コミュニケーション不足解消の鍵を握るのは?

▲管理部の田中啓太

オフィスの一角にあるドアを開けると、そこはスナックだった──。

みんな電力にスナックができたのは、メンバーが増えてオフィスを移転することになった2019年3月のこと。プロジェクトは2018年末ごろから始まりました。

企業の成長期には人数の壁があり、一般的に50名を超えると離職者が増えたり社内の雰囲気と合わない人が出てきたりなど、課題が出てくるといいます。

そのころ、代表の大石英司もまさにそれを懸念していました。

幸い離職率は低かったものの、イコール「理想の会社」とはなりません。社員に、より働きやすい環境を提供するためにはどうすればいいかを検討するため開始したのが、当プロジェクトだったのです。管理部門のメンバーで構成され、その中心を担ったのが田中啓太でした。

まず社員の会社に対する満足度を調査するためアンケートを実施。結果、働き方の項目は5段階で平均4ポイント以上と高い満足度を獲得したものの、社内設備は2.96ポイントと微妙な結果が出ました。

その背景には社員数増加にともないコミュニケーションが希薄化したことがあると考えます。以前は「代表と気軽に話せる、距離が近い」「部署間のコミュニケーションもたやすい」環境だったのに、人数が増えたことで縦割り化が進み、接点のない人たちが出てきていたのです。

大石もなるべくさまざまな人としゃべるようにしていたのですが、それにも限界がありました。

社員間のコミュニケーションが同じ人ばかりに固まってきたのも大きな課題に。それにより、以前は「この仕事をお願いしたい」と思い立ったとき、すぐにキーマンがわかったのに、2〜3名に聞いてようやくわかるという状態に陥っていたのです。

田中 「大げさかもしれませんが、これでは事業のスピードにも影響が出てきてしまいます。社員が 20名程度のころは全員顔見知りでしたが、現在は 60名以上。互いの得意分野を把握するまでには至らなくなり、社内調整が以前より困難になってしまいました。
これから成長していこうとしている今、この課題は早急に解決する必要がありました」

コミュニケーションを活性化できるようなオフィス環境にするためにはどうすれば良いか……。その妙案こそがスナックでした。

今日あったことを語りたくなるスナックを

▲スナック「再生」

最初にスナックを発案したのは大石でした。

彼の知り合いが「オフィス・スナックづくり」を企画しており、パンフレットをもらったことがあったのです。そこには、導入した企業の楽しそうな写真やメリットの一覧が掲載され、それを見たプロジェクトのメンバーが一様に「これはおもしろい」と声を上げたほど。

さっそく開店に向けて取りかかりました。

田中 「ちょうど移転のタイミングだし、せっかくだから 1室つくっちゃおう、と。 どうせつくるなら、コテコテのリアルなスナックにしたいと思い、みんなの頭の中にあるスナック像を投影しました。
その方がおしゃれなバーやカフェ空間よりも安心感があって、リラックスして話せると考えたんです。壁紙にもこだわりましたね」

スナックの“ママ”は大石に決定。

デスクの上だと利害関係や上下関係が気になっても、デスクより近いカウンター越しの距離感で一緒に呑めば、社員もほろ酔い気分で本音を言えるのではないかと考えました。何よりも大石が社員の現場の声を聞きたがっていたことが大きな理由です。

そうしてでき上がったスナックの名前は「再生」。私たちが「再生」可能エネルギーを取り扱っていることと、嫌なことも大石ママにしゃべってリフレッシュして「再生」してほしいという願いを込めて名付けました。

でき上がる前は「冗談でしょ?」「本気なの?」と半信半疑だった社員も、いざでき上がったら楽しそうに活用してくれています。重要なものを含めた社内会議や社外のお客様との打ち合わせ、ランチタイムなどその活用方法はさまざま。

スナックには発電所がある土地のお酒をはじめとする物産品も置いているので、社外のお客様に私たちのサービスのコンセプトを肌で感じてもらうような使い方もできています。

また、毎月「スナック再生の日」と称した交流イベントでは、16〜17時の1時間、無作為に選ばれた5名の社員と大石がスナックに集っています。そこでは本物のスナックよろしく、仕事の話もプライベートの話も花を咲かせているのです。ここで意気投合して趣味の仲間になり、「じゃあ他のメンバーも誘ってイベントをやろう」と発展した例もあります。

ちなみに、大石ママは要アテンド。社内には準ママがたくさんいて、その都度お酒好きな女性ママやイケメンのマスターなどが場を回しています。

7つの仕掛けがサービスを目に見える形で表現

▲縁側をイメージした和室

社内設備についての取り組みは、スナックだけではありません。 「顔の見える電力」から「顔の見えるライフスタイルの発信」と事業を拡げていくにあたり、オフィスに7つの仕掛けを施しました。

ひとつ目はガラス張りのオフィス。社員が働く執務室とお客様が通る通路の間の壁をガラス張りにし、「スタッフの顔が見えるオフィス」を実現しました。もちろん、PCは背を向けているため情報漏洩の心配はありません。

ふたつ目は顔の見えるセミナールーム。社外の方も招いてセミナーを開催する会議室もガラス張りです。話の内容が外に聞こえることはありませんが、誰が打ち合わせをやっているかはすぐにわかります。ただし、社外秘の情報を取り扱う際は一時的にブラインドを閉めます。

3つ目はエントランスにある690個のコンセントを設置したコンセントウォール。コンセントの向こう側(発電者)に想いをはせられるようにと考えました。前面には当社のロゴを光らせていて、エントランスのシンボル的存在になっています。

4つ目は社員の健康に配慮する施策。紫外線で空気を殺菌できるエアロシールドを随所に設置しています。感染症対策を行うと当時に、電気や食べ物だけでなく空気も変えていきたいという想いも込めました。

5つ目はドリンク機。産地がわかる電力を提供している会社として、産地がわかるドリンクを用意しました。

田中 「産地にこだわっているのは電気やドリンクだけではありません。エントランスに敷いているじゅうたんから何から何まで、産地がわからないものはたとえ値段が安くても使わないようにしています。
実際ドリンク機では、おいしそうだけど産地がわからないことを理由にラインナップから外れたものもあります。多少コストはかかりますが、社員への福利厚生という意味もあるので、社員には産地がわかるいいものを飲んでもらえたらなと思っています。社外の方にもご好評いただいています」

そして6つ目は、当社の第2のシンボルである電球のオブジェ。これは、バイオマス発電に使用する間伐材チップを使用しているため、お客様に「このチップを燃やして発電しています」と説明する際にも一役買っています。

最後の7つ目は縁側をイメージした和室。社内外問わず多くの方が利用していて、会議が終わった後のフリートークの場として使用している姿もよく見かけます。会議室を抑えるほどではない、サクッと終わらせたい打ち合わせ場所としても人気です。

スナックと7つの仕掛けの相乗効果で“場”を明るく照らす

▲スナックでの懇親会

スナックと7つの仕掛け。

これらの取り組みは、みんな電力がどういう会社なのかを視覚的にも社内外にアピールすると同時に、みんなのコミュニケーション活性化の一助になっていることを私たちは日々実感しています。

いままで接してこなかった社員同士のコミュニケーションが増えたり、社員発信のプロジェクトがいくつも生まれたりしたことは、そのわかりやすい例でしょう。

2つ目の仕掛けとして紹介した顔の見えるセミナールームでは、 毎月のように社内イベントが開催されています。最近は「ESGをテーマにした企業向けイベント」「サステナブル経営を行っている企業と学生が出会う新卒採用イベント」「サステナブルなワークスタイルを考えるU35限定オープンミーティング」などを開催しました。

こうして「顔の見えるライフスタイルの情報発信基地」として、さまざまな企業や人が集うようになりシナジーが生まれているのです。これは正直思いがけない効果でした。

今、課題解決に向けた社内設備の改善は、ハード面では充実してきました。次はソフト面をより充実させることが使命だと考えています。

スナックの活用やイベントの開催など、きっと他にもさまざまな可能性があるはずです。それらを社内外に発信していけたらとも思っています。

田中 「せっかく “場 ”があるので、友だちの友だちを呼ぶとか。スナックがある会社はなかなかないと思うので、遊びに来てよという軽いノリで呼んで来てもらって、当社のことをちょっと好きになってもらえたらいいなと思っています。
まだ知名度が低いので、インスタ映えではないですけど、ビジュアルから知ってもらうのもひとつの手段かなと。まず興味を持ってもらい、そこから調べてもらってちゃんとした会社だと知ってもらう認知のされ方もありなのではないでしょうか」

まずは知ること。それはどんな分野においても大きな第一歩です。

「スナックがある会社」と聞くと、ちょっと変わった会社と思うだけかもしれません。けれど、そこから一歩踏み込んでもらえればサービスのおもしろさ、奥深さが伝わるはず。それは人がついつい夜ごと足を運んでしまう街角のスナックのよう。私たちはそんなスナックのように、今日も誰かの家を明るく照らしています。