MSOLが目指すデジタル事業とは?

▲左:Queue 代表 柴田 直人氏、右:MSOL 執行役員兼Digital事業部長 李 成蹊

株式会社マネジメントソリューションズ(以下、MSOL:エムソル )はマネジメントのプロフェッショナル集団として成長してきた企業です。クライアント企業が取り組む多様なプロジェクトに参画し、PMOとしてその成果にコミットするばかりでなく、経営に直結する組織・業務・人材等々の課題抽出や解決策実行にも携わってきました。

近年では多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいるわけですが、実際のところ思うように進んでいないところも多く見受けられます。MSOLとしても、こうした現状を打破するために新たなアプローチが不可欠だと判断し、この数年間いろいろな角度から価値提供の方向性を探ってきました。

では、そもそもDXとはなんなのでしょうか。

(1)経営を最新技術によってデジタル化する全体戦略・ビジネス戦略の立案、実行推進する取り組み、(2)通常業務のプロセスにデジタル技術を採り入れて、コストの効率化や業務品質の向上を目指す取り組み、(3)旧来の技術では実現不可能だった新製品・新サービスの開発をデジタルによって形にしようという取り組みなどです。

企業の経営状態や戦略・ビジョンによって、その中身は異なります。また、こうした変革を目指すために(4)組織を再構築し、DX人材を採用し、育成するという課題に直面している企業も少なくありません。

いずれにせよ、前例のないチャレンジを強いられるのがDX。自社のみで成功させるのは困難といえます。だから、それぞれの局面で強みを発揮できるパートナーと共創関係を築くケースが多くなっているのも当然のこと。たとえば、高度な先端IT技術を持つSIer、ビッグデータ解析に特化したアナリティクス企業、AIやIoTに精通したデータサイエンティストやエンジニアの集団、サイバーアタック対策で成果を上げているセキュリティ企業、RPAや次世代ERPの開発・導入ベンダーなどです。

しかし、企業にとってはいずれも専門外の領域ですから、自社のDXに最適なパートナーがいったいどこなのかさえ確信を持って選択することは難しい。仮に選択できたとしても、どういう関係性を築いて共創していけば良いのか、一つひとつの取り組みをどうマネジメントすれば良いのか、どんなPDCAを回転させれば正解なのか、といった課題に突き当たってしまいます。

李 「私たちは、まさにこうした難題にこそバリュー発揮のチャンスがあると判断しました。企業が目指すDXの内容・レベル・クオリティなどに応じて戦略的デジタル系パートナーの力を結集・編成し、最適なソリューションを提供していくプラットフォームになろう、と。

まずは PMOならぬ DMO( Digital領域での Management Office)の役割を果たしつつ、お客様のニーズによって Digitalソリューションを提供する『デジタル・ソリューション・インテグレーター』としての役割を担っていくことが MSOLデジタルのビジョンです」

そうして、多数の有力なデジタル系先端企業とお会いし、同じ志や情熱を共有できるパートナーを求めていきました。その中で出会えたのが柴田さんの株式会社Queue(以下Queue:キューQueue)でした。

Queueは柴田さんが大学在学中に仲間と設立したスタートアップ企業です。東大病院と取り組んでいるAIによる緑内障自動診断の研究がNature Scientific Reportに掲載された例が代表的な成果です。

QueueはAIだけに特化したスタートアップだと思われがちな面もあるのですが、そうではありません。確かにデータサイエンスやコンピュータサイエンスの最先端を追求する約20名の技術者集団ではあるものの、目指しているのは「アイデアをカタチにするイノベーション」です。

柴田 「『アイデアをカタチにするイノベーション』とはイノベーティブなチャレンジを目指しているさまざまな企業に向け、多様なテクノロジーから最適なソリューションを提供していくことです。

現代の世の中……。とくに日本のビジネスシーンを覆っているイノベーションデバイド(技術革新格差)という問題を解決していこうとしているのが Queueなんです。

2016年以降、製造業や美容、保育などの領域でイノベーションを目指している企業と協業し、成果を重ねてきましたが、私たちとしてはより多くの『イノベーション実現のための課題を抱え、思い悩んでいる方々』とつながっていきたいと考えていました。そんな中で李さんと巡り会い、 MSOLの姿勢に大いに共感して一緒にチャレンジしていくことを決意しましたね」

技術だけでは絶対に成功しないDXで、MSOLとQueueが果たす役割

▲「SUNRYSE.」のイメージ

李と柴田氏は、MSOLとQueueの果たす役割には共通点があると話します。

李 「わかりやすくいえばMSOLとQueueには 『お客様と組むことで価値を生み出そうとしている 」という共通点がありますよね」

Queueが展開する『blue assistant』『SUNRYSE.』といったサービスにはその姿勢が表れています。

柴田 「(『blue assistant』)はさまざまな企業で担当者が作成してきた図面を、マシンラーニングの技術によって類似検索可能にするサービスです。ものづくりの業界では製品開発に必要不可欠である図面。

新たな開発に挑む際は、似通った形状や方向性を持つ過去の図面が設計の重要な鍵となるのですが、それを探し当てるのに、従来は過大な時間や労力を費やしてきたことがわかったんですよ。そこで、機械学習というデータサイエンスを生かした高速検索のしくみを構築し、サービス提供しています。

一方、『SUNRYSE.』 はイノベーティブな研究開発事例を、世界50ヵ国300以上のスタートアップから収拾してデータベース化。投資や会計に関する情報ではなく、あくまでもイノベーションのショーケースとして編集した情報をキーワードなどで検索できるようにしたことで、画期的なアイデアやプロダクトを求めて議論をする際の助けにしていただいています」
李 「イノベーションを起こす主体はお客様なんだ、ということを柴田さんたちはちゃんと理解していますよね。だからこそ、『ウチのAIツールを使ってくれたらこんなこともあんなこともできちゃいます』というようなアプローチをせず、開発に役立つ情報の入手サポートや、議論の起点となるきっかけを提供するサービスに注力している。

モノやサービスを組み立てるための工程をしっかり把握して、それがビジネスとして成立していくために何が必要となるのかを手触り感を持って理解している。そこに感心したんです」

ひと言で「デジタル」と表現していても、実際にそこで使われている技術は多岐にわたっており、劇的に進化する過程でどんどん細分化もされてきています。

柴田 「そうなるとデジタルとのつながりを持たずに事業を行ってきた企業には、『どのデジタルをどこに使ったら何が起こるか』という想像がまったく追いついていきません。反面、デジタル領域の技術ばかりを追いかけている者が、『この業界にはこういう事業チャンスがあってイノベーションにつながる』と見極めることも非常に難しくて……。

この両者の間にある隔たりをどうすれば埋めることができるのか、ということが Queueにとってテーマだったのですが、 MSOLとのコラボレーションはまさにその解に成りうる、そう思ったんです」
李 「大企業とスタートアップの協業によるオープンイノベーションという取り組みが盛んに実行されているにも関わらず、なかなか実を結ばずにいるのも柴田さんが指摘した“イノベーションデバイド”、“隔たり”によるところが大きいと思われます。

でも、 MSOLはこれまでの PMOソリューション事業で常に“架け橋”の役割を務めることで、隔たりや隙間を埋めてマネジメントしてきました。 DXという大きなチャレンジでも、MSOLとQueueが組めば必ず「架け橋」を築くことができると確信できたんです。

すでに複数の企業がわれわれのデジタル事業に期待をしてくださってもいますが、その中には『今後の自社の成長のため、 DX人材をどう育成していけば良いのか』を思い悩んでいるところもあります。

デジタル領域について書かれた文献や資料や成功事例は多数あっても、それを座学で勉強するだけで人材が育つとは思えません。けれどもなんらかの形でMSOLやQueueが参画したプロジェクトを進め、そこに自社の人材を投入していけば実践から学んでいくことも可能になります」

「架け橋」をフル活用し「課題設定力」を上げれば、DXは必ず前進する

▲Queue 柴田氏。本音もぶつけ合い、時には熱く議論する
柴田 「正直なところ、先進的なデータサイエンスにせよコンピュータサイエンスにせよ、事業会社で活躍中のエンジニアの皆さんが本気になって学べばキャッチアップ可能だと思います。けれども本当に大切なのは、自社のビジネスを熟知するエンジニアでなければ絶対に見つけ出せないようなイノベーションのチャンスや、解決すべき課題というものを発見することですよね。私たちがお役に立ちたいと願っているのも、その部分でのサポートなんです」

大切なのは、課題設定力です。それをお客様が手に入れ、組織や人材に浸透させながら育てていくことができれば、 DXを成功させるための下地はどんどん向上していきます。

李 「『自前でデータサイエンティストを多数採用して抱え込めば、同様の変化が起こせる』と考える人もいるでしょうけれど、現実にはうまくはいきません。事実、データサイエンティストを100人も抱えている企業から、私のところに相談がきます」

中途半端にデータサイエンスを学んだ人を何十人、何百人とそろえたとしても、自社の課題に気付くことができなければ宝の持ち腐れになりかねない、と柴田氏は主張します。

柴田 「李さんがおっしゃる通り重要なのは課題を自ら発見して設定する力。『ここをこう変えるべきだ』とわかれば、そのためにどんな技術や知見が有効なのかは判明しますし、後はそれを得意とするパートナーを見つけて発注すれば良いんです。

お客様が以上のようなステップを踏んでいくためのアップデートを担っていくのが Queueの役割だと思いますし、そのための機会獲得を MSOLとの協業が可能にしてくれると私は信じています」
李 「柴田さんと初めてお会いした際にも笑いながら話しましたが、デジタル系のスタートアップを呼び出した大企業の担当者が『ウチにはこれだけ膨大なデータがあるから、これを使って何か新しいことをしてみてよ』と相談されたこともあったようです。

またデジタルで解決の課題設定が明確でない段階で、デジタル寄りの人材を集めた組織をつくっても、成果はなかなか得られません」

MSOLには、これまでの実績の積み重ねから「言いにくいことでも率直に意見できる信頼関係」をいただいているところが多数あります。本音をぶつけ合い、時には熱く議論できるようなネットワークがあることを柴田さんたちが評価してくれて、MSOLとの連携を決めてくれたのだと解釈しています。

「働き方」をはじめ、会社経営の隅々まで変革できるデジタル活用

▲MSOL 李。Queueと共にお客様の課題に応じたデジタルソリューションを提供していく
柴田 「大学などのアカデミックな研究室と、企業が優秀な人材を投じている組織との中間地点にプレゼンスを示していくことをQueueは目指していて。

つまり、実用性はさておきテクノロジーや理論の最先端をひたすら追いかけている最前線と、技術や知見やアイデアを製品やサービスというカタチにしてビジネスとして成立させている最前線とをつなぐ“架け橋”ということです。

そして、そんなQueueが明快な危機意識や問題意識を抱えている企業と出会うための“架け橋”をMSOLが担ってくれるのであれば、今まで以上に私たちが持っているポテンシャルを引き出してもらえると思っています」
李 「日本企業はITなど先進技術への投資額が欧米や中国に比べて少ない、とよく指摘されます。事実、投資額は売上のだいたい1~3%程度ですが、 MSOLが長期にわたって信頼関係を築いているクライアントは私の前職であるソニーをはじめとする製造業界の大手や、エネルギー産業の大手などなどで、合算すれば100兆円を超える売上規模になるんです。

売上比2〜3%だったにせよ数兆円という投資額がITなど新しい技術に用いられるのですから、最もホットなデジタル技術へのチャレンジで成果を上げ、収益やその効率を上げることができたなら、確実に巨大な変革につながっていきます」

個々の大企業やスタートアップが、表現は悪いですが行き当たりばったりに、手を組むのではなく、戦略性を持ってつながり、必要となる「架け橋」も用意した上で、高度なマネジメントに取り組んでいく必要がある。そのためのエコシステムづくりにMSOLもQueueも最大限のエネルギーを投じていきます。

李 「『デジタル×マネジメント』を成功させるエコシステムを構築することができれば、企業の収益に貢献するばかりでなく、今後の『働き方』や『組織や経営のあり方』まで変革することが可能です。

たとえば、働き方改革であらためて注目されているリモートワークなどにも、まだまだテクノロジーを生かして効率化できる余地がたくさん残されています。

今後も Queueに加え、突出した強みを持つ集団とパートナーシップを結び、変革を望む多くのお客様に貢献しながら、経営課題に加え社会課題の解決につながるような可能性も追求していこうと考えていますね」
柴田 「Queueのような技術者集団とMSOLのようなマネジメントのプロ集団とでは、価値観や文化が違うから共創関係を築くのは難しいのではないか、と尋ねられることもあるのですが、私は『いや、周囲が思うほど違いはないよ』と答えています。どちらも実質的な結果が問われる立場ですから、かなり泥臭いアプローチをしているところが似ているんです。むしろ相性はいいと感じていますので、今後、互いの新たな成長にもつながるはずだと期待しています」

互いに共通の目的を持って取り組む──共創関係を持って“架け橋”を目指すMSOL とQueueの挑戦はこれからも続いていくでしょう。