クラス全員で会社設立!? 文化祭でMAMORIOを完売させた女子高生たちの物語

2017年5月のある日、品川女子学院の生徒さんからMAMORIO株式会社に一通のメールが届きました。起業体験プロジェクトの一貫で、「MAMORIO」を文化祭で販売したいというのです。4年B組の星井琳華さんと川﨑ひろかさん、担任の藤川大典先生にお話を聞き 、このユニークな取り組みの全貌を紹介します。

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品川女子学院「28プロジェクト」とMAMORIOの出会い

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▲星井琳華さんと川﨑ひろかさん

今回のコラボレーションは、品川女子学院が10年以上続けている「28プロジェクト」の一貫で実現しました。

「28歳になったときに、社会で活躍している女性を育てる」という理念で、企業との共同開発や起業体験を通じて、自主性やコミュニケーション能力を育てるプロジェクトです。女性がライフ・ワークバランスを考える時期である「28歳」にちなんでおり、女子校ならではの取り組みとしてメディアでも紹介されています。

藤川先生 「本校の『28プロジェクト』では、中学1年から高校3年までのあいだに生徒たちが社会と自分とのつながりを知ることができるような体験をします。中学では1年で『地域』を、2年で『日本』を、3年で『世界』を知るような取り組みを経験するんですが、高校1・2年ではクラスごとに企業理念を掲げて起業をし、生徒たちで社長やマネージャー、会計長、広報長などの役職を割り当てて、文化祭に向けて事業を組み立てていくんです」

クラス内で社長、会計、広報といった本物の企業さながらの役職を決め、4年B組では複数の企業に協力を仰いだため、担当企業ごとに班分けをするなど、リアルな組織づくりを追求しています。今回お話を伺ったのは、社長を務めた星井琳華さんと、広報部でMAMORIO担当班のメンバーでもあった川﨑ひろかさんのおふたりです。

星井さん 「4月のはじめにクラスで企業理念を決めるんですが、私たちの4年B組は話し合いの結果『忘れるをなくす』という理念に決まりました。その理念を実現するために、品川女子学院の文化祭で何ができるかを考えるんです。たとえば、忘れ物を防ぐために何か具体的な商品がすでに世の中に出回っていないかな?とネットで調べて、MAMORIOさんのWebサイトを見つけました」

情報科の先生にもアドバイスをもらい、モノを忘れて家を出ると音が鳴るシールのような商品を探していたという星井さん。MAMORIOは紛失物防止タグなので、星井さんが求めていた商品に極めて近いものでした。

MAMORIOのほかにも、スケジュールを忘れないようにするスマートウォッチや物忘れを防げる付箋など、グッズを扱う複数の企業にアプローチしました。

MAMORIOにメールが届いたのは2017年の5月中旬。それから1カ月ほどメールのやりとりを続け、6月下旬にMAMORIO本社にお越しいただきました。

MAMORIOに学校のモチーフ「白ばら」をプリント

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▲白ばらをプリントしたMAMORIO

中学生の頃から地域や企業とのコラボレーションをしてきているふたりの交渉力は高く、MAMORIOとの打ち合わせもスムーズに運びました。

ただグッズを仕入れて売るのではなく、女子高生の感性で付加価値をつけて販売するのがこのプロジェクトのユニークなところです。文化祭の販売を前提とし、MAMORIOをどうアレンジするか検討しました。

星井さん 「MAMORIOの名前は『お守り』からきていると聞いたので、はじめはお守りみたいにケースを付けることを考えました。自分たちでケースを手作りするのか、企業につくってもらうのか。でも使える予算が決まっているので、もっと手軽なシールをつくって貼るというアイデアもあって……。最終的には、MAMORIOの本体に印刷をすることになったんです」
川﨑さん 「何を印刷するか話し合って、いろんな案が出ました。制服のスカートの柄にしようとか、ネクタイやリボンにしようとか。結局、品川女子学院のモチーフになっている『白ばら』を印刷しました」
星井さん 「このモチーフを使うのにも、お金がかかるんですよ。なんだっけ、あの……」
川﨑さん 「ロイヤリティ費!学校に使用料として払わないといけないんです」

学校のロゴからロイヤリティという制度を学ぶふたり。こうした予算面の課題をクリアしつつ他企業の協力を仰いで予算内で白ばらをプリントし、品川女子学院オリジナルのMAMORIOができました。細部までリアルに再現された起業体験だからこそ、資金繰りや準備で学ぶことが多かったとふたりは語ります。

星井さん 「企画書作成やプレゼンテーションをおこない、その評価によって、学校からの出資額が決まるんです。プレゼンの結果は残念ながら満足いくものではなかったので、仕入れ段階から予算の見直しをする必要が出てしまって。結局、MAMORIOの方にもいろいろアドバイスをいただいて、30個を買取りで仕入れることにしました」

文化祭はたったの2日間。なんとか30個を売り切れるよう、売り場の導線や決済方法の工夫、プロモーションにも力を入れていきます。MAMORIOの魅力を伝えるために、高校生たちが知恵を絞っている。MAMORIOはこうした珍しいケースに選んでいただけたことに感謝しながら、文化祭当日までの取り組みを見守ります。

どうすれば売れるか。大人顔負けの試行錯誤

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▲さまざまな課題解決を図ったふたり

文化祭でMAMORIOを売ることを本格的に考えたときに、ネックになるのが価格でした。MAMORIOの価格は高校の文化祭で販売するグッズとしては高額です。

藤川先生 「文化祭で販売するものは、これまで数百円程度が普通でした。でも、今年うちのクラスが目をつけた商品は高額で……。文化祭で高額商品を売ることについて議論が続きました。生徒たちの意見を学校が尊重してくれて販売が決定しましたが、そもそも文化祭でそんな高い商品が売れるのかという不安はありましたね」
星井さん 「文化祭に来る人はそんなに現金を持っていないんじゃないか、と予想しました。iPadを使ったクレジットカード決済について大学生の方から教えていただき、決済方法についても学校に交渉しました。どうすれば売れるか、考え抜いた末にたどり着いたアイディアです」
川﨑さん 「クレジットカード決済は承認されませんでしたが、それなら広告で工夫しようと切り替えました」
星井さん 「学校のWebサイトに有料の広告掲載を依頼するシステムが2017年から新たにできたので、利用しました。近隣の施設に宣伝に行くなども検討し、最終的に当日のプロモーション・トークが大切という結論に至りました」

MAMORIOは、初めて使う方には多少の説明をすることで、より使い方がわかりやすくなる商品です。星井さんと川﨑さんは、夏休みに実証実験をして、クラウドトラッキングの仕組みやアプリとの連携を自分たちで説明できるようになりました。

川﨑さん 「電車に乗りながらお互いのMAMORIOが見つかるのか試しました。すれ違いで見つかる機能はすごかったです!」

売るための施策をこれでもか、というほど考えたふたり。売り切れるかどうか……という心配とは裏腹に、予想外の展開がふたりを待ち受けていました。

「ちゃんと伝えれば買ってもらえる」と実感した文化祭当日

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▲文化祭でのMAMORIOスペースの様子

MAMORIOは、想像をはるかに超える売れ行きでした。30個を2日に分けて15個ずつ売っていく計画でしたが、初日の午前10時にはその15個が完売。とっさの判断で20個まで販売することにしたものの、それもお昼前には完売してしまいました。翌日には「昨日買えなかったので」と朝イチで来てくれるお客さんも。あまりの人気ぶりに、もっと仕入れておけば……と後悔したそうです。

星井さん 「事前告知で知ったお客さまより、その場ではじめて知るお客さまが圧倒的に多い印象でした。MAMORIOの仕組みについて簡単に伝える工夫をすると、お客さまも興味を示してくれました」
川﨑さん 「家電量販店の店員さんのように、実際に身につけてもらいながら説明していると、周りにどんどんお客さまが増えていきました。輪ができることが、嬉しかったです」

買ってくれたお客さんは年齢も性別もバラバラ。「自分たちの言葉でちゃんと伝えれば買ってもらえる」という、ビジネスで大切なことを実感した瞬間でした。

文化祭後におこなわれた株主総会の結果は、大幅な黒字。クラス全員に株主配当金としてリターンを返すこともでき、大成功に終わりました。最後に「何が黒字化の決め手でしたか?」という質問をすると、迷わず「商品の良さです!」と即答してくれました。決して順調なことばかりではなかった半年間、まとめてきたふたりの人柄が伝わります。

MAMORIOも、品川女子学院での取り組みから多くのことを学ぶことができました。起業経験を通じて力強く、改めて大切なことを教えてくれたふたりに感謝しながら、社会に出た先輩として良い商品を発信していけるよう、これからも前に進んでいきます。

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