属人的な仕事、現場に使われないツール。日本の営業環境を劇的に変えていく挑戦

ここ数年で続々と立ち上がっている、営業支援ツールや顧客管理ツール。さまざまな企業で導入が進む一方、「現場に定着しない」といった声も聞こえてきます。そんな状況を変えるべく、後発ながら市場に登場したのが「Senses(センシーズ)」です。株式会社マツリカ 代表取締役の黒佐英司がプロダクトに込めた想いとは?
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誰が何をやっているか分からない。営業を通じて感じた“属人化”という課題

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▲代表・黒佐の前職での営業組織立ち上げ時の様子。この時の経験がSensesの開発に活かされています

黒佐がマツリカを創業するまで歩んできたキャリアは、一言で表すならば“営業一筋”。新卒で入社したのは、大手住宅メーカーの積水ハウス。そこで、個人向けの企画提案営業、資産家向けの資産活用の提案などを行なっていました。

黒佐自身、営業パーソンとして成果を残し、マネージャーへの昇進を果たします。立場を変え、営業のメンバーをマネジメントしていくなかで、営業の手法に関して“課題”を感じていました。

黒佐 「本来、営業のノウハウは蓄積し、会社の資産にすべきもの。しかし現実は売れる人、売れない人の差が広がっていくばかりで、営業の仕事が属人的なものになっていたんです。その状況を見て、すごく無駄が多いと感じていました」

その後、黒佐は株式会社ユーザベースに転職。同社では営業開発チームの立ち上げから始まり、営業部門・マーケティング部門および顧客サポート部門の統括責任者を担当することに。

営業チームを立ち上げていく過程で、黒佐が感じたのは「人数が増えていくとレバレッジが効かなくなる」ということでした。

黒佐 「チームの人数が2〜3人くらいのときは、誰が何をやっているか、顔を合わせれば大体把握できます。しかし、人が増えていくと営業の情報やノウハウを、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で共有しきれなくなり、チームの生産性がぐっと落ちてしまう。個人的には10人までが限界でした」

自分ひとりの力では、チームの課題を解決できない——そう感じた黒佐は、あるツールに手を伸ばします。そう、営業支援ツール(SFA)です。チームの生産性を高めるために、海外の営業支援ツールを活用してみたのです。

黒佐 「実際に使ってみて感じたのは、既存の営業支援ツール、顧客管理ツールは“管理者”のためにあるもので、現場のためになっていない。そこに根深い課題があると思いましたし、何より“現場に嫌われている”という状況を解決したいと思いました」

この出来事をきっかけに、黒佐は“現場のため”になる営業支援ツールの開発を決意します。サービスのアイデアを考えていく過程で、大きなヒントとなったのが、ユーザベースの事業。企業・業界分析のためのオンライン情報プラットフォーム「SPEEDA」の、情報をキュレーションして、付加価値をつけた上で外にアウトプットする。このスキームを営業向けに展開することにも価値があると感じたのです。

黒佐 「世間的に『営業=つらい』というイメージがあるじゃないですか。もちろん大変なこともありますけど、自分はつらいものだと思わない。本当はもっと楽しいものだと思いますし、顧客の課題を解決する方法を考えている瞬間こそがクリエイティブ。営業支援ツールを通じて、こうした体験をもっと増やしていきたいと思いました」

営業現場だからこそ感じた課題。それがSenses誕生のきっかけとなったのです。

競合が多いのは分かっていた。でも勝てるプロダクトを作る自信もあった

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▲現在の案件ボード機能の構想に繋がったホワイトボードでの案件管理

こうしてSensesを開発することになったわけですが、営業支援ツール、顧客管理ツールの市場には先行して展開するツールも数多と存在します。いわば“レッドオーシャン化”。ただ、黒佐の眼には大きな可能性が見えていました。

黒佐 「既存の営業支援ツールを導入している企業にヒアリングしてみたら、ほとんどの企業から『営業支援ツールを導入したは良いものの、現場が入力しないので、運用のフェーズに乗らない……』という意見が挙がってきたんです。それを聞いて、大きなチャンスが眠っていると感じました」

管理者ではなく、現場のためになるツールを——この強い想いを持って、黒佐はSensesの開発に取り組んでいきます。開発を進めていくにあたって、まず行ったのはユーザーインタビュー。現場で働く人の意見を吸い上げることにしたのです。

黒佐 「すでに営業支援ツールを導入している企業、まだ導入していない企業に分けて、ユーザーインタビューを行いました。多分、100人くらいの話を聞いたと思います。やっぱり挙がってきた声の多くは『入力しにくい』というものでした」

その意見をもとに、黒佐は開発に着手。MVP(Minimum Viable Product)という手法を使い、約2〜3カ月でβ版を開発。入力作業の負担を軽減させるために、Chrome拡張機能を利用。Gmailで送信した内容や取引先のやり取りを自動でSenses内に取り込めるようにするなど、現場の人がより価値を感じられるものにしたのです。

β版のリリース後、現場からの反応は上々だったものの、なかなか企業には導入されずにいました。

黒佐 「導入の決裁権を持つのは、現場の人ではなく管理者。現場のためになるツールを開発しても管理者がメリットを感じにくければ導入されない。そこで“案件ボード”という機能を開発し、管理者にもメリットを感じてもらえるようにしました」

その後、知り合いを中心にいくつかの企業にSensesが導入されていきました。ある程度の手応えを掴んだ黒佐は、Sensesをオープン化。

より多くの企業で導入を狙いましたが、結果は失敗。全く導入企業数が増えていかず、最初の勢いは完全に失われてしまったのです。

やること、やらないことを明確に

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▲案件ボード機能を活用して営業会議をしている様子

黒佐 「なぜ、全く導入されなかったのか。その原因を分析してわかったのは、既存ツールとの差別化を意識し過ぎていたということ。普通に考えたら、既存ツールから乗り換えるにあたって、今まで当たり前に使えていた機能は引き続き使いたいですよね。でもSensesには、その“当たり前”がなかったんです」

今までは差別化を強く意識していたため、Sensesのことを営業支援ツール、顧客管理ツールと呼ぶことはしませんでした。しかし、それでは通用しない。その考えが黒佐の中に芽生え始めてからは、Sensesのことを営業支援ツール、顧客管理ツールと呼ぶように。また、それに併せて、やること、やらないことも明確にしました。

黒佐 「当時、AIを活用した機能など、他のツールにはない機能の開発を進めていたのですが、一旦ストップしました。そこに注力するのではなく、営業支援ツール、顧客管理ツールに当たり前にある基本的な機能の開発を推し進めていくことにしました」

既存の営業支援ツールを使っていた企業でも違和感なく使える。そんなツールにすることで、Sensesの導入企業数は右肩上がりで推移。今では、大手ツールからの切り替えの場合でも8割のユーザーが満足して使えるツールになりました。

黒佐 「この1年くらいの開発を経て、既存の営業支援ツールと比べても遜色ないツールになったのかな、と。この市場で戦っていくための土壌ができたと思っています」

管理だけやっているマネージャーは、ツールに取って代わられる

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▲代表黒佐の社内の打ち合わせ風景

営業支援ツールとして、ようやくスタートラインに立つことができたSenses。ここからが本当の戦いです。営業パーソンの働き方を変えるために、やるべきことはたくさんあります。

黒佐 「ここから、もう一度、差別化の部分を深掘りしていきたいと思っています。一旦ストップしていたAIを活用した機能の開発も進めていくつもりです。また導入企業数が増え、一定数のデータも溜まってきているので、本来の目的であった『営業支援ツール×BI(ビジネスインテリジェンス)』という取り組みに一気に進めていきたいですね」

また、テクノロジーの変化に合わせて、Sensesも変化していく。黒佐は数年先のことも見据えています。

黒佐 「2017年現在、入力作業はChrome拡張機能を利用し、Gmailで送信した内容を自動で取り込めるようにしていますが、テクノロジーによって入力の仕方は変わっていくと思います。

たとえば、文字認識の技術が進化すれば、撮影するだけで入力できる。また音声認識の技術が進化すれば、話した内容が自動的にテキスト化され、入力されるようになるーー。正しい分析をするには正しいデータ入力が必要で、ミスや抜け漏れが起こる可能性のある人の手ではなく自動化することが重要です」

Sensesを通じて、目指すのは営業の平準化。今まで属人的になっていた営業のノウハウを解放し、売れる人、売れない人の間にある差をなくすことです。

黒佐 「最終的にSensesはマネージャーの代わりになったらいいな、と思っています。自分は管理するだけのマネージャーは営業に限らず、基本的にいらないと思っていて。ツールがマネージャーの代わりとなり、管理から解放したいですね」

Sensesのコンセプトは、「営業をもっと自由に、もっと創造的に」。プロダクトが普及し、多くの企業に強力な営業組織が形成されることで、我々のミッションである「世界を祭り化する」の実現に繋がると信じています。

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