“レンタル移籍”で変わる未来ーー個人の成長と企業の価値創造に新風を起こすプラットフォーム

大手企業からベンチャー企業へと一定期間「レンタル移籍」させ、人材を育成できるプラットフォーム「LoanDEAL」を運営する株式会社ローンディール。2018年現在、大きな成果を挙げ続けているのが、ランドスキップ社へ移籍中のNTT西日本・佐伯穂高さんです。企業人として、一個人として、新しい世界に飛び込んだ勇気あるいちプレーヤーのストーリーをご紹介します。
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ひとつの後悔が"転職せずにひとが成長できるスキーム"を生み出した

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▲ローンディール代表取締役・原田未来
企業間レンタル移籍プラットフォーム――大企業におけるイノベーション人材の育成手法として注目を集める「LoanDEAL」。株式会社ローンディールでこの仕組みが生まれた背景には、代表を務める原田未来の苦く辛い経験がありました。

原田 「36歳のとき、はじめて“転職”というものを経験しました。新卒から13年在籍した企業からまったく別の企業に移り、もちろん自分自身の成長を感じることはできました。でもその一方で、前職の事業や業務に対しては“まだできることがあったんじゃないか”とこれまでにない激しい後悔に襲われたんです。長い時間を費やして構築してきたあらゆるひととの信頼関係がリセットされてしまうのも残念で……」
この後悔をきっかけに「会社を辞めることなく、外の世界に出てさまざまな経験をし、個人や企業が成長できる仕組みづくりができないか?」と思案しつづけた原田。

そんなある日、ふと目にとまったのが、サッカーなどスポーツの世界でおこなわれている「レンタル移籍」。この仕組みにヒントを得て、人材の移籍を希望する企業と受け入れ企業とのマッチングができるプラットフォーム「LoanDEAL」を2015年7月に立ち上げたのです。

原田 「このサービスは、まず両社のニーズをしっかりヒアリングした上で、最適なマッチングをします。レンタル移籍開始後は、移籍をした従業員の給与や賞与、社会保険は移籍させる側の負担になります。ローンディールでは、自社に戻ってからの“活躍の場”を念頭に、移籍期間中の従業員、関係者をフォローする役割を担います」

「LoanDEAL」でのマッチングを経て、従業員数4,400名の大企業から、10名弱の中小企業へレンタル移籍中なのが、NTT西日本の佐伯穂高さん。移籍先であるランドスキップに対し、誰もが想像しえなかった大きな成果をもたらしています。

大企業・ベンチャー企業に足りないものを"ひと"で埋める

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▲NTT西日本の佐伯穂高さん(左)とランドスキップの下村一樹社長(右)

佐伯穂高さんが所属するNTT西日本・ビジネスデザイン部は、社外パートナーとのアライアンスによる事業展開や、新規事業の創出を進めている部署。部としては、NTT西日本の強みを活かしつつ、スピード感をもって大胆にビジネスをデザインしていく人材の育成が必要との課題認識を持っていました。

新卒入社9年目の佐伯さんも、開発戦略の策定や業務管理に携わっていました。新規事業を立ち上げる仕事に興味を持っているものの、職務の役割上、新規事業立ち上げに直接携わる機会がなかなか得られないと感じてる日々が続きます。

そこで、同部署は「LoanDEAL」を導入し、佐伯さんを他社へレンタル移籍させることに決定。大企業では得にくいアイデア創出からビジネス拡大に至るまでの経験を実践し、ベンチャー企業ならではの価値観、働き方、経営全般を見渡す感覚を養ってもらい、組織に還元させることが狙いでした。

一方、動画配信事業をおこなうベンチャー企業・ランドスキップの課題は「個人商店からの脱却」。下村一樹社長自らが、大企業との提携や営業活動などすべてを担っていました。幸い、事業の注目度は高まり、問い合わせも増えていきました。一方で、事業開発を担える組織づくりが追いつかず、「自分にしか売れない製品・サービスになってしまうのでは」と危機感をおぼえていました。

ビジネスパートナーに出会いたい――そんな期待を胸に「LoanDEAL」でレンタル移籍の受け入れ企業に立候補。その後、"美しい風景を流通させる"というランドスキップのビジネスモデルに共感する佐伯さんと出会い、迎え入れることになったのです。

そして2017年4月。佐伯さんのランドスキップでのレンタル移籍がスタートしました。

それまでの経験が一旦リセット 落ちて這い上がった先に広がる世界

「共感できる事業、制約の少ない環境下で"自分の力"を思う存分ぶつけてみたい」……そんな思いで新しい舞台に挑んだ佐伯さん。しかし、最初の一か月は新しいフィールドで自らの力を使う術が分からず、ただただ落ち込むばかりでした。

月に1度のメンタリングを担当しているコミュニティーマネージャーの及川静香は、当時の佐伯さんの様子をこう振り返ります。

及川 「これまで培ってきたスキルや経験が、ランドスキップではあまり役に立っていない、下村社長の期待に応えられない、とプレッシャーに押しつぶされそうになっていました。しかし、2か月目に入ってから、それを押し返すかのように、モードを切り替えて立ち向かうようになったんです」

求められているすべてのことをやろうとしてはダメだ。まず業務範囲を絞り、自分のできることからやろう――そう心に決めた佐伯さんは、大企業に所属することで得られたスキルを十二分に生かすべく、業務の効率化・仕組み化など、体制構築に尽力。その結果、下村社長との役割分担も機能するようになってきました。すると、狭まっていた世界が急に広がりはじめます。

及川 「下村社長が攻め、佐伯さんは守りという組み合わせが馴染んで、3か月目くらいからかなり機能するようになってきたようにみえました。
お互いが得意・不得意を認識しつつ、新しいことに取り組んでいく。その過程で、佐伯さんもそれまでの得意分野だけではなく徐々に業務範囲を広げていけるようになっていきましたね」

そして、3か月が経った頃。それまでの既存事業に加え、新規事業のコンテンツづくりにも着手し、大企業とのアライアンスやプレスリリースの作成・発信など多岐にわたる業務をひとりで行うようになります。

この事実は、佐伯さんと下村社長の強固な信頼関係が築けた証でもありました。

「人が育つ+事業が生まれる」構造を見える化したい

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ランドスキップに移籍して7か月後。佐伯さんのがんばりがひとつの形になりました。ランドスキップの映像コンテンツを、キヤノンマーケティングジャパンが"デジタル壁紙シリーズ"として発売することになったのです。

原田 「こうした大手企業との業務提携は『自分だけではできなかった、やはり大きな組織に身を置く佐伯さんと一緒だったからできた』と下村社長も話していました。
大手だと物事が進むスピードが遅い。そこを辛抱強く、誰に話せば効果的なのかを探りながら付き合っていく。これまで下村社長がつかみきれなかった部分を、佐伯さんが補完して、業務提携が実現したのです」

“人材育成のひとつの手段”として各社にご提案をしている「LoanDEAL」。しかしこのレンタル移籍を介して佐伯さんのような、大企業とベンチャー企業の橋渡し役が育ってきた。このことに、原田は大きな可能性を感じています。

原田 「【人が育つ+事業が生まれる】というケースが発生する確率を高めていきたいです。人の成長を数値化することはとても難しいですし、成果もとても曖昧です。でも"新規事業が立ち上がる"イコール"お金を生み出す機会を作り出せている"ということ。これをエビデンスとして表せたらいいなと。
企業間のこうした協業みたいなものって"相手先に出資をしてから、その後人材を出す"といった流れがほとんどですよね。しかし、ひとを先に出向させたほうが、リアルな信頼関係は構築しやすい。だから、事業が生まれる、ということでもあると思うんです」

人材育成のその先にあるビジネスの種があるというワクワク感。しかし、このサービスを提供していて感動させるのはやはり"ひと"であると、原田も及川も口を揃えます。

及川 「人が何かに挑戦したり、変わろうとしている瞬間に連続的に立ち会えることに、ひたすら感動を覚えます。レンタル移籍中の人や元の企業に戻っている人を集めて、交流会を実施するのも私の仕事なのですが、そこに行くといつも、支えているはずの自分が逆にその姿に励まされてしまって」

今日も勇気あるプレーヤーたちが、それまで経験したことのない場面を出くわして、でも自分なりにもがき苦しみながら、成長を重ねている。そしてそれが、規模や事業領域を超えた企業間の協業や、新しい価値創造につながってゆく。

その姿を常に思い描きながら、ローンディールはこれからも会社という枠を超越した人材流動化の新しい選択肢として、レンタル移籍の普及を目指していきます。

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