「MBAを取っても、経営者にはなれません」そこに示される本当の価値

高校までは勉強嫌いでサッカーひと筋、前職のリクルート時代も「MBAは意味がない」と考えていた株式会社ミライフの佐藤雄佑。しかし、リクルートエグゼクティブエージェント出向後、すぐに早稲田大学ビジネススクールの受験を決めました。何が佐藤を変えたのか、佐藤の考えるMBAの価値とは何なのかをひも解きます。
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サッカーひと筋、勉強嫌いの学生時代

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▲大学時代の佐藤。小学校から大学までサッカーひと筋だった

佐藤は小学生の頃からサッカーひと筋で、中学生になって最初の成績は5段階中、体育だけが5で、残りは全部2でした。授業中は気配を消して、体育と部活の時だけ活動しているという生徒で、特に体育祭、マラソン大会、球技大会という3大イベントでは大活躍していました。

勉強ができないので、高校もスポーツ推薦で行くことを佐藤は考えます。しかし、突如親の反対で、スポーツ推薦は認めないと言われました。後に分かった話では、当時父親の会社の経営状況が良くなく、あまりお金がなかったとのこと。

結局、都立高校に入学した佐藤でしたが、サッカー優先で勉強が後回しになるスタンスは変わりません。得意科目は数学と物理でしたが、担任教師に「大学でもサッカーを続けて、全国レベルで戦いたい」と伝えたところ、「理系は勉強と体育会系の部活の両立がキツいかも」と言われ、深く考えずに文系に転身。

父親も企業を経営しており、小さい頃から自身も社長になりたいと考えていた佐藤は、法政大学経営学部に進学。

ゼミは、当時同大学内で最も厳しいと有名だった小川孔輔教授のマーケティングのゼミ。コトラーの『マーケティング・マネジメント』を原書で読み、プレゼン、ディスカッションするようなゼミで、年間2回休んだらクビになるという厳しさでした。このゼミに入ったのをキッカケに、佐藤は「人生で初めてちゃんと勉強するようになった」と言います。

佐藤 「マーケティングの概念や発想、心理学や消費者行動が大好きで、フィールドワークもあるゼミだったので、すごく面白かったですね。それまで授業すらまともに出たことのない人間が、ゼミだけは 2年間ほぼ休みませんでしたから」

MBA嫌いが、なぜMBAを取ろうと即決したのか

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▲2014年8月に早稲田大学ビジネススクールの受験を決意

こうして、“勉強嫌い”を克服した佐藤がMBAの取得を決めたのは、前職のリクルート時代です。

佐藤は、人事に異動後、さまざまな人事制度、育成プログラムを検討・作成していました。その中のひとつとして部内で検討していたのが「MBA取得制度」。国内外のビジネススクールに企業派遣制度を使って社員を送り込んだり、海外MBAを取得するための休職を認めたりと、社外で学ぶことを応援してはどうかというものでした。

しかし佐藤は、学生時代の友だちにもリクルートの同僚にも、周りにMBAを持っている人があまりいなかったこともあり、これに反対します。

佐藤 「僕らは『仕事の報酬は仕事』という考え方を持っていました。MBAを取ったからといって、すごく戦略的だとか、マネジメントが素晴らしいというわけではない。それなら仕事で成長しろ、お客さんの声を聴け、と思っていましたから」

しかし、経営人材の転職を支援するリクルートエグゼクティブエージェント(以下、「REX」)に出向した佐藤は、MBAに対する考えを180度改めることになります。エグゼクティブコンサルタントとなった佐藤は、担当するカスタマーのMBA保有率の高さに衝撃を受けたのです。

佐藤 「こんなに多くの人が MBAを持っていることに、とにかく驚きました。カスタマー側だけでなく企業側も、社長や人事系役員、経営企画の役員と話すんですが、彼らの多くも MBAを持っていたんです。
人事時代まで MBAは意味がないと言っていました。しかし、候補者やクライアント企業である、経営人材と対等に向き合えるようになりたいと思い、自分も MBAを取ろう、そうしないと同じ土俵に乗れないと感じました」

佐藤がREXに出向したのは、2014年4月。同年8月末には、出向後約5カ月でMBAの受験を決めました。

あえて専門分野を学ばない、MBAで一貫させたのは新しい強みをつくること

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▲授業の一環で、アメリカのスタンフォード大学でビジネスプランをプレゼンした

勉強は嫌い、MBAも食わず嫌いだった佐藤。MBA受験は瞬発的に決めて、ほとんど受験勉強もしないままのチャレンジでしたが、見事合格を果たしました。いわゆる英国数理社のような勉強は嫌いな佐藤ですが、必要なことを勉強するのは苦ではなく、特にビジネスに対しては勉強とすら思っていない部分があると言います。

佐藤が入学したのは早稲田大学ビジネススクールの「総合コース」。自分の専門分野を深く学んでいく「プロフェッショナルコース」とは異なり、必修+自分の好きな科目、学びたい講座を履修するコースでした。ここで佐藤は、あえて自分の専門である人材・人事系の講座は必修ひとつを除いて取らないことに決めます。

佐藤 「自分の専門分野を履修したほうが成績は良くなるでしょうが、リクルートという組織の人事を経験したので、これ以上はいいかなという気持ちでした。自分は経営戦略や事業戦略、起業やベンチャー企業の社長の話が聴ける授業ばかり取っていました」

起業系の授業では、実際の経営者が講師として来て、起業した理由やエピソードなどを話してくれる授業が数多くあり、佐藤は取れる限りすべての授業を取りました。

佐藤 「何個も起業系の授業を取るから周囲からは『どれか1個でいいでしょ』と言われたけど、僕からすれば授業でそうそうたる起業家の方々の話が聴けて、しかも名刺交換をしてつながりが持てる授業なんて、出ない理由がありません。起業を決めていた自分にとって、ものすごく大きな学びになりましたし、人脈形成ができました」

2年生で選択するゼミは、IT戦略の大家と呼ばれる根来龍之教授のゼミへ。同じゼミには通信業界、放送業界、広告業界などのプロが集まる中、IT系でも戦略系でもない佐藤は「ついていくのが大変。でも知識や経験がないなら気合いで頑張るしかないよね」と笑います。

佐藤 「これまでの専門分野と距離の離れた分野を学ぶのが、結果的に価値が出てくるのではと考えました。経営戦略、事業戦略がわかって、リクルートでの人事責任者経験もあるエージェントって、かなり希少性が高いですし、そのほうがクライアント・カスタマー双方の要望に応えられると思ったんです」

MBAを取ることはREXでの気づきの中で瞬発的に決めた佐藤ですが、入学後の授業の取り方・ゼミ選びには「人事系は取らない、得意なことをやらない、新しい強みをつくる」という一貫した意志がありました。

MBAはビジネスに対する「WILL」の証明

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▲2017年、早稲田大学ビジネススクールを卒業。MBAを取得した

MBAを取得したメリットについて、佐藤は「人脈も視野も広がったこと」と言います。 一方で、大手企業の人はMBAで学んだことをなかなか活かしきれないのでは、と佐藤は懸念しています。

佐藤 「大手企業はベンチャーなどに比べると、まだまだ『変えられない・選べない・決められない』ことが多いと聞きます。今の日本では、優秀な新卒が大手企業に入社する傾向にありますが、意思決定する仕事ができていると感じる若手社員はけっして多くはないはずです。これは本当にもったいないですよね」

MBAを取ったからといって経営者になれるわけではないし、MBAを持っているから優秀なわけでもありません。

では、MBAは何の価値を証明するものなのかということですが、佐藤の考えるMBAは「ビジネスに対するWILL(意志・想い)の証明」。MBAというのは能力じゃなくて、スタンスの証明だと思っています。MBAを持っているからと言って能力・知識が高いとは言い切れないけれど、最低でもビジネスに対してWILLはあると言えます。

佐藤 「『仕事が嫌い』という人はMBAを取得しようとは思わないので、MBAホルダーがビジネスに対してWILLがあるのは証明できると思うんです。それだけかと言われるかもしれないけど、人を採用する側としては、MBAを取るくらいビジネスに対するWILLがあれば、なんでもできるということなのかと思っています」

佐藤がミライフで実現したいのは、「非連続なチャレンジを支援する」こと。やったことがないからできないではなく、これからの時代、やったことがないことを当たり前のようにチャレンジすることが強みになっていくはずです。

MBAを取得することで、キャリアチェンジやキャリアチャレンジにつながる挑戦権のようなものが得られるため、ドンドン新しいチャレンジをして欲しいと佐藤は思っています。

ミライフでは、転職する・しないにかかわらず、MBA取得“後”の非連続なチャレンジも応援していきます。

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