変革の成果は、学生の姿にあらわれるーー128年続く歴史を礎に、学長が見据える新時代

全国でも類を見ない先進的な教育を実践する共愛学園前橋国際大学。現在の教育スタイルは、1999年に短期大学から4年制の大学として生まれ変わってから、さまざまな模索を経てたどり着いたものです。その改革のプロセス、そして学長である大森昭生が考える未来への展望をお伝えします。
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年齢や役職は関係ない。新しいリーダーは、皆で選ぶ

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共愛学園前橋国際大学学長 大森昭生
共愛学園前橋国際大学(以下、本学)の母体である共愛学園の歴史は、1888年(明治21年)に遡ります。当時教育の機会がなかった女子のために学校をつくろうと、地元の女性たち、新島襄の教え子たちが立ちあがったのが創立のきっかけ。資金面は地元の絹産業で財を成した資産家をはじめ、前橋市民の寄付によって賄われたという経緯があります。

創立時より大切にされているキリスト教の教えに導かれた「共愛」の精神。そして、地域との共生。2016年より共愛学園前橋国際大学の学長に就任した大森昭生も、その精神を受け継いでいます。

大森「地域の方の想いが学園の礎にあります。また、当時はまだ珍しかった女子のための教育を、しかも英語や国際教育を軸に志したというところは、非常に先進的だったといえるでしょう。学園の創立から128年が過ぎましたが、地域の期待に応えること、常に新しいチャレンジを続けることは、現在でも大切にしている点です」
2015年までは、大森は副学長を務めてきました。実は今でも、彼は大学運営の仕事ばかりをしているわけではありません。副学長のときも、学長になってからも、ずっと教壇に立ち続けています。

大森「大学運営と授業で教えることを同時にするのはハードな仕事です。とはいえ、学生と接することを無くしたリーダーには、学生のための大学を作れない。だから私は今でも授業を持って学生たちと日々接しています」
本学では、教員、職員の隔てなく全教職員によって新しいリーダーが選ばれます。いわゆる年齢や役職などとは関係なく、そのとき必要だと思われる人材が選出される仕組み。大森も、前学長の平田郁美も40代という若さで選出されています。

大森「私や平田の事例は、若いのが良いということを示しているのではなく、そのとき大学にとって必要な選択をしたという結果でしょう。皆に選ばれたということは、私が成すべきことがあるのだと理解しています」
そのような仕組みが生まれたのは1999年。ちょうど、女子短期大学から4年制大学へと生まれ変わったタイミングです。実はこの時期は、本学にとって大きな課題を克服する時期でもあったのです。

「新しい大学をつくる」 教職員と学生が一体となって行った学内改革

女子の教育が立ち後れていた共愛学園の創立当時とは時代が変わり、現代は男女共同参画が当たり前。さらに学生たちの卒業後の進路である企業のニーズに合わせて、より高度な知識とスキルを備えた人材を育成する必要を感じ、女子短期大学から4年制大学へシフトしました。

それは同時に、これまで築いてきた女子短期大学としての歴史や知名度を一旦無しにして、新しいステージに立つということ。この少子化の時代にあって、群馬の大学としてどのような存在感を示せばいいのか…。変革に向けた模索のはじまりでもありました。

大森「変革のために大学の常識では考えられない全教職員が集まるスタッフ会議を始めて、意思決定機関として位置づけたり、現場から選ばれるリーダーが生まれたことで、教員職員の垣根をなくし、一丸となって新しい時代を切り拓こうという意欲が高まっていきました。当時私は一教員だったのですが、授業が終り、仕事が終わった19時頃から夜が更けるまで『これからのこの大学をどうするのか』という話し合いをずっとしていましたね」
その話し合いには、なんと学生も加わっていました。「新しい大学をつくろう」という教職員の意欲は、学生たちにも伝わり、教える側と学ぶ側の相互作用で、熱量はどんどん大きくなっていったのです。

大森「4年制大学にシフトした当初は、学生アンケートの結果も不調で、学生募集にも苦戦していました。しかし、教員職員だけでなく、学生との距離がどんどん縮まったことで、徐々に状況が改善されていったんです。」
本学は少人数のクラスが多いので、自然と授業はインタラクティブなものになっていきます。50人編成の授業が全授業の85%で、一番人数が多いクラスは10人規模なので、学生と教員がしっかりと向き合い、お互いに意見交換しながら「本当に力を付ける授業」を追求。その結果、現在の教育スタイルができあがっていきました。

大森「新しい教育スタイルに到達したときには、卒業生の大学に対する満足度が飛躍的にアップしていました。全国に数多ある4年制大学を真似るのではなく、共愛独自のスタイルを主体的につくりあげたこと。それは当時在学していた学生の自信にもつながり、大学の雰囲気も活気づきました。時期を同じくして、入学希望者の数も増えていったのです」
学生たちとの距離を縮めたのは、授業だけではありません。実際の“大学づくり”に学生たちが携わってくれているのです。たとえば老朽化した部室楝を新しく建て直す際には、予算を学生に預けることから、学生の自主性に任せました。このように、学生に大きな権限が与えられることもあるのが、本学の特長のひとつです。

時代が求める「アクティブ・ラーニング」を先取りした、共愛流教育スタイル

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最先端の学びの場「KYOAI COMMONS」でのアクティブ・ラーニング風景
大森「そして学生たちの“学び”への意欲は、キャンパスを飛び出しました。主体性や協調性という社会人としての力を養うためには、大教室で教員が講義をする従来の教育法だけでは対応できないと考えたんです」
本学は門戸を開き、地域と連携して学生を育てる方向へと転換し、実践してきました。「キャンパスの中だけでは教えられないことがある」学生と向き合い続け、ともに大学づくりを行ってきた本学にとっては、その割り切りすらも必然だったといえます。

しかし、この教育スタイルが、時代が求める教育の姿とマッチしたものだと知るのは、2011年の頃でした。河合塾が調査していた最新手法が、たまたま本学が取り組み続けてきたことだったのです。

それは、講義によって一方的に知識を伝達するのではなく、学生の能動的な学習を促す「アクティブ・ラーニング」といわれる手法。2012年の中央教育審議会の大学に対する答申のなかでも、今後必要とされる教育の質的転換の柱として提唱されています。

大森「1999年以降、試行錯誤しながら見いだした教育のやり方でしたが、あとから評価をいただくことになりました。『アクティブ・ラーニング』という言葉が知られるようになった2012年には、本学にはすでに10年を越える実績があり、学生の能動的な学習を支援するための施設も設けられていました」
新しい概念であるアクティブ・ラーニングを長きにわたって実践し、成果をあげている本学は、先駆的な例として有名になりました。今では教育業界の多くの関係者が視察に訪れ、その取り組みが各地へと広がっています。

大森「そして本学のもうひとつの特長は、アクティブ・ラーニングによって力をつけた学生を、地域社会で力を発揮する人材として、地元・群馬県に還元することです」
本学は国際教育が活発で、学生の半分が海外経験をしています。その一方で、学生の就職先は地元群馬の企業が70%。自ら学ぶ力や発信力を養い、海外研修により国際性を養った学生を、地域の経済・社会の発展に寄与する“グローカル人材”として送り出しているのです。

群馬のような、ものづくりと農業が中心の県では、近年グローバルの波が押し寄せています。たとえば「ベアリング(回転軸受け)」という機械の部品は、世界中で必要とされている部品で、そのマーケットはグローバル。本学の卒業生のひとりも、ベアリング製作で高い技術を持った地元企業の国際プロジェクトで活躍しています。

他にも世界各地に何十カ所も拠点を持っている会社が、群馬には多数存在します。農業においても、収穫物の輸出先もグローバル。そのような舞台で活躍できる人材を育て、地域に還元していくことも、地域の力によって創立した本学の使命です。

教育の成果は人材そのもの。だから学生を見てほしい

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『前橋まちなか研究室』での共愛学園イレブンミーティング
2016年、本学で育成された“グローカル人材”を群馬県内外に発信をしていくプロジェクト「共愛学園イレブン」の発足を発表しました。これまで行ってきた地域連携型の取り組みを結集した、アクティブ・ラーニングの集大成となるプロジェクトです。

大森「教育という分野は、成果を言語化するのが非常に難しいのです。数字で示せない部分も多く、教育業界では注目されていても、一般の方には伝わらないことも多い。共愛学園を支援してきてくれた地域の方や、これから本学で学ぼうという学生、また本学の学生を採用したいと考える企業……。こういった方々に本学の取り組みを伝えるにはどうしたらいいのかと」
大森がたどり着いた答えは、“学生を見てもらう”ことでした。教育の成果は人材そのもの。ならば学生が主体的にこれまでの本学の活動を集約し、地域に伝えていけばいい。大森が提案した活動の意義に共感した学生が主体となり、結成されたのが「共愛学園イレブン」なのです。

大森「主な活動の場を、キャンパスの中ではなく一般財団法人 田中仁財団が前橋中心商店街に設置する『前橋まちなか研究室』にすることで、より地域の方々との交流が活発に図れるよう、さまざまな取り組みを展開していきます」
「共愛学園イレブン」の活動の大きな節目となるイベントが、8月下旬に行われる「けぇろう祭」。メンバーの学生たちが主体となって、前橋中心商店街で共愛学園の“今”を伝えます。本学と商店街が協力することで、学生と地域の方との間にさらなる交流が生まれるというものです。当日は地域の人達と学生の交流の姿が見られるのが今から楽しみです。

大森「学生にしても教職員にしても、扉を開き外に出て“つながる喜び”を感じてほしい。するとこれまで見えなかったものが見えてきます。そこに喜びを感じる『共愛・共生』の精神が、未来をつくっていくのではないでしょうか」
128年の歴史の先に新しい時代をつくろうとする大森の原動力は“つながる喜び”。それが地域の未来や、本学の未来、そして学生ひとりひとりの未来につながると信じてーー。今日も大森は教職員や学生と垣根なく、ともに前進し続けています。

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