「10年後も元気に歩けるように」——透析患者様の未来を支える運動療法のパイオニア

最新の透析医療技術で全国約3000名の透析患者をサポートする偕行会グループ。他施設に先駆けて運動療法を導入し、患者様の筋力向上面で着実に成果を上げています。運動療法の重要性をいち早く説き、導入に尽力したのが健康運動指導士の森山善文。「運動療法で患者様の元気な姿を見たい」と願う彼の想いをご紹介します。
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運動療法を他に先駆けて導入——透析患者様を前にして、想いはより強く

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健康運動指導士 森山善文
透析治療を行っている患者様は、筋力が低下しやすいことが知られています。その減少スピードは、健康な人の5倍とも。筋力の低下は転倒・骨折から寝たきりになるリスクが高まる、疲れやすくなって日常生活がつらくなるなど、生活に深刻な影響を及ぼします。

かつては透析治療を受けると体力を奪われ、ぐったり疲れてしまって運動などができないといわれていた時代もありました。しかし今では透析の技術が進歩して、患者様への負担が少なくなりつつあります。そこで運動療法を取り入れ、筋力を向上する取り組みが注目されるようになってきたのです。

偕行会グループでは、2001年から他に先駆けて運動療法を導入。2004年には運動療法を行える病院併設施設「ウェルネスセンター」を開設しました。そして2012年、透析中に行う運動療法を開始。透析中にゴムチューブや移動式バイクを使用して、筋力トレーニングを行うことができるようになりました。

2016年12月現在は、18施設で透析中の運動療法を行っています。その立役者となったのが、健康運動指導士の森山善文です。

健康運動指導士とは、健康維持・改善のために、安全かつ効果的な運動プログラムを提案、指導する専門資格のこと。

森山は、透析患者の方々と接していく中、筋力低下によって自立歩行ができなくなる患者様、転倒や骨折をきっかけに寝たきりになってしまう患者様を数多く目の当たりにしてきました。その歯がゆさが、運動療法導入の強いモチベーションにつながったのです。

森山「つい最近まで元気にスタスタと歩いていた患者様が、翌月会うと車椅子でしか移動できなくなっている姿を見たり、転んで骨折して転院していかれたことを知ったりすることがとても多いんです。だからこそなんとかしなければ、という気持ちがありました」
森山は、「病院では病気を治療するのはもちろんのこと、患者様に元気になっていただくためにはなんでもするべき。運動療法はそのために役に立つ」と確信しています。その考えの源は、1年間のアメリカ留学と、その後の大阪簡易保険総合健診センターでの経験から生まれました。

「元気になれる」という確信を得て、運動療法の普及を決意した原体験

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アメリカ留学時代、トレーナー活動をしていたアメフトチームのプレイヤーと
森山は子どもの頃から柔道をやっていて、将来はスポーツに関する仕事に就きたいと漠然と考えていました。当時はちょうど、それまでのいわゆる「根性論」から、科学的な根拠に基づいたスポーツ科学が注目されるようになった時期です。彼はそれに興味を惹かれて、高校卒業後スポーツ科学を学ぶことにしました。

スポーツ科学の先進国であるアメリカにも、1年間留学。そこで知ったのは、アメリカでは予防医学的な考え方が注目されていることでした。森山はその考えに可能性を見出し、スポーツではなく医療の世界で、運動を指導する仕事を目指すようになったのです。

留学から帰国した後の1997年、彼は大阪簡易保険総合健診センターに就職。同センターでは、呼気ガス分析を活用した高レベルな運動評価を取り入れながら、生活習慣病の患者様などに向けた運動療法に携わっていました。

運動療法の最前線で経験を重ねながら、森山は「運動療法で人を元気にしたい」という想いを強くしていきます。それは、ある患者様とのふれあいがきっかけでした。

その患者様は、「本態性振戦」といって体のふるえが止まらない疾患をもつ方でした。治療法はなく、思うように体を動かすことができずに、いっそう体力を奪われていく病気です。森山はずっと、運動療法にもとづいてその人を指導し続けました。すると患者様自身も運動をしっかりがんばったことで、どんどん活動的になっていくのを目の当たりにしたのです。

森山「運動療法をやったからといって、ふるえが改善するわけではありません。でも患者様の生活自体がすごく活動的になって、よくなったんです。『あなたのおかげで元気になれました』『生きがいを見つけられました』と言っていただいて、すごく励みになりました」
こうした患者様一人ひとりとのふれあいが、森山に運動療法の普及に尽力することを決意させたのです。

医師一人ひとりを説得して導入した「巡回スタイル」で多施設運営を可能に

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運動療法で患者様の元気な姿を--患者様への思いは誰よりも強く
当時、運動療法を行う施設は大阪にはほかに1、2施設ほどしかなく、全国的にも非常に限られていました。そこで森山は、大阪簡易保険総合健診センターで3年間の経験を積んだ後、2000年に偕行会名古屋共立病院へと転職し、運動療法の概念を広めることを決意します。

まず森山は、心臓リハビリテーションに携わるとともに、生活習慣病患者様のための運動療法導入に向けて動きはじめます。そして名古屋初の「医療法42条施設」であるウェルネスセンターを開設。2012年には透析中運動療法をスタートし、順次グループ施設に導入していきました。

偕行会グループの運動療法のユニークなところは、森山が中心となって作り上げた「巡回システム」を取り入れている点にあります。

森山は健康運動指導士として、患者様の体力チェックや運動の適否を判断し、運動メニューを作成します。日常的な運動療法の管理は、DVDなどを活用しながら看護師や臨床工学技士などが実施。森山は定期的に各施設を巡回しながら、その効果についてチェック、フィードバックを行っているのです。

もちろん森山からの一方的な指示を待つだけでなく、医師、看護師、臨床工学技士や栄養士などスタッフ全員でミーティングを実施し、意見交換を行う機会もしっかりとるようにしています。

森山「お互いにお願いしてそのまま、というのではなく、効果や管理をチームで見ていくいい形がとれていると思います。それぞれの専門分野を軸に双方の意見を言い合って、患者様のためにどうすればいいのか、全員で考えながら運動療法に取り組んでいます」
他の施設では、単独の施設に専門職が常駐しているか、もしくは医師や看護師だけで運動療法をやろうとしてうまくいかないという二極化が見られます。偕行会で取り入れている「巡回システム」のようなしくみは、ほかでは例をみない取り組みです。

運動療法の成果は、数値としても着実に現れています。

森山「運動習慣がない場合、40歳以降は年に0.5%ずつ筋肉量が減少しますが(※平均)、それに対して『運動習慣のない透析患者』は、その5倍の2.5%ずつ減少することが、調査の中で明らかになりました。これは予想以上に大きな問題です。しかし私たちは、運動療法を介することで筋力低下が抑えられるだけではなく、3%もの筋肉量向上に転じたというデータが得られたのです」
また患者様に感じていただける成果も、継続のための大きなモチベーションとなります。運動療法をはじめた人の80%強は、開始3ヶ月後あたりで効果を実感することが多いようです。たとえば1週間に1度は転倒して骨折を心配されていた患者様が、運動療法を取り入れてから3ヶ月ほど経つと、まったく転ばなくなった……というようなケースもありました。

森山「最初は半信半疑で運動療法をはじめた患者さんでしたが、今では誰よりもその効果を確信してくださっています。娘さん夫婦に、透析中に行うチューブ運動を自ら指導しているとお話してくださったときは、運動療法の意義が伝わったんだ!とうれしくなりましたね」

すべては患者様の「10年後の生活」を支えるために

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運動療法の有効性を広めるため、講演活動・メディア活動にも積極的に取り組んでいる
偕行会グループ独自の、「巡回スタイル」による運動療法のしくみを確立した森山。しかしこのスタイルの継続については、もちろん自分だけの功績ではなく、施設のスタッフの理解に助けてもらっているところが大きいと考えています。

森山「大切にしているのは、患者さんの状態がよくなるなどの成果が出たら、患者様本人にもスタッフにもフィードバックして共有することですね。あなたのおかげで患者さんがこれだけ元気になりましたよ、ということはしっかり伝えて、仲間としてしっかり協力関係を築いていくように努めています」
運動療法は、患者様の生活の質を高めるという確信をもっている森山ですが、偕行会グループ内外ともに、普及の課題はまだまだあると感じています。

ひとつは、そもそも希望制であるために、運動を面倒に感じる患者様に実践していただくことが難しい点。しつこくお勧めしても、相手に不快感を抱かせるだけになってしまいます。しかし周囲の患者様の生活が改善しているのを見て、「自分もやってみよう」と気持ちが動くケースも多いため、まずは丁寧に成果を出していくことが啓発につながるでしょう。

もうひとつは、後進の育成です。森山は今後、ここに力を入れていきたいと考えています。スポーツ領域での従事が多い健康運動指導士が、医療の現場で活躍する場をもっと広げていきたいというのが森山の願いです。現在は彼自身が医療看護専門学校の非常勤講師も務めており、医療に特化したカリキュラムを組んで後進の育成に尽力しています。

かつては全国にも数えるほどしかなかった運動療法施設を、自ら切り拓いて創ってきた森山ですが、他の施設に自身のノウハウを伝えることを決して惜しみません。巡回スタイルでの運動療法は関係者に注目されており、講演の依頼もしばしばあります。たとえ健康運動指導士がいない施設でも、工夫してやっていけるような方法を伝えているのです。

森山「グループ以外の患者さんにも、みんな元気になってもらいたいですから。運動療法は、透析患者さんが5年後、10年後、元気で過ごしてくださるよう、先を見据えていくものです。それに運動だけでなく、ケアも大切。現在力を入れている炭酸泉治療もその一環です。とにかく患者様のことを第一に考えて、これからも取り組んでいきます」
病気の治療だけにとどまらず、患者様の未来をより良いものにするために。森山は「運動療法」という自らの仕事に確信と熱意をもって、透析医療の今後を支えるべく、さらに成長していこうとしています。

◆偕行会グループHP◆
http://www.kaikou.or.jp/

◆偕行会グループ facebook◆
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担当:岩田

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