家庭単位で実装されるギークなアイデアを発掘――子育Techアイデアコンテストで見えたもの

パパママエンジニアのなかには、家庭内で育児を効率化できるITツールを自作している人が数多くいるのをご存知でしょうか。そうした個人単位のアイデアを、子育て層に広くシェアすることを目的に、子育Tech委員会が企画した「子育Techアイデアコンテスト」。その企画背景と子育Techの可能性をお伝えします。
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アイデアやナレッジが、個人や家庭内にとどまっているのはもったいない

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▲子育Techの発起人であり、今回のアイデアコンテストのコーディネートを行った彦坂。 コンテスト開催の背景に子育Techなアイデアは家庭内でのナレッジの蓄積にとどまってるという側面がある、という(撮影:曾根田 元)

2018年3月に株式会社カラダノート(以下、カラダノート)が提唱し始めた「子育Tech(こそだてっく)」。育児の記録や共有、情報収集の効率化や、夫婦間のコミュニケーションの糸口としてテクノロジーを活用し、豊かな暮らしを送ることを目指すというものです。

2019年3月現在はITベンチャー10社からなる共同組織「子育Tech委員会」へとかたちを変え、各種イベント開催や勉強会への登壇などをおこなっています。

「子育Tech」の発起人であるカラダノートでは、これまでメイン事業のユーザーであるママたちから実際に話を聞いたり、IT企業としてエンジニアが集まる勉強会などに積極的に参加したりしてきました。

そのなかで、広報/PRの彦坂真依子は、子育てに関する取り組みの「もったいない」部分に気づきました。


彦坂 「エンジニアのママやパパのなかには、家でいろいろ仕組みをつくって育児を効率化したり生活をおもしろくしたりしている人が一定数いるんですね。 LT( 5分程度の短いプレゼンテーション)会のようなイベントで、個人個人の取り組みをおうかがいする機会が何度かありました。
特にパパエンジニアが LTされているのを目にする機会が多かったです。
どの LT内容も家事や育児の非効率な部分を最適化したり、ママひとりに属人化してしまいがちな家庭内のタスクをバランスよく配分するような内容ばかりでした。これらがもっと一般のママたちに広がり、より子育てが楽になったりおもしろくなったりしたら、すごくいいなと感じていました。
ただ現状は、あくまで個人や家庭内で実装しているもので、アイデアやナレッジが個人単位での蓄積にとどまっていることは、非常にもったいないと思いました」

これまで一部のギーク(コンピューターやインターネットについて豊富な知識を持つ人)な個人でおこなってきた取り組みをシェアする機会があれば、より子育Techの幅は広がり、たくさんの人の生活も豊かになるのではないか。

そのような想いから、子育Tech委員会が2019年1月22日から開催したのが、家庭で実践している子育Techアイデアを募集する「子育Techアイデアコンテスト」でした。

応募者は北海道から九州まで。女性の実装アイデアも予想外にハイレベル

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▲コンテストを共同開催したアスキーの記者羽野三千世氏。アスキーキッズは、ギークな子育てをテーマにしている

「子育Techアイデアコンテスト」の開催にあたり、子育Tech委員会からは、カラダノートのほか、株式会社cosoral、株式会社ファーストアセント、ピクスタ株式会社の計4社が協賛。さらに、共同開催として、株式会社角川アスキー総合研究所が運営するメディア「アスキーキッズ」の協力も得ました。

彦坂 「アスキーキッズさんが『ギークな子育て』というテーマを扱っていらっしゃって、文化として非常に合いそうだと思ったのと、子育てに何かしらの興味・関心がある方々が記事を読みに集まっていると感じました。そこで一緒にできることがないかと、ご提案させていただいたというのが経緯です。
お話ししたアスキーキッズの記者さんには、子育 Techをすでにご認識いただいていたこともあり、前向きなリアクションで、イベントにもご賛同いただくことができました」

こうして1月22日から募集を開始した「子育Techアイデアコンテスト」。事前の心配をよそに、全国から高度なアイデアが続々と集まってきました。

彦坂 「実装まで行っているものだけだとハードルが高いのではないかと思い、今回はアイデア・構想段階でも OKとしていました。ふたを開けてみると、アイデアベースでも皆さんかなり研ぎ澄まされたものをお持ちで、北は北海道から南は九州の方までご応募いただきました。
今まで参加した LT会では男性の活躍が目立っていたので、男性からのご応募が集まると予想していたのですが、女性でも実装段階まで行っている方が多かったり、おひとりで複数応募してくださったりしていたのが、意外で驚きました」

各地から集められたアイデアのなかから、子育Tech委員会4社+アスキーキッズの各社ひとつずつを企業賞として選出。その選考基準にも、各社の子育Techに期待する想いが込められています。

たとえばカラダノートでは、「子育てで活かせる記録や共有を効率化できる実装済みアイデア」という部分を重視しました。

cosoralは「名前のない家事が楽になるようなアイデア」、ファーストアセントは「子育てハックな実装済みアイデア」、ピクスタは「家族写真で日常的に家族の会話がより豊かになるようなアイデア」、そしてアスキーキッズは「多くの育児家庭がマネしたくなる『流行りそう』なアイデア」をそれぞれ基準として厳選。

そして、企業賞に加えて、最も優れたアイデアを「子育Tech大賞」として、2月24日におこなわれた表彰式で発表する運びとなりました。

6作品を表彰し、多様な視点のアイデアとナレッジを共有できた

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▲2019年2月24日に実施された表彰式には滋賀や福岡から受賞者が参加

都内でおこなわれた表彰式には、各賞を受賞された応募者を招待。福岡や滋賀という遠方からもお越しいただき、アイデアの意図や背景を共有してくださいました。

カラダノート賞として選出したのは、「ぽこったー」という、妊娠中のママのお腹の振動をリアルタイムでパパのお腹に届ける装置。

ママのお腹の振動を検出する装置とパパのお腹を振動させる装置に分かれ、それぞれをネットワークで接続。ママ側は聴診器で胎動を検出すると、サーバーを経由してパパのお腹を振動させるという仕組みでした。

子育Tech大賞に選んだのは、「スマートおむつストッカー」という装置を開発された女性。モーターでおむつを引き上げるストッカーで、おむつの減りをセンサーで感知し、一定まで減るとLINE にアラートが届く仕組みを実装されています。

「おむつそのものの性能は進化しているが、おむつを買ってきて、取り替えて、捨てるという一連の体験は進化していない。その体験をアップデートできないか」と考えた結果のアイデアとのこと。ふたりの子育てを通して感じた課題感をアイデアとして実装されていました。

また、表彰式には後援として、日本最大級のIoTコミュニティのIoTLTが参画。その派生コミュニティであるファミリーテックIoTLTから、4名の方々に登壇していただきました。

彦坂 「おむつは育児に欠かせない必需品でありながら、成長に応じてサイズアップがあるので、まとめ買いもしにくいんです。さらに、『あまり見える場所に置きたくないが取り出しやすくはしておきたい』というセンシティブな面があります。
スマートおむつストッカーは、そんなママの心理をうまくとらえたアイデアだなと思い、大賞に選出させていただきました」

登壇者は、音声入力によって育児記録がたまる「IKZAP(育児ゼロアクションプロジェクト)」や、スマホとIoTを連動させて離れて暮らす家族にお酌ができる「遠隔お酌」など、家族の生活が便利で豊かになるようなアイデアの数々を発表。

会場では、アイデア実装のデモンストレーションがおこなわれるなど、ギークな方々の高度なアイデアを共有する貴重な機会となりました。

高まる「子育て×テクノロジー」への注目に、どう応えるか

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▲子育てにおけるテクノロジーは今後もさらに関心が高まっていると、我々は確信している

今回共有されたアイデアは、技術的に高度で、すぐには家庭で実践できないものもあります。しかし、今回の「子育Techアイデアコンテスト」は、「子育Tech」のおもしろさを知り、身近に感じられるきっかけになるのではないかと私たちは考えています。

彦坂 「私も文系人間なので技術的な部分は明るい方ではありませんが、『子育てにテクノロジーを使うとこんなことができるんだ』ということをまず知る、というのが目的のひとつだと思っています。
『皆さんも家庭で実践しましょう』というのはハードルが高いこともあるので、身近なものからの実践や、われわれのような事業会社と協業していくという可能性はあります。
たとえば『ママびより』のアプリ内に機能追加してひとつのアプリのなかで完結できるようにするなど、誰でも使えるかたちに実装できたら嬉しいですね」

現代はワーキングマザーも多く、家のなかで時間を割いてできることは限られています。そのなかで、「ITを使ってこんな風に効率化できる」という事例を広めていくと同時に、「効率化してもいい」と発信していくことが大切だと私たちは考えます。

彦坂 「効率化してもいい、と言っていくことでママや家庭の育児負担が減り、家庭がうまくいくきっかけのひとつになるんじゃないかと思っています。子育 Tech委員会としては、まずは現役子育て世代の人たちに子育 Techを知ってもらうことを中心に取り組んでいきたいなと考えています」

時代の後押しもあり、「子育て×テクノロジー」の注目度は高まっています。それに伴い、子育Tech委員会や、その発起人である当社には、イベントの登壇や協力依頼が増えてきました。「子育Tech」による心身ともにゆとりある育児スタイルの浸透に向け、今後もまい進していきます。

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