産後の業務軽減だけが女性の求める「働きやすさ」か。就職活動で抱いた疑問

▲副部長の蓑田 ちひろ

企業の課題解決をサポートするようなビジネスに携わって、社会を変えたい。進学先・就職先選びで蓑田が指針としていた考えに大きな影響を与えたのは、会社を経営する父でした。

蓑田 「父は福祉業界や小売業界向けのソフト開発をしていました。パッケージソフトをベースに、深夜まで、ときには土日も休みなく開発に没頭する姿をいつも身近で見ていたんです。

今思えば、そういう父の姿を見て、世の中の会社をサポートしたい、仕事を効率化して手助けしたいという想いを持つようになったんだと思います」

進学先に選んだのは貿易学科。ビジネスの世界に飛び込むための素養を身につけようと、英語から経済、ゼミでは社会政策を研究するなど幅広く学びました。ビジネスを軸に分野横断的に学ぶうち、自分の手がけたい「ビジネスのサポート」の像が鮮明になったといいます。

蓑田 「ソフトウェアやコンサルティングによるソリューションに関わりたいと思うようになりました。ビジネスをサポートするソリューションはさまざまありますが、要望に合わせて柔軟に対応できることが顧客の要望にもっとも寄り添えるだろうと考えたからです」

就職活動をスタートさせた蓑田は経営者の考えに直に触れたいという想いから、代表者が登壇する企業説明会を選び、足繁く通うようになります。そこで出会ったのがエル・ティー・エス代表の樺島 弘明でした。

蓑田 「樺島の話ぶりに、思わず引き込まれました。エル・ティー・エスはミッションに“人の持っている可能性を信じ、その可能性を十分に発揮できるように支援することで、自由で生き生きとした人間社会を実現する”と掲げているのですが、このミッションについて目を輝かせながら話していたんです。

いろいろな説明会を回りましたが、ビジョンの実現についてあれほど熱心に語る代表者にはなかなか巡り会えませんでした。学生時代にゼミで働き方や、福祉を研究していたこともあり“人の可能性”をビジョンの中心に据える企業姿勢に共感し、エントリーすることにしました」

選考過程で社員達と交流することで、エル・ティー・エスに対する確信は深まっていきました。

蓑田 「子育てをしながら働いている女性社員と話してみたいとリクエストをしたんです。他の企業では“女性の働きやすさ=業務の軽減されること”のように、アピールしているケースが多かったので、エル・ティー・エスではその点についてどう考えているのかを知りたくて。

結婚・出産しても復帰後も自分のキャリアをしっかり築いていきたいと思っていたので、業務が軽減されることが私にとっての働きやすさではなかったんですよ。

話を聞かせてくれた子育て中の社員は、大変である事実もきちんと説明してくれながらも、子どもがいるからといって仕事で遠慮するような場面はない、仕事にやりがいを感じると話してくれました」

現場社員の包み隠さない真摯な対応にも引かれ、自分が思い描くキャリアプランを実現するならこの会社だと考え、エル・ティー・エスに飛び込むことを決めました。

リーマン・ショックで案件激減。先輩が企画した自主研修でつかんだチャンス

こうしてエル・ティー・エスで理想のキャリアを歩み始めるかに見えた蓑田。しかしそのスタートを、極めて厳しい経済環境が阻むことになります。未曾有の金融危機・リーマンショックが入社直前に発生したのです。

蓑田 「どの企業も苦しんだ時期だと思いますが、エル・ティー・エスも例外ではありませんでした。入社してからしばらくは大規模案件がなかったので、最初にアサインされたのは、ごく短期のプロジェクト。

新システムの教育展開および導入後のヘルプデスク立上げでした。本来は長期間のプロジェクトで、先輩から指導を受けつつスキルを吸収してひとり立ちし先輩には先にリリースいただく予定でしたが、お客様の都合もあって、それを実現できる環境ではありませんでした」

忸怩たる想いで最初のプロジェクトを終えた後も、客先常駐のプロジェクトにひとりでアサインされる状況は2年ほど続きます。なかなか成長の実感をつかめないまま、焦りをつのらせていました。

そんな若手社員に手を差し伸べたのが、入社前に蓑田に面談で話を聞かせてくれた女性社員でした。若手がひとりでプロジェクトにアサインされる状況を危惧し、自主的にSAP(SAP社が展開するERP・基幹系情報システム)の認定資格取得のために、研修を開いてくれたのです。

通常業務をこなしながら研修も受けるハードな日々を乗り越え、無事に認定試験に合格した蓑田。

資格取得が追い風となり、これまでのようなひとりでのアサインで部分的なプロジェクト支援ではなく、先輩社員とチームを組みながら、より大きな成果を求められるようになります。業務範囲も、要件定義から教育支援まで上流工程も含めて任されるようになりました。

蓑田 「上流工程に関わることで、これまで以上に深く考え、細部までこだわって業務するようになった自分に気付き、成長の手応えもつかむことができました。

これも、SAPの資格を取得したことがすべてのきっかけです。悩みを見抜いてSAPの研修を企画してくださった先輩には、とても感謝しています」

ちょうどそのころ、エル・ティー・エスではSAPに関するプロジェクトが増加。蓑田も資格を生かして多数のプロジェクトに携わることに。

そんな中、2013年にめぐりあったのが、グローバルな化学メーカー企業でのSAPの教育展開のプロジェクトです。ユーザーがシステムを使うためのマニュアルの作成からトレーニングの実施、ヘルプデスク開設にも携わることになります。

「チャレンジしてもらいたい」 子育てで学んだマネジメントのヒント

▲子育てと仕事の両立は簡単なことではないが、子育てが仕事にポジティブな影響を与えているのも実感している

立ち上げに関わったヘルプデスクにメンバーとして参加した蓑田は、これまでの経験を生かしながら順調にキャリアを積み重ねていきます。

チームのリーダーになってから1年半後のこと、蓑田が初めての産休を取ることになります。リーダーとしての職責を考えるとスムーズな業務の引継ぎのハードルは高く、休暇に入る前には心配が絶えなかったといいます。

蓑田 「仕事を自分で抱え込んでしまうタイプだったので、産休は“人に任せる”という新たな挑戦でもあったんです。

それまでの自分の業務を棚卸しして、リーダーが担当すべきこと、メンバーがやるべきことに振り分けて、自分の後任を務めるリーダーに引継ぎをして……とやることがとにかく多くて大変でした。

チームを信頼していたものの、未経験のことだったので、大丈夫かなと心配になるときもありました。ただ、若手のメンバーたちが業務の分担に積極的に手を挙げくれたのには助けられました。それで、安心して休暇をとることができたんです」

その後、2度目の出産・産休を経て、同じプロジェクトに復帰した蓑田が今注力するのは、新たにリーダーとなった後輩をひとり立ちさせるためサポートです。重視しているのは、あくまでメンバーの自主性。以前の「自分で仕事を抱え込む」スタイルとは大きく異なります。

蓑田 「子育てと仕事の両立は簡単なことではありませんが、子育てが仕事にポジティブな影響を与えているのも感じています。何より変わったのは、メンバーに対する接し方。

メンバーには、チャレンジをしてもらいたいという気持ちが強くなりました。以前は任せた仕事でも、不安で細かく状況確認をしてしまっていたんですけど、子どもの成長を見ていて、口を出しすぎると窮屈になって自主性を削いでしまうかなと思うようになったんです。

メンバーにはいろいろ挑戦してもらって、ただ、お客様の前での失敗さえしないようにすればいい。そのためには、私が顧客目線でフィードバックして、危ないところだけは注意しようという考え方に変わりました」

子育ての中から得た学びが、仕事の進め方も変えました。

蓑田 「本当は仕事にもっと時間を割ければいいんですが、今は家庭を第一に考えているので、メンバーとのコミュニケーションは、ランチを取りながらなど工夫しています。

コミュニケーションは、ときには時間をかけてでも向き合うことで成長につながると思っているので、少しもどかしい部分があるのも事実です」

子育て前の自分なら思いもよらなかった変化を感じていると蓑田は笑います。

人の持っている可能性を信じているから、挑戦したい仲間を放っておかない

▲メンバーの成長と共に自分自身も新しいチャレンジを始める

産休・育休から得た学びが業務に生きていることで、異なる環境で視野を広げることの大切さを知ったと蓑田はいいます。

蓑田 「長い間、同じプロジェクトにいると、環境になれて安心してしまうのは避けられないと思います。やりやすい環境をつくることは大事だと思いますが、それだけでは視野は広がらない。

すごくもったいないことだと思うんです。だから、異なるプロジェクトとの人の循環をつくりたいと思っています。今のプロジェクトにいるメンバーを育てて、他のプロジェクトでも活躍できるようになってもらう。

同時に今のプロジェクトを活性化するため、他のプロジェクトから人に入ってもらうローテーションをつくっていこうと考えています」

もちろん、自身の視野をさらに広げるべく、自らに課す新たな目標も定めています。

蓑田 「2度の産休・育休の後も今のお客様には受け入れていただいたおかげで、フロントで仕事ができていることに感謝しています。しかし、そんな懐の深いお客様に私自身も甘えてしまっている面もあると感じています。

なので、営業に取り組んで自分のアカウントを持つことにも挑戦しようと思っています。今までは既存のアカウントのプロジェクトに入れてもらうかたちでしたが、自分で提案して選んでもらったお客様に寄り添って最後までやりきるという経験をしたいんです」

この目標達成への道筋は、社内の協力を得て、営業の機会に参加することで少しずつ見え始めています。

蓑田 「こんなに早く新しいチャレンジを始めることができた背景には、上長の理解と手助けがあります。産休復帰前に現場に残りつつも新しい挑戦をしたいと相談したところ、私にマッチしそうな顧客の引き合いがあったときに声をかけてもらうことができました。

SAPの研修をしてくれた先輩などもそうですが、エル・ティー・エスには、挑戦したい仲間を放っておかない文化が根づいていると感じます。私も周囲の手助けをしながら自分でも挑戦を続けて、この文化を体現していきたいと思っています」

人の持っている可能性を信じ、その可能性を十分に発揮できるように支援することで自由で、生き生きとした人間社会を実現する──エル・ティー・エスの掲げるミッションの礎を支えるのは、自らの可能性を追い求めて生き生きと働く、蓑田のような社員たちなのです。