効率や生産性だけを追求しない。「一人ひとり」と向き合い続ける企業のあゆみ

「人は人。一人ひとりにあった接し方を考え続けることが必要」——2017年で、創業24年を迎えるライク株式会社。保育・人材・介護事業を手がける当社のはじまりは、代表の岡本泰彦がはじめたパッケージ旅行の企画事業。そこからビジネス領域を多角的に拡大してきた背景には、岡本の考える「人」という軸がありました。
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起業を前提に銀行へ。スモールスタートに最適だった旅行業を選択

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▲創業当時のオフィスにて。代表の岡本泰彦

ライク株式会社の前身となる株式会社パワーズインターナショナルは、1993年9月に設立されました。代表取締役社長の岡本泰彦は、祖父の代から自営業の家の生まれ。祖父、父と間近で経営者を見ていた岡本にとって、起業することは自然な流れでした。

岡本 「いまでこそ珍しくありませんが、私が学生のころは、学生起業をする人なんてほぼいない時代。私も、事業を起こすならまずは経験と考えました。そのとき目をつけたのが、事業の肝となるお金の動き。お金がわからないと失敗すると思い、はじめに銀行へ入りました」

学生時代と銀行時代にさまざまな業界・業種の人たちと関わるなか、多額の資金が不要で、資金繰りも安定する旅行業と出会った岡本。旅行業に可能性を見いだし、思い切って旅行会社へ転職。ノウハウを身につけ、パッケージ旅行の企画会社を起業しました。

創業時の事業は、実際に旅行に行きたいお客様を相手にするのではなく、旅行代理店相手のビジネス。旅行のパッケージを企画・制作して旅行代理店に販売、お客様が集まったら手配を行うビジネスでした。

岡本 「極端な話、オフィスがなくても電話1本だけあれば事業ができます。幸い、私は大学時代に仲良くなった旅行代理店や旅行会社時代のつながりがあったので、人脈を活かしスタートしました」

ライクは安定的に拡大。爆発的な成長ではなかったものの、順調に成果を残していきました。岡本は当時を、自分たちにとってとても大切な時間だったと振り返ります。

岡本 「創業時は、あまりお金がなかったんですよ。もっと資金があればもっと早く成長できたかもしれない。ただ制約があるなかで、いかに会社を伸ばしていくかを考え抜く時間が持てた。あの時間は、当社にとっていまに活きる大きな資産になっていると思います」

旅行業で安定的に売り上げを上げられるようになったころ、岡本はいまのライクにつながる大きな変化に出会いました。

「人によって売り上げが変わる」不足する“優秀な人材”の輩出を目指す

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▲モバイル派遣事業で、マザーズに上場

「インターネットというものが日本に入ってくるらしい。新大阪でデモンストレーションをやっているから、一緒に見に行かないか」

1995年、とある取引先の方から岡本に連絡がありました。

当時はまだ、民間に普及していなかったインターネット。そのときのデモンストレーションは、3分くらいかけてアメリカのウェブサイトが表示されるというものでした。

「いまは3分かかるが、将来的には、テレビのチャンネルを切り替えるように情報が見られるようになる」と語る担当者に、岡本は衝撃を受けました。

岡本 「旅行のパンフレットも、全部インターネット上で簡単に見られる時代になる。すると我々のような会社がなくても、航空会社やホテルが直販できる時代がくるなと直感的に思ったんです。まさにいまの時代ですよね。旅行会社は将来的に要らなくなるのではと、強い危機感を覚えました」

新しい時代の到来を予感した岡本は、次なる事業を模索しはじめます。そうするなかで岡本が出会ったのが、「携帯電話」でした。

まだ携帯電話が1台10万円もする時代。ただそのとき岡本は、当時の携帯電話と比べて安価だったPHSが、都市部で販売されることを聞きます。

インターネットと同様に、通信は着実に伸びていくはず。そうみた岡本は、この分野への進出を決意。旅行代理店とのつながりを活かし、窓口でPHSを販売してもらうよう依頼して、販売体制を構築しました。

岡本 「これからは通信の時代が来る。当時のインターネットや携帯電話などは、“未来のもの”という感じでした。これが普及すれば、絶対に世界は変わるだろうという期待を込めて、スタートしたんです」

しかし携帯電話業界に深く関わるにつれ、岡本は業界が持つ課題に気づいたのです。

当時の日本は就職難。携帯電話業界は不景気のなかでも数少ない成長産業だったため、派遣社員が多く働いていました。

岡本 「当時の携帯電話ショップで働いていたのは、接客をやりたいわけではないのに、仕方なく店舗に立つような人ばかりでひどい状態。ただ、業界全体として人が足りていなかったんです。そこでなんとか、優秀な人材をこの業界に増やせないかと考えはじめました」

岡本は試しに、店舗運営の代行事業をはじめ、売り上げが人によってどのように変わるかを調査。自社の社員が、通常より多くの売り上げを上げられる事実を確認した岡本は、人材ビジネスの展開を決意します。

岡本 「ちゃんとやれば結果はついてくる。うちでしっかりと人を育て、各社に派遣することで携帯電話業界全体を盛り上げることもできる。やらない理由はありませんでした」

こうして岡本は、事業を人材へとシフト。その質の高さは業界内でも評判となり、さまざまなショップから声がかかるようになります。

ここから当社は、携帯電話販売における派遣事業を主軸に成長。2005年にはマザーズ上場、2007年には東証1部へ市場変更と、走り抜けます。上場後は、アパレル、保育・介護、コールセンター、物流など他業種の派遣や人材紹介にも着手。さらなる事業拡大を続けることになったのです。

「人」を軸としたビジネスのプロとして、一人ひとりと向き合う姿勢を重視

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▲社員たちに囲まれる岡本

人材ビジネスに着手するにあたり、ライクが力を入れたのが、いわゆるフリーターやニートと呼ばれる人々。

当時はまだ小さなイチ企業にすぎなかったライクは、あえて大手の人材会社が選ばないような人を積極的に教育・派遣していきました。

岡本 「いままであまり感謝されたことがない人や、がんばったことがない人、社会に上手く馴染めなかった人ほど、人に感謝される仕事にやりがいを持てる可能性がある。『ショップでありがとうといわれたことが、本当にうれしかった』という言葉をもらうたびに、私自身何度も勇気づけられました」

人材ビジネスを手がけはじめたころの当社は、まだ社員10人ほどの規模。それにも関わらず、登録している派遣スタッフは500人以上でした。営業1人が、100人ほどのスタッフを担当していたことになります。

そうして手間や時間をかけて教育を行った人とは、派遣後も関係が続きました。

岡本 「当時のスタッフの人たちは、派遣先の仕事が休みになると、よく私たちのオフィスに手土産を持って遊びに来てくれました。それぐらい社員とも仲が良く、良い関係を築けていましたね」

岡本は「人」に関わるビジネスだからこそ、どのように人と向き合っていくかを常に考えてきました。

岡本 「どんなに人数が増えたとしても、人と関わるうえで、マニュアル化して画一的に管理できると思ってはいけません。無論、ある程度の仕組みは必要です。ただあくまで人は人。一人ひとりにあった接し方を常に考え続けていかないと」

働き方など、生産性や効率性を求める流れが強まるなか、個性を重んじた関わり方が必要だと考える岡本。その考えは、社員に対しても同じです。

岡本 「仕組みで管理する部分も必要ですが、個々が抱える問題は異なりますから、一人ひとりに合わせた対応が必要になる。たとえば、妊娠中の営業の女性がいれば、子どもが生まれるまでは内勤の仕事に転属するなど。必要な対応はそれぞれです」

常に、それぞれの人と向き合うこと。それは、時代の変遷を経たいまも変わることはありません。

岡本 「技術が進みAIが人の仕事を奪っても、人の価値は変わりません。むしろこれからの時代、人と良い関係を築ける企業こそに価値がある。私はそう考えています」

あらゆる人たちとの間に、「MY LIFE,MY LIKE」の関係性を構築していく

▲2016年、「ライク株式会社」に社名を変更

人との関わり方を大事にし、人材ビジネスを展開してきたライク。2009年以降には新たな事業の柱として、保育事業、介護事業へと領域を拡大しました。

一見関係のなさそうな分野にも見える事業ですが、岡本は「人が大切になる」という点において、どの事業にも共通点があると考えています。

岡本 「保育も介護も、人が一番の肝になるという点で同様です。双方とも人材不足が叫ばれている領域。そしてお子様や入居者様とそのご家族——つまりお客様に満足いただくことが大切になる仕事です。その点は、これまで我々が携わってきた領域のノウハウが活かせる場でした」

ライクが事業買収を行い介護業界へ参入した当初、介護士の不足によって、部屋数の3分の1以上を閉鎖せざるを得ない状態でした。

そこで岡本が大切にしたのは、従業員にとっていかに働きやすい環境かという点。待遇面、労働環境面の双方で、改善を繰り返していきました。介護事業の体制を大きく変えた結果、2017年現在では、98%の入居率を誇っています。

岡本 「働いている人が満足できる職場でなければ、いいサービスは提供できない。それは人材も保育も、介護もかわりません」

保育であれば保育士さんの賞与の引き上げや、昇給額の増加。保育業界では珍しい夏期長期休暇の導入などを実施。当然、会社としてみれば、数億円規模での持ち出しです。

それでも待遇を改善することで、従業員とライクが長く良い関係を築き、結果的にお客様とも良い関係を築くことにつながる。創業以来、ずっと大事にしてきたコアがここにあります。

岡本 「社員やお客様、当社のサービスを利用される方。さらには株主様やあらゆるステークホルダーのみなさまに愛される会社であること。それこそが、『ライク』という社名に込めた想いです」

愛されるため、好かれるためには、良いサービスはもちろん、それ以上の価値を提供しなければいけない。価値を提供できるからこそ、相手からも好きになってもらえる。

2016年12月、当社は社名を「ライク株式会社」に変更しました。人の人生の全てを応援できるような「生活総合支援サービス」を通して、「MY LIFE,MY LIKE」の関係性を築くこと——。それこそが、これから20年、30年かけて私たちが目指していく姿です。

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