばです。駒込共立クリニックでも、スタッフ個人のモチベーションは高いものの、チームとしては機能不全に陥っていました。

みんなで取り組んだ結果の成功体験が、互いに向き合うチームを作る

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駒込共立クリニック透析室にて
モチベーションは高いのに共鳴しあえない看護スタッフを前に、嶋貫はどのようにチームビルディングを行っていったのか。それは「同じ土俵に立って、一緒に考えること」でした。

嶋貫 「当時、私には一応、透析室管理職として肩書きがついていましたけれども、必ず現場目線で、各スタッフの受け持ちの患者さまの管理について一緒に考えるようにしました。そして、受け持ちの患者さまのこと以外でも情報を共有して、何か課題があればどうすればいいか、みんなで考えるようにしたんです」
「チーム」ができてきた、と嶋貫が感じることができるようになったのは、とある80歳を超える患者さまの変化でした。週に3回クリニックに通院していたその患者さまは、とても頑固な方だったとのこと。「俺はもう、人生でやるべきことはやった。あとはどうなってもいいんだ」と、自宅で行うべき血圧測定やリハビリも行わず、何もせずに過ごしてご家族を心配させていました。

そこで嶋貫が、看護スタッフと相談して実践したのが、「どうして何もしたくないのか、患者さまのお話をみんなで聞こう」ということ。他の仕事はしなくていいから、と、スタッフひとりがじっくり患者さまに寄り添い、2週間にわたって、80年以上もの患者さまの歴史をうかがったのです。

そこで見えてきたのは、患者さまがたいへんな努力家で、家族のために懸命に働いてきたこと。そして、子どもも巣立ってようやく夫婦の生活を楽しもうとしていた矢先に、透析治療を受けなければならなくなったという悔しさでした。

嶋貫 「その患者さまは、これまですごく頑張ってきたんだと。その話を聞いたあとはみんな、『じゃあ、もうアレコレうるさく言うのやめようね』という思いに変わりました。少し血圧が低いときも、『帰って必ず血圧測ってくださいね!』と指示するのではなくて、『転ばないように、気をつけて帰ってくださいね』と送り出す。すると不思議なもので、家で何もしなかった患者さまが、庭の水まきをするようになったそうです。何も言われなくなって、反対に寂しくなってきたのかもしれないですね(笑)」
みんなで考えたことがうまくいって、患者さんのQOLを高める結果が生まれると、みんなで喜び合える。チームでの看護向上のため、症例報告として学会発表にも取り組み、評価を得る。そういった成功体験が重なってくると、おのずとバラバラな方向を向いていたスタッフ同士が、互いに目を向けるようになってきました。

嶋貫 「自分の受け持ちの患者さんではないとしても、みんなで考える。良い結果が出れば『良かった、自分も頑張らなきゃ』という気持ちが生まれてきます。一人ひとりのマインドはもともと高いですから、ことさらに組織、チームを作るんだと意識しなくても、おのずと良いチームにまとまってくるものですよ」

「患者さまに向き合う」矜持を、一人ひとりが持てばチームは強くなる

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ニューヨークの街中で
その後、豊島中央病院へと異動し、看護部長、透析室看護課長を兼務し2009年4月まで勤務。家族の渡米に伴い、一度偕行会グループを離れます。2009年12月には実父の介護のために単身帰国、介護のめどがついたところで、他の医療法人社団に看護チーム作りを請われ入職。

そして2015年、嶋貫は再び、崩れた部分が目立ち始めた、駒込共立クリニックの看護チーム立て直しのために戻ってきました。

2015年に嶋貫が復帰してから1年あまり。駒込共立クリニックの「チーム力」は、かつての姿を取り戻してきています。今年に入ってからは豊島中央病院の看護部長も兼務し、現在では総勢80名弱の看護スタッフが、嶋貫の指導の下、透析看護に従事しています。ふたつの病院を行ったり来たりで「いつも、嶋貫はどこにいるんだ?と捜索願が出ています」と笑う嶋貫ですが、変わらずに心がけていることは、「現場に赴くこと」です。

嶋貫 「スタッフが誰か抜けたときや、チームに何か変化があったとき、現場に不和が生まれていないか、必ず自分の目で確かめるようにしています。大きな問題を取り除いたとしても、その陰にまた別の問題が潜んでいる、ということが往々にしてあるものですから、それを見落とさないようにしたい。また、マネジメントするにしても、現場に入っていないと的外れなものになってしまいますし、議論も生まれませんからね」
80名の大所帯を管理する立場にありながら、現場に入り、スタッフとの対話を大切にしている嶋貫。その結果、スタッフ一人ひとりの力、そしてチームの力が伸びていくのがとても嬉しいそうです。そして成長のために看護師に肝に銘じてほしいのは、「組織のためではなく、患者さまのためになっているか、ということを常に考えて行動する」といいます。

嶋貫 「透析医療に携わっていると、透析の受容がなかなか出来ずつらい思いをしながら治療に通う患者さま、癌を併発しているターミナル期の患者さまをそばで見ていて、透析医療の意味を根本から問うてしまうこともあります。でも、透析治療を受けることで、仕事を続けている方、生き生きと過ごされている方も確実にいる。10年前から比べれば、飛躍的に生存率も高まっている。頑張って自分らしく生活している患者さまを見て、自分も頑張らなきゃと思うんです」
だからこそ、看護師たちには、患者さま一人ひとりにとって真に必要な看護サービスを提供することを矜持をもって取り組んでもらいたいと、嶋貫は願います。そしてそれが、組織の強さに繋がっていくーー。「着実に、ひとつずつ」、それが嶋貫の考えるチームビルディングの秘訣なのかもしれません。


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