「お見合い」ではなく「恋愛」をしてほしい——マチトビラが採用支援事業にかけるアツい想い

鹿児島の地で長期インターンシップのマッチングや、中小企業向けの採用支援事業を展開している株式会社マチトビラ。地元 鹿児島への熱い想いを持つ創業者 末吉剛士が今の事業に行き着くまでには、さまざまな挑戦と失敗がありました。末吉がたどってきた道、そして今思い描く、鹿児島の未来とは…?
  • eight

2度の起業と会社員経験で気づいた「鹿児島に貢献したい」という想い

10d091bc51fb6846e550d749c3040417ab0a48b6
マチトビラの創業者 末吉剛士は、大学時代に2度の起業を経験。1社目は教科書専門の古本屋、2社目では、環境系のフリーマガジンの作成、出版業。特に後者の事業については、かなり多くの力を注いでいました。

もともと少年時代から想像力が豊かで、“もしも”の世界のイマジネーションを膨らますことが大好きだったという末吉少年。

末吉「友人に誘われて始めた環境系フリーペーパーの事業ですが、やってみると自分でも驚くほどハマりました。『大量消費の時代だけど、おばあちゃんが使い古しの古着をカッコよく着まわしているスタイルが流行ったら、生活の在り方が変わる、かっこいいの定義が変わるぞ』なんて想像して。大学を卒業しないまま東京に移り住み、これで一旗あげてやろうというくらい入れ込んでいましたね」
しかし、2年半ほど事業を続けた後に、末吉の貯金が尽きてしまいます。やりがいはあり、想いもこもっていたけれど、残念ながら生活資金をまかなえるほどお金を稼ぐことができなかったのです。そこで末吉は、どれほど意義がある事業であっても、採算性が合わなければ続けられないということに気づくのでした。

ビジネスとして成立させるためのマネタイズ方法を学ぶため、大学卒業後はリクルートへ入社。そこで担当したのが、沖縄のリゾートウェディングのシェアを伸ばすという珍しいポジションでした。ただの広告営業にとどまらず、沖縄の行政やホテル、結婚式場、県全体を巻き込んで市場を作るために、末吉は県内を駆けずり回りました。

末吉「実際に会いに行って熱意を持って提案して…もちろん断られることもありましたが、想像以上に多くの方が協力してくれました。これは今の事業にも生きる経験でしたね」
こうして仕事に楽しさを感じていた末吉でしたが、28歳のときに転機が訪れます。

末吉「30歳を手前にして、”誰のために働きたいのか”を改めて考えるようになりました。沖縄の地域活性のためのリゾートウェディングの支援はやっていて面白かったのですが、一生続ける仕事なのかといわれたら…と。それなら、やっぱり地元である鹿児島のためになることがしたいと思ったんです」
もともといつかは鹿児島に戻るつもりだったという末吉。なぜそこまで鹿児島にこだわるのでしょうか? そこには、鹿児島で生まれ育ち、東京でも事業を運営した末吉だからこその思いがあります。

末吉「地域のため、と考えたときに、パッと誰かの顔を思い浮かべられるのが鹿児島の人なんです。例えば渋谷を歩いていて知り合いに会う確率ってめちゃくちゃ低いですけど、鹿児島はむしろ知り合いだらけ。自分はそういう環境の方が好きだったんですよね。鹿児島の人のためなら、一生をかけられると思いました」

地元企業が一番困っていることは何?実践型のインターンシップからはじまったマチトビラ

71ecb7de1ace5e490ec355cc91d3e15ab1222a84
実践型インターンシップでは、経営者と大学生が数ヶ月のプロジェクトに取り組む
鹿児島という拠点は定めたものの、何をやるかは決めていなかった末吉。鹿児島で今一番の困りごとを知るために、まずは企業経営のお手伝いをするNPO法人に勤めはじめます。年間に200人の経営者を回りながら、「どんな仕事をしているのか」「どんな地域課題があるのか」「経営していく中で何に困っているか」をヒアリングし、解決すべき地域の課題を探していました。

末吉「経営者と話をしていて感じたのは、『やっぱり鹿児島は面白いな』ということ。出会った人がみんな”鹿児島のために、地域のために”って言うんですよ。それが僕のツボにハマるというか、ぐっときたというか…。あとは、地域やコミュニティーの中で、自分の役割、存在価値が大きいことに気づいたんです。自分が動けば地域が変わるという実感を持ちやすいという点で、とてもやりがいを感じたんです」
経営者の悩みを聞くうちに、「やりたいことは山ほどあるけれどリソースが足りない。自分の右腕となるような人が欲しい」という課題が見えました。末吉は、その解決策として実践型のインターンシップ事業をNPOではじめます。当時の鹿児島の企業には、インターンシップという文化がほとんど無く、学校を卒業したら県外に出て行くひとがほとんど。そういった人材が鹿児島の企業にインターンシップできる環境を作ろうとしたのです。

しかし、末吉はここでも、採算性の問題に直面します。

末吉「1年間やっても採算が合わなくて、事業を撤退することが決まったんです。そのときに、『そんな理由でやめたらもったいない、採算が合わないならマネタイズを工夫すればいい』と強く思いました。そして自分にはそれができるはずだと」
末吉そこで「この事業をもらっていいですか?」と、当時いたNPOから事業をもらいうけ、インターンシップ生と地元企業をマッチングをする、株式会社マチトビラが創業することになりました。

事業をもらいうけたとはいえ、資金ゼロからの再スタート。末吉は当時の創業メンバーたちと一緒に、鹿児島中の学校や企業を直接訪問して、徐々に地盤を固めていきます。このとき、沖縄で県内を駆けずり回った経験がとても生きたと、末吉は笑って話します。

しかしこの3度目の起業も、最初はマネタイズに苦しみます。お金がないと、事業は継続できない……。その苦しみを誰よりもわかっている末吉でしたが、このときはまだ、活路が見いだせていない状態でした。

企業にも、学生にとっても幸せなマッチングのために——採用支援事業を開始

B15dfde09665fef26e7dd627323bc2f36f51b1ce
実践型インターンシップのマッチングに取り組んだ経験が、採用支援事業のヒントになった
マチトビラの事業を運営していくなかで、実際に素晴らしいマッチング事例がいくつも生まれています。

たとえば、鹿児島にある「株式会社住まいず」という住宅メーカー。もともと住宅に興味がなかった学生が、半年間のインターンをおこなうことになります。

末吉「社長さんの話を聞いて、この人のもので修行したいといってくれたんです。こういったマッチングの一つひとつが、マチトビラのノウハウになっていきましたね」
もともと林業を営んでいたという住まいずさんは、現在の経営者が11代目。地元に根ざした企業として続いて来ましたが、今新しいステージに進もうと挑戦しています。

地元の木材で家を作るのが、地域貢献には一番です。しかし年々、安い海外の木材以外の資材にシフトしていて、せっかくの県産素材が使われなくなっているのが現状です。それを解決するために、住まいずさんは、自分たちで家造りをはじめました。

末吉「木材へのこだわりだけでなく、家を立てたその後の暮らしまでを考えて、丁寧にこだわって家を作る姿勢に、学生さんが深く共感してくれました。こうやって理念に共感してくれたマッチングは就職にも結びつく。すごく有意義ですよね」
しかしながら、すべてのマッチングがうまくいったわけではありませんでした。企業と学生の間ですれ違いがあってインターンが長く続かなかったことや、最終的に就職に結びつかなかったり、お互いに望まない結果を招いてしまうことも……。そんな事例を繰り返さないために必要なことを考えたとき、末吉は、企業に対して必要なのは「採用支援」だということに気づいたのです。

競争力を強化できる採用をはじめるためには、企業側の姿勢が非常に重要です。何に共感してほしいのか? どう伝えればいいのか? それが明確にできない企業も多くいたことで、機会損失があったのです。

末吉「鹿児島で人材確保するのが難しいと言っている企業さんはたくさんいますけど、実際にすごい手間をかけて改善している企業は少ないと思います。でも、たとえお金はなくても、手間をかければ結果が出るよ、ということを実証したいし、正しい方法に手間をかける意識づけを、マチトビラなら支援できると思ったんです」
ただひたすら、地元 鹿児島のことを思って続けてきたマチトビラの事業。この気づきをきっかけに、これまでの取り組みが未来へ繋がってきたと感じています。

“挑戦を応援する文化”のある地元・鹿児島で、有機的なつながりを加速させていく

Cac06f5c7a86ecf3251b958cc71ca32eaeb602ad
新しい求人サイト「GOOD WORK KAGOSHIMA 」は中小企業の魅力を発掘・発信している
こうしてインターンシップのマッチングに加えて、企業への採用支援という新たな軸がマチトビラに加わりました。この事業をやっていくうえでの姿勢を、末吉はこのように語っています。

末吉「初期接点でビジョンや社長の人柄に惹かれるのはいいことだし、さらにインターンシップを通すと“恋愛結婚”みたいなプロセスで自分が働く企業を決めることができます。一方で、一般的な就活は“お見合い結婚”のようなものが多いんです。そのまま就職をすると、当然ミスマッチも多くなってしまいます。だから僕らは、インターンシップを通して、恋愛結婚的な就活・採用活動を支援できたらいいなと思っています」
そしてそれを実現するために、マチトビラが参加企業に求めるものは、理想とする人材の明確化と、自社を客観視する姿勢です。

末吉「基本的の考え方として、『とりあえずいい人が来てくれればいいな』というものではなく、自分たちにとっての理想を明確にして、その人に振り向いてもらうために魅力を伝えましょう、とお話ししています。あとは、自分のいいところだけを伝えるのではなく、もしかしてマイナスになる面もしっかり伝えて、総合的に理解してもらうようにと。単純にマッチングをさせるのではなくて、入社したあとも、お互いにとってとても大事なことですからね」
入社前に会社の理念や経営者に共感していても、ミスマッチが起こってしまうこともあります。その原因としては、社内の受け入れ体制が整っていないということが挙げられます。

末吉「たとえば入社前は学生に、『いろんな企画を提案してほしい』といっていたのに、実際は社長が忙しすぎて見てくれなかったり、仕事量が多すぎて企画をする時間がなかったりすることも。その原因は、学生を受け入れる企業側にあって、ほしい人材が活躍できる環境を、本当に作れているのかというのは、意識してもらうようにしています」
マチトビラは、ようやく採用支援事業がやっと整ってきたところ。企業と学生がお互い幸せになれるための体制が見えてきた今、末吉の頭のなかには、さらに大きなビジョンが描かれています。

末吉「これまで、鹿児島でいろいろやってきたなかで救われたのが、新しく求人サイトを立ち上げたいと思ったときに、協力してくれる人がワァーっと集まってきてくれたこと。そのときみたいに、コミュニティー内にいる人が有機的につながってお手伝し合える、そんな仕組みを作っていきたいんです。

鹿児島は、何か新しいことに挑戦しようとしたときに、『やめたほうがいいよ』とその火を消す人よりも、応援してくれたり、『一緒にやろうよ』と乗ってくれる人が多い。僕自身、東京では活躍しきれなかった負い目もありましたが、鹿児島では自分が貢献できていると感じられて幸せです。僕と同じような人に選択肢を提供し続けて、鹿児島で活躍できる人を増やしていきたいと思います」
自分が貢献したいと思える人の顔が見える鹿児島の地で、人と企業の幸せな関係を作り続ける末吉。彼の頭のなかには、企業と学生だけでなく、多くのプロフェッショナルがつながり活性化していく、鹿児島の未来のイメージが広がっています。

---

GOOD WORK KAGOSHIMA
https://goodworkkagoshima.com/

鹿児島実践型インターンシップ
http://kagois.com/

関連ストーリー

注目ストーリー