VRのリアルな動画体験で、地域をPR。ロントラがはじめた「地域VRPR」

地方創生に貢献したい。ロントラ株式会社はそんな想いを実現するため、2017年からVR技術を使った動画制作を行なっています。地域をVRでPRする「VRPR」の普及に向け、自治体への営業をスタート。事業への反響、そしてロントラが最終的に目指すことは何か、プロデューサーの芦澤洋介の姿からひも解きます。
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VRにPRを掛け合わせ、オンリーワンの地方創生支援を

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▲社内でのブレスト風景

旅番組やドキュメンタリーなど、テレビをメインに動画制作を行なってきたロントラは、2017年から地方自治体と協業して移住・観光を促進する動画広告を制作しています。

この事業が始動したのは、ロントラが抱いていたある想いがきっかけでした。

芦澤 「私自身が移住に興味を持っていたことに加え、当社は地方出身の社員が多い会社なので、得意分野の動画で自分たちのふるさとなどに貢献したいと思っていました。
そこで、webを舞台にした動画広告で何かできないかと考えたんです。この市場は年々伸びてきていて、2017年度は前年と比べて163%も成長しており、大きな可能性を感じていました」

ロントラはただ動画を制作することにとどまらず、もう一歩踏み出したものを何かできないかと、模索していきました。

芦澤 「あるとき代表の西村から、VR技術を使った動画に発展の可能性があるのでは?という話が出ました。VRはテレビのような2Dとは違い、360°で動画を見せることができる。
実際に訪れたような感覚を味わうことで、観光あるいは移住の想像がしやすいのではないかと考え、全国の地方自治体に提案をすることにしたんです」

これまでの自治体の課題は、動画を制作してWeb上にアップしてもそれだけで終わってしまうため、再生回数が伸び悩み、認知や集客にうまくつなげられていないということでした。

そこで、SNSのターゲティング広告やプレスリリースを活用。動画のターゲットへの直接配信やリリースによる動画認知を促す工夫も加えました。

VRなら話題性が上がるとともにイベントなどの場でも盛り上がりやすくなります。このVR×PRの掛け合わせで、制作からPRまで一貫して自社で実施できれば、自治体の課題解決に貢献できるのではないかーーそう考え、「地域VRPR」を広めるためVR事業に着手しました。

実績のない会社に賭けてくれた、ある小さな町の挑戦

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▲360°VRドローンを使った地域PR動画

さまざまな自治体へ連絡をし、芦澤は営業をしていきました。しかし日本では、まだまだ馴染みのないVRという技術。提案しても、自治体側は「PR動画として成立するのか?」という疑問を拭えませんでした。

さらにロントラは東京にある小規模の会社、加えてVRの実績がないためになかなか信用が得られず……。多くの自治体からは「他の自治体で実績がなければ難しい」と、取り合ってもらえませんでした。

そんなとき、ロントラの提案に静岡の小さな町が注目してくれました。

小山町(おやまちょう)は富士山のふもとに位置する人口約2万人の町で、昔話で有名な「金太郎」誕生の地とされています。他の地方と同様、小山町も人口減少の問題を抱えていました。

芦澤はPR観点でのVRによる効果などを説明した分厚い資料をつくり、コンペに臨みます。

芦澤 「提案をすすめるなかで、小山町にはチャレンジ精神あふれる方々が多いと感じていました。VRの可能性についても理解してくださり、乗り気になっていただけたんです。結果、採択されたときは心底嬉しく、絶対にこのプロジェクトを成功させたいと思いました」

当日はドローンを使用し、360°の動画を撮影。名物の金太郎を“隠れキャラ”として登場させたり、小山町の豆知識を紹介したりと、繰り返し再生したくなるような仕掛けをつくっていきました。

VRPRという全国初の試みは注目を浴び、NHK全国放送での特集や新聞など48のメディアに取り上げられることになります。

また、SNSに動画を投稿したことで拡散し、再生回数は1週間で1万回を突破。小山町の認知度が上昇し、その後開かれた移住セミナーは満員になりました。

芦澤 「『インターネットで参加者の方と交流するコミュニティができあがり、関係を維持できることが嬉しい』と小山町の方から言っていただき、とても感慨深かったですね」

当初はコンペにさえ参加できない時期もあったが自分たちの判断は間違っていなかったーー反響があったことで、芦澤はVRPRの効果に確信を持つようになります。

そんな矢先、さらに大きな仕事が舞い込んできました。

フォロワー5000人!VR×SNS×イベントを連動させたUターン促進

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▲SNSコミュニティが集ったUターンイベント

ひとつの実績をつくったロントラは、次に静岡県庁のコンペに参加し、採択されました。人口約365万人が住む、県全域のUターン促進PRを担当することになります。

この案件では、VRの制作にとどまりませんでした。「そうだ。静岡県出身者で集まろう!」というキャッチフレーズを掲げ、WebサイトやSNS、イベントなどさまざまなツールを組み合わせたUターンコミュニティの育成を行なったのです。

まずは30歳前後の人を対象に、子育てや転職などライフステージの変化に合わせたUターンを支援するSNSコミュニティを形成しました。

次に静岡県出身者に向けて、東京で移住説明会を開催。このイベントでは、VRで静岡を体験してもらったり、静岡県での暮らしやすさについてゲストに話してもらったりしました。

参加した方たちからは、「子育てを機に帰れたらいいな」「地元のよさを再認識できた」といった感想があがりました。SNSのフォロワーも5000名(2018年9月現在)にのぼり、着実にコミュニティの輪が広がってきています。

芦澤 「Uターン促進においては、これまでターゲット(転出した出身者)がどこにいるのか分からないことが全国の自治体に共通する課題でした。自治体側からの地元情報や仕事情報の発信がうまくできていなかったのです。
そんな中、VRなど動画を起点とした投稿でアクティブなSNSコミュニティができたことにより、静岡から他の地域へ移り住んだ人が可視化され、PRしたいターゲットに継続的にアプローチすることに成功しました」

新しいツールを掛け合わせたこの企画は好評をいただき、2018年も継続して採択されました。その他の自治体案件を含めてコンペ6連勝中(2018年7月現在)です。東京にある当社のような小規模の会社でも、地域の課題を解決することは可能であることが少しずつ証明できているのではないかと、私たちは思っています。

ツールによる縦割りに横串を刺したい

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▲動画中心のSNS運用で3000人を超えた出身者コミュニティ

ロントラはテレビ番組制作に加えて自治体向けVRPR事業を実践している、日本で数少ない会社。VRは世界的にもまだまだ新しい分野のため、表現方法は確立されていません。

しかし正解のない分野だからこそ、見切り発車でも実践してみることが大切。こういう表現がいいのではないかと仮説を立て、撮影し、編集する。

トライアンドエラーを繰り返すことで、VRならではの効果的な表現を見つけていきたいと考えています。

最近では『VRを使ったPR動画』というテーマのコンペが出てくるほど、少しずつ広がりつつあるVRPRの市場。しかしVRはあくまでも動画の延長線上にあるものであり、手段のひとつだと芦澤は言います。

芦澤 「地域のPRを考える際、Webサイトや印刷物と並んでVRも当たり前に選択肢にあがってほしい。しかし、一番大切なのは自治体の課題を解決することなので、解決策は場合に応じて異なります 。
動画系やWeb系、イベント系などさまざまな会社がありますが、ツールによる縦割りがあり、連携が取れていません。『うちは動画しかつくりません』『イベントの開催しかしません』と、それぞれが壁をつくってしまうのはもったいない」

多くの自治体の課題に寄り添い、着実に実績を上げているロントラ。地域VRPRのリーディングカンパニーとして、「はっきりと数字で成果が出る動画」を目標に、今後もチャレンジを続けたいと思っています。

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