「将来、どうなりたい?」――過去の経歴を聞かないキャリアデザイン面談ができるまで
過去の経歴を聞かない面談

一般的なエージェントは、面談の際に過去と現在のことを中心にヒアリングします。
これまでの実績や成功体験を聞いて、どの企業にマッチするかを考え、現在不満に思っていることや転職理由を聞いて、具体的な企業への応募を勧めていく形です。
しかし、ミライフの面談ではほとんど経歴を聞かず、現在と未来の話しかしません。
面談は「現在の状態や悩んでいることをお話しください」とカウンセリングのような形でスタート。そこから「たとえば5年後、10年後、どうなりたいんですか?どんなことしたいんですか?」という質問に移ります。
その質問によって、カスタマーの視点を未来に飛ばし、カスタマーの「理想未来」を探りにいくのです。
佐藤 「このやり取りが一番むずかしい。面談の 3分の 1くらいはこの話に費やします。
20~ 30代のうちから、10年後にどうなっていたいかを明確に考えている人はほとんどいません。僕もそれがないと分かったうえで意図的に問いかけているんです」
さまざまな質問を繰り出し、一旦「理想未来」を描いてみる。変わる前提でもいいので、一旦仮置きするのが大切だと思っています。
理想未来を描いた後は、どうやってそこに向かえばいいのかという話になります。
もちろん転職に限らず、現職にとどまることも含めて、MBA、留学や副業などあらゆる選択肢を検討していきます。佐藤は「全然転職の話に行き着かないんですよね(笑)」と話します。
実際、佐藤のカスタマーのなかには、大手商社を辞めて海外の大学院に留学した方や、大手通信会社からの転職を希望していたものの、結局は現職にとどまり、海外赴任のチャンスを手にした方もいます。
転職にはほとんど関係ない相談をされる方もたくさんいます。
理想未来に向かうための方向性を一緒に考える――それは仕事のことだけでなく、結婚や子育てと仕事の両立など、ときにはライフスタイルを含めた話になることも。
いずれにせよ、理想を話すことに多くの時間を割き、ほとんどの人が「理想未来」を考えていないところから具体化していく。それがミライフの面談スタイルです。
「どうなりたい?」と聞かれたことはありますか?
佐藤がこの面談スタイルに行き着いた理由は、彼自身の若手時代の原体験にあります。
新卒1年目、とある社長から「佐藤くんは10年後にどうなりたいの?」と聞かれたとき、うまく答えられなかったのです。
佐藤 「何となく独立したいとは思っていたけど、当時自分のなかで “独立が絶対 ”とは言い切れませんでした。
社内でもっと活躍したいなどは思っていたものの、10年後と言われると思いつかなくて、うーんとうなって『マネージャーですかね』と言ってしまったんです」
社長から特に否定はされなかったものの、佐藤はどんどん自己嫌悪に陥ります。
自分の想いというよりは、なんとなく10歳上の先輩を見たらマネージャーをしていたから、そう言ってしまった。自分の答えた内容があまりにかっこ悪く、本心から目指せないと思ったからです。
その後、佐藤は「やはり最後は人が一番大事だから、人材ビジネスで独立する」と理想未来を描き、そこに向けての「10年計画」を25歳の時に立てました。
それは26〜30歳までの5年間は「修行」、31〜35歳で「準備」、35歳までに絶対独立するというもの。結果、2年留年しましたが、37歳で独立しました。
佐藤 「どうなりたい? と本気で聞いてくれる大人に、若い頃に出会えて本当に良かったと思います。きっとその社長さんは忘れていると思いますが、あのときの問いが僕の人生を変えました。
でも、その後リクルートに入社したら、初日から当たり前のように『どうなりたい?』って聞かれるんですけどね(笑)」
大企業では「どうなりたい?」を聞かれる機会は少なく、「こうしなさい」と指示されることがほとんど。
しかし、リクルートには「Will / Can / Must」を徹底して聞く文化があります。
自分のWillを常に問われ、そのために目の前のMustに向き合いながらCanを増やすということを体験しながら身につけていくのです。
自分の「どうなりたい?」に答えられなかった原体験に加えて、リクルートで体系立ててWillの重要さを学んだ佐藤は、「どうなりたい?」と聞いてあげられる人になりたいと語ります。
ミライフのビジネスモデルは真似できない

一般的な企業起点のエージェントは短期での業績が求められます。ビジネスとして悪いというわけではありませんが、個人にとって最善・最高のアドバイスができるとは限らないと佐藤は感じていました。
ミライフを設立したのも、個人起点のキャリア支援をするには、自分で独立して取り組むしかないと考えたからです。
佐藤 「企業からお金をもらうというビジネスモデルも、自社のプレゼンスを上げる業界シェアの考え方も、すべて企業起点。
さらにエージェントの仕事は成功報酬なので、どんなに良い面談をしても、入社が決まらなければお金は入ってきません。事業としてやる以上、入社の決定数を追うしかないんです」
人材紹介には、求人の依頼を受けてから入金されるまでの期間が非常に長いという特徴があります。求人をいただいてから人材を紹介し、内定後の退職交渉を経て、入社後の翌月末にようやく入金されます。
早くて半年、長ければ1年以上かかるような構造なのです。
では、なぜミライフでは個人起点のサービスができるのでしょうか。
佐藤は「本当にこの仕事が好きでやっているので、短期的な視点で考えていない」と語ります。
キャッシュの問題はありますが、コンサルティングなどの他の仕事もやっているのに加え、中長期的に、正しいことを正しいやり方で続けていけば、必ず成果につながる自信があるので、問題ないと考えているのです。
企業起点の場合、面談では案件ベースで知っていることを話せばいい。しかし個人起点では、どんな話が出てくるか分かりません。「案件ベースの面談の100倍くらいの準備や知識が必要」と佐藤は言います。
ただでさえ大変なのに、知識、経験、対応力を総動員しているので、クオリティ的に真似できない、だから誰もやろうとしないというのがミライフのビジネスモデルなのです。
ミライフのメインターゲットは、そもそも会社を辞める必要がないような優秀層。彼らに満足してもらう面談ができなければ、ミライフのビジネスモデルは成立しません。
また、キャリア面談を経て、転職という形で新しいチャレンジをしたいと思っても、面接を突破しないと、自分にとってのベストな道は選べません。
しかし、ミライフからご紹介した場合の書類選考通過率は95%以上。さらに1次面接通過率は80%以上の実績があります。一般的なエージェントが書類選考通過率が30%、1次面接通過率が50%くらいと言われているので、ここまででも実に5倍以上の差になります。
「ちゃんと見立てて、受かる可能性のある人を紹介する」というのが佐藤のポリシー。量ではなく、質で勝負する――佐藤は手間暇をかけてもそれ以上の価値を提供していきたいと考えています。
エージェントビジネスの未来とミライフの約束

今後の採用は、企業が直接スカウトメールを送ったり、Indeedやリファーラルで声をかけたりと、ダイレクトに採用するモデルが一般的になると佐藤は考えています。
そんな環境下でのエージェントとしての価値は、「自分たちでは直接採用できない人を紹介してくれる」ことです。
どこの企業でも欲しがるような優秀層を紹介してくれるならお金を払うけれど、そうでないなら自分たちで採用する――そんな時代が来るはずです。
佐藤 「エージェントとして、いかに優秀な人に会い続けることができるか、カスタマーに価値を提供できるかが重要になってくるでしょう。
ミライフの人と面談して良かったと思ってもらえるエージェントをつくらなければならないと考えているので、今後は社員の育成にも注力していくつもりです」
転職する・しないに限らず、優秀な若者の意欲を引き立て、何かにチャレンジしてもらえるような支援をやっていきたい。
大手企業でもんもんとしているのではなく、「働くって楽しい」と感じてほしい。
ミライフでの面談を通じて、人生における意味のあるキッカケをつくっていきたい――佐藤はそう考えているのです。
ミライフの面談は、コーチングとコンサルティングを混ぜたようなもの。
佐藤 「コーチングは本人に気づきを与え、言語化するのには適していますが、それでは本人の考えを超えられません。
だから一度『理想未来』を考えてもらい、20代の頃に『 40歳になって困ること』を教えてあげたい。
大手企業でずっと 40〜 50歳まで働いて、会社がつぶれたり新しい仕事に就かなければならなくなったりした際、そこから変化対応するのは大変だと考えているからです」
優秀で想いをもった若手は、日本にもたくさんいます。なかには残念ながらくすぶっている人もいる。
だからミライフは彼らを解放してチャレンジしてほしいと考えています。企業にとっても、そんなポテンシャルの高い人材を採用することで、会社の成長に貢献できるはず。
その双方を支援していきたいと佐藤は考えているのです。
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