育休を経て、仕事も育児もプラスに変えた女性プロジェクトマネージャーの考え方

世界中の人々に健康と安心をお届けするため、医薬品やワクチンの開発をすすめるMSD株式会社。子どもを持つ多くの女性が育児経験を生かして働いています。グローバル研究開発本部の上之薗紗有子もそのひとり。母、そしてプロジェクトマネージャーとして努力を続ける彼女の原動力とは何なのでしょうか。
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母から教わった、女性のキャリアへの思い

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入社10年目となる上之薗は2017年現在、がん治療薬の開発を担うオンコロジー領域で抗PD-1抗体のプロジェクトマネージャーを務めています。製品を世に出すときに必要な臨床試験の計画立案から実施、国に対する承認申請などの一連の流れをスムーズに進行させる役割です。

グローバル単位で動いている臨床試験について、情報収集とタイムライン管理をしながら、いち早く日本の患者さんに薬を届けるにはどうすべきかなどをチームで検討し、プロジェクトリーダーをサポート。多くのメンバーとのコミュニケーションが重要な立場で活躍しています。

その一方で彼女は、2011年に出産のため休職し、1児の母として職場復帰した経験を持ちます。出産後、迷うことなくワーキングマザーになったのは、小さいころから受けてきた母の教育が根底にあったためでした。

上之薗 「母は私を出産するときに仕事を辞めたのですが、働きたいという思いも持っていたようで……。昔から、私たちには『子どもが生まれても孫の世話をサポートするから、あなたたちは辞めずにキャリアを築いて、自立した女性になってほしい』と言われていました。なので、仕事を辞めるという選択肢は自分のなかにはなかったですね」

父親の仕事の都合で、幼少期~中学生までは複数の国で海外生活をしながらアメリカンスクールに通っていたため、「女性は家庭に入る」というような価値観に染まることはなかった上之薗。さらに、中近東の国で見た医療格差の現実が、彼女が医療にかかわる原体験となっています。

上之薗 「学校には裕福な家庭の子どもがいて、この人たちはきちんと医療を受けられるけれど、一歩街に出ると、予防接種も受けられない人もいる、という状況を目の当たりにしました。その影響もあり、大学のときも子どもたちの命と健康を守るために活動する機関でインターンをしましたし、医療にすごく興味を持って、MSD(当時は万有製薬)に入社しました」

入社後、最初に担当したのはワクチン領域でした。さまざまなチャレンジがある部署でしたが、チームで協力して乗り切り、製品化に成功。当時の喜びや達成感は、今も上之薗の仕事へのやりがいや楽しみにつながっているのです。

責任のある仕事をやり遂げたい。成長を求め、社内プログラム参加を決意

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産休・育休を経て、子どもが1歳1カ月になったころ、上之薗は時短勤務という形で職場復帰しました。出産前とは違う仕事と育児の両立には厳しさを感じることも。

上之薗 「娘は一人っ子なのですが、1歳にもなると自分は保育園に預けられるんだということがわかるんですよね。送りに行くたびに毎日泣くので、それを見ながら仕事に行くというのは精神面でつらかったです。今は小学校に進学したので、勤務後に学童にお迎えにいってから、夕飯を食べ、宿題をして、9時前には寝かせて、と分刻みで動いています」

忙しい毎日を送る一方で、以前のようにバリバリと仕事をこなせないことに悶々(もんもん)とすることも増えました。そこで、メンターである上司に相談を持ちかけ、現在の仕事にもつながる経験を得ることになります。

上之薗 「時短勤務では、やりがいのある仕事をすることはできましたが、さらに仕事をしたいという思いが強かったです。なのに子どもにも泣かれて、私は何のために働いているんだろう?と思って。それならもっと思い切り打ちこんで、時短勤務で子どもが小さくても責任のある仕事をやり遂げたい、“将来子どもに話せる仕事をしよう”と思い至ったのです。それを上司に相談したところ、『Japan Leadership Program(JLP)を受けてみたら?』と勧めてくれました」

JLPとは、MSDが次世代リーダー候補の発掘と育成を進める3年間のプログラムです。JLP生は、経営陣の下で直接学ぶ機会や、営業や生産など他部門の仕事を経験する機会も得ることができます。つまり、自らのキャリアビジョンに応じて、必要になる業務を凝縮して経験できるため、その後の可能性を大きく広げるものでもあります。上之薗は背中を押してくれた上司やチームにより一層貢献し、恩返しをするため応募を決意します。

上之薗は2014年から2016年までJLP生として勤務し、さらにその間に、時短勤務から産休前と同じ裁量労働に戻しました。現在は必要に応じて在宅勤務(※MSDでは事由不問、日数制限なしで在宅勤務が可能)も取り入れながら、自分スタイルの働き方を模索しています。

上之薗 「私の場合、今は娘と一緒に登校して、会社に来るのが8時前。そこから17時まで働いて、娘を迎えに行って、寝かせたらまた21時から少し仕事をするという感じ。週に1回程度、夜に米国本社メンバーとの電話会議にも参加しています。本当に自由ですね。昔から予定を立てるのが好きだったので、裁量労働制は自分にフィットした働き方だと感じています」

JLPでは、これまで臨床開発の仕事で会うことのなかった人たちと仕事をしたり会話をしたりすることができたため、多方面とコミュニケーションが必要な現在のプロジェクトマネージャーの仕事にも、大いに役立てられているのです。

周りの助けをうまく借りつつ、母の視点を生かして仕事をする

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仕事に「子どものため」という目的が加わったことで、上之薗は、いち母親としての考えも持つようになりました。

育休が明けて最初に戻った部署では、小児ワクチンの開発。まさに、子どもの存在が、仕事をするうえでの原動力になったといいます。

上之薗 「小児ワクチンは、子どもの病気の予防に役立ちます。子どもを産んでから自分の仕事が大切な人の役に立つ、という実感を持てるようになり、ますます働きがいを感じています」

MSDは全体の女性比率が約22%と少なめですが、産休後も働いている社員が多くいます。本社のある米国文化の影響もあり、家庭と仕事を同じ比重で考えることに抵抗がなく、時短・在宅勤務などへの理解も浸透しているのです。上之薗も重要な会議の日に子どもが熱を出したことがありましたが、周りの助けによって乗り越えることができました。

「入社以来、一緒に働く人たちに恵まれている」と感じている上之薗。そうなったのには彼女自身が持つ、常に前向きな考え方と自分から助けを求める姿勢も無関係ではありません。

上之薗 「まわりに迷惑をかけてしまうことにためらいがあり、助けてもらうことに引け目を感じてしまう方もいるかもしれないのですが、言葉にして初めて伝わることもあるかなと思うようにしています。あとは私自身も、それに甘えすぎることなく、子どもが大きくなるまでは皆さんに迷惑をかけてしまいますが、その分成果で恩返しをしようと自分に言い聞かせて、感謝しながら仕事をしています」

また、部署内に「メンター制度」があり、彼女はそれを積極的に利用しています。JLPを受けると決めたのも、自分からメンターに会いに行って相談しているからこそできたこと。いい意味で周りの環境を利用できている点も、彼女の強みといえます。

“ワークライフインテグレーション”で、子どもの健康維持に寄与する

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仕事に誇りを持ち、成長意欲も高い上之薗が母として大事にしているのは、子どもに「寂しい思いをさせない」こと。幼いころから保育園に通わせ、平日に一緒に過ごせる時間が少ないぶん、娘といるときは仕事のメールは見ないなど、一緒にいる時間をとても大切にしているのです。同時に、子どもが健康でいることの大切さにも気づきました。

上之薗 「少しでも熱を出したり、みずぼうそうやインフルエンザになったりしたら学校は休まなくちゃいけない。体調が万全でないまま行ってもまた帰ってきてしまったり、他の子に影響を与えたりするので、健康でいることの重要さは身に染みました。子どもを産んでから、さらに小児医療に対する思い入れは強くなりましたね」

今後は事業開発に関する方面に進んでいきたいと考える彼女。もう少し生活が落ち着いたら、自分の将来に必要な勉強にも力を入れたいと思案しているところです。子育てと仕事、どちらも片手間にはしないという強い意志がそこにはあります。

上之薗 「よくワークライフバランスと言いますが、当社の人事統括が言うのは、“ワークライフインテグレーション”。仕事と生活を分けずにやる、そうすることでお互いに良い影響が出るように取り組むというのが重要だということですね。周りの方もみんなそうやって働いているので、私も気負いすぎずにできています」

「将来子どもに胸を張って話せる仕事をする」と大きな目標を掲げる上之薗。そんな彼女の姿を目標とする女性たちは、社内外問わず後を絶ちません。今後もその生き方・働き方は、多くの女性を勇気づけていくことでしょう。

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