「センス」から「根拠のある説明」へ──若手デザイナーの葛藤と成長

会社の成長のためには、成果を出せる社員が必要ですが、いかに社員が育つ環境をつくれるかどうかも大切な要素となります。社員一人ひとりの成長が、会社の業績にも貢献するのは、ベンチャー企業だからこそ。入社以降、壁にぶつかりながら成長してきたデザイナーの成長の軌跡を、同僚と上司の視点を交えてお伝えします。
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いまや定番育児アプリとなった「授乳ノート」を入社後数カ月で担当

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▲入社時から篠原を見守ってきた長澤(写真左)と篠原のメンターのように仕事をしてきた二村(写真右)

ベンチャー企業である株式会社カラダノートでは、ある程度の社会人経験がある中途採用者が多いのが特徴ですが、ほぼ新卒から働き続けている社員がいます。

2014年2月にインターン入社した篠原みなみは、デザイナーとして、社会人としてのスキルや経験を積んできました。入社時から彼女の成長を見守る長澤香は、初めて面接に来たときの印象を今も記憶しています。

長澤 「彼女は学校を卒業する直前にインターンとして入社したんですが、面接のときに卒業制作を担いできたんですよ。それもすごく大きな。びっくりしましたね(笑)」

アプリデザイナーとして入社した篠原は、デザインとは少し離れた仕事も行いながら、徐々にデザインに携わるようになりました。

篠原 「当時行っていたアプリの受託開発では、取引先の製薬会社から資料の修正が来るので、入社当初はそれを指示書通りに修正する仕事をしていました。その後にバナーをつくったり、先輩デザイナーのイラストのお手伝いをしたり。
2、 3カ月くらい経ったあとに、『授乳ノート』というアプリを初めて担当しました。どういう UIにするか、どういう機能にするかなどを、先輩デザイナーと代表の佐藤と私の 3人で一緒に企画をしていきました」

その後、他のアプリデザインにも携わること約3年半。篠原に転機が訪れたのは2017年の夏ごろでした。アプリデザインからWebデザインに仕事の中心が変わることになったのです。LPという、具体的に数値を求められる部署への異動になりました。

篠原 「アプリデザインも Webデザインも、ルールは違えど扱うソフトは一緒だし、考え方も一緒。求められるところに対していいものをつくるっていうところは変わらないので、その楽しさは変わらなかったですね」

しかし、その過程を通して、篠原はデザインの難しさに触れ、仕事の仕方に関しても、大きな変化を求められていきます。

「デザインとは何か?」を模索したWebデザイン時代

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▲ママ事業部時代、篠原と二村は毎日激しく議論を交わしていた

異動したママ事業部で、篠原とともに仕事をすることが多かったエンジニアの二村敦司。二村は、毎日のように激しく議論を交わしながら、メンターのように篠原を引っ張っていきました。

二村 「自走してほしいっていう気持ちがすごくあったので、何かあったら『なんでだと思う?』と聞いて、篠原が自ら答えを出せるように意識して接していました。タスク管理の方法を教えるなど、社会人としての基本的なことにも触れていましたね。
あとは、細かい LPのクリエイティブなどで、僕の意図していたものと全然違ったものが出てきたときにはその意図を聞いて、意図がないなら僕の意図を汲み取ってほしいと伝える。というような形で、常にやりとりをしながら仕事を進めていました」

一方の篠原は数字を追うというミッションを踏まえたデザインに苦戦していました。

篠原 「アプリはユーザーのための UI改善が中心ですが、 LPは既存ユーザー以外のところで数字を出さないといけない。ボタンの色を変えてみたり、写真を変えてみたりしましたけど、 A/Bテストで大きく反応が変わることがほとんどなくて。数字を上げるグラフィック表現というのは難しいなと思いました。
たとえばクライアントの集客のためのキャンペーンの LPは、見た目はあまり新しいデザインなどはないんですよ。じゃあ綺麗なデザインにしてみようと、 A/Bテストをやってみると、ほとんど差がない。むしろ変更前の方が良かったりします」

デザインが綺麗だからいいわけではない──そんな現実に打ちのめされた篠原。『デザインとはなんなのだろう』と自問することも。

二村 「 LPってすごくシビアなので、自分のいいと思ったデザインが、まあ外れるんですよ。そうすると何が正解かわからなくなりますよね。だからしっかり数字を見て改善するということが大切で、精神論も方法論も徹底的に植えつけていました。
前のアプリ時代には数字を見ることが少なかったようですが、どんな施策に対しても数字で考えるようになったというのは、今のチームでも生きているんじゃないですかね」

タスク管理やPDCAの回し方、数字の見方など、二村から多くの学びを得た篠原。デザインという仕事の難しさを感じながらも、日々改善は続きました。そして、2019年2月、新たな組織体制への変更とともに、再びアプリのデザインに関わることになったのです。

色や写真というビジュアルだけではなく、文言も重要だと気づいた

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▲今では数字や根拠をもってエンジニアと意見交換ができるようになった

篠原が現在(2019年5月)のコネクトプランニング部で意識しているのは、考えや意見の根拠を示した提案をすること。

篠原 「『こっちの方がいいです』という意見も、主観ではなく、根拠をもって伝えることを意識しています。たとえば、『他社のキャンペーンだとこういうやり方をしていて、何パーセントアップしています』など、他社事例を出して説明したりしています」

現在の上長である長澤も、その変化を感じています。

長澤 「どうしてもデザイナーだと感覚的に仕事をする傾向が強いんですが、そこに数字という要素が加わって、説得力のある説明ができるようになったと思います。それはすごくママ事業部時代の成果だなと。提案も PDCAを回すのもひとりで完結できるようになったので、今は仕事を任せられるなと思っています」

コネクトプランニング部では、エンジニアやディレクターとともに、アプリの仕様や機能まで、意見を出し合いながら進めています。個人の見解ではなく「チーム」として開発を進められている点で、仕事の進め方が以前とは大きく違っているのです。

また、デザインについて、広く捉えられるようになったことも、篠原は実感しています。

篠原 「色や写真や、キャンペーンの内容もとても大事ですが、文字もかなり影響することに気づきました。ボタンに置く文言に、『限定』と入れるのか入れないのかといった細かな部分から、どういう表現だと成果が上がるのかなど、文字はこれまであまり意識してこなかったんですが、これを機にすごく考えるようになりましたね」
長澤 「彼女の最初のデザインって、文字がまったくなかったりしたんですよ。全部『あ』で埋められているか、テキストなしで出してくるか。でも文言まで含めてデザインということをここ数年で気づいて、考えてみて難しかったら、誰かに頼む。そういうことができるようになってきたなと思います」

スピードと質が伴った、頼もしいデザイナーになってきている

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▲入社して最初に手掛けたアプリ『授乳ノート』に新機能を作り多くの家族に使ってもらいたいと話す

篠原は、デザイナーとしてだけでなく、ひとりの社員として、社会人としての成長も実感。社内でのコミュニケーションや振る舞いも、他の社員から「変わった」という声があがるほどです。その変化のきっかけは、あるWeb記事を読んだことでした。

篠原 「私は気分にムラがあって、以前はそれを表面にも出してしまっていました。ですが、『会社に必要なのは、モチベーションが高い人よりも、機嫌のいい人』という内容の記事を読んで、すごく腑に落ちまして。毎日テンションが変わらない人の方が、仕事の依頼や相談をしやすいということです。
それからは、自分の気分が落ち込んでるなっていうときは、発言をちょっと控えてみたり、気分転換をしたり。自分の気分を感じて、コントロールする意識をもつようになりました」

長年、篠原の成長を見守ってきた二村と長澤は、彼女に対し、今後への期待も抱いています。

二村 「僕がエンジニアのチームをひとつにしようとしているところなので、彼女にはデザイナーチームをつくってほしいなと思います。デザイナーはまだチームがバラバラなので、そういう面に期待しています」
長澤 「やることが明確になるとすぐに動けること、〆切を厳守することが彼女の強みです。〆切厳守のために、昔は何かを落としたりもしていたんですが、今はスピードと質が伴った、頼もしいデザイナーになってきていると思います。今一番努力しようとしてるところじゃないかと思いますし、伸びしろをすごく感じるので、大きく貢献してくれるだろうという期待は大きいです」

今後、アプリデザインの仕事について、篠原は意気込みます。

篠原 「入社後最初に自分でデザインした『授乳ノート』のデザインを今見ると、おかしいなと思うところがたくさんあるんです(笑)。もしもう 1回、同じアプリをつくることになったら、今度は数字や自分の意見を反映した、違ったものになると思います。
それは、いろんな部署で学んできたからできることかなと思っています。今後は、アプリの数字を上げていきたいということと、より多くの家族にアプリを使ってもらえるように新機能をつくっているので、それを実現させたいです」

5年間で社会人としても、デザイナーとしても大きく変化した篠原の成長は、今後会社の成長にも大きく貢献していくでしょう。

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