プラットフォーマーを目指して──DX推進に必要な力とは

「世の中の企業をテックカンパニーに進化させる」という目標を掲げ、2019年4月に第3創業期を迎えたKeepAlive。20年間にわたってクライアントの新規事業創出や組織・事業構造の変革を支援しているコンサルティンググループ・アカウントマネジメントチームのリーダー高橋伸明がDX推進について語ります。

DXに対して危機感が足りなかった日本企業は「箱もの行政」が主流でした

▲ 取締役アカウントマネジメントチーム 高橋伸明

弊社のアカウントマネジメントチームの役割は、新規営業や提案、受注獲得はもちろんのこと、クライアントの中長期計画の策定支援であったり、その後の軌道修正を行ったりという長期にわたっての側方支援です。

今から3年前になる2016年ごろのトレンドは、“デジタル”でした。基幹システムの刷新や新規Webサービスの立ち上げなどの経営戦略は「箱もの行政」が中心で、本来なら当初から明確にすべき「どのように活用していくか」が十分に検討されないまま進み、後年有効活用できなくなるという状況を生みました。MA・DMP・CRMを箱ものとして導入してマーケティング分野で使い込めば、競争力を維持できると考えられていたのです。

われわれも顧客のニーズに応えるために、実業であるバリューチェーンとデジタルマーケティングを融合させるような提案を行っていました。その当時も導入したら終わりではなく、バリューチェーンに組み込むことが大切だと、しつこく言い続けていたのですが、それだけでは不十分だったのです。

背景には、市場と競合の動きがそこまで速くなく、スピードが求められていなかったことと、当時はデジタルマーケティングが主流で、同じ業界の企業とどう差別化・効率化するかで競っていたことが挙げられます。

しかし、徐々に競合が変わってきました。メルカリやUberといったテック企業が国内外で台頭してきたことで市場が大きく変化し、当時は想定していなかったスピードや新たな脅威に晒されるようになったのです。

われわれは、DXには3つのstepがあると考えています。

[step1] スタンドアローン: 既存ビジネスのデジタル活用による高度化
[step2] 顧客への提供: 製品・サービスのデジタル化による情報サービス業への進化
[step3] プラットフォーム化: デジタル化による企業の壁を越えたエコシステムの形成

単独完結の[step1]と、新しいビジネスモデルを創出する[step2]、最後に社会を巻き込む[step3]という構成になっています。これだけではわかりづらいと思うので、「お鍋屋さん」を例にし、次章以降で説明します。

テック企業の台頭──テックを持たない企業がディスラプターに対抗するには

▲ 社内外に向けてDXのプレゼンを行っています

われわれは、「テクノロジーが資産の大半を占める新たな企業群」をテック企業と定義しています。テック企業には若いスタートアップも多く、サービス・資金調達方法・市場へのアプローチ・組織など、多くの点で既存の企業とまったく異なっています。

テック企業の特徴は、世の中になかったサービスを提供し、新たな経済圏をつくることです。往年ではGoogle・Amazon・Facebook・Apple、近年ではUber・Airbnb・Netflix・メルカリなどがその代表です。

テック企業がつくるサービスや経済圏はときに市場を混乱させ、既存企業や既存市場を破壊することがあります。それゆえに、関係なさそうな業界から突然死角を突いてきて横からシェアを切り取っていくテック企業は、しばしば「デジタル・ディスラプター(破壊者)」と呼ばれています。

さて、デジタルマーケティングツールの導入が一巡したころ、IT業界には次のパラダイムシフトが起こりました。

・箱ものから脱却して持続可能な資産をつくる方向に変わったこと(DevOps)
・今まで競合としてきたプレイヤー以外の第三者(ディスラプター)が参入してきたこと
・テクノロジーの使い方がマーケ分野から再びバリューチェーンの分野に戻ってきたこと(AI・RPA・IoTなど)

われわれとクライアントもこのような状況を見過ごしてきたわけではなかったのですが、スピード感が増した今こそ、「箱もの行政」を終わらせなければなりません。

情シスが所有する人や資産がレガシーな場合には、スタートアップのようなスピード感は出ないと割り切る必要があります。とはいえ、制限のある中でできることを考えなければなりません。

われわれはこの3年間のDXへの過渡期で、主に基幹システム刷新などのプロジェクトにおいて以下3つの取り組みを行いました。

1.ベンダとの契約を準委任にする
⇒請負契約は契約日で、時が固着するのに対して準委任契約は流動性を担保できるためです。

2.レガシーに対して近代的な足場を組む
⇒APIが用意されていることの多いSaaSなどのフルマネージドな製品を積極的に活用しました。レガシーな人員への対応に関しては、古い人と近代的な人を入れ替えたりしないことが大事であり、本人がトレーニングによってトランスフォーメーションすることが重要です。

3.巨大なRDBMSとの決別
⇒目的に応じて、NoSQLDBやフルマネージドなビッグデータにデータストアを分散しました。本当はただちに軌道修正したかったのですが、箱ものが終わらないために着手できず、じれったい想いをしてきたのです。

推進の3stepを「お鍋屋さんのサブスクリプションサービス」で説明

▲ 社内でも毎週DXの勉強会を行っています

冒頭の章で、DXの3つのstepについて述べました。その[step1]を行うためには、さらに前段階としてふたつのステップがあると考えています。

[step0-1] レガシーとの決別
[step0-2] 近代的な技術で足場を組む
[step1]それを使って変革した既存ビジネス

[step1]では表面上が近代化しただけで中身は古いままですが、システムグランドデザインで一番大切なことは足場組みなので、そこだけでも描く将来像に向けたものにすれば、中身に関しては少しずつ修正していけばいいのです。

[step2]は、お鍋屋さんを例に挙げて説明します。

いろいろな種類のお鍋がありますが、多くそろえるほど収納場所に困りますよね。そんな中、お鍋のサブスクリプションサービスが開始されたとします。明日カレーをつくりたければ、すぐにカレー用の鍋が届く。大鍋が5つ必要な場合にも即日届く。

このようなサービスは、「鍋を所有する」という商売から、「鍋を利用した顧客体験を定額で販売する」という商売に変わっているわけです。

だた、鍋を即日配送するトランザクションを支えるもの、鍋のメンテナンス時期をアラートするのに必要なものを考えたとき、[step1]が完了していないと、これらのしくみづくりを行うことは難しいことがわかりますよね。

テクノロジーが各段に進化し、事業サイドからの要望に応えられるアジリティを技術的に担保できるようになったことで、この3年間で軌道修正を行った顧客に対してわれわれは、翌3カ年のIT中期経営計画でDXの完了を提案しています。

DXの完了とは、企業が「プラットフォーマー」になることです。

具体的には、業種を超えた他社が顧客になったりデータの提供元になったりと、企業の壁を越えたエコシステムを形成することを指します。単純なビジネスパートナーや旧来型の業務提携とは異なる、新たなバリューチェーンの形成こそがエコシステムです。

さて、お鍋屋さんの話に戻します。鍋のサブスクリプションサービスが大盛況になり、それがIoT鍋であれば、キッチンやガスコンロ・電子レンジ・冷蔵庫など、鍋周辺の「鍋にまつわる環境データ」が溜まってくるはずです。

たとえば、ユーザが肉じゃがを何分でつくり何度で煮ているのか、食べ残したものはどのように保管されるのかといったデータが取れていれば、ガス業界・インテリア業界・家電業界・レシピ発信のインターネットメディアとアライアンスできます。

つまり、これがプラットフォーマーになるということです。

このアライアンスによって、たとえば半径2km以内の人を集めた「冷蔵庫内の残り物を持ち寄ってパーティーするマッチングサービス」や、「届ける鍋に合わせた食材デリバリー」などの新たなサービスを生み出すことができます。

クローズドからオープンへ──プラットフォーマーの本質は仲間づくり

▲YouTubeで「KeepAlive Insights」を開設しました

プラットフォーマーになるためにまず必要なことは、自社の事業ドメイン・顧客・提供価値の再定義です。

[step1]、[step2]の段階では競合であったり無関係に思えたりした市場や企業群であっても、自社の定義が変わることで新たな関係性を見いだすことができます。

その上で、企業間アライアンスの加速、自社プラットフォームの開放、APIの整備、内製化の推進を進めていくべきだと考えていますね。

一般的に自社の事業ドメインは限定的であり、基幹システムはクローズドなものという認識があります。競合とは相容れないし、ベンダ(発注先)とユーザー(発注元)は立場が明確に分かれています。

ところが、テック企業やプラットフォーマーは、これらの境目が明確でなく、むしろ積極的に外部を取り入れて外部に解放していきました。その結果、これらの企業群は独自のエコシステムを形成し、加速度的に成長・進化していったのです。

デジタルを使えばDXというわけではなく、必要なのは、まず提供価値そのものであったり、自分たちのクライアントは誰なのかをゼロから真剣に考え直したり、業務全体をイチからつくり直したりすることです。

これらの推進や改革、改善が日々進むように、組織や意思決定・バリューチェーン・ツールチェーンを整備していく必要があります。

しかし、ここまで行ってもDXが完了するわけではなく、やっとDXのスタートラインに立ち、テック企業のスピード感についていく準備ができるだけです。

お鍋屋さんのDX成功の要は、サブスクリプションというビジネスモデルでしょうか?他企業とのアライアンスでしょうか?

そうではなく、私は仲間づくりだと思います。

ツールとアイデアだけでは、DXは完了しません。大きな社会の流れの中に自社のスタンスをどう置くか、社会とどうつながるかが一番大切です。

われわれは、企業が持つ「強みの原石」を採掘し、それをシェアすることを行っていきたい。「自社の強みを独り占めしないこと」がプラットフォーマーだと考えています。

3カ年計画の第一歩は、明日から始められます。それはまた次回以降で!お楽しみに!

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