ブロックチェーンがコモディティになる「きっかけ」となるために

ブロックチェーン・仮想通貨と動画広告を組み合わせるサービス「c0ban(こばん)」を提供する株式会社LastRootsを創業したCEO兼CFOの小林慎和。なぜ、仮想通貨と広告を組み合わせるサービスをはじめようとしたのか。創業からサービス開発までの過程を小林が振り返ります。
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「サービスが技術を広める」 コモディティになるためには何が必要か?

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▲Last Roots代表取締役CEO 小林慎和

2016年3月。このLastRootsの創業を決意しました。ブロックチェーンビジネスにフォーカスして、事業を展開していく。この大波を捕まえてやろうと。実はこの時、ブロックチェーンという事業ドメインを決めていたものの、この革新的な技術で何をするか?それを決めずに、起業だけ決意したのでした。

ブロックチェーン。仮想通貨。当時思い出すのは、マウントゴックスの事件。日本ではネガティブなワード。これほど革新的な技術なのに、メディアはほとんど評価していないーー。2016年に入り、徐々に好意的な記事が増えつつある。そんな時期でした。

「まったくもって過小評価されている。」

私がブロックチェーンについて思ったはじめのキーワードはこれでした。

その時ふと20年前の記憶が蘇ってきました。 

1994年。ちょうど私が大学に入ったばかりのころ。新聞紙上では、インターネット、インターネットと毎日のように記事が出ていました。 私が通っていた大阪大学は、NEXT社のワークステーションを200台以上導入しており、日本最大のユーザーでした(当時)。

NEXT社は、アップルを追い出されたスティーブ・ジョブズが新たに作った会社。その後、アップルに買収され、再びジョブズがアップルに復帰する契機を作った会社でもあります。当時の私は、特にコンピューターオタクでもなく、普通の情報工学科の学生でした。特にNEXTのコンピューターには感慨は持ってなかったのですが、モザイクというブラウザでインターネットに触れる機会があり、その可能性に毎日ドキドキしていました。

まさに、当時のインターネットも過小評価されていました。そんなインターネットが、なぜこんなにも急激に世界に広がったのか。それは、誰もが使いやすいWindows95というOSと、すぐ情報にアクセスできるYahoo!という2つの革新的なサービスにより、人々は、「インターネットの使い方」を知ったのです。

「サービスが技術を世界に広める」 

私がやりたいこともこれだと直感しました。 

「ブロックチェーンを使って何をするか? 」それを決めずに走り出した

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▲代表の小林がホワイトボードにひたすら書き連ねたサービスの初期デザイン(ベトナムのホーチミンにて)

まだまだ全くコモディティに広がっていないブロックチェーン技術。 これを広げるサービスを作ると決めた私は毎日毎晩サービス設計に取り組みました。 ブロックチェーンといえば何だろうか? 仮想通貨といえば何だろうか? その王道の機能とは? 

価値(財産的な価値)を送れる。小さな価値でも、リーズナブルなコストで。 少額決済。マイクロペイメント。 それが、仮想通貨の王道の機能。 どのブロックチェーン関連の本にも書いてある。送金手数料が安くなるから銀行の危機がはじまる。 銀行は相手としては大きすぎる。その時期ではない。 となれば、マイクロペイメント。 この技術を使いたい場面はどこにあるだろうか?

答えがでないまま、2ヶ月が過ぎようとしていた2016年5月。私がシンガポールで経営するECサイトを友人の1人に譲渡するミーティングをしていました。

譲渡する事業はYourwifiというECサイト。この事業は設立から2年半で四半期ベースでは売上を30倍に拡大させ、2015年の夏からはシンガポール政府の指定業者にも選定していただきました。Yourwifiは、シンガポールでは外資系として唯一MVNOのライセンスも保有しています。私が手がけた事業の中でも、最も手塩にかけたものでした。

YourwifiのECサイトをグロースさせるために様々な広告を試していたのですが、最もグロースさせる手っ取り早い広告は、割引のクーポンコードを埋め込んだfacebook広告でした。それをシンガポール全土に拡散させると、ROIで300倍くらいの効果を発揮することもままありました。 広告では当たり前のことなのですが、広告費をエージェント(もしくはプラットフォーマー)に払い、割引をユーザーにあげる。効果を発揮する広告には2つのコストがのし掛かってくる。

この時、私の脳に電撃が走りました。マイクロペイメントを使えば、この2つのコストを1つに出来るのではないか。 

つまり、広告を見てくれた人に、仮想通貨を付与する。ユーザーは、得た仮想通貨を将来の割引原資として使える。 さらには、相場が上昇しつつある仮想通貨であれば、それを手に入れたいというインセンティブも働く。 

それを提供するプラットフォーマーが、仮想通貨取引所も持てば、そこで収益を建てることができ、この広告サービスの利用料は極限まで抑えられる。 仮想通貨のマイクロペイメントの機能を使い、広告を見終わった瞬間にペイメントを実行すれば、完全成果報酬型の広告にも出来る。

なにより、私はこれまでECサイトのグロースにおける広告の出稿では散々苦しんできました。インターネットが登場してからの20年間で、インターネット広告市場は1兆円を超える規模に拡大しています。この市場に、仮想通貨を取り込めば、CPM、CTRベースで成り立つビジネスに一石を投じることが出来るのではないかと思いました。 

2つのビックウェーブ、それは「ブロックチェーンと動画」

ビジネスモデルの大枠はできました。そして創業初期、社内でのミーティングでのこと。メンバーの1人がこうつぶやきました。

「YouTubeの動画を見たら仮想通貨もらえると嬉しいんだがなぁ」

その一言で私の腹は決まりました。アメリカのTastyで始まった分散型動画メディア。その類似サービスが日本でも2015年から勃興。料理レシピ動画やガジェットを紹介する動画メディアが急成長中でした。

私は、ブロックチェーンと動画という2つのビックウェーブを掛け算することにしたのです。動画広告を配信し、消費者に届ける。 消費者がその動画広告を完全視聴した場合に限り、マイクロペイメントで広告主から直接消費者に仮想通貨を付与する。それが広告主にとっては広告費となる。 

ブロックチェーンのマイクロペイメント機能によって、情報を届けたい広告主と、新しいものを知りたい消費者をダイレクトで繋ぐ。
貯めた仮想通貨を、広告主のウェブサイトやお店で使うこともできる。 すべてのトランザクションはブロックチェーン上に蓄積され、そのデータはやがてはビックデータとなる。 どの動画を見た人が、どの店舗を訪れたのか。そのすべてのデータを握ることができる。 

私の頭の中で、サービスの様々な機能が湧き上がって来ました。

c0banを世界を席巻するサービスへ

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▲事業展開する市場ははじめから世界。世界展開とは言いたくない(シンガポールのTech In Asiaにて)

話は少し戻りますが、会社設立の直前、品川プリンスホテルのカフェでミーティングしていた時のこと。このサービスにしっくりくるブランドが思い浮かびました。

こばん(小判)と名付けよう(こばんを、c0banというスペルでブランド化。cobanを考えたが、メキシコにその名前の街があり、o(おー)を0(ゼロ)に置き換えた)。

仮想通貨は、多くに“XXコイン”という名前が付いていますが、私の中ではコインという響きはどうも安すぎました。
それに対して、小判は江戸時代に貴重な通貨だったことに加え、千両役者など、富を讃える言葉も数多く存在します。 

創業を決めてから2ヶ月。ようやくそのブランドを決められました。しかし、問題は山積み。私は自分が考えたそのサービスを生まれてから一度も作ったことはありません。 海外で起業はしたことはあるものの、日本で起業するのはこれが初めてです。 そもそも、それを作り出すためのチームすらいません。 

だが、それにもかかわらず、不安は少しもなかったのです。

どうにかなる。どうにかする。と。 

そして、創業から1年半が経過した今、関わるチームのメンバーは30名を越す規模にまで膨れ上がりました。  

仮想通貨ということで、開発を進める過程で、炎上し叩かれることもありました。主力メンバーの離脱もありました。新しい仲間との出会いもありました。開発が遅々として進まず、衝突もしばしばありました。営業は、まだリリースされないプロダクトで売り込んでいくため、まったく相手をされない場面も多々ありました。

それでも、c0banというブロックチェーンを世の中に出し、いまその流通額は200億円を超えました。作り上げた仮想通貨取引所では数千人以上が毎日取引をし、動画配信サービスでは、数万回を超える完全視聴を提供しています。動画のインプレッションでいうと、数百万回の規模にまで達しています。まだまだ小さい。

けれど、すべてのサービスの始まりは、1人のユーザーから始まります。 

日本発で世界へ。 
世界を席巻するサービスへ。 

たとえ小さくとも、日々、一歩づつ、そこに向かっていると確信しています。

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