「常に半歩先を行く」グローバルな課題解決に尽力するチームの信念

シンクタンク業務を担う政策研究事業本部では、国や自治体からの受託調査や政策提言を通じて、国内外の社会課題の解決に取り組んでいます。今回は、地球温暖化対策の観点から途上国の森林保全を行う「REDD+」のプロジェクトを進めている、環境・エネルギー部の研究員2名の物語をお届けします。
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森林保全プロジェクト「REDD+」——大きなチャレンジのはじまり

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三菱UFJリサーチ&コンサルティングのシンクタンク部門である政策研究事業本部には、各分野のトップランナーとしての高い専門性を有する研究員が多数在籍しています。専門分野は幅広く、たとえば、環境(地球温暖化、生物多様性、市場メカニズム、REDD+、グリーンインフラなど)、女性活躍・ダイバーシティ、防災・BCP、観光政策、知的財産、官民協働(PPP/PFI)、介護・地域包括ケア、文化芸術などが挙げられます。

今回ご紹介するのは、環境・エネルギー部の森林・陸域生態系グループのメンバーです。“森林”に関するスペシャリストとして、環境省や林野庁、国際協力機構(JICA)をはじめとするお客様と協働し、国内外の環境問題の解決に資する業務を行っています。

その森林・陸域生態系グループが特に今力を入れているのが「REDD+」(レッドプラス)というグローバルなプロジェクト。地球温暖化対策の観点から途上国の森林を保全することを目指した取り組みで、国際的に注目されています。

このプロジェクトの最前線に立っているのが、当グループを牽引する主任研究員の矢野雅人です。

「私の中でREDD+は大きなチャレンジです。それまで現場となる途上国に行ったことすらありませんでした。経験のないことばかりで、自分にとって決して得意な分野とは言えなかったので当然苦労もありました。だからこそ魅力も感じました」(矢野)
大学で森林をテーマに研究を行い2002年に入社した矢野。REDD+というキーワードが生まれる前から、国連の気候変動枠組条約の会議に出席するなど、地球温暖化に関する国際交渉の支援を行っていました。

状況が変わったのは入社から3年がたった2005年のこと。モントリオールで開催された気候変動枠組条約の会議で、コスタリカとパプアニューギニアがREDD+のコンセプトを提案したのです。

途上国・先進国の双方がこれに賛成をする形でREDD+の実施に向けた検討が本格的にスタート。当社も発足時から関わることになり、矢野が現場の最前線に立つことに。関連する調査研究、各種会議のサポート、途上国の現場でのヒアリングなど次第にREDD+にのめりこんでいきました。

「REDD+は、学生時代の研究テーマと近かったことから理解もしやすく、当初より熱中して取り組んでいます。当社では基本的にやりたい仕事は手を上げればチャンスがもらえます。こうしたボトムアップ型の自発性を認める雰囲気があるからこそ、REDD+にじっくりと取り組みことができ、今も継続してREDD+に関する新たな業務経験やスキルを培うことができているのです」(矢野)

「自分で仕事をとってきて一人前になる」新卒入社の研究員の決意

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現在、当グループでREDD+に関わるメンバーは、リーダーである矢野を含めて5人。政府間交渉を担当する者、実際に途上国へ渡って現地の方と関係性を構築していく者など、それぞれの得意分野を生かしてチームで仕事に取り組んでいます。

2010年に新卒で入社しグループへ加わった浅田陽子もそのひとりです。

大学で森林や地球温暖化について研究をしてきた彼女ですが、森林に興味をもったきっかけは小学生時代のある授業でした。

「学校の授業で地球の環境問題がテーマになったことがあったんです。当時10歳だったのですが、10歳なりにこれはかなり深刻なのではないかと思いまして、次第に将来は地球環境に関わる仕事をしたいと考えるようになりました」(浅田)
環境問題への興味が強かった浅田は、シンクタンクの中でも環境分野に強みを持つ当社に入社することを決意。とはいえREDD+の存在については入社するまでほとんど知らず、入社後は苦い体験も多々ありました。

特に1年目はお客様との打ち合わせに同行しても、何も発言できないことがしばしば。しかし、回を重ねるごとに少しずつ考え方が変わっていきます。

「打ち合わせに参加した時に、恥ずかしくない状態にしなければというのが大きなモチベーションになりました。何か一言でもその場のプラスになることを発言しよう。そのためには勉強するしかない。それだけを考えていましたね」(浅田)
シンクタンクの研究員が業務の成果として納品するのは報告書で、それを作るために必要なのは情報です。情報収集こそ自分の仕事において最も重要なものだと考えるようになってから、仕事への取り組み方に違いが生まれたと浅田は言います。

「やるからには自分で仕事をとってこられるくらい一人前になりたい。最初は上司のサポートを受けながら仕事を進め、知見や専門性を高めながら、徐々に自分がやりたいことを探していく。当社には、『会社として必要なサポートや環境は整えるから、自分自身で成長しなさい』という自発性を重んじる雰囲気がありますので、とにかく手を上げて積極的に仕事をやりました」(浅田)

「空中戦と地上戦」REDD+を前進させるために必要なこと

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検討開始から10年以上が経過するREDD+ですが、世界的にはまだまだ具体的な制度を作り、実績を積み上げていかなければならない段階です。そのために重要となるのが「どのような手続きが必要になるのか、どのように効果・成果を測定するのか」といったルール。浅田はREDD+の軸となる、このルール作りを担っています。

たとえば温暖化対策という観点で森林の保全に取り組む当プロジェクトでは、どれだけ温室効果ガスの排出を抑えられたかが、ひとつのポイントとなります。そのためには排出削減量を評価するための計算方法の基準が必要になります。

現地の状況に加え、類似の制度でどのようなルールが作られていたかを地道に調べ、さまざまな関係者の言い分を調整しながら共通の基準を作っていく作業。骨の折れる仕事ですが、適切な基準を作るためには「現場の事情をいかに理解できるか」が鍵を握っています。

「排出削減量を調べるために、ある森林のデータが必要だと結論づけたとしましょう。机上の議論だとこれで終わりですが、問題はこの後です。途上国でそのデータを容易に入手できるとは限りません。現場経験がある人間と議論し内容をすり合わせながらルールに反映していく。このプロセスが絶対に必要です」(矢野)
途上国が舞台となるREDD+においては、どれだけロジカルに議論を行っていたとしても、現地にそぐわず、現地住民の方の理解を得られなければ一向に進みません。

「私は空中戦(机上)と地上戦(現場)という表現をしています。空中戦だけだと、様々な課題を抱える実際の現場で取り組みを進めることはできません。一方で、空中戦の議論がなければ地上戦を動かすエンジンが得られないのです」(矢野)
矢野を中心とするチームは、REDD+発足当初より重要な会議に参加し、空中戦の議論を続けてきました。しかし、それだけではなく、実際に途上国に行き、現地の住民の方や政府機関の方と対話することで、現地の状況に対する理解を深めてきたのです。

空中戦と地上戦。両方の視点を持ち合わせ、ソリューションを提供できる組織はそう多くはありません。REDD+に関わるようになってから早10年。これまで積み上げてきたものは当社ならではの価値となり、グローバルな環境問題の解決に貢献できるようになっています。

「常に“半歩先”を目指す」チームを成長させた仕事のスタンス

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これまでプロジェクトを牽引し続けてきた矢野。彼自身、そしてグループ全体でも大切にしているスタンスがあります。

「常に半歩先に出ることを心掛けています。一歩先だと少し時代が違いすぎますが、半歩なら、時代が追いかけてくるのを見ながら、自分たちが先頭に立って新しいものを生み出していけます」(矢野)
世の中がものすごいスピードで変わっていくように、REDD+もここ数年で形を変えてきました。その変化のなかで最前線に立ち続け、議論を牽引していくためには自分たちから新たな提案をしていかなければなりません。

「クライアントから依頼されている時点で、クライアントの方が課題認識において先を行っている」と矢野が話すように、言われたことだけをやるのではなく、その前に自ら課題を設定・調査していく。依頼内容を超えた価値を出していくことが、個々の成長とプロジェクト全体の前進にもつながっていきます。この想いは浅田も同様です。

「REDD+がどうやったら前に進むのか、次に何をすべきなのか。頻繁に矢野や他のメンバーとも議論をしています。時代とともに社会が変わっていくのだから、私たちも毎年同じ仕事ばかりをやるのではなく、新しいチャレンジもしていく。もちろん苦労はありますが、クライアントから依頼されるだけではなく、自分たちから提案していけるのは大きなやりがいです」(浅田)
半歩先の提案をするには、当然相応の準備も必要になります。最先端の専門知識を得るためには、英語で書かれた海外の情報源を継続的にチェックするという地道な作業も不可欠。提案の幅を広げていくためには、あえてプロジェクトから離れて、世の中をフラットに見ながら異なる分野の情報を取り入れていくことも求められます。

10年が経ったとはいえ、まだまだ道半ばのREDD+。その可能性も今後の取り組み方次第で決まります。

決して楽な仕事ではありませんが、苦労があるからこそ、やりがいや達成感を強く感じることができます。REDD+について常に“半歩先”を目指し、チーム全員でチャレンジし続けていきます。

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