苦難の連続。初挑戦のフリマアプリ事業

▲ 2017年11月、KANTEサービスローンチの記者発表説明会(左が鷲見 真)

CtoCでの取引が活発になる一方、高額品を個人間で取引することに抵抗を感じる方も少なくありません。社会課題となっている「偽物の流通」も不安要因のひとつです。

コメ兵はこのような背景から、自社の目利き=鑑定力を生かし、社会課題の解決を考えました。そして仮説をもとに、2017年4月にフリマアプリ事業開始にむけたプロジェクトがスタートしました。

当時、リユース事業社でフリマアプリをリリースするのは、前例のないこと。会社としては大きな決断でした。

鷲見 真は2000年に入社し、2年ほどのKOMEHYO店舗で衣料品・バッグ販売を経たのち、経理や総務、商品の生産管理など管理部門で17年間従事しています。しかし、お客様と直で話せる部門からは遠ざかっており、“守り“に入ってしまっていると自省していました。

そんな中、商品流通グループに所属していた鷲見へ白羽の矢がたち、プロジェクトマネージャーに任命されました

鷲見 「それまで大きなプロジェクトをまとめた経験がなかったので、自分でやり切れるのかと、不安もありました。その半面、誰も経験したことないことに挑戦するワクワク感もありましたね」

新規事業の立ち上げといえば、苦難はつきもの。コメ兵のフリマアプリ事業も苦難の連続でした。

アプリ開発にともなう、システムの理解やデザイン設計はもちろんのこと、法務や各所への折衝、販売促進の立案など業務は多岐にわたりました。直接関わったことのない領域を一手に引き受け、めまぐるしい日々の連続です。

プロジェクトマネージャーとして、8カ月。2017年11月、社内のさまざまなタスクメンバーのサポートに支えられながら、ようやくサービスリリースにこぎつけることができました。

KANTEは、個人間取引のプラットフォームでありながら、出品されている商品について偽物か本物か不安がある場合、「KOMEHYOカンテイ」という真贋判定サービスを利用できることが最大の特徴。

鷲見 「リリース当初は、まだまだサービスとしては不完全で不具合が多発していました。しかし、お客様にとって1回の取引は、“一期一会“に違いありません。早急な改善が必要だと感じていました」

ユーザーに寄り添う──規則にしばられない柔軟な対応を

▲ 2018年11月KANTEサービスリリース1周年をチームで祝った。主体性の高さが自慢のチーム(左から川合、鷲見)

「使いにくい!」

──2018年1月、川合 美緒が鷲見の部下として配属されたときの率直な感想でした。操作性の悪さ・カスタマーサポートの柔軟さにかけた“硬い“コミュニケーションの現状を目の当たりにします。

川合 「配属当初、私にはサービス担当者としてフリマアプリやマーケティングの知識は不足していました。ただ、現状を逆手にとって、『何もわからない私が、今できること』で貢献したいと思ったんです。

これまでにKOMEHYOの店頭でバッグの販売、KOMEHYO ONLINE STOREの運営・カスタマーサポートの経験があったので、ユーザー様が望むことはある程度わかりました。

そこでまず、カスタマーサポートでこのチームを補おうと思いました。Web接客は店頭以上に言葉の荒さが目立ちます。顔が見えず、感情が伝わりにくいですからね」

KANTEのカスタマーサポートは、メール対応が基本でした。

やわらかい文章や丁寧な接客、ほかにもお客様に誤解を与えない表現、迅速さ、ユーザー様の気持ちに寄り添うなど細心の注意を払いました。お客様との信頼関係構築は、地道なことの積み重ねです。店頭でもオンラインでも、コミュニケーションの本質は変わりません。

川合は、「通報」という機能について、印象深いエピソードがありました。

KANTEでは、健全なプラットフォームが維持できるよう、出品されている商品を一定の基準でパトロールしており、商品一品一品に目を光らせています。加えて、不正品の疑いがある商品を確認し、出品規則に違反していないのかなど、「通報」機能を通して、ご連絡をしてくださる方がいます。

川合 「当時、『通報してくださった方には連絡をしない』というのが、KANTEの基本スタンスでした。しかし、私はわざわざ大切なお時間をかけて連絡をしてくださることに感謝を伝えたいという想いがありました。

チームで相談の上、個別でメールをお送りするようにオペレーションを変更しました。そうすると、通報していただいたユーザー様には、『感謝してもらえるなんて』とアプリストアのレビューに高評価をいただくこともありました。

規則にしばられるのではなく、柔軟に変化して、ユーザー様と共により良いプラットフォームへと成長していきたいですね」

間違ったモノを売らなくてよかった──偽物から守るサービスに

▲ 思いついたことは雑談ベースでざっくばらんに相談

昨今では、全国の税関における偽ブランド品などの知的財産侵害物品の輸入差し止め点数は、年間で90万件を超えました。これは過去5年間で最高水準です。(出所:2019年3月8日 財務省報道発表)

ネットショッピングやフリマアプリを通して、偽物と知らず商品を購入してしまった経験を持つひとは45%にのぼります。(出所:2019年11月特許庁「オリジナル調査」)

偽物は、私たちの身近なところに潜んでいます。

一方で、偽物は知的財産を無視した“違法品“であること、ブランド企業の価値を毀損すること、偽物による健康被害など、購入時に意識をしない生活者も少なくありません。

ブランド品の鑑定をうたうKANTEでも、いわゆる“偽物“は発見されています。「KOMEHYOカンテイ」サービスを通した取引のうち、いわゆる“偽物“は、全体の1割に及びます。

川合 「これまでKOMEHYOの店頭販売が主だったので、“偽物“を身近に感じることは、そう多くありませんでした。KANTEを担当するようになり、こんなにも“偽物“が多く流通していることを肌で感じましたね」

法人間取引の市で商品仕入れするプロですら、真贋に迷うこともあると聞きます。それほどまでに、いわゆる“偽物“は精巧であり、ひとつの箇所を見て判断、ということは難しいです。ネット通販やプレゼントでもらったもので、知らないうちに手にしてしまっているというケースもあると考えられます。

以前、とある出品者様の商品を、KOMEHYOでは扱えない “規定外品“として、取引キャンセルにしたことがありました。取引ができないので、出品者様の残念なお気持ちもくんだ上で丁重にご連絡を差し上げました。

しかし、メールの返信は意外なものでした。

川合 「出品者様からは、『間違ったものを売らなくてよかった。これからも、また出品しますね』とご連絡をいただきました。

これまで店頭で販売を担当してきて、購入者様の視点に目が向きがちだったのですが、初めて、“真摯に売りたい“出品者様の想いに気付かされましたね。

『鑑定』という価値は、購入者様と出品者様双方にとって、『安心』できるものだと。KANTEのサービスの意義を改めて実感した瞬間です」

“偽物“の流通量が増えている現状に、危機感をおぼえています。

鷲見 「悪質な出品者から不正品を購入してしまうリスクは、従来よりも飛躍的に高くなってしまったのではないでしょうか。残念でなりません。

私たちは、ブランドリユースのリーディングカンパニーとして、健全な市場を形成すること、ブランドの価値や本物の良さを伝えていく必要があります。そのためにも、モノの見極めを徹底していきます」

これもひとつのミッションとして、お客様との信頼関係を築いていきます。

ブランド品の売買に安心を提供していく

▲ フリマアプリKANTE

KANTEは現在46万DL(※2020年2月現在)と、ブランド品に特化したニッチな市場でありながら、着実に利用者を増やしています。KOMEHYOカンテイの利用率は、リリース当初の8割から7割強へと低下傾向です。出品ユーザーの取引評価が蓄積されたことにより、「KOMEHYOカンテイ」なしでも安心して購入できるというユーザー様が増えたためです。

サービスの継続・出品数の増加・購入率など、鷲見らが追う指標は右肩上がり。サービスが定着してきた手応えを感じています。

KANTEチームの見据える、次なる課題はなんでしょうか。

川合 「もっとユーザー様に使ってもらえるサービスにしたいですね。なので、使いたくなるサービスってどんなものなのか、他社サイトを研究しています。そして自社サービスふくめ、さまざまなフリマアプリを利用しながら、サービスの向上を模索しています。

またKOMEHYOの店頭では年式が古い、ダメージが大きいなどの理由で買取りできなかった商品も、KANTEをご提案することで、お客様の希望金額に近い金額で『売る』ことができるかもしれません。

お客様にとっての“最適“な売り先を、今まで以上にKOMEHYOのあらゆるチャネルを用いてご提案していくこともひとつの目標です」
鷲見 「もしかしたら、高価なブランド品の売買は、一生に一度のことかもしれません。偽物だったらどうしよう、無事取引を終えることができるのか、という想いは、出品者様・購入者様ともにあるのは当然です。

私たちの役目は、それらの不安を取り除いて、安心して売買できる環境を整えること。個人間取引に慣れた方が増えていく中で、将来的に『安心』という価値は、よりいっそう重要視されるのではないでしょうか。

ですから、ユーザー様にとっての『安心』や『UX』を突き詰めていきたいですね。探しやすさ・出品しやすさの改良を進め、生活者がふと『ブランド品を売りたいな』と思ったときに、想起いただける・選ばれる存在になっていきたいです」

安心して売れる──

サービスの追求に終わりはありません。